ぼくのかんがえたさいきょうのしょうぎ(僕の考えた最強の将棋)
どうも、山石悠です。
書いてはいたけど、出してなかった話を出します。いつだったかに作った妄想話。
将棋部に入っている作者の妄想を爆発させます。……用語が出て来ることがあるので、知っているといいかもしれないです。
今回は収拾がつかなくなって無理やり終わらせたけど、次があれば、対局させたい。
「諸君ら。今から始まることはわかっているな?」
「……戦」
何やら戦国時代にでも出てきそうな鎧を着た三十代も半ばくらいの男性。彼の兜には『王将』と墨を使った達筆な字で書かれている。よくよく見ると、彼の周りにいる人物たちにも男性のように『歩兵』『香車』『飛車』『角行』などと書かれた兜をかぶっている。
「そうだ。我々、『王将連合』は必ず、彼の邪知暴虐の玉を除かねばならぬのだ!」
「ハッ。あんたに言われなくたって分かってる。俺はさっさと暴れたいんだよ」
何処かの牧人が友人のために走りだしそうなセリフを言う男性に、十八才くらいの少年が乱暴に言い返す。少年は立派な鎧を身にまとっているが、その佇まいは武士というよりも野獣といった様子である。少年のその様子を見て、寡黙そうな同年代の少年が言った。
「……『飛車』よ、安心しろ。奴らを潰す主力はお前だ」
「それはお前だって同じだろ? なあ、『角行』?」
「二人とも。いい加減にしなよ。将が作戦の説明ができないで困ってるよ」
『飛車』と『角行』と呼ばれた少年たちが、兜に『金将』と書かれた二十代半ばの青年に注意された。青年の鎧は使い古されている。しかし、手入れはきっちりとなされており、彼の性格がよく分かる。そして、将と呼ばれた先ほどの男性は全員が鎮まったのを確認し、再び話しだす。
「先ほど『金将』が言っていたように、作戦について説明する。今回は攻めは、『四間飛車』。護りは『美濃囲い』にしようと思う」
「あの~、質問が……」
「なんだね?」
男性が作戦について話すと、兜に『桂馬』と書かれた十歳くらいの少年が手をあげた。それを見て、男性は質問を聞こうとする。
「えっとですね、『四間飛車』とか『美濃囲い』の意味が分からないのですが……」
「ああ、そういうことか。説明をしていなかったな。すまない」
男性は少年の質問に笑顔で返す。そして、すぐに話しだした。
「『四間飛車』とは『飛車』を四間……6八から攻めさせる方法だ。『振り飛車』と呼ばれる『飛車』を動かす攻め方の中でも、攻守のバランスがとれている戦い方だ。そして『美濃囲い』は囲いの一つ。『四間飛車』と一緒に使われることがよくある囲いだ」
「ああ、そうなんですか」
「そうだそうだ。お前みたいなガキは関係ない戦い方だ。お前はおとなしくしてればいいんだよ」
男性の説明で納得した少年に、『飛車』と呼ばれている少年が馬鹿にしたように言った。それを見て『桂馬』の少年の横にいた二人の少女が言い返した。
「おにーちゃんはすごいもん! あんたみたいな特攻バカとは違うの!」
「そうだよ! おにーちゃんは強いんだよ!」
「ハッ、何言ってやがるガキども! ふざけてると……殺すぞ」
『香車』と書かれた兜をかぶった双子の姉妹が、『桂馬』の少年をかばうように言い返す。そんな二人にキレたのか、『飛車』の少年はどすの利いた声で二人を脅す。その効果はばっちりのようで、二人は怯えてしまった。それを見て『桂馬』の少年が『香車』の少女たちをかばうように前にでる。
「やめてあげてください! 二人も言いすぎたかもしれませんが、悪気はなかったんです! 僕が謝るから許してあげてください! すいませんでした!」
「……やめろ。俺が悪いみたいじゃねえか」
『桂馬』の少年の謝罪は周りの賛同を得る。『飛車』は周りから来る視線に嫌な気分になりつつ、謝罪を受け入れる。それを聞いて『桂馬』の少年は安堵し、『香車』の少女たちは恋してます! という目で『桂馬』の少年を見る……いや、飛びつく。
「おにーちゃん! ありがとう!」
「ありがとー!」
「うわっ! ちょっと、二人とも……」
「だって、嬉しいんだもん!」
「そうだよー! おにーちゃん、頑張ってくれたもん!」
「そ、それは……二人が大切だからだよ。二人が傷ついたら、僕が悲しいから」
「「……////」」
「……どうしたの?」
『香車』の少女達のお礼を聞いて、『桂馬』の少年はさらりと恥ずかしいセリフを言う。そのおかげで、少女達の中での少年の好感度はまた上がったが、少年はそのことに一切気がつかない。そんな三人を見て、ため息をつく者とキレる者がいた。
「お、お前! 何、ラブコメってんだよ! 十歳のガキが盛ってんじゃねえ!」
「「「そうだそうだ!!」」」
「え? ラブコメってる?」
「そうだよ! 自覚なしか!? どこの鈍感系主人公だよ!」
「「「羨ましいんだよ!!」」」
「え、ええ!?」
『歩兵』と書かれた兜をかぶった十六くらいの少年たちがキレ出す。原因はとっても簡単。嫉妬である。そんな少年達の前に、恥ずかしいセリフを言った『桂馬』の少年と同い年くらいの、こちらも『桂馬』と書かれた少年が出てくる。知的な雰囲気を出しながら彼は歩兵たちに向かって話しかける。
「年上のお兄さんが、年下の少年をいじめて楽しいですか? もしも楽しいのなら、いっぺん死になさい。……ああ、馬鹿は死んでも治らないので、そんなことしても無駄ですね。それで、楽しくないのならさっさと止めることをお勧めします。理由? 分からないのですか? 男の嫉妬など見苦しいからに決まっています。そもそもそんなことしたら、女の子の好感度が下がると分からないのですか? だからその年でも未だに“彼女無い歴=年齢”なんですよ。大体ですね“リア充爆発しろ”とか言ってる時点で…………」
少年の話はマシンガンのごとく続く。『桂馬』の少年の話が進むごとに『歩兵』の少年たちの精神にダメージを受ける。そんな事もお構いなしに話は進む。ダメージを受けている中の一人が心の中でつぶやく。
止めて! 僕らのライフはもうゼロよ!
十分後。『歩兵』の少年たちはあまりのダメージに発狂。出血の無い阿鼻叫喚図になった。もう誰も、このカオスな状況に口を出さない。『王将』の男性や『金将』の優しそうなお兄さん風な人物と“熱血”の二文字を鎧に書いた青年。他には『銀将』の知的な女性と包み込んでくれそうな優しそうな女性。この五人はカオスナ状況を無視し、作戦をよりしっかりとした物にするべく、話し合いを進めている。
「ここはこうすれば……」
「こう来たら、こうやってこうすればいいのでは?」
「いや、それよりもこっちがいいと思うよ」
「なるほど。その手がありましたか」
五人が話している時、『飛車』と『角行』の二人の少年はお互いの武器を持っていた。『飛車』は太刀。『角行』は槍だ。
「おい、始めるぞ!」
「……もちろんだ。いつでも来い」
「いい返事だな。なら…………さっさと始めるぞ!!」
その声を合図に訓練を始める。先攻は『飛車』で、まっすぐ『角行』に突っ込む。『角行』はそれを斜め前に動いてよける。そして、振り向きながら通り過ぎる『飛車』に槍を振り下ろす。
「ハッ!」
「だあああ!!!!」
いつものような小さい声ではなく、大きな声で叫んだ『角行』の攻撃は無理やり体をひねった『飛車』の防御に阻まれたからだ。両者はいったん武器をひいて下がる。ここまではいつもと同じだ。
「……初撃は無理か」
「当り前だ。そんなに早く負けてたまるか」
互いに言葉を交わす。だが、もう言葉など要らないのだ。両者は猛攻を始める。走り出した両者は互いに殴る、蹴る、そして武器をを振る、突く。それは、舞踊のようにも見えた。
「ハッ!」
「おりゃああ!!!!」
声をあげて武器を振る。『飛車』の振り下ろした太刀を滑るようによける『角行』。『角行』の突きをたたき落として切りかかる『飛車』。お互いの個性が出るようなその戦いは見る者もいないまま続いた。
いきなりだが、話を変え、一つ質問しよう。一方で作戦について語っているわけでもなく、かといって試合をしているわけでもない『香車』達と『桂馬』達は何をしているのか?
答え、四人のうち、一人は傍観しており、他の三人はラブコメっていた。
「おにーちゃん!」
「な、何?」
「大好き!!」
「私も~!」
「そ、そう言うことは冗談で言ったらだめだよ」
冗談ではないのだが、冗談と取るこの鈍感『桂馬』を見て、周りはため息をつく。そして、みんなが心の中でこうツッコミを入れる。
「なんで、好意に気がつかないんだよ!!」
こんな感じでグダグダやっていると、遠くからブォォォォォ、という笛の音が聞こえてくる。これは、戦いが始まる合図だ。先ほどまでカオスな状況を作っていた二十人の戦人達は、先ほどとは全然違う目をしていた。
「諸君!! これから始まるのは戦だ。決して、遊びなどではない!! 命を持捨てる覚悟の無い者は、即刻この場から立ち去れ!!」
『王将』がそう言ったが、誰もその場を動くことは無かった。つまり、全員が殺し、殺される覚悟を持っているということだ。『王将』はそれを見て、満足そうにうなずくと声を張り上げた。
「我と志を共にする武士達よ!! 我を守護し、仇を討ちとるその時まで、その魂に燃える闘志は消えることのないものと信じている!! 此の戦、勝利を手にするのは……」
『王将』はそこまで言って、いったん切る。そして、全員を見回して、言葉の続きを話し出す。
「勝利を手にするのは…………我々だ!! 我が軍に、栄光と勝利を!!」
ブォォォォォ、という笛の音が、再びなった。
――――戦が、始まる。
どうでした? 最後は無理やりな終わりだったな、という自覚はあります。どうしたいいのか分からなかったので、そのまま出してしまいましたが。
将棋。と聞くと、難しそう、とかつまらなそう、とよく言われます。しかし、将棋は電子ゲームにはない楽しさが詰まっています。
この話は、将棋好きの人を不愉快にさせる可能性があるかもなと思っています。でも、将棋に消極的な人が「萌えて覚える」的ななじみやすさ、みたいなものを感じていただけたらいいなと思います。
……気が向いたら、チェス・オセロ・囲碁なども擬人化させてみたいです。後、トランプも。
それでは。
See you later!