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羽鳥さんの非、平凡な日々  作者: 桜月


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7/11

ろく。こりないバカに断罪は必須ですか?

活動報告での業務連絡が聞こえたのか、羽鳥さん渋々ですがご帰還です。

 

 ある日私に届いた一通の手紙。


 中々な厚さの水色のそれは、なんとまぁ、忘れかけていたあのバカからで。


 開こうか開くまいか、悩んでいたら後ろから封筒を抜かれた。


「怪しいのは三春さんに報告ですよ、羽鳥さん」

「金崎ちゃん」


 いや、三春に言ったら燃やすに決まってるし。シュレッダーなんて残るものにかけてなんてはくれないだろう。見ないで後悔するのは避けたいのが通常だと思うわけだよ。


 で、勢いで開封して、見て……もんのすごく後悔。うん、後悔役立たずだね、知ってた。


 久しぶりーからの俺は元気じゃないとか寂しいとか会いたいとかお前(私のことだと思われる)も俺には会いたいだろう会ってやるから接近禁止令解けとか、は? ふざけてんの? 死ぬの? なレベルの言葉の羅列だった。


「しかもこれ、自分のことばっか」


 普通、俺は元気じゃないの前に、元気か? とかあるだろうにそれすらない。てか、俺は元気だ、じゃないの? 奴が元気じゃなくても私には関係ないが。会いたいだろうなんてどの口が言うのかね。都合よく忘れたとでも言うのかそうなのか。どうやら奴はかなり上の世界にいらっしゃるようだ。どうせなら雲の上にでも行ったらいいのに。


 手紙を写メって弁護士である伯父様に送る。証拠は大事だ、うん。あ、間違えて三春にも送っとこ。これで三春が怒ってなにかやらかしても私のせいじゃない、うん。


「金崎ちゃん、私うっかりこれ忘れてくから。金崎ちゃんがなにやってもそれは忘れた私の責任だし、てかこんなので責任もなにもないけど」

「あ、了解です! ぜひ忘れていってください。準備しますから」

「よろしく」


 さあて、私にケンカ売ったのはそっちだからね? 私は全力で迎え撃つだけだからね?



 指定された日までに私がしたのは実はなにもない。ただ三春と一緒にいただけだ。三春の怒りを鎮めていたともいう。三春大明神拝むべし、なむなむ。

 そして当日。


 手紙にあった通り、某ホテル―—宇野系列のホテルを指定したのは田崎グループを避けたいからだろうか。無駄なあがきじゃね?——のラウンジに向かう。あのさぁ、信じられる? ホテルのラウンジを指定の後に、なんなら部屋をとってもいいんだぞという一言があってね? まぁ固まったね。とりあえず怒りで。え? ええ、とりましたよ? 一泊ウン十万のスウィートを。もちろん奴の名で。支払いも当然奴だ、私が払うわけないあり得ない。


 あたりまえじゃん。自分が泊まる部屋でしょ? 私の名前なんて出すわけないじゃん。むしろ、なぜ私がそんな手配なんぞしてやらなにゃいかんのよ。いや、したけどね。考えあってのことだから。話したら三春笑ってたけど。笑い事じゃないんだけどね、奴にとっては。私は笑うつもりだ。そのための仕込みだもの。



 さぁて、ショウタイムだ。



 ホテルのラウンジ。窓際のソファーに座って飲むのは紅茶。時間は手紙にあった時間から30分がすぎた。あの野郎、指定しといて来ないとかなめてんのか。バカにしてんのか。元々売られて買ってはいるけど、高値でのお買い上げを望むとはいい度胸だ。倍返しですむといいなぁ?


 スマホで確認すれば、今日の主要メンバーからのメッセージが。あちこちにメッセージを送り返して、紅茶のおかわりを頼む。二杯目のお茶をミルクティーにして砂糖の代わりにハチミツ入れて甘々にして飲んでみたあたりで、ホテルの支配人が誰かを連れてきた。奴だろうけど。他にいないだろうけど。


 相も変わらず高そうなスーツを着て、自分はイケメンだってアピールしながら歩いてる。どんだけ自意識過剰なのかね。てか、今の給料でそれ買えるのか? 本社にいた頃よりかなり下がったって聞いたぞ? もしや借金とかしとるまいな? 周りの目が自分に向いてる、と思い込んでるゲス男は、なんていうか、うん。くたばれ愚か者って感じ?


 ん? 三春はどうなんだって? あれは別物。同じイケメンにも、同列にするのもおこがましい。三春は自分がしなきゃいけないことを知ってる。逃げないで向き合ってる。そのことにあぐらなんてかかない。わかりにくいけど、頑張ってるんだよ。本人嬉々としてはぐらかしてるけど。まぁ、うん。それはまた後で。


「待たせたな」

「……ずいぶんとまぁ、デカイ態度だことー」


 なんだその上から見下ろしての挨拶。謝る気ないだろお前。


「怒ってるのか? ああ、来ないと思ったのか」

「来ない方がましだったな」

「くくっ、強がりだな。寂しかったのか」


 うわっ! 鳥肌立った!! なんだこいつもんのすごくキモイ! ずいぶん変わったな。私の前でのみ好きな子いじめるチェリーボーイみたいだったのに。なんかどっかのプレイボーイみたいだ。てかキモイ。


「ないわー。ほんとないわー」

「? なにがないんだ? まあいい。とってあるんだろう? 部屋に行くぞ」


 キモイわー。なんでこの状況で部屋になんて流れになるんだよ。私がお前に抱かれに来たんだとでも思ってるのか? どんだけ残念な頭してんだよ。残念すぎてこれ以上近づきたくないな。


 そんなこと思ってる時だった。残念なバカの後方から近づく人影。ナイスタイミングだ支配人。


「羽鳥様、失礼いたします。藤沼様にお客様でございます」

「は? 俺に? そんなはず、な」


 そりゃ誰にも言わずに来たよなぁ、知られたら通報されるもの、うちの優秀な弁護士に。てか、みんな知ってるけど。知らないのこいつだけだけど。


「莉菜、なん」

「藤沼さんたら、ひどぉい。リナのなのに他のオンナとなにしてるのぉ?」

「いや、莉菜。なんでここに」

「なんで? なんでそんなこと言うのぉ。ひどぉい」


 こらまた、頭の軽そうな女子だことー。まぁ今のこいつになびくなんてそんなのだけだけど。


「ここじゃなんでしょう、行きますか」

「どこに」

「あるでしょう、あなたのとった部屋が」

「あれはお前と、」

「彼女と、でしょう?」


 支配人に合図すると、こちらですと歩き出したのでついていく。慌てた藤沼が軽そうな彼女をぶら下げたまま追いかけてくるのを確認してエレベーターに乗った。


 最上階についたあたりで藤沼の顔色が変わったが、気にしない。支配人が開けてくれたドアを意気揚々とくぐる彼女とどんよりした藤沼。支配人にエスコートされてリビングに通される私。


「っ!? な」


 リビングのソファーセットには、すでにゲストがいた。

 社長、私の両親、弁護士の伯父様、藤沼の父親、そして三春である。三春は支配人から私を受け取るとソファーにエスコートしてくれた。隣はもちろん三春である。ポカンとしたアホップルを放って支配人が淹れてくれた紅茶は、下のラウンジで飲んだ紅茶よりおいしいものだった。


「なぜここにいるのか、か?」


 藤沼氏のひっくーい声に、藤沼の肩がびっくぅと跳ねた。


「接近禁止令を自ら破るとは、どうにも自分が置かれた状況を把握していないようだ」


 伯父様の冷気を伴う声にも以下省略。


「左遷されて自由になったとでも思ってるのかしら、ねぇ?」


 母のにも以下省略。


「監視をつけていたことに気づかなかったのかもしれないねぇ」


 父のにも以下省略。


「…………」


 そして社長のため息にも以下省略。



 こうして、舞台は整ったのだ。



追求アーンド断罪もしくは処罰を丸投げして逃げたそうな羽鳥さんてすが、逃がしません。三春が(笑)

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