表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
第二次マゲイア大戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/432

空中機雷

 由々しき事態に、ハサンは焦り始めていた。ある程度覚悟していた損害は、予定を超えており、責任がのしかかる。

 最初の作戦が失敗したので、早急に別の策を講じる必要があった。

 かと言って自分では何も思いつかず、レムリアを罵りながら幕僚にあたる。

「陣なぞに引きこもりおって、でてきて正々堂々戦わんか! おい! 何か策はないのか?」

 参謀は感情をこめずに答えた。

「恐れながら、撤退を進言いたします。シールドが張られたあの陣を、破れそうにもありません。退くのが賢明と、具申いたします」

それがしに尻尾を巻いて、逃げ帰れと言うのか!? ふざけるな貴様!」

 ハサンは怒り、参謀の胸ぐらをつかんで詰め寄る。

 背が低く手が辛うじて届く程度なので、恐くもなんともない。

 参謀は冷静に指摘する。

「これ以上の無人機を失えば、司令官代理はタダではすみませんぞ。今ならまだ弁明すれば、許されると思います」

「ちっ!」


 参謀の意見は一理あったが、鵜呑みにはしたくなかった。

 単にハサンは面子にこだわっていて、負けたとは認めたくないのだ。

 撤退するにしても、戦果の一つもあげねばと意地になる。

 敵陣を忌々いまいましく見ながら、陣の急所を見つけた。

「――ん? まてよ、上空から攻めればいいのではないか? 奴らの陣の真上は、ガラ空きじゃないか!」

 円筒陣を上から下まで見回して、改めてハサンは気づいた。

 確かにちくわの形状なので、真上と真下には穴が開いている。

 ハリセンボンの陣上空には、無人機も星騎士も配備されてはいない。

 その代わりにあるのは……


「いけません司令官代理! 上空には空中機雷エアーマインが、大量に敷設ふせつされております。近寄ったら最後、破壊されてしまいます! 多大な被害が予想されますので、どうか御一考ください!」

「ええい、構うものか! 逆にこちらから、無人機を突っ込ませて自爆させてしまえ! そうすれば、周りの機雷を巻き込んで吹き飛ばせる。損害が出ても、あの空域を通り抜けてしまえば、敵陣内部までまっしぐらだ。そうなれば、我らの勝利だ!」

「しかし! それでは被害が……」

「えーい黙れ! 他に策があるなら言って見ろ! 貴様らは某の言うことを、黙って聞いておればよいのだ!」

 参謀の助言は聞き入れられず、またもや愚劣な作戦が決行される。

 自爆するのが奴隷兵ではなく、無人機であることが唯一の救いだ。

 もはや指揮は泥縄で、良い結果が出るわけもなかった。


 ベスパが機雷に向かってぶつかり、爆音を立てて空に散る。

 次々と空中機雷が爆発しては、消えてゆく。

 盛大な自爆花火はやかましく、轟音が鳴り止まない。

 星騎士達は耳栓をして、上を見上げていた。


 それをモニターで見ていた、光太郎は怒る。

 無意味に機械マシンが壊れていくのは、メカオタクとしては腹立はらだたしい。

「機械がもったいねー! 二回も罠穴に入りこむし、今度は自爆攻撃かよ。やること、おかしいだろ!」

「いや、マゲイアは元々おかしい。私から見れば至極当然で、真っ当なマゲイアなぞいるものか!」

「左様ですか……」

 小玉にそう言い切られては返す言葉もない。まさに身も蓋もなかった。

 とはいえ、光太郎も言い足りず、感情に収まりが付かない。 

「とにかく無茶というか、無謀というか、やけくそというか……僕だったら、絶対にしない戦法だ」

「単にバカなだけだろう。最初からゴリ押しするだけで、考え無しだ。であれば、レムリア軍にとっては有り難い。AIにも劣る奴なら楽勝だ」

「うん。敵を侮るつもりはなかったけど、僕より軍事のド素人だ。計算より感情で指揮してるようにしか見えない。敵の指揮官は愚将か……」

「間違いないな。またもや、罠にはまってくれたぞ、これは感謝すべきか? くくくくく!」

「上空からの突破は出来ないように、仕掛けがあるんだけどねー……まあ、気づかないとは思うけど……それにしても、アホ過ぎる」


 無人機の自爆攻撃は、あまり効果がなかった。

 もともと誘爆を防ぐために機雷間の距離は離れており、さほど爆風は広がらなかった。

 他の機雷を巻き込むには至らない。それでも自爆作戦は継続され、多大な被害を出す。

「こうなったら、機雷の数だけ自爆しろ! 全部なくしてしまえ!」

「無茶です、司令官代理! 損害が馬鹿になりません!」

 幕僚は必死で止めるが、ハサンは言っても聞かない。

 自分のミスを認めたくなくて、引っ込みがつかないのだ。プライドが許さない。


「多少の損害は無視だ! 何としてでも、突破さえすればいいのだ!」

 結局、大多数の無人機を無駄に失うことになり、多少どころではなかった。

 それでも空中機雷を減らすことには成功し、縦長のトンネルが出来る。

 レムリア陣内への通り道だ。

 あとは突撃するのみ。マゲイア無人機は上空に集結し、突撃部隊を編成する。

 部隊は上空から急降下を開始し、機雷のあった空域を通り抜けて、レムリア陣内まであと少し。

「よし行けえー! 今度こそ根絶やしにしてくれる! 惨殺せよ!――なに!」

 ハサンが勝利を確信した瞬間、マゲイア無人機が爆発した。

 後続部隊も次々と爆散し、空の藻屑もくずとなる。

 何の兆候もなしに、勝手に自爆してるようにしか見えず、原因不明。

 攻撃を受けているのは確かでも、その攻撃手段が全く分からない。

 またもや、ハサンは困惑するのみ。

「何が、一体どうなってる!?」

 その質問に答えられる者は、ハサンの近くにはいなかった。


 答えを知っている、光太郎は遠くにいた。

敷設ふせつ機雷を抜けてきたとこ悪いけど、まだ誘導機雷があるんだなー、これが。まあ、肉眼じゃー見えないけどね。残念でした」

「光学迷彩で姿を消し、AIによる自動追尾機能ホーミングで敵にぶつかる。名付けて『サフィリナ機雷』か。光太郎は恐ろしいな」

「いやいや、作ったのは小玉だろ? 僕はアイデアを出しただけだ。機雷の推進力に圧縮ヘリウムガスを、採用したのは小玉だ。スラスターとは違って火がでないから、熱源計測装置サーモグラフィでも、発見されにくくなったから凄いよ」

「いや、兵器が優れていても、運用方法が悪ければ使えない。私が褒めてるのはその点だ。光太郎お得意の二段構え作戦があってこそ、機雷は効果を上げたのだ。最初からサフィリナ機雷を使っていたら、レーダーには捕捉されて破壊されただろう。又はカラーボール爆弾で染められたら丸見えだ」

「ありがとう。富士吉博士も言ってたけど、完璧な兵器なんて存在しないからね。欠点や弱点をおぎなう工夫をしないと無駄になる」

 マゲイア軍は見えない機雷で攻撃されていたのだ。透明人間を相手にして勝ち目はない。

 ステルス機能はなくとも、すでに有効射程に入ったマゲイア無人機に、逃れる術はなかった。

 逃げ惑う無人機はただやられていくだけで、昼の花火となって派手に爆発する。

「…………」

 見ているハサンと幕僚らは、何も出来ず声を失っていた。


 光太郎はこの戦果にはしゃぎもせず、顔色を変えずにモニターを見ていた。

 戦局に一喜一憂するハサンとは大違い。大局観に差がありすぎる。

 ハサンが近視眼的な攻撃にこだわっているのに対し、光太郎は戦争の行く末を案じていた。

 いくらマゲイアに兵力があっても、無能な指揮官のもとでは、武力を生かすことはできないのだ。

 小玉は、光太郎の顔をみつめながら思う。

(少しくらい喜んでもいいと思うが、これだけの戦果を上げても威張りもしない。まあだからこそ、こいつを好きになった。しかし、寄ってくる女が多すぎて困りものだが……)

「それにしても、退却命令が遅すぎる。見てる限り、引き際も悪い。命令伝達が上手くいってないのかな?」

 光太郎はマゲイアの動向を冷静に観察し、指摘する。自分だったらどうするか、逆の立場で考えていた。

 一寸先は闇、今は優勢でも形勢が逆転する可能性もある。光太郎は最後まで気を抜かない。


「思いつきの作戦にこだわって、未練がましいだけだろう」

「そっか、指揮官が意固地になってるんだな」

 小玉も光太郎に合わせて、表向きは平静さを装う。感情を露わにして、嫌われたくはなかった。

(ざまーみやがれ、糞ゴミどもめ! 貴様ら一人残らず、地獄界(ドルージョ・デマーン)に送ってやる!)

 もっとも心の中では激しい怒りを、マゲイアにぶつけていた。

 ルカにも負けないくらい、小玉もマゲイアを恨む理由があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ