第十三話・席替え
那音に別れを告げてから夏休みが開け、
もう2週間が経とうとしていた。
そして
今日は二学期初日。
重たい足取りで学校に向かった。
――那音と会いたくない
口ではそう言えた。
だけど
心の端っこでは
―――顔が見たい…
なんて…、矛盾してる。
何…??
この気持ち。
こんな気持ち知らない。
こんな気持ちいらない。
「桜羽…??」
下駄箱に靴をしまっているとき、後ろから光奈の心配そうな声が聞こえた。
「光奈…おはょ??」
あんまり心配かけたくない。
そう思って笑って見せた。
光奈には私からフった事を最近伝えた。
「…無理だけはしないでね…??」
そう、呟いて光奈は階段を登っていった。
無理…か。
作り笑い、やっぱりばれちゃったかぁ…。
光奈の優しさと自分の小ささに涙が目にたまる。
「っ…泣くな……私…」
そう自分に言い聞かせる。
そうじゃなきゃやってらんないよ…。
―――キーンコーンカーンコーン……
「えー今日のホームルームは席替えです。くじ引き作ってきたから並んで引いて」
突然の先生の言葉に
「やったー!!」と言う声と
「えー」と言う声が半々に聞こえる。
私は
「えー」グループ。
…那音とりっちゃんとは絶対なりたくない…。
というか
コレ以上私は2人には関われないよ…。
「やだぁー!!桜羽と離れたくないぃーー!!!」
と、だだをこねている光奈。
「くじ引きだし、可能性あるじゃん♪ねっ??」
「…さわぁぁー!!!」
光奈は泣きそうな可愛い顔で私の制服を掴む。
な、なんか私が転校するみたいになってるのは
気のせいでしょうか…((汗
―――ていうか。
私こう見えてもけっこうくじ運はいい方だと思う。
「綾野さん??早く」
「へっ?!あ、はい!!」
いろいろ考えてたら私の番になっていた。
私はごくりと唾をのんでゆっくりと箱に手を入れた。
――――ガサッ…
よしっ!!コレッ―……!!
「……14番…」
黒板を見てみると私は窓側だった。
隣は25番。
………誰…??
「25の人ー!!」
と、声を出してみた。
すると一人駆け寄ってきた。
――ドキン…
ニコっと笑う顔が那音とかぶった。
「け…健太、25??」
少しだけ声が上擦った。
「うん♪桜羽14!?」
「ょろしくねっ♪」
よかったぁ…
那音じゃなかった。
と思ったがやっぱり
心の端っこでは少し残念な気持ちの私がいた。
「桜羽ー…離れたぁ」
と後ろから光奈がだれてきた。
「えー…私の班だれ…」
黒板に目を向けると
私の心臓は一瞬止まりかけた。
女子はりっちゃんだった。
―――こんな偶然ある?
「……う、そ……」
どっからどう考えても
神様のイタズラ…。
いや
天罰かな……
“友達の好きな人を好きになった罰”
ばかだ。
本当に私はばかだ。
今更後悔したってどうにもならないのに。
「じゃぁ、席動かして」
先生の声にはっとした。
どぅしよう…。
ガタ、ガタ…
私は仕方なく机を動かした。
幸いにも
那音とは同じ班じゃなかったけど…。
―――りっちゃんを嫌いな訳じゃない。
だって…
ちゃんと真実を知れたから。
私のこと裏切ったわけじゃないってわかったから。
だけど反対に、
りっちゃんはどう?
私はりっちゃんを捨てて那音を選んだ。
友情より恋愛を選んだ。
こんな私を嫌いにならないわけがない。
憎まないわけがない…。
だから
怖いんだ……。
「桜羽?」
「へっ?!」
健太に呼ばれて、はっとする。
「いや…ボーっとしてたよ?」
少し目を細めて笑う、健太。
「だ…大丈夫!」
そういって私は机に突っ伏した。
――ドクン、ドクン
まただ。
那音とどうしても
笑顔がかぶる。
―――ヤメテ
笑わないでよ……
―――なんで…
二度と叶わない恋におちてしまったんだろう。