無人島にて
外の景色を眺め心が落ちつくと、頭が回り始める。
「……ああ、そう言えば撃たれたんだった。銃口の前にでるなんて、我ながら無茶なことをしたな……」
ただ、後悔はしていない。
あの時は、小玉を止められず暴れてるのを見てるしかなかった。
確かに敵を圧倒していたように見えたが、時間が経つと偵察兵達は何とか立ち上がる。
小玉本来の実力であれば、一撃で倒していただろう。
だが、怒りにまかせて戦ったせいで、仕留めそこねたのだ。
光太郎が「まずい!」と思った矢先に、小玉は偵察兵達によって雁字搦めにされてしまう。
ミウが小玉に拳銃を向けた瞬間、光太郎は咄嗟に飛び出していた。
その後の記憶はない。
「ここ、どう見ても無人島だよな。とすると……さらわれて連れて来られたか……」
光太郎は寝たまま、自分の姿を確認する。
服は脱がされ上半身には、包帯と晒しが巻いてある。
下半身は海パン一丁。
これは元々つけていたもので、着ていたジャージと靴は、側に置いてある。
ミウが手当するのに、服を脱がしていた。
じっとしてれば傷は痛くない。
マゲイアの医療キットも、アヴァロンに劣るものではなく、ナノマシンが傷を治してる最中である。
当然、動けはしない。
「怪我に無人島か……この状態では逃げようもないな。さて、どうしようかな?」
光太郎は冷静になり、知恵を働かせることにする。
どんな状況にもめげないのが、光太郎の強みであり右に出る者はいない。
「腕時計はないか……通信機だからそりゃー捨てるよね。小型スラスターも捨てられたかな?」
周りを探しても、見あたらなかった。
機械の類いは一切持っていない。武器になりそうな物は、取り上げられたと言える。
今のところ打つ手はなく、この状態になったことを反省する。
「僕も甘かったよなー。基地への襲撃はないと思ってたから、ノコノコ外に出たらこの様だ。マゲイアだって、必死だから何でもやる。予測できなかった僕が悪い。小玉には悪いことをしたなー……」
一人で敵に立ち向かわせてしまい、殺されそうになったので申し訳なく思う。
まあ、全員の油断が招いた結果であり、誰か一人が悪いわけではなかった。
失敗を教訓にして、次に生かせばよい。
「今、何時だろう? みんな心配してるだろうなー……」
エリス達に心労をかけているかと思うと、光太郎は心苦しい。
女性達の自分への好意は分かっているが、結論は出ていない。
優柔不断と言われようが、後々のことを考えると誰も選べずにいた。
「……誰を選んでも、納得しないし揉めるよねー、戦争になるかも? そう思うと……こ、怖い」
女王は国のトップで面子もあるから、引けはしない。女としても絶対に譲れない。
光太郎は知らないが、すでに大喧嘩は起きており、戦争勃発は十分ありえーる。
取りあえず恋愛問題は、先送りすることにする……しかなかった。
「うーん、何日経ったんだろう」
「まだ、一日だ」
答えたのはミウ。いつの間にか光太郎の側にいた。
体についた水滴が、ポタポタと滴り落ちている。ミウの歩いてきた場所の、砂が濃い色に変わっていた。
水中ゴーグルとシュノーケルを頭につけており、今まで海中にいたのが分かる。
狩りをしてきたらしく、持っている網製のビクには、魚や貝が大量に入っていた。
「少し待ってろ、今食事を作る」
「うん……あっ! 手当してくれてありがとう」
「礼など不要だ。撃ったのは私だし、お前に死なれたら困るからな」
「でも、助けてくれたのは事実だからね」
「…………」
今は敵だろうと、礼を言わずにはいられなかった。
ミウは黙って調理を始める。
捕った魚の鱗をナイフで落とし、さばいて塩をまぶす。
そして木の枝を削った串に、魚を刺していく。やや雑ではあるが、ミウの手際は良い。
火を焚いて、石で作ったかまどで魚を焼き始める。
煙と香ばしい臭いが一面に漂い、鼻孔をくすぐり光太郎の食欲をかきたてる。
何も食べていなかったので、腹の虫は鳴りっぱなしだ。
つばを飲み込みながら、光太郎はできあがるのを待つ。
ミウは料理を葉っぱの皿にのせて、光太郎の近くに来た。
「無理に動くな、まだ傷は治っていない。私が食わせてやる」
「ありがと」
起き上がろうとしたところを、止められる。実際、動くのはまだキツいので、光太郎は素直に従う。
ミウは焼き魚をナイフで刻み、スプーンにのせて光太郎の口へ運ぶ。
塩味は強いが、臭みもなく味はよい。
「美味い」
何度か口へ運んだあとで、水を手渡された。
ストロー水筒で、光太郎は寝たまま水を飲む。
食べさせてもらい、腹は満ちた。
「ありがとう。もう十分だよ」
光太郎が満腹になったところで、ミウが食事を始める。
食べ方は豪快だ。焼き魚にかじりついて、そのまま骨までバリバリと噛み砕く。
(すげーな!)
光太郎は呆気にとられながら、感心する。品がなくても、残さず食べるのは偉い。
ミウは見られていても気にした風もなく、音を立てて夢中で食べている。
奴隷兵はマナーなど知らない。食事は楽しむものではなく、ただの栄養補給でしかなかった。
ところが、アヴァロン星にきて食料を調達して、食べてみると……
「これは美味い!」
「ですね、准尉!」
「ああ!」
思わず、全員がうなる。
環境が綺麗なアヴァロンにおいて、自然の恵みは豊かであり何でも美味い。
不味い戦闘糧食は食えなくなり、海に破棄される。
代わりに、お魚さんが美味しく頂ました。
偵察隊は情報収集の傍ら、食料集めにも必死になる。
任務より本気で、調理法や調味料についての知識も得た。
ミウは食べる楽しみを知ってしまい、食い物に興味を持つようになる。
「他の物も、食べてみたいな……」
人心地ついたとこで、二人は会話を始める。




