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第十四話・ごめんね




「桜羽ー…」


情けないような小さな声で健太が私を呼んだ。


「…んー?」


私も授業中のため小さな声で返事した。




「…神崎とケンカしてんの?前仲良かったよな?」



「…ッ…え…」


いきなりの健太からの質問に動揺を隠せなかった。




後ろにはりっちゃんがいるから…


冷や汗が出てくると動じに鼓動が早くなっていく。





「や…なんか心配で」



健太が私をじっと見つめた。



―――ドキン…



また、だ。

この頃よく健太にドキドキするときがある。


それは


健太だから?



それとも

あの人と被るから……?





答えはわかってる。



だけど


その答えは消さなきゃいけない。



――――わかってるの






「だ…大丈夫!!ありがとう…心配してくれて」





変な意識しちゃって健太の目が見れなかった。




「…そか?なら…いいんだけど…」




「う、うん」





―――キーンコーンカーンコーン……



「桜羽、じゃぁな」


「あ、バイバイっ」






健太に別れを告げて瑠架のところに行こうとしたときだった。





「さ……桜羽ッ…」





高くてきれいな声が私の名前を呼んだ。






「…りっちゃん…」





「ちょっと…いいかな?」



下を向いて遠慮がちに呟いた。



こんなりっちゃんを見て“いや”なんて言えるわけがない。




「…うん」






――誰もいなくなった教室。



残されたのは

私とりっちゃんだけ。




私はずっと心臓がバクバクで壊れそうだった。



何を言われるんだろう



それで頭がいっぱいだった。




「…桜羽っ…ごめんなさいっ……!!」




―――え…?




「な、んで…?」


りっちゃんは頭を深く下げていた。

そのまま頭を上げない。



なんで



りっちゃんが謝るの?






「…ずっと…言えなかったの…付き合ってた事…」



そう言いながらりっちゃんはゆっくりと顔を上げた。



目には涙が溜まっていた。



「ぅん…聞いた…瑠架から」




私は小さな声で返事をした。






「ぁ…そか…。最低だよね…。でも私…本当に桜羽が大事でっ…だけどっ……那音も…大事だったこと忘れてたの…」



「…うん」



「だからっ…桜羽が付き合い始めたとき、嬉しさと悲しさがあったの…。っ……ごめんなさい…応援するって言ったに…」


そう言いながらりっちゃんは涙を流した。





痛いほどに伝わってくる、りっちゃんの気持ち。



私はゆっくりと口を開いた。



「…ごめんなさいは…私だよ…」



「…ぇ…?」



りっちゃんは私を驚いたような目で見た。





「りっちゃん…ごめん…!!りっちゃんの気持ち考えないで、ひどいこと…言って…」





私は深く頭を下げた。



「…さ…ゎ」





りっちゃんは私に“顔を上げて”

って優しい声で言った。




あげられないよ。


りっちゃんの事

どれだけ傷つけたんだろう。





たしかに


私だってすごいすごい傷ついた。



だけど


りっちゃんの気持ちを考えると私の傷なんてちっぽけなもんだ。






私にひどいこと言われて


那音と別れて



私と那音が付き合って



そんなことを噂とかで聞いて………。




―――きっと


私なんかより

何十倍も


傷ついただろう。







しかも


私はまだ那音が好きで。







顔……あげられない。




「桜羽…私、まだ那音が好きだったよ……

ごめんね…応援……したか…ったのっ…に……」



嗚咽まじりにりっちゃんが言った。






―――ズキン……




やっぱり…好きだよね。


忘れられないよね。



「…ぁ…のね…、那音まだ…りっちゃんが好きだよ…?」



顔を伏せたまま私は呟いた。




「……ぇ…?」



驚くよね。




それと同時に私の瞳からは大粒の涙が流れ落ちた。




――やだ。


やだよ…。



那音のこと


大好きなの。





りっちゃんのところに行ってほしくない…。




だけど



りっちゃんは私の幸せを願ってくれた。




りっちゃんは私のことを一番に考えてくれた。










私だって


そのくらいはできるよ。




「りっちゃん…大好きだよ……。次はっ…幸せになってね…!!」




大好きだから




大好きだから






……幸せになって。



2人で…。






「っ…さゎ…、ごめんねっ…ごめん…!!


……ありがとう…」







ねぇ

――神様…


私はこんなに

大事に思える人ができました。



私の運命を考えてくれてありがとうございます。



つらいことも


悲しいことも



乗り越えられるから

この世に存在するんだ。





そして


それを乗り越えられた時


人は


本当の強さを



知るんだろうね。








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