小玉の家庭事情
一粒の流星が、アヴァロン星に落ちてくる。
その中から、金色に輝く髪の少年が現れ、大地に降り立った。
少年は巨大化し、髪がどんどん伸びて黒く変色する。
その髪は大地を覆いつくし、生きとし生けるもの全てを飲み込んでいく。
五人の女王達が少年に立ち向かうが、一切の攻撃が通じず歯が立たない。
「エリス! ルカ! 有香さん! 輝夜さん! ヒナちゃん!」
「ああ――! 光太郎――――!」
目の前で女王達は倒され、全員メタル・ディヴァインごと飲み込まれてしまう。
光太郎は為す術もなく、悲痛な叫び声をあげる。
「みんな――――!」
「光太郎! しっかりしろ!」
「うーん! うーん――はっ!」
起こされて、光太郎は跳ね起きる。
「大丈夫か? かなり、うなされていたぞ」
「……ありがとう小玉。ちょっと恐い夢を見た」
(予知夢か……逆夢だといいけど……)
光太郎の顔色が悪く、小玉は心配した。
好いた男が落ち込んでるのを見て、励まして元気づけようとする。意外と世話焼きだ。
「光太郎、動けるか? 部屋の中にいるだけでは気が滅入るぞ。外に出よう」
「……そうだな、そうしよう」
実際、夢のことを深く考え込んでも仕方なかった。悩んでも結論はでないのだ。
目が冴えて二度寝は出来そうも無く、気分転換にはちょうど良い。
朝焼けの光の中、伸びをする。海も空も綺麗で、昨日戦争していたのが嘘のようだ。
オルワンガル基地は静かである。兵員のほとんどが酔いつぶれて、いまだ夢の中。
「マゲイアの一部は逃げたようだが、これでしばらく戦争はないだろう。かなりの戦力を失ったからな。次に攻めてくるとしても、十年以上はかかる」
「……だと、良いんだけどね。余力がまだあるんじゃないかな? 逆襲が怖い」
「私が楽観的だと言いたいのか?」
「いやいや、そうじゃなくて……平和であるのに越したことはないんだけど……」
「えーい! 光太郎は考え過ぎだ! 少し体を動かして頭を空っぽにしろ! そうだな、私が武術を教えてやる」
「え――――!」
「四の五の言うな!」
(……気が紛れるならいいか。運動不足だしね)
「まずは基本の型からだ。簡単だから護身術として役立つはずだ」
「うん」
小玉は丁寧に分かりやすく、武術の手ほどきをする。
実戦的な拳法で、光太郎は興味をひかれた。
「へー、凄いな」
演舞を見せてもらうが、動きが速すぎて目で追えない。
小柄な体がクルクルと回り、連続技を繰り出していた。
蹴り技には迫力がある。
「ふー、少し鈍ったな、私も鍛錬不足だ」
「あれで? それで気づいたんだけど、人体の急所を正確に狙ってない? もしかして暗殺拳?」
「そうだ。流派影王拳」
「すると富士吉博士も使い手? かなり強いみたいだけど」
「爺もあれで達人だ。女にはだらしないが……」
「技術屋なのに武闘家……小玉の家系って一体どうなってるんだ? あ、聞いちゃまずかったか?」
「隠すようなことでもないし、一部の者は知ってる話だ。聞きたいか?」
「ぜひ!」
小玉は身の上話を始める。
「口伝えでは、私の先祖は鍛冶屋だったらしい。始まりの戦争時から武器や防具を作り始めた。剣や槍、そして甲冑だな、それが最初の騎士甲冑と騎士槍だ。時代を経ると職種が分かれていく」
「なるほど」
「武器を知るからこそ、武器の使い手でもあったから女王の護衛になり、影武者を務めたりもした。そこで徒手空拳でも戦えるように、暗殺拳が編み出された。その後、側近や親衛隊が女王を守るようになると、技術屋に転職した。科学が進歩したから、兵器作りに鞍替えだ。まあ武器づくりは、今もやっているが」
「そっか、最初のメタル・ディヴァインも、小玉の先祖が作ったの?」
「……はっきりとは分からない。亡失の時代があって、継承された技術は少ないんだ。たまに遺物が発見されるが、今のテクノロジーより遥かに上だ。それを見よう見まねで、現在のメタル・ディヴァインが作られるようになった。製造歴史は千年ほどしかない」
「アヴァロン一万二千年の歴史の中では、以外と浅いんだ。太古に何があったんだろうね?」
「ああ、知らないことは結構ある」
「それで、小玉の親類とかは一杯いるの?」
「……いるらしい。親戚というよりは、血のつながりがある一族だ。交流は一切ないが、アヴァロンの危急存亡の時には、団結して暗躍するだろう。一族を召集できるのは、爺だけだ」
「凄いな、忍者集団みたいだ」
光太郎は笑い、話を聞いているうちに気分が晴れる。
ついでに、一番聞きたかったことを質問する。
「……立ち入ったことで何だけど、小玉のお母さんは?」
「……お袋か、死んではいないと思うが、ここにはいない……」
「そっか……」
それ以上は深く追求しなかった。小玉が寂しそうな顔を見せたからだ。
「ところで、小玉に一つ頼みがあるんだけどー」
「またか!? 私はそんなに安い女じゃない! ホイホイと願いを聞いてられるか!」
と言いつつ惚れた弱みで、何でも聞いてしまう小玉である。
金の無心をするわけではなく、技術的な要望だ。
光太郎に創造性はあるものの、それを形にするとなるとかなり大変で、小玉以外に出来る者はいなかった。
そして、もう一人頼りにしてる人物がいる。
光太郎はすがり、おだて、ねだり、お菓子を捧げて小玉に頼み込んできた。
いつも、そのパターンに持ち込んで口説く。ただ今回の頼みは、少し違っていた。
「お願ーい、玉ちゃん。実はね……あ、そろそろみんな、オルワンガルに来るかな? それとも、自国に帰ってるかな?」
「玉ちゃん言うな! 女王達は絶対ここに来る。間違いない」
「そう?」
「心の準備はしておけ。光太郎、覚悟した方がいいぞ、くっくくく!」
「えっ! 何の話?」
「女の戦が始まるんだ」




