表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
第二次マゲイア大戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/432

降伏する者、退却する者

 マゲイア無人機は全滅、アヴァロン星に降りた奴隷兵達は降伏した。

 機動空母を含めた全ての艦艇が、白旗を揚げる。

 前大戦であれば自爆玉砕していただろう。しかし、今回の奴隷兵達は抵抗せず暴れない。

 アヴァロン人から見れば、考えられない行動である。

 敵司令官の指示によるもので、「もし負けたら、自死せず降伏するように」と白旗を用意させていたのだ。

 その意図は読めないが、光太郎の要望もあり、アヴァロン側は奴隷兵を殺さなかった。

 こうして十万人弱が、捕虜となる。


 ただ、宇宙に残っていたマゲイア艦隊は降伏しなかった。

 ハサンが命令したわけではなく、せめて司令官に報告しようと撤退を決める。

 何としてでも、今回の戦闘記録データを持ち帰りたかった。

 奴隷兵達は司令官に心服しており、役に立ちたいと思っていた。

「ヴィヴィアン衛星から、敵艦隊が出撃しました!」

 オペレーターが悲鳴を上げる。しかし、ハサンの姿が見当たらない。

「司令官代理は!?」

「知らん、恐らく逃げたんだろう。あの臆病者め!」

「ハサンなんかほっとけ! 逃げるのが先だ!」

「ああ!」

 残った乗組員達は一丸となり、艦隊を移動させる。逃げの一手だ。


「降伏する気は、無いようですね」

「そのようね。こうなったら仕方ないですわ、光太郎さんには悪いけど……」

「司令官、敵艦を一隻残らず沈めなさい!」

 輝夜は命令を下す。

『了解しました、おひい様! 全艦最大戦速! マゲイア艦を撃沈せよ!』

『おお――――!』

 五十隻のアヴァロン艦隊が、列をなして進撃する。

 艦性能もマゲイア艦よりひいでており、唯一タメを張れるのは旗艦アナトリアくらいである。

 マゲイア側は数も圧倒的に不利で、すぐに追いつかれそうになる。

 ヴィヴィアン要塞司令官も必死だ。

 開戦当初から、まともな戦果を上げていないので、手柄欲しさに躍起になる。部下達も同様だ。


「よし、追いついた! 全艦砲撃開始――なにっ!」

 エレイン衛星の影から、マゲイア駆逐艦隊が向かってきたのだ。

 もはや旗艦以外は無人艦で、殿しんがりに使ってもかまわない。

 不意打ちで、かなりの速さだ。

「ちっ! ぶつける気だな。全艦短距離砲に切り替え、回避しながら迎撃!」

「無人機、発進させます!」

「よし、無人機に駆逐艦をまかせて、我らは旗艦を仕留めるぞ! 全速前進!」

 アヴァロン全艦が慌てもせず、的確に対処する。訓練の賜だ。

「いける!」と思ったのも束の間、マゲイア駆逐艦が一斉に自爆した。


「しまった! センサー撹乱幕だ!」

 キラキラ光る煙が広がり、レーダーと観測機器が一切使えなくなる。

 爆発したことにより、広範囲に撹乱粒子がばらまかれ、戦艦のモニターには何も映らなくなる。

「くそっ! 全艦停止!」

 司令官は待機命令を出すしかなかった。

 粒子が広がり薄くなるまでじっと待つ。下手に動けば、味方同士でぶつかる可能性が高い。

 多数の戦艦で追いかけたのが裏目にでた。数隻だったら、撹乱幕を強引に突っ切る戦法もある。

 無人機まで展開していては、身動きがとれない。

「えーい! まだ晴れないのか?」

 司令官はイライラする。ようやくセンサーが使えるようになった時には、愕然がくぜんとした。


「逃げられましたね」

「マゲイアにも、有能な方がいるようですね」

「ええ、侮れないわ」

 有香と輝夜は気を引き締めた。

 

 撹乱幕が消えたと思った瞬間、またもや爆発が前方で起きる。

 今度は巡洋艦が、彼方此方あちこちで自爆してセンサー撹乱幕をまき散らす。

 爆発場所が離れ、残骸が増えたせいで旗艦の行き先が分からなくなってしまった。

 こうなっては追いかけようもなく、お手上げである。

 マゲイア旗艦と残存艦は、次元転移シフト可能地点まで移動して逃げた。


 退却作戦は参謀らが考えたわけではなく、敵司令官が前もって用意していた。

 軍艦を犠牲にはしたが、退却は見事に成功する。

 輝夜は艦隊に撤退命令を出し、要塞司令官は唇を噛んで悔しがる。

「今日、勝てたことを良しとしましょう。欲張るのは禁物です。それよりも、問題は……」

「これからですね」

 二人は笑い、闘志を燃やす。


 敵味方が去ったエレイン衛星に、不自然な大岩が残っていた。

 擬態したマゲイアの小型艦だ。

 中に乗っているのはハサンで、こっそり旗艦から逃げ出していた。

 一人だけ助かろうとする、魂胆こんたんである。

「某は悪くない。何も悪くない。そうだ、ミウだ! 准尉が正確な情報を送ってこなかったのが、悪いのだ。敗戦の責任はミウにある!」

 完全な責任転嫁で、言い訳にもなっていない。

 あらゆる点においてハサンが悪く、ミウに責任は全くなかった。

 奴隷兵の命なぞ虫けら同然。ハサンは自分かわいさに、罪をなすり付けようと目論む。

「ミウの首を差し出さねば、某が危うい」

 

 そのハサンから狙われてるミウは、潜航艇内で部下達と相談していた。

「味方は全滅。我ら以外の、奴隷兵は降伏しました」

「残存艦隊は撤退し、アヴァロン星宙域から消えました」

「…………」

 ただし話は進まない。途方に暮れるとはこのことだ。

 味方艦隊は退却し、ミウ偵察部隊はアヴァロンに置き去りにされた。

 見捨てられたことは、恨んではいない。悪いのはハサンなのだから。

 恨み節を語れば気が紛れるかもしれないが、それでは現実逃避だ。

 今後の方針を決めるのが先である。


 とはいえ孤立無援では、良いアイデアも浮かばない。

 それでも全員、降伏だけは口にしなかった。最後の意地だ。

「すまない。外に出る……」

「はい、准尉……」

 居たたまれなくて、ミウは席を外した。

 潜航艇のハッチを開けて外に出ると、うつむいて盛大に溜息をつく。

「はあー、やっぱり私は駄目だな、何も考えつかない。兄様がいなければ何も出来ない、愚か者だ。部下達はついてきてくれるが、隊長の資格はないな……うん?」

 自信をなくしかけた所で、ふと遠くの海を眺めると動く物が見えた。

 ミウが双眼鏡で確認すると、大きな島が動いている。それは、オルワンガルだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ