表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅰ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/432

パシフィス王国へ

 空は快晴、絶好の旅日たびびより。

 サイドカーは道路をひた走る。美しい森林を眺めながら、風を受けるのは心地よかった。

 後ろを振り返れば、首都ヒラニプラが小さく見える。

 少し物悲しくもあるが、訪ねる国での期待と不安もふくらむ。

 知らない場所へ行くのは、楽しい冒険なのだ。


 光太郎はバイクの上で、A3サイズの電子ペーパーを広げた。

 裸眼立体画像ステレオグラムの地図で、浮かび上がって見える。

 アヴァロン星の全体図が表示され、高低差も分かる。スマートグラスよりも見やすい。

 

 今いるのがレムリア大陸で、これは東に位置している。

 南にはパシフィス大陸、西にはメガラニカ大陸、北にムー大陸。

 その中央に、アトランティス大陸があった。

 地続きになっているのはパシフィス大陸とアトランティス大陸だけで、あとは大洋に囲まれていた。

 アヴァロン星の自転・公転速度は地球とほぼ同じ。

 異なる点は地球より星はやや大きく、陸地と海洋の面積の比は四対六で、陸地が多いことだった。


 エクリプスが目的地を聞く。

「光太郎、最初はどこの国へ行くんだ?」

「パシフィス王国だよ」

「アトランティスじゃないのか?」

「うん、実はね……」 

 ルカからの招待状は来てはいない。ただ、輝夜の招待状に、

「我が国にお越しいただく前に、パシフィス王国に是非お立ち寄りください」

 と書いてあった。

「まあ、何かあるんだろうね」

「行ってみればわかるか、では行くとしよう」

 エクリプスはサイドカーを、飛行モードに切り替えた。

 左右から翼が出てデルタ(Δ)翼になり、先端も円錐形に変わる。

 バイクは戦闘機のような形になった。

 そのまま空中に浮き、スラスターを噴かして空を飛ぶ。

 速度は音速を超えるが、バイクも重力制御されてるので、光太郎に影響はない。

 

「……ねみゅい。着いたら起こして……」

「了解」

 光太郎は様々なことで疲れ切っており、眠くなる。シートを後ろに倒して寝転んだ。

 前日は準備と興奮で寝付けなかった。

 製作も終わり、ここに来てようやく気が抜け安心する。

 この旅は、リフレッシュ休暇でもあった。

 女性達に囲まれる生活は、楽しくもあるが毎日だと疲れる。

 光太郎は一人の時間を欲していた。


「もうそろそろ着くぞ、光太郎」

「……うーん。むにゃむにゃ……ふわぁー早いね。おっ! カモメだ」

 数羽のカモメが、光太郎の前を飛んでいた。

 海面をくちばしで突っつきながら、エサを取っている。

 近くでは漁船が、漁をしていた。ただ人は乗っていない。

「ロボット漁師か」

「無人機ヒルコだ。パシフィス王国は漁業国だからな」

「レムリアじゃ農作業をケンタウルがやってたしね。どこの国も労働力は無人機?」

「うむ、土地が多い割には人口は少ないから、無人機ロボット頼みだ」

「戦争のせいだね。男女の人口比率も女性が多すぎ……どうにか何ないのかなー」

「マゲイアが攻めてくるから仕方ない。戦うだけだ」

「そうなんだけどねー……」

 光太郎はマゲイアとの戦争について、ずっと考えていた。

(お互いに止める気はないのかなー? いつまでいくさを続けるんだろう?)

 答えは出ない。マゲイアの目的が、「侵略」である限り交渉自体が、不可能に思えてくる。

(せめて対話ができれば、糸口になると思うんだけどねー)


 速度をおとしながら下降し、遠浅のビーチに着地した。サイドカーに戻る。

 寄せては返す波はおだやか、水は透き通って遠くまで続く。

 白い砂浜が太陽を反射し、ダイヤのごとく煌めいていた。

「レムリアも綺麗だったけど、ここも美しいね。ゴミ一つ無いや」

「人々が自然を大事にしてれば、自然とそうなる」

「駄洒落ですかい、エクリプスさん? 実際その通りだけどね、それよりも……」

「どうした?」

「暑くて敵わんわ! 脱ぐ――――!」

 サイドカーに冷房だけは、付いてなかった。


 パシフィスは赤道付近にあり、平均気温は四十度を超す南国。

 夕方にもなれば海風が涼しいが、昼時では暑さがきつい。

 光太郎は人目も気にせず服を脱ぎ、Tシャツ一枚に半ズボンに着替えた。

 まあ砂浜には光太郎達の他に誰もいないので、問題無し。

「喉も渇いた……うん?」

 積んでいたクーラーボックスから、飲料水を取り出してると、遠くで何かが動いた。

 光太郎は気になり、スマートグラスをかける。

「双眼鏡モード」

 自動焦点オートフォーカス・自動倍率機能で動く物体を見つけた。

 それでも陽炎が立ち、よくは見えない。それに動く物体は、砂煙をまき散らしていた。

 どんどん近づいてきて、ようやく人だと分かる。

「……あれって、パシフィス女王だよな」

「うむ、ルカ女王で間違いない」

 エクリプスはサイドカーの録画ビデオカメラから確認した。


 ルカは何かに追われるように、もの凄い速さで走って来る。

 地鳴りを響かせながら向かってきて、あっという間に光太郎の側を通り過ぎる。

 と、砂に足を滑らせて急停止をかけた。足で巻き上げられた砂は小山になる。

 フリル付きのバンドゥビキニを着たルカは、光太郎に近づいてきて言った。

「追われてるの、助けて!」

「えっ!」

 慌てて光太郎は辺りを見回すが、追っ手の姿はない。

 スマートグラスの機能をフルに使っても見つからない。

 あちこち探してる間に、数分が経過した……。


 し――――ん。


 波の音、風の音、ウミネコの鳴き声はすれど、辺りは静かで人声は聞こえてこない。

 取りあえず光太郎はルカに、飲料ペットボトルを手渡した。

「ありがと……ちっ! 彼奴あいつら遅いわね」

(うーん。何がしたいんだろう?)

 更に時間が過ぎて、ようやく二人の女の子が見えてくる。

 息を切らしヘトヘトになりながら走っていた。

 ビキニの女の子達は目の前までくると、倒れてへたりこんだ。

 炎天下で走ればバテるのは当たり前、一つ間違えれば命に関わる。

 ルカは女王なだけあって暑さも平気だが、特異体質ではない一般人は走るべきではない。

 まあ、二人は命令で仕方なく付き合わされているのだが……。

「はぁ……はぁ……」

「ぜぇ……ぜぇ……」

「はい、お水をどうぞ」

「あ、ありがとう……ございます」

「ゴクゴク」

 二人は渡された水を飲んで生き返る。

 案の定、脱水症になりかけていた。


「ぷはぁ――!」

「それで、追ってきたのはこの人達?」

「そうそう……早くしなさい!」

 ルカは急かし、二人は慌てて立ち上がって言った。

「姫様……じゃなくて、そこの女を渡して貰おう」

「よ、よそ者はくとね……だっけ?」

 二人はカンペを見ていた。

「お願い、たす、けてぇー」

 助けを求めるルカは、完全な棒読み台詞。

(何この三文時代劇……やべえー色々と突っ込みてえー! 笑いがこみ上げる。これ、大まじめにやってるんだよね?……ぷぷぷぷぷ……が、我慢だ)

 光太郎は必死に笑いを堪えていた。

「わ、分かりました。ちょっとお待ちください」

 光太郎はスマートウォッチで通報する。


「あっ! パシフィス自警団ですか? 海辺ビーチに可笑しい人がいるので保護してください」

『ぶはははははは! 姫、可笑しい人だってー! ゴホン……失礼しました。それでは、こちらで対応させていただきます』

 自警団は兵団内の警察機構、受付オペレーターの星騎士は爆笑する。

 茶番であることは理解しているのだ。

「座標を送りました。ではよろしくお願いします」

 光太郎はルカに向き直って言った。

「これでもう安心ですよ。それでは失礼しまーす」

「あ、はい……って、そうじゃなーい!」

 ルカが呼び止める前に、サイドカーは走り去っていた。

 二人の女の子は、頬を赤らめながら手を振り、光太郎を見送る。


「優しい方ですねー」

「ぽ――――」

「あんたらが惚れて、どうすんじゃー! 全然予定と違うわー!」

「すみません姫様!」

 予定では光太郎がルカをかばい、二人が怯んで逃げ去る筋書き(シナリオ )だった。

 いらつきながら、ルカはビデオ通話をする。

「失敗したわよ、どうすんのよ!?」

『そうねえー、次の作戦は……』

 画面に映っていたのは輝夜だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ