女王対決 開始
女帝戦も残り二日。
団体戦、個人戦の表彰式が行われる。
楓をはじめとした成績優秀者に、勲章とトロフィーが授与される。
「おめでとう」
「ありがとうございます」
イザベルが声をかけながら、手渡していた。
最後に盛大な拍手が送られ、武闘大会は幕を閉じた。
この時点で、女王達は退席する。光太郎は最初からいない。
闘技場の一部は昨夜のうちに飾り付けられ、パーティ会場に様変わりしていた。
五王国による親睦会が開かれる。
お互いの健闘を讃え合い、話に花を咲かせた。
見知らぬ者同士でも、挨拶を交わせば話は弾む。
国は違えど同じ星騎士だ。
「あんたのメタル・ディヴァインはどんなの?」
「得意技ある? 教えて」
戦いを生業としてるから、話題も共通する。
また、これから一緒にマゲイアと戦う仲間となれば、友好も深まっていく。
飲食しながら、ワイワイ騒いでいた。
「お願いします!」
「来なさい!」
その一方で、申し合い稽古をしている者達がいる。闘技場の半分は武舞台のまま。
アンジェラとイザベルが指導し、大勢の星騎士が集まっていた。
代表に選ばれなかった者達で、悔しさを稽古にぶつけている。
昨日の楓とパウラの戦いに触発され、じっとなんてしてられない。
誰もが、
「次は、私が優勝する!」と意気込んでいた。
星騎士ならば頂点を目指すのが当たり前。夢に向かって弛まぬ努力は続く。
◇
闘技場の隣にはドームがあり、外からは中の様子は見えない。
そこで、ひっそりと女王対決が行われようとしていた。
試合というよりは、実験戦闘に近い。
純粋な戦いが出来ない理由は色々あった。
まず切り札たる女王の実力を、一般公開するわけにはいかなかった。
ましてやスパイが、アヴァロンに潜入している状況では隠す必要がある。
メタル・ディヴァインの性能も、知られてはいけない。
また、女王同士が真剣勝負でやりあえば、危険極まりなく人工島が沈みかねなかった。
そこで、試合にはかなりの制限がつけられる。
一、王の力の使用禁止。
二、メタル・ディヴァインの騎乗時間は三十分のみ。
三、背中に貼り付けた風船を割られるか、六十分経過したら終了。
他にもルールはあるが、非殺傷武器であれば得物は自由。
「つまんないわね」
ルカはぼやくが仕方がない。訓練かつ、兵器試験がメインなのだ。
ただ、無観客試合のように寂しくはない。
斥力場シールドに守られた観客席には、各国の技術者が大勢つめかけていた。
実戦データをとって問題点を洗い出し、兵器の改良をするためだ。
<アーサー>によるシミュレーション戦闘だけでは、すべての不具合を見定めることは困難。
やはり、実戦で得られるデータがなければ、兵器の改善にはつながらないのだ。
すでに武闘大会では良いデータが得られている。
武装を万全に仕上げるのは、技術者の使命であり戦いだ。
裏方こそ縁の下の力持ち、女王や星騎士達は信頼し感謝している。
光太郎もディヴァイナーではなく、技術者としてその場にいた。
隣には小玉がいる。
文吾の助言に従い、しばらくはメタル・ディヴァインに乗らないと決めた。
「無茶な操縦をしたら、機体を壊しかねない」
故障でもしたら戦場では命取りであり、とても恐くて乗れなくなる。
事実、光太郎が操縦した機体には、かなりの負荷がかかっていた。
これをエリスも了承する。
新型エクリプスだけでも十分戦えるのは分かっており、光太郎に無理をさせる必要もない。
むしろ光太郎が戦闘で、負傷するのを恐れるようになっていた。
想像するだけでも、エリスにとっては生きた心地がしない。
「操縦対策が見つかったら、ディヴァイナーを頼む」
「うん」
今は参謀として、作戦立案に関わっていた。
準備が完了し、女王達がドームの中央に集まる。
全員、光星甲冑を纏っていた。
輝夜が右手を前に出す。握っていたのは五本の割り箸。
王様ゲームをするわけではない。組み合わせのくじ引きだ。
赤と赤、青と青の色合わせで試合が組まれる。
無色を引いた者は見学。先に勝負がついた方と入れ替わって戦い、休憩はなし。
くじ引きの結果。
輝夜 対 ルカ、
エリス 対 有香、に決まった。
一人外れたヒナは、不平を鳴らす。
「うー、ヒナだけ仲間外れなのー!」
「すぐに終わりますよ」
「そうよ、輝夜なんてすぐに倒して相手してあげるわ」
「ほほうー」
パフォーマンスではなく、マジで喧嘩を売っている。
二人はにらみ合い、すでに火蓋は切られていた。
見ていたヒナは興味なさそうに言う。
「ふーん……まあいいわ。お兄ちゃんのとこに、行こうっと」
「「ちょっと待て、ゴラァ――――――――!」」
エリスとルカが騒ぎ立てるが、ヒナは脇目も振らずに光太郎の所へ向かう。
あからさまな抜け駆けだ。腹は立つが、これから試合では止めようもない。
「ちっ! ほんとにくえない奴」
「やれやれ、始めますよ」
輝夜が手を上げて合図をすると、ドームの下から壁がせり上がって、天井まで届く。
試合場が二つに仕切られ、女王達はメタル・ディヴァインを呼んだ。
「オルフェ!」
「スカーレット!」
「ハイペリオン!」
「エクリプス!」
後方から駆けつける機体に、一斉に飛び乗る。
武器を構えて、皆が同時に叫ぶ!
「決 闘!」




