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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅱ

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女王対決 序盤

 ドーム内で空中戦が始まる。

 ルカの武器は三叉戟トライデント、輝夜は騎士槍ナイトランスを持っていた。

 本来であれば手裏剣や苦無くないで輝夜は戦うが、王の力が使えないルールでは、飛び道具は牽制にしかならない。

 いいとこ、風船を割るくらいだろう。

 それで輝夜が不利かと問われれば、むしろ逆だ。ルカを突いて押しまくっている。

 あらゆる武器に精通しており、無手でも強い。これはイザベルに匹敵する。


 戦法を見れば隙がない。

 突いてくるように見せかけては、機体ごと下がって間合いをとり、カウンターを狙う。

 フェイントを多用しながら、無理には攻め込まない。

 両利きなのか、武器の持ち替えを頻繁ひんぱんにして、左右から攻撃を繰り出す。

 変幻自在の変則攻撃だ。それでいて狙いは正確、突きは鋭い。

 並の星騎士では、一分も持たないだろう。


 その攻めをしのぐルカも、ある意味大したものだった。

 こちらは野生の勘で戦っている。

 危うくなると穂先や細いの部分で、受けるのだから曲芸だ。

 槍さばきも負けてはいない。素早く振り回して、輝夜を攻撃していた。

 防御一辺倒では勝負にはならず、反撃してこそ対抗できる。

 何度かの応酬を繰り返して、二人は間合いを取った。


「ルカ、今まで何回やりあったでしょうね? 私達」

「いちいち、数えてないわよ」

「そうよねー。まあ、勝率は私が八割よ」

「七割だ――――!」

 割合を下げて言い、ルカは突っ込む。

 幼い頃から二人は何度も勝負をしており、大抵はルカの負けだ。

「今日は調子が悪かっただけよ、次は勝つわ!」

 同じ捨て台詞を言っては負け続ける。反省と進歩がなかった。

 しかし今日のルカは、ひと味違っていた。

 今までのような一本調子はやめて、攻めのバリエーションが増えていた。

「卑怯よ」と嫌っていたフェイントも使い出す。攻めのスピード・威力ともにあがっていた。

 輝夜は幼なじみの変化を肌で感じる。


「ルカ、ずいぶん強くなりましたね。慢心なく修練を積んだ成果が現れてますよ。何か心境の変化がありましたか? 私が何度忠告しても聞かなかったのに……ああ、光様の影響ね」

「そうなのよ輝夜姫、ルカったら真面目に特訓するようになったのよ。光さんに負けてからは、それはもう必死でね。男は女を変えるって本当ねー」

「おほほほほほ! そうでしたか、オルフェウス。何ていじらしい」

 オルフェウスが口を挟み、当人を乗せたまま冷やかす。

 まるで、おばさん達の井戸端会議だ。

「う、うっさいわね! 光太郎は関係ないわよ、いいから勝負しなさい! オルフェも黙ってなさい!」

「そういうことにしておきますか」

 実際ルカは、光太郎に再挑戦チャレンジしたいと思っていた。

 勝つのが目的ではない。ただ、光太郎に自分を認めてもらいたいのだ。

「女王として、星騎士として、何より女として、あたしを意識させてやる!」

 ここまで変わるとは、ルカ自身思っても見なかっただろう。


 ルカが光太郎を初めて見たのは、テレビだった。

 その時は、さほど興味は湧かなかった。自分に自信があり、周りの者を見下していたせいだ。

「何、この珍獣? 貧相な体つきね、異星人の男?」

「そうですよ、姫様」

「隕石の迎撃に一役買ったようです」

「ふーん」

 パウラとカイラに説明されても、「大した男じゃない」と決めつける。

 ところが毎日のように放送されて、光太郎を見る機会が増えると考え方も変わっていく。

 時を同じくして、陸奥市からアヴァロンに入ってきた、少女漫画にルカは毒されてしまう。

 異国からのカステラや金平糖こんぺいとうを喜んだ、戦国武将のようなものだ。

 特に恋愛物にハマり、いつしか自分と重ねるようになる。

 ヒロインは自分、そして恋人役は異国からやってきた光太郎。

 寝ても覚めても、光太郎の顔が浮かぶようになってしまう。

「どうして、あいつの顔が浮かぶのよ!」

 女だらけの環境で育ち、男と接触する機会がほぼゼロだったせいだ。

 刷り込み(インプリンティング)になってしまったのは、他の女王達も同じ。

 どうしても、光太郎を気にかけるようになってしまう。


 光太郎がパシフィスを訪れた時には、舞い上がってしまい「劇的出会い作戦」は失敗した。

 勝負を挑むも、粉だらけにされて負けた。

「悔しい!」と心底思うが、自分より強い男に会って一気に惹かれる。

 渡されたプレゼントは駄目押しとなり、乙女心は撃墜された。


「このままじゃ、あたしは駄目ね。あいつに相応しくない」

 輝夜との対決はマンネリ化し、負けても気にしなくなっていた。

 両親がおらず叱るべき者がいないので、何事もおざなりだった。

 ここにきて一念発起し、ルカは発憤する。人生の目標もできた。

「マゲイアを滅ぼして、光太郎と幸せな家庭を築くのよ!」


     ◇


 エリスと有香の戦いも始まっていた。

 ハイペリオンには早紀が搭乗し、基本の操縦はAIに任せていた。

 ここぞと言うときには自ら動かし、鋭い反射神経で攻撃を上手く躱す。

 エリスは猛攻を加え、有香は防戦一方。

 やはり、実力的にはエリスの方が上だ。経験の差は埋めようもない。

 攻めをしのいでいるだけでも、有香は十分健闘している。


 さて、エリスが乗っている機体は――

 本邦初公開! 新型メタル・ディヴァイン、地上汎用型、重量九〇〇kg。

 機体モデルは馬でさほど変わっていないが、エリスの体型に合わせて作られている。

 操縦室も光太郎に合わせて作られ、改良がほどこされていた。

 臀部にあった可変スラスターは強化され、内蔵のスラスター数も増えた。

 短時間であれば、飛行特化型にもひけをとらない。


 額には短いつのが突き出ていた。ユニコーン・ホーンだ。

 ルドルフと戦った時は、角を伸ばして突っ込んだが、それが角打ち機(ホーンバンカー)に変わる。

 爆薬カートリッジ式を採用し、敵の装甲を軽々と撃ち抜く秘密兵器。

 鋲打機の応用で、零距離では切り札になる。

 ペガサスウィングは四枚羽に変わり、機動性を上げている。

 その翼からつけられた名は――


 エクリプス・ダブルウィング(WW)


 ……断っておくが、決して草草(WW)ではない。


「――なんということでしょう。更に軽量化にも成功しているではありませんか!」

「……お兄ちゃん、さっきから何をぶつぶつ言ってるの?」

「はっ! 脳内でプレゼンテーションやってたつもりが、口に出ていた。新車発表のセールストーク風にね。一応技術屋だから、作った物の自慢はしたいんだよ」

「そっかー、お兄ちゃんの作ったメタル・ディヴァインは凄いもんね」

「ありがとう、ヒナちゃん」

 今日はお披露目されないが、エクリプスにはまだ秘密があり、聞いたヒナは唸る。

 ヒナの反応に、光太郎は笑顔を浮かべて満足した。

 楽しそうな二人を見て、エリスと有香はムカムカさせられる。

 エリスは我慢出来ず、試合そっちのけで近寄った。

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