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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
エリスと光太郎

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20/432

イザベル来訪

 対決してから三日後。

 アンジェラは光太郎の家で、養生することになった。

 これも喜久子が決めて、光太郎が賛成したのはエリスの時と同じ。

「お世話になります」

「はい」

 二人が笑顔を交わすのを見て、エリスはふくれっ面をする。

 それを見て、アンジェラは鼻で笑う。嫉妬全開なのは見てとれる。

「ふっ」

「姉上なにか?」

「いや、何でもない」


 光太郎は二階の部屋に案内して、ベットに横たわるよう勧めた。

 アンジェラの体調は回復しつつあるが、まだ安静が必要。

「何かあったら、撫子に言ってください。僕が対応します」

「でわ、添い寝してください」

「ぶっ!」

「冗談です。何かあったらお頼みします」

「……はい」

 光太郎はドアを閉めて、階段を降りていく。

(アンジェラさん、半分以上本気だったな……まあいいか。あれからエリスは少し変わって、かなり素直になった。これで一安心……でも挙動不審になってしまった。何でだろ?)

 エリスは光太郎の顔をまともに見なくなり、すぐに目をそらして逃げる。

 けれども、付かず離れず様子をうかがう。会話をすると、どもる。

 エリス自身も理解不能な状況だった。

(光太郎を見てると恥ずかしい、胸が高鳴る……なぜだ? 今までは平気だったのに……)


「エリス」

「うわ――――!」

「すまん、びっくりさせたか?」

「い、いや、私こそ大声を上げてすまない」

 エリスはうつむき、もじもじしていた。

「良かったら、ゲームをしないか? 今度はテレビ二台で、離れて通信対戦」

「う、うん、しよう、しよう。今度こそ私が勝つ」

(なんか調子狂うなー、まあ対戦が終わったらいつも通りに……)


 お互い手も顔も見えない状態で、対戦ゲーム「ヴァルキリー・デュエル」を始めた。

 そして、三十分後。

「なぜだー! なぜ私が負ける!」

 三本勝負のうち一本はエリスがとるので、ボロ負けではない。

 だけど最後には、光太郎が勝ってしまうのが解せなかった。

「光太郎、頼むから教えてくれ。今度は何も見てないんだろ?」

「うん、離れてるから見えない。簡単に言うとエリスの攻めが、ワンパターンなんだよ」

「つまり?」

「遠距離だと飛び道具、中距離だと飛び込み、近距離だと下段連打しかしない。他にもあるけど行動パターンが一定だから、CPU戦と変わらない。だから先読みして、技をだしてた」

「…………」

「上級者だとフェイントを入れたり、かく乱したりと、色々戦法は変えてくるので奥が深い。エリスの場合、ガードが甘いのも……」 

「ずるい、ずるい、ずるい!」

(ほーら、やっぱり切れた) 

 光太郎は、ほくそ笑む。


「!」

 ゴ――と庭の方で、轟音が聞こえた。

 揺れる窓ガラスに慌てて近寄って見れば、漆黒のメタル・ディヴァインが着陸している。

 ちなみにエルコンドルも、家の庭にいた。

「……ルドルフ」

「それって、エリスの叔母さんの……」

 時を置かず、玄関のチャイムが鳴る。

 光太郎は駆け足で向かい、玄関ドアを開けると長身の女性がいた。

「初めまして、イザベル・D・レムリアと申します。お邪魔してよろしいでしょうか?」

「あ、はい、どうぞ」

(この人がイザベルさん。綺麗な人だなー……エリスの家族は美人揃いか)

 光太郎が見惚れたイザベルは、濡れ羽色の長髪をまとめていた。

 エリスと同じ碧眼、赤い唇と抜群のプロポーションは、男を惹きつけるには十分すぎる。

 素肌がのぞく甲冑が、体のラインを際立たせていた。


「どうかしました?」

「すみません、見惚れてました。改めまして、神山光太郎です」

「正直な御方ですね。妹がお世話になってるようで、お礼申し上げます」

「いえいえ、ではアンジェラさんの部屋に御案内します」

(礼儀正しいし、感情で動く人ではないな……あとで聞いてみよう)

「こちらです」

「ありがとう」

「僕はリビングにいますので、お話が終わったら来てください」

「ええ」

 光太郎はリビングに戻ると、紅茶の支度を始める。

「後でアンジェラさんにも持って行こう」

 カップを用意しながら、エリスに声をかける。

 険しい表情のまま、エリスは立ち尽くしていた。胸中は穏やかではない。


「落ち着きなよ」

「大丈夫だ光太郎。もう覚悟は決めている」

 エリスに迷いはなかった。

 イザベルがリビングに入ると、堂々と正面に座り相対する。

「どうぞ」

「ありがとう。良い香りですね」

 光太郎の出した紅茶を、イザベルは優雅に飲んだ。

「何をしにきたのですか、叔母上?」

 口火を切ったのはエリス。

「アンジェラの様子を見に。それと貴女に用があります」

「なんでしょう?」

「女王の座をかけて、決闘を申し込みます」

 リビングの中だけ、時が止まったかのように静かになる。

 それは錯覚、イザベルは話を続けた。


「正直、エリスが生き延びるとは思わなかったわ。こうなると私が直々に倒さないと、王位を継いでも意味がない」

「決着をつけるつもりですね?」

「そうね、場所は古戦場跡。七日後に来なさい、アンジェラも回復するでしょうから」

「一週間後……」

「もし逃げたりしたら……」

 エリスの正面にいたはずのイザベルが消えて、一瞬で光太郎の横に座っていた。

「この子を八つ裂きにしようかしら、うふふ、可愛いわ……どんな悲鳴をあげるのか楽しみ」

 イザベルは光太郎の顔に両手をあて、自分の顔を寄せる。

 互いの口元が、近づく――

「光太郎から離れろ!」

 エリスは立ち上がり、大声を張り上げた。

 あまりの大声にエリス自身も驚く。

(私は一体どうしてしまったんだ? 見てたら頭が沸騰した)


「ふふふ、これは面白いものが見られました。用事は済みましたので、お暇いたしましょう。紅茶、とても美味しかったです」

「では、お見送りします」

 光太郎は脅されたにもかかわらず、平然とイザベルの横を歩く。

 エリスへの当てつけで、挑発だと分かっていたので、恐いとは思わなかった。

 気軽に質問をぶつける。


「イザベルさん、僕の家ごとエリスを潰さなかったのはなぜですか?」

「アンジェラがいたからです。後事こうじは妹に託しました」

「なんだか、死ぬ覚悟のようですね。でも負けるつもりはないんでしょ?」

「戦いに絶対はありません。もっともエリスがこのままなら、私には勝てない」

「だから、七日も猶予をくれたわけですか?」

「それは、せめてもの慈悲……と言いつくろった所で、光太郎さんは見抜いてらっしゃる。アンジェラが負けたのも、納得しましたわ」

「戦う本当の理由を教えてはもらえませんか?」

「今は言えません。もし私に勝てたらお教えしましょう。エリスをよろしくお願いします」

 イザベルは頭を下げて、ルドルフに飛び乗った。

(黒竜……エクリプスやハゲタカより一回り大きいな)

「ルドルフ、帰ります」

「イエス、マイマスター」


 ルドルフが飛び去ったあと、光太郎はエルコンドルに話しかける。

「なあ、イザベルさんって相当強いのか?」

「強いもなにもレムリア王国最強や、相手になったのはエリスの母親くらいやで」

「ルドルフは?」

「鬼に金棒やな、わいかてアレには勝てへん。破滅の閃光(ホワイトブレス)を吐かれたらおしまいや」

「……プラズマビームだったな」

 光太郎はエリスやエクリプスから聞いて、ルドルフの情報を得ていた。

「対抗策……あるかなー」

「無理やろ、倒すのは不可能や」

「まさに倒せないラスボス、無理ゲーかよ」

 光太郎は頭を抱えながら、家の中に戻る。


「……ああ、急ですまんがよろしく頼む」

 エリスはスマホで通話中、いつになく真剣な表情をしている。

 通話が終了すると、エリスは光太郎に向き直って言った。

「光太郎……私はここを出る」

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