表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

はち。いちゃいちゃを見せつけるのは必須ですか?

お久しぶりです。約3ヶ月ぶりに羽鳥さんを捕獲できましたので更新です。

 

「それに、私好きな人いるし」


 一部の人には爆弾発言。私的には予定調和。むしろやっと言えたぞくらいの軽さ。


「あら」

「おや、まぁ」

「おお」


 三者三様の反応の中。


「…………はぁ!?」


 バカはバカだった。


「は、な、え?」

「だから、好きな人いるの。つき合ってるの。もちろん、あんたじゃない人とね」


 おわかり? ……わかってないみたいだな。


 呆けた奴はぱちぱちと(まばた)きを繰り返すと、はっ、と鼻で笑おうとして失敗した。心に余裕のない男はなにやっても様にならない。


「お、お前にそんな相手がいるはずな」

「しかもプロポーズされて受けたから、婚約者だ」

「あら、聞いてないわよ?」

「報告しようと思ったらこの騒ぎでした。この後食事しながら顔合わせしましょう」

「近くあちらのご両親ともお会いしないといけないね」

「調整します」


 両親が納得してくれたので、続きをと振り向いた所で、身体に巻きつく腕。うん、待てが足りなかったか。


「長かった……」

「あーうん、ごめん? 後もうちょっと待て?」


 言わずと知れた三春は、ぎゅうぎゅうと私を締め付けながら、すりすりと頬を寄せる。犬か猫か……本人的には忠犬のつもりだろうけど、どうやら狼だった模様。とりあえず、よしよしと頭を撫でておく。


「そんなわけで、恋人で婚約者の三春平(みはるたいら)さんです」


 いやー、藤沼母とのやり取りの後、宣言通りアプローチが露骨になりすぎてスルーできなくなりまして。最初からいいな、とは思ってたし藤沼の件でフォローしてくれてたあたりで、かなり好感度は上がっていたのだ。私が気づかなかっただけで。


 ……自分の心自分知らずー。間抜けすぎるわ阿呆!!


「後程式の日取りなど段取りを決めたいのですが」

「あら、早いのね」

「これ以上待ったら、またなにが起こるかわからないので」

「「ああ」」


 納得しないでくれるかな父母(ちちはは)よ!


「そんなわけだから。慰謝料一括で払ったら、私の前から存在ごと消えてくれる? マジうざ」


 呆けて真っ白になってるバカと、私を見比べた外野(かのじょ)が、ふふんと鼻で笑った。


「ちょっとぉ、藤沼さんがあなたなんて相手にするわけないじゃないのぉ。そちらのステキな方もなにかの気の迷いよねぇ。お気の毒に、脅されたのかしらぁ」


 わぁ、テンプレ。てか、小者臭半端ないな。


「そちらこそ、ストーカーの恋人乙? てか、早いとこ引き取ってもらえる? 暇じゃないんだよね」


 おじ様の手配が済めば、藤沼のサインで終わるし、そこに私はいなくても問題ないし。社長は会社役員と話し合うとかでさっきお帰りになったし。


「ああ、そういやここ、あなたの恋人が予約した部屋だったわ。私達帰るから、どうぞごゆっくり」


 スウィートのリビングにいた私達。察した両親はにこやかに退出。おじ様はバカに書類できしだいまた来ることを念押し(またくるから勝手に帰んじゃねぇぞ?)してからさくっと退出。そして私達。


「こ、湖都!」


 この期に及んですがりついてくるバカを睨みつける。ビクッと怯えるくらいならするなよ。


「名前で呼ぶな、と言ったはずだが? むしろ呼ぶなとも言ったと思ったが? お前の記憶から私の名前を消してやりたいくらいだが、なにしたら記憶から消えるんだろうな?」


 物覚え悪いくせに、必要ないものは忘れないなんて、なんてバカなおつむだろうか。


「何度だって言うけどな。私はお前が大嫌いだ。2度とその顔見せんな」

「もういっそ社会的に抹殺とかでいいんじゃない? ご両親とその相談してもいい?」

「いや待て、それ冗談に聞こえない。田崎と和泉がタッグを組んだらそら無敵じゃないか」

「だからいいんだろう? やるなら徹底的に潰さないと」


 怖っ! 三春マジ怖っ! てか激おこでした。うん、気持ちはわかるが落ち着け。


 どうどう、と三春を宥めてると、一言目以来沈黙を保っていた藤沼父が立ち上がった。無表情である。怒りも憎しみもない、凪いだ瞳が藤沼(バカ)を映した。


「父さん! なんとかしてくれよ! 湖都は恥ずかしがってるんだ! 俺が藤沼に戻れば湖都も、っ!?」


 ガツッと音がして、3(みたび)藤沼が吹っ飛んだ。あや、藤沼父もなかなかに激しいお人だったようだ。てか、恥ずかしがってなどいないわ阿呆。本気で大嫌いだと言ったのに、通じない不思議。きっと生きてる世界が違うんだな。


「お前の父ではない。2度と呼ぶな。そしてお前が藤沼に戻ることは永遠にない」


 吐き捨てるように、藤沼父は言った。瞳は相変わらず凪いだまま、無関心ここに極まれり。


「は、な、なに、を……」

「お前とは遺伝子上親子ではないことが証明された。誰の子なのかは知らん、あれに聞くといい。この事は広く通達する。金輪際藤沼を巻き込むな」


 わぉ、更なる衝撃。元藤沼母なにやってんの。藤沼家はほんととばっちりというか運が悪いというか。


「羽鳥嬢、三春君。お二方には本当に申し訳ないことをした。これは藤沼が責任を持って監視することになった。2度と会わせないと誓おう」


 深く深く、私達に頭を下げて、藤沼父は私達を送り出してくれた。責任をとらなくても誰も責めないだろうに、彼は自分へのけじめと戒めとして、最後まで見届けると決めたようだ。なら、私達はなにも言うことはない。


 どうやら、元藤沼母の過激なアプローチで押し掛け女房的に一服盛られたらしい。憐れだな藤沼父。若気の至りとは恐ろしいものだよ、と苦笑した三春。てか、どこからその情報拾ってきたのさ!? 三春、恐ろしい子!


「藤沼家は和泉の傘下に入ったよ。膿を出しきったからもう大丈夫だろうって」

「これから後継者選び大変だね」

「元々の婚約者との間に男女男で3人いるから、大丈夫でしょ。認知済みだし、後妻として籍入ってるし」

「日陰の妻いたし。昼ドラー」

「はいはい、もうおしまい」




 ところで、どこで私が三春に落ちたのかというとだね。


 とある日。


「羽鳥、ここなんだけど」

「ん? ああ、資料別添付だね。こっち」

「ああ、ありがとう。(小声で)……湖都」

「うひゃっ」


 名前呼びは反則です! (アプローチ的には正しい)



 またとある日。


「羽鳥、今日ご飯行こう」

「いいねー、中華食べたい」

「……(小声で)俺は湖都が食べたい」

「ひぃっ」


 下ネタ禁止です! (アプローチ的には以下略)



 またまたとある日。


「湖都、今度の休み空いてたら映画行かないか?」

「あ、それ観たかったやつ! 行く!」

「じゃ、泊まりの準備しといてね」

「うん。…………ん?」



 とまぁ、その夜だね。なし崩しというより、用意周到な外堀の埋まり具合だったよ。認めましたよ、恋心。そうして始まったつきあいの中、来たのがあのバカの手紙だったのさ。


 やっとあのバカと無関係になれる、と受かれた私は知らない。


 三春がうちの両親とタッグを組んで、藤沼撲滅作戦を繰り広げていることを。

 そこにおじ様と社長も参戦してのローラー作戦で根絶やしを狙っていることを。

 そんな最強で最凶な人達の本気の前に、あのバカは一月もたなかったことを。



 知らない私は、その半年後。

 幸せな花嫁になることを。


 まだ、なにも知らないのだ。




本編は落ち着いたので、羽鳥母を説得して出会いなどをインタビューしてこようかと。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ