盗賊が!
弓道場に、20人もの人が流れ込んできました。
「俺らはハゲワシ盗賊団!金目の物を出しやがれ!」
「おや?お頭、そこに小っこい娘がいますぜ!」
「おお、この小娘は金になりそうだ。野郎ども!小娘を捕まえろ!ジョン、カール!他に金目のものが無いか見てこい!」
「分かったぜ、お頭!」
「ちょっくら見てきやす!」
これはちょっとヤバそうです。
2人だけ外に行ってくれましたが、それでもまだ、18人もいます。
これは勝てそうにないです。
でも、やらないと逆にやられてしまうので、ちょっとだけ頑張ってみます。
リーダーがはげている盗賊団に、負けたくないという理由も有ります。
怖くなんて無いです!
本当です!
盗賊団の人たちは、じりじりと近づいてきます。
とりあえず、近づいてきている盗賊の、前の方に居る人たちの足を狙っていきます。
ですが、足に矢を受けても関係なく、どんどん近付いてきます。
結局、5人の足に命中しましたが、2人しか倒れませんでした。
もう少し粘ってみましたが、もう一人を倒せただけで、状況は全く変わりませんでした。
盗賊たちはさらに近づいてきます。
仕方が無いので、休憩室の中に逃げ込みます。
ほんの少しだけドアを開けて、その隙間から、少しずつ弓を射ます。
「嬢ちゃんよ、そんなとこに隠れないで出てきてくれよ~。おじちゃん、傷ついちゃうぞ。」
「人を殺す事も出来ないなんて、かよわいな。ははは!」
「いや!こっちに来ないで!」
「来るなって言われて従うほど、俺たちは優しくないぜ。」
本当にやばいです。
この状況を打開できそうにありません。
近距離武器があれば、何とか出来るのですが...
弓でちまちま射っても、先頭に出て来たお頭に全て弾かれてしまいます。
どこに射ってでもです。
助けが来てくれる気もしません。
いや、きっと来てくれるはずです。
今までたくさん助けてくれたのです。
皆が来てくれるまで、ひたすら耐えます!
まだ怖くないです!
まだ大丈夫です!
ドアの隙間から弓を射っても、全然効果がありません。
だから、ドアを閉めて鍵を閉めます。
さらに、入り口のところに机も置いて、少しでも時間を稼げるようにします。
ドアがドンドンと叩かれる。
「開けろ!」
という怒声が聞こえてくる。
私は、先ほどまで抑え込んでいた恐怖を、だんだん抑えきれなくなってきました。
私は、部屋の隅で縮こまると、動けなくなってしまいました。
ですが、ドアが叩かれることも、開けろ!という怒声もやむことはありません。
そのせいで、さらに恐怖が掻き立てられます。
涙が出てきそうです。
泣いちゃだめだと、頑張ってこらえます。
しかし、縮こまっているだけでは、状況はどんどん悪くなっていってしまいます。
少しの間、私を守ってくれていたドアは、壊されてしまい、おいておいた机は、なにも効果はありませんでした。
さっきまで怒声を上げ続けていた盗賊は、休憩室に入ってくると、歪んだ笑みを浮かべて近づいてきました。
「へっへっへ。やっと入れたぜ。そんなに怖がんなよ。」
「いや!誰か助けて!」
「助けを求めたって無駄だぜ。ジョンとカールが誰も居ない事を確認したからな!助けなんて来るはずが無いんだよ!」
「いやー!」
私は腕を掴まれ、布団に投げ込まれ、小柄の私からしたら大きい掛け布団に、くるまれそうになります。
抵抗してみますが、すぐに抑え込まれてしまいます。
「助けて!」
「だから助けは来ない...」
盗賊が何かを言いかけた瞬間、弓道場の入り口のところで、爆発が起きた。
「助けは来ない?そんなはずはないだろう!我々は無々を補助すると約束した!約束を果たすために我々は、どこにいたって、何度だって助けるのだ!下賤な盗賊共め、無々を連れ去ろうとしたこと、後悔するがいい!すまない、無々!遅くなってしまった!」
「なんだお前?」
「こいつを殺せ!協力してかかるんだ!」
「了解で、お頭!」
「仲間の仇!」
「紅太郎!」
「盗賊如きが何人来ようと、全員片付ける!」
大きな穴から入ってきた炎さんは、かっこいいセリフを言ってくれたあと、盗賊と戦い始めました。
急に溢れた涙のせいで、視界がにじんでいますが、紅太郎さんの雄姿がばっちり見えます。
紅太郎さんは、一直線にこちらに、盗賊を赤子の手をひねるかのように、簡単に倒しながら向かってきてくれます。
大剣に炎をまとわせ、切りかかってくる盗賊には、短剣で受け止めたとしても、そのまま壁まで吹き飛ばし、今にも走り出そうとしている人には、炎を勢いよく発射し、走り出す前に吹き飛ばしていきます。
そのままあっという間に、私の元まで来てくれました。
そして、部屋の中に居た盗賊は、紅太郎さんが部屋の外に投げ出しました。
「何かひどいことはされていないか?怪我はしていないか?どこも痛くないか?」
「うん、大丈夫です...でも、でも、えぐっ、こ、怖かったです...ぐすん」
「そうか、よく頑張ったな!もう大丈夫だ!後は任せてくれ!」




