武闘大会 決勝
女帝戦、三日目。
武闘大会、後半戦が始まる。
前半戦は地に足をつけての戦いだったが、後半戦はメタル・ディヴァインに騎乗しての戦いとなる。
非殺傷武器を使い、高度制限ありの戦い。
これで地上型が不利になることはない。
見る側からしても観戦しやすく、星騎士とメタル・ディヴァインの華麗な動きに、目が奪われる。
三本勝負で有効打撃が決まるたびに、拍手と歓声がわき起こる。
時には、威力のある一撃で星騎士が倒される場合もあり、団体戦は激闘となった。
前日下位の、パシフィスとムーが奮起して盛り返し、順位が目まぐるしく変わる。
終わってみれば、一位と二位はメガラニカとレムリアで変わらなかったが、三位はアトランティス・パシフィス・ムーが同率で並んでしまう。
「延長戦で決着を!」
と望む声が多かったものの、協議はしたが日程の都合上無しとなる。
収まりがつきそうもなかったので、輝夜が説得した。
「次回は規模を拡大し、出場者も増やします。それまでは各自、腕に磨きをかけて下さい」
これで星騎士達は仕方無く引き下がるが、「次は私が闘技場に立つ!」という思いを強くした。
やはり大観衆の前で声援を浴びるのは、喜びでもあり名誉だ。
星騎士達は一層修練に励み、のちに各国混成チームも誕生することになる。
個人戦も白熱した試合が続き、ついに決勝戦となる。
激戦を勝ち抜いてきたのは、パシフィスのパウラと、アトランティスの楓。
楓は敗者復活戦からの出場ということもあり、疲労の色がみえる。
パウラの方はシードで、試合数は少なく気力体力ともに、まだ余裕があった。
二人が騎乗するメタル・ディヴァインは以下の通り。
ブエナビスタ――重量八〇〇kg、モデルはイワツバメ、翼は黄色でその他は白。
ウオッカ――――重量一〇〇〇kg、モデルはオオカミ、体色はピンク。
側近の機体色は、女王のメタル・ディヴァインに合わせるのが慣例だ。
敵味方に大将の健在ぶりをしめすのは重要で、ど派手に目立つ必要があった。
女王と側近が戦場にいれば、やはり軍の士気は上がるものだ。
当初、楓は無人機で試合に挑むつもりでいたが、輝夜の計らいでウオッカの使用を許された。
楓は感謝して、必勝を誓う。
パウラと楓は騎乗し、開始の合図を待つのみ。アンジェラが右手を挙げて振り下ろす。
「決勝戦、始め!」
「「うおおお――――」」
二人は同時に雄叫びを上げ、相手にむかって突っ込んでいく。
メタル・ディヴァイン同士がぶつかり、衝突音が闘技場に鳴り響く。
体当たりして相手の体勢を崩すのは基本、ぶちかましは五分。
「ヤ――!」
「はあああ――!」
駆け引きもなく、力任せの騎士槍の突き合いが始まる。
目にも止まらぬ早技で、打ち合う音が木霊した。
「「ぐっ!」」
時々、相打ちとなる。非殺傷武器でなければ、両者ともとっくに死んでいただろう。
とは言え、騎士甲冑の上からでもダメージは受け、蓄積されていく。
判定では決着はつきそうもなく、どちらかが倒れるまで闘いは終わらない。
「ワ――――――――!」
初っ端からの激闘に観客達は沸き立ち、応援にも熱が入る。
パシフィスとアトランティスの星騎士達は、自国旗を振っていた。
三叉の銛と天秤がデザインされた旗が翻り、否が応でも盛り上がる。
「パウラ! パウラ! パウラ!」
「楓! 楓! 楓!」
声援は真っ二つに割れ、観客の誰もがどちらかにエールを送っていた。
戦っている二人に声は届き、歓喜に打ち震える。
主役としてこの場にいることに高揚し、戦意も高まった。お互いに睨み合う。
((絶対、負けられない!))
意地と意地のぶつかりあいだ。闘いは激しさを増していく。
しばらく一進一退の攻防が続いた。
輝夜は表情を変えずに見ていたが、ルカは憎まれ口を叩いて突っかかる。
「あんたのとこの楓は、まあまあ強いわね。でも疲れが見えるわ、勝つのはうちのパウラよ。何てったって、あたしの片腕だからね。へへん」
「その割には、ルカの扱いがひどいようだけど?」
「う! うっさいわね!」
ルカは図星を突かれて、噛みつく。
事実、パウラは側近というよりは小間使いだ。
「パウラー! カイラー!」と二人一緒に呼びつけては、我が儘を言っては困らせている。
ルカ自身も甘えているのはわかっているが、止められない。
二人も、両親を早くに亡くしたルカを不憫に思えて、ついつい甘やかしてしまう。
幼少から付き従っている、主人とお供の関係は変わらなかった。
(勝ち負けなんてどうでもいいから、無事に試合を終えなさいよ!)
ルカはパウラを心配し、手は震えていた。
何度かの激突を重ねて、楓とパウラは間合いをとり休む。
汗は流れ、息は上がり、動きも鈍くなっていた。
やはり楓の疲労が深い。勝機と見てパウラは勝負に出る。
「ブエナビスタ、回転駆動!」
「イエッサー!」
特殊機能を発動させ、ブエナビスタがウオッカの周りを回り始める。
相手に正面を向けたままの高速回転移動、これにより残像ができる。
人の目では追いつけない分身殺法だ。
ためしに楓はランスで軽く突いてみたが、当たらなかった。
かえって隙を作り、パウラは死角から襲ってくる。
間一髪、ウオッカが飛び退って躱した。
「下手に動くと、やられるわね」
パウラは攻撃を外すやいなや、回転移動に戻る。
ブエナビスタの動きが速すぎて、カウンターを狙えそうもない。
楓とウオッカは不利を覚る。
「こりゃーいかんばい、どぎゃんすっと? 楓」
「本当に強い。これは捨て身の覚悟でいかないと……ははは!」
「どげんしたと?」
「前に光太郎様の戦法を非難しておきながら、同じような事をしようとしてる、私を嘲ったとこよ」
「そぎゃんな」
「体力も限界。さあ、残った力を振り絞るよ、ウオッカ!」
「がんばるばい!」
様子をうかがっていたパウラは驚く。
なんと楓は目をつぶったのだ。
「オ――――!」
観客達もこれにはどよめき、目を丸くする。
楓は開き直って、精神を集中していた。
(目で動きが追えないなら、目を閉じても同じこと)
絶好の機会にパウラは、攻めるのをためらってしまう。
(何か策があるの?)
罠を警戒し、少しだけ様子見を決め込んでしまった。それは悪手となる。
「今よ!」
「竜巻の牙たい!」
ウオッカが一瞬で、真後に飛ぶ!
特殊機能だ。
四肢のバネとスラスターを同時に使い、機体を捻りながら相手に飛びかかる。
予備動作がなく急襲する技だ。狼の牙がパウラを襲う!




