女帝戦終了、そして……
輝夜は鉤爪を投げ捨てていた。ルカも武器は持っていない。
二人の狙いは同じで、正面からぶつかろうとはしなかった。
疾走して互いの左横を進み、すれ違い様に片手で攻撃を繰り出す。
二人の手刀が唸る! 裏拳撃ちだ。
「「ふんっ!」」
パン、と二つ同時に背中の風船が割れた。
ルカと輝夜の動きは完全に同調しており、初めて成したとは思えない。
息のあった二人ならではの、武闘だった。
風船を見ないで割ったのだから、極芸とも言える。
ルカと輝夜の勝負は引き分け。
ビデオで確認しても、一ミリ秒の差もなく風船は割れていた。
互いに振り向き、顔を合わせる。
ルカは結果に納得せず、強がりを言う。
「あたしの方が、少し早かったわよ!」
「はいはい、そう言うことにしてあげましょう。おほほほほほ!」
「その余裕は、むかつくわねー!」
これでは、ルカの方が駄々をこねてる子供のようだった。
口では過激な事を言っても、本気で二人は喧嘩したことはない。
突っかかってくるルカを、輝夜が上手くあしらうからだ。
それと、心のどこかで感じ恐れていた。
「本気でやり合ったら、どちらかが死ぬ」と。
ブザーが鳴る。試合終了の合図だ。
天井まで上っていた壁が、ゆっくり下がり始めた。
「どっちが勝ったと思う? 輝夜」
「私は有香一押しです」
「じゃーあたしは、エリスね」
壁が地面まで下がり、二人の姿が見える。
勝負の決着はついていた。
ルカと輝夜が見たのは、喉元に槍を突きつけられた有香の姿だった。
有香の持っていた一剣は、手から弾かれて地面に刺さっていた。
どう見ても、負けたのは有香に見える。
だが、エリスは意外な事を口にした。
「有香の勝ちだ」
「勝負ならエリスの勝ちよ」
お互いを勝者と言い合った途端、エリスの風船が割れた。
有香が最後に投げたのはブーメラン。
正面から当てるつもりはなく、始めから背後の風船を狙っていたのだ。
武技――三刀襲は正面・頭上・背後の三方向から攻める技だ。
光太郎のアドバイスから、有香が編み出した努力の結晶とも言える。
(この勝利も光太郎さんのお陰、一生かけても尽くしきれませんわね……うっふふふふふ)
まあ、愛情は歪みまくってはいるが。
エリスにして見れば、勝負に勝って試合に負けた、という所だろう。
負けてもサバサバしており、悔しさはない。途中で試合を抜けたので罪悪感もあった。
気持ちを切り替え、次は必勝を誓う。
「次は私が勝つ」
「ええ」
二人の闘いはまだまだ続く。
光太郎は、拍手しながら四人に近づいた。
「みんな、素晴らしい戦いだったよ!」
「うん」
「ありがとうございます」
「ま、まあね」
「光太郎さんのお陰です」
四人は照れて頬を赤くする。他の誰よりも、光太郎に褒められて嬉しいのだ。
一人外れたヒナはふくれ、鉞を振り回して催促する。
自分も褒めてもらいたくて、仕方がない。
「早く、次の試合をするのー!」
「はいはい、ヒナちゃん。休憩はなしだけど、準備はしないとね」
「私が抜けるわ」
エリスが言った。
「そうしますと、私と有香、ルカとヒナの勝負でいいですわね?」
「いいわ」
「あれ!?」
次の組み合わせが決まったところで、けたたましい警報音が聞こえてくる。
それはブザー音より高く、人々の不安を煽る。
万人が聞きたくない音は、女王達には合図であり、戦闘態勢に切り替わるスイッチだ。
「これは……」
「いよいよ……」
「ようやく……」
「やっと……」
「来たわね」
女王達は何が起きたかを察し、顔つきが変わった。
特にルカは、怒りを露わにした。拳を固く握り、体を震わせている。
「早く来なさい! 八つ裂きにしてあげるわ!」
「落ち着きなさい、ルカ!」
興奮しているルカを、輝夜がたしなめる。
(ルカの両親がなー……恨むのも無理はない。けど、暴走したら止めないと危うい)
光太郎はルカに同情し、一番心配した。
ドーム内に一人の星騎士が駆けつけて来た。
女王達に敬礼し報告する。もう皆、予測はついていた。
「御注進! 外縁軌道上にマゲイア艦隊接近! 敵の襲来です!」
第三話 終わり
ここまでお読みくださり、有り難うございます。m(_ _)m
評価など頂ければ幸いです。2017年12月改稿




