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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅱ

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決着

「どうして、私の位置が!? まさか心眼!?」

 パウラはびっくり仰天。

 今までに高速回転移動を見切ったのは、ルカのみ。

 しかも目を閉じて、自分の正確な位置をとらえられては、驚く他はない。

 楓はいかにして、パウラの位置を知ったのか? 答えはブエナビスタの移動音だった。

 前にいれば大きく聞こえ、後にいれば音は小さくなる。

 目をつむって移動音を聞くことに集中し、攻撃のタイミングを計っていたのだ。

 ブエナビスタが同じ速度で回転移動していたのも、まずかったと言える。

 ウオッカが目の前に迫る!


「くっ!」 

「ガッデム!」

 ブエナビスタも負けてはいない。とっさに垂直に立ち上がり、翼を広げた。

 パウラを庇うのに、自分を盾にしたのだ。

 ウオッカはそのままぶつかり、ブエナビスタは翼で包みこむようにして、ウオッカをつかむ。

 二機は一緒に吹っ飛んで、もつれるように地面を激しく転がっていく。


 パウラと楓は空中に飛んでいた。二人ともぶつかる前に、自機を踏み台にしてジャンプ。

 お互いに攻撃の間合いに入る。

「うっ!」

 パウラは一瞬だけ迷う。楓は騎士槍ナイトランスを軸にして、自ら回転していたのだ。

 これでは当てづらい。

 お株を奪われるような形となるが、パウラは見極めてランスを突き出す。

 楓もランスを繰り出した。

「ドリャ――――!」

「せりゃ――――!」

 二人のランスが交差してすれ違い、お互いに相手の胸を突く。

 相打ちとなって地面に落下し、両者ともに倒れ伏したまま動かなくなる。

 輝夜は目を見開き、ルカは口を開けたまま固まってしまう。

 闘技場内は静まりかえり、誰もが動けずにいた。


 貴賓席のモニターから二人の生命徴候バイタルサインを見て、光太郎は叫ぶ。

 マイクからスピーカーを通して、闘技場内に声が響く。

「二人とも生きてます! アンジェラさん! カウントを!」

「は、はい!」

 アンジェラは慌てて、一〇(テン)カウントを数え始めた。

 いかなる形であれ、勝負の決着はつけねばならない。

「ワン!」

「ツー!」

 これに観客達も我にかえり、再び大声援を送る。

「立て――――!」

「立ち上がれ――――!」

「ファイト――――!」

 皆が声を振り絞って、パウラと楓コールの大合唱。

「セブン!」

 両者ともピクリとも動かない。


「エイト!」

「楓――――――――!」

「パウラ――――――――!」

 ルカと輝夜も立ち上がり、大声で叫んだ。伏している両者の指が動く。

「ナイン!」

 一瞬の空白、そして……

「テン!」

 立ったのは楓だった。

「武闘大会優勝、楓!」

「うおおおおおぉ――――――――――――!」

 大歓声があがる! 

 アヴァロン中の人々が盛大な拍手をおくり、楓の勝利に沸き立つ。


 楓本人は勝ったことも分からず、何も聞こえてはいなかった。

 目の焦点は定まっていない。

 何せ地面に倒れた後は気絶したままで、立ち上がったのは無意識の行動。

 勝利への執念と輝夜に対する忠誠心が、動けない体を突き動かしたのだ。

 たまらずルカと輝夜は貴賓席から飛びだし、二人に駆け寄る。

 輝夜は立ったままの楓を抱きかかえて、そっと担架に乗せた。

 ルカも同じようにパウラを担架に乗せると、パウラは気がつく。


「……すみませんルカ様。どうやら負けたみたいですね」

「馬鹿ね、あんたが無事ならそれでいいのよ」

 それぞれ相棒の霞とカイラに付き添われ、二人は医務室へ運ばれていった。

 二人に対しての拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

 

「はっ! ここは! 試合は!」

 試合から三時間後、楓は目を覚ました。

 ベットから飛び起きたところで、見舞いにきていた輝夜に声をかけられる。

「もう少し寝てなさい。治療は無事におわりましたが、安静が必要です」

「は、はい……」

 恐縮しながら言うとおりにして、楓はベットに横になる。

 騎士甲冑は外され、病衣に着せ替えられていた。顔や体は拭かれて綺麗になっている。

 下着をつけていないので体の線が浮き出ていた。見る限り、筋肉質ではあるがプロポーションは非常に良い。

 化粧っ気がない素顔でも、見劣りするものではなかった。着飾れば女王にもひけはとらない。

 ただ愛嬌を振りまけるタイプではないので、その辺は残念である。

 女である前に、戦う星騎士なのだ。輝夜は楓に告げた。


「優勝は楓、あなたよ」

「……どうも実感がわきません。最後に飛んだことだけしか、覚えてませんので……」

「お互いに相打ちになって倒れ、楓が先に立ち上がったのよ」

「そうでしたか」

「おめでとう楓、貴女あなたの戦いぶりに見る者すべてが勇気づけられました。武闘大会を開いた甲斐がありました。この功績を持って、貴女を星騎士に戻します」

「感謝いたします、輝夜様。それと一つだけ、お願いの儀がございます」

「かまいません。望みの物を言いなさい」

「報奨金も優勝杯も、何もいりません。光太郎様に謝罪させていただきたいのです」

 罪悪感というのは心に刺さったトゲだ。寝ても覚めてもそれがつきまとう。

 光太郎がアトランティスを去った後、楓は自分の行為を激しく後悔した。

 三度も命を狙ったにもかかわらず、光太郎は自分を雷から救おうとした事を聞きつけた。

 それと命乞いされなかったら、既にこの世にはおらず、不名誉だけが残っただろう。

 光太郎の優しさと慈悲深さを、楓は後から思い知る。


 楓は裁かれはしなかったが、殺人未遂に変わりなく監視対象とされた。

 何とかお詫びしたいと思うものの、勝手な行動は許されない。

 すべては後の祭り、楓はおのれの愚かさを悔いる日々が続く。

 そんな折、運良く敗者復活戦に抽選で選ばれ、楓は喜ぶ。

「勝って、光太郎様に詫びる機会をいただこう」

 それだけを願い、必死に勝ち続けたのだ。

 しでかした罪は消えない。けれども、改心した楓は許しを求めていた。

「表彰を受けるまでが試合です。優勝杯は受け取りなさい、楓。次に続く者のためにも、必要なことです」

「……はい」

「さて、貴女の願いは――光様!」

 輝夜がうしろのカーテンをいきなり開ける。


「それでルカ様、また転んじゃって……」

「あははははは! そうでしたか――あっ、はい!」

 隣のベットにはパウラが寝ており、光太郎と談笑していた。

 防音カーテンで仕切られていたので、楓は全く気づかなかった。

 いきなり会えるとは思ってもおらず、驚いて起き上がってしまう。

「こ、光、太郎様、ど、どうして、ここに!?」

「楓さん、気づかれたんですね。じゃーパウラさん、またー」

「はい、お見舞いありがとうございました。今度はデートしてくださいね」

 光太郎は手を振ってカーテンを閉め、楓のベットに近づいた。

「それでは光様、お先に失礼します」

「はい」

 輝夜は会釈して医務室から出て行った。輝夜の座っていた椅子に、光太郎が座る。


「よっと。お二人のお見舞いに来てました。御無事で何よりです」

「あ、あの、その、光太郎様、この前は大変なことをしでかしてしまい、本当に申し訳御座いませんでした!」

 心の準備も、詫び台詞も用意できていなかった。しどろもどろに謝るのが精一杯。

 ベットの上では土下座もできず、ひたすら頭をペコペコ下げた。

「あー、気にしなくていいですよ。それよりも素晴らしい試合で感動しました。パウラさんも強かったですが、楓さんの強さにも驚かされました。輝夜さんの側近だっただけのことはある」

「あー、いえ、たいしたことでは……」

 罵倒されるのを覚悟していたのに、光太郎は何事も無かったかのように話しかけてくる。

 日々の忙しさで光太郎は忘れかけており、気にもしていなかった。

 楓は肩すかしをくらって戸惑うのみ。


「目を閉じられた時は、『おおっ!』って思わず叫んで興奮しましたよ。あそこで音を聞く戦法は、大胆で凄く良かった。時間をおかずに攻撃したのも、お見事です!」

「え、ええ……」

「ウオッカは良い機体ですね。今度じっくり見せて……あーまた僕の悪い癖だ。どうも機械マシンを見ると、我慢できなくなる性質たちなもので、すみません」

「いえいえ、そんな! 謝らないでください!」

 人を責めるどころか、自分を褒めまくる男が目の前にいる。これで惚れない女はいない。

 目を潤ませて、楓は思う。

(ああ……やっぱりこの方は魔法使いだ。私は恋の魔法にかかりました)

 

 前に楓は光太郎に言いがかりをつけたが、全て間違っていたわけではない。

 女たらしであるのは、紛れもない事実なのだから。

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