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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅰ

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挑発作戦

 お互いの距離は約一キロメートル、ルカに動きはない。

 待ち構えてるようで、光太郎は探りを入れることにした。

「気を取り直していくか、まずは三機突っ込ませてくれ。正面と左右から同時攻撃」

「了解」

 セイレーン――人面鳥の無人機が、もりでルカに襲いかかる。

 ルカは片手で三叉戟を握ったまま、両腕を広げた。

 迎撃する様子は見られず、攻撃が当たるかに見えた。

「ふふん」

 ルカが鼻で笑うと、セイレーンの動きが直前で止まる。

 何が起きたか分からなかったので、光太郎はスマートグラスを使い確認した。

 双眼鏡モードで見れば、セイレーンはかすかに動いてはいた。

 必死にルカを攻撃しようとするが、見えない何かに拘束されているようだった。

「時間停止! ……なわけないか、これは空間圧力だな」

「うむ」


「これが、あたしの王の力『水女神アナーヒター鳥籠ケージ』!」

 深い海の中へ潜ると、水圧で身動きが取れなくなるのと同じ。

 ルカは敵の周りにある気体の水を操り、圧力をかけて動きを止めていた。

 見えない檻に閉じ込められたセイレーンは、一歩も進めない。

「えい!」

 三叉戟を軽く一振りして、セイレーン三機を同時に倒す。

 動けぬマネキンを叩くようなもので、雑作もない。

 初撃を防いでルカは気をよくし、観客に手を振っていた。

 隙だらけに見えても隙はなく、絶対防御は破れそうもなかった。


「なるほどね、こちらの攻撃は全て止められる。自信たっぷりで余裕があるわけだ。無人機が千機あっても、勝てそうにないな……」

「どうする光太郎? 何か策はあるのか?」

「一応ね。でも、このままじゃー僕の作戦は使えない。だから……」

 光太郎はエクリプスに作戦を話す。

「うーむ……心情的には賛成できんが、本当にやるのか? 後々、問題になりそうだが……」

「いいんだよ! どうせ悪者あつかいされてるんだから、悪名を重ねてもかまわない!」

(むくれてるな光太郎。これだけ悪役に仕立て上げられては、腹も立つか)

「よし! やるとしよう。ついでにスピーカーから派手に鳴らそう」

「頼む」


「おーっと! 挑戦者なにやら始めたようです」

 縦横に整列したセイレーンが光太郎の前に集まりだした。

 ごちゃごちゃと動き回り、絡み合って空中で静止する。

 全機の動きが止まった時、皆が理解する。光太郎は人文字を作ったのだ。


 ペ チ ャ パ イ


 それだけではなく、セイレーン達は作った人文字を読み上げていく。

 最大ボリュームで、オペラ歌手のようにビブラートをかけ、言葉はより強調された。

 歌声ならぬ、ルカの悪口は全土に轟く。

「なっ!」

 ルカは何をされたか、しばらく理解できなかった。

 自分の悪口を正面から堂々と言われるとは、思っても見なかったからだ。

 それも、ルカが一番気にしている胸のことだ。

 光太郎は禁句と分かってやっている。人文字はさらに変化した。


 無 い 乳

 貧 乳

 七〇 センチ

 せんたく板 ……も・と・い


 えぐれ~ まな板~♪


 最後の一言は決定的だった。観客達は非難するよりも、声を失い青ざめる。

「……あー、あいつ死んだな」

「御愁傷様」

「彼の魂に安らぎあれ……」

 口々に祈り言葉を唱えている。

「……これは、彼の御冥福をお祈りいたしましょう」

(なかなかやってくれるな彼奴あいつ。あとで香典くらいはだしてやろう。くっくくく)

 トムはニコニコと笑っていた。


 ルカはワナワナと震え、怒りが頂点を超える。

「ふっふふふふ……ヌッコロス! オルフェ!」

「はい、はい、行きますよー」

(これは止めても無駄ね、見事に釣られたわ。あのやるわね)

 怒髪どはつ天をく。

 ルカは何も考えずに、光太郎へめがけて進む。

 もはや三叉戟を突き刺すことしか頭にない。


「全軍トンネル陣型を展開! 銛を連続投擲とうてき!」

 光太郎指揮の下、セイレーンは人文字から陣形に変わる。

 ルカの進行方向にそって、半筒状の形で囲む。まさにトンネルだ。

 前を塞ぐ壁をつくるようなことはせず、上空から銛の雨を降らせた。

「ちぃ!」

 ルカは王の力で防ぐしかなかった。何せ一本でも当たればその時点で負けだ。

 ハリネズミのように成りながら、オルフェーヴルは少しずつ前へと進む。

 銛がつきると、光太郎は次の指示を出す。


「かごめかごめの陣。時計・反時計まわり!」

 上下に分かれ二列になったセイレーン達が、ルカを中心にグルグルと回り出す。

 ルカから見れば、目が回るような動きだ。

 動体視力が良いのが反って仇となり、目が勝手に追いかけてしまう。

 しかも王の力が、及ぶ範囲には入ってこない。かごの中の鳥にされたのはルカだった。

不規則攻撃ランダムアタック! うしろの正面だぁれ?」

 セイレーン達は足爪でルカに攻撃する。

 一気には攻めこまず二体から三体が、ルカの死角を突いて同時に襲う。

 どこからくるか分からない攻撃に、ルカはいらつく。

「あーもう! むかつくわね! 正々堂々きなさいよ!」

「それじゃー僕が負けるんですけどー……スポーツじゃないって言ってたのに、我が儘だよなー」

 ルカの理不尽さに、光太郎は呆れる。


 ルカは三叉戟トライデントをフル回転させ、なんとか身を守る。

 一時たりとも気は抜けない。

 王の力で防ぐにしても、意識を向けて集中する時間が必要だった。

 間断なく攻められては、使うタイミングが難しい。

 力を維持できるのは数分、意識が途切れた隙を突かれれば負けだ。

 見かねたオルフェーヴルが助言する。

「ここは海に潜りなさい、ルカ」

「いやよ、逃げられるわけないでしょ! みんな見てるのよ!」

 正面から打ち破ると言った手前、ルカは退くわけには行かなかった。

「負けたら余計に恥よ」

(また意地を張って……ああ、もう向こうの思うつぼにはまっているのね。容赦なく攻めてくるし、なんて恐ろしい男)


「こうなったら!」 

「ルカ! やめな……!」

 オルフェーヴルは止められなかった。

全力開放フルパワー!」

 ルカが叫ぶと、全てのセイレーンの動きが止まった。

 王の力(クラウンパワー)を全開にし、鳥籠の範囲を広げたのだ。

 ルカは止まったセイレーン達を素早く壊し、残るは光太郎だけとなった。


「ぜーぜー………」

「ほら、無理するからそうなるのよ」

「う、うる……さい……わね」

 ルカは肩で息をして、疲労困憊におちいる。

 無茶な力の使い方は、体に負担をかけたが、周りに無人機はいなくなる。

 光太郎は逃げもせずその場に留まり、じっとルカを見ていた。

「これで終わりよ!」

 少し回復したルカは、武器を向けて突っ込む。

 光太郎は右手を、下から上へと振る。すると、海中から何かが飛び出た!

「アプサラス!」

 人魚型の無人機二体が、ルカの目の前に現れ左右に分かれる。

 一瞬気をとられたルカに、漁網ぎょもうが被せられた。

 アプサラスは反対方向へ引こうとしたが、あっさり破壊される。


「こんなもので、あたしを止められるわけないでしょうが――――!」

 ルカは漁網をつけたまま突き進み、光太郎は目の前。

 三叉戟トライデントを突きつけて言った。

「あたしの勝ちね、降参しな……って、あんた何やってんのよ!」

 光太郎はビーチパラソルを取り出し、前に広げた。

「いや、汚れるからね」

「ルカの負けよ」

「あんたら、なにを言って――!?」

 ドカン! ドカン! と連続で爆発音がする。

 ルカの周りで爆発が起き、あちこちに染料が飛び散った。

 色粉カラーパウダーを全身に浴びて、ルカは粉だらけになる。

 顔は赤・青・黄色の三色に染められた。信号機のようである。


 光太郎は漁網に、カラーボール爆弾を仕掛けていたのだ。

 潮風で色粉がビーチへ広がり、観客達も騒ぎ出して逃げ出す。

 もはや勝負どころではなくなり、うやむやの内に対決は終わった。

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