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桃太郎  作者: 小麦
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マリの作戦

 大丈夫かよ、という陽太の質問を無視して、今度はマリが桃太郎に質問する。

「あなたは……とりあえず桃太郎ってことでいいのよね? 何か用意してほしいものとかあるかしら? あたしが頑張って用意するわよ」

「おお、さすがお姉さん話が分かるぜ! そこの兄ちゃんとは雲泥の差だな!」

(こいつホントにガキかよ……。語彙力おかしいだろ……)

 陽太は鬱になりかけるが、桃太郎はそんな彼の様子など気にもしていない様子で、マリにこう頼んだ。

「じゃあ、とりあえずきびだんごを……そうだな、百くらい用意してくれないか? 俺は今から家来を探しに行かなきゃいけないんだ」

(ひゃ、百!? ちょっと予想外だけど、まあ計算通りってとこかしら)

 マリは途端に何かを含んだような笑顔を一瞬浮かべ、

「じゃあ~、代わりにお姉さんの頼みを一つ聞いてくれないかなぁ?」

 桃太郎に聞く。陽太はマリの口調の変化で彼女が何をしようとしているのかを悟った。

(マリのやつ、俺に普段よくやるおねだり声になりやがった……。俺もよくこれにやられるんだよなぁ……。しかしガキ相手とは何て大人げない……)

「お、おう、一体何だ?」

 とはいえ、マリの作戦は実際成功といっていいだろう。事実、今までとは態度が一変し、すごくドキドキした様子の桃太郎。お金がすべてとか言ってたさっきまでの強気な態度はどこ行ったんだよ、と陽太は心の中でツッコミを入れる。そもそも、一応体は子供なのに反応が明らかに高校生並みなのは、ものすごく違和感を感じるところであった。

「あのさぁ、さっき財宝がどうこうって言ってたじゃな~い? それ、あたしたちにも少しでいいから譲ってほしいな~っていうことなんだけどぉ、どうかな?」

 大人の色気をたっぷりとまとい、マリは桃太郎にそうアタックしてみる。この話し方はいわば彼女の武器とも呼べるものであり、これで幾度となくライバルの男性会社員をセクハラという名の冤罪で辞職へと追い込んでいるほどだ。そして、それは思考が進みすぎている桃太郎には当然効果抜群であった。

「お、おう、任せとけ! お姉さんのために俺が一肌脱いでやるぜ! 必ず俺がひとつなぎの大秘宝を手に入れてお姉さんに貢がせてもらおうぞ!」

「おい口調がおかしいぞてめぇ! そして大人気漫画から堂々とパクるな! そんな壮大な物語にはならん! っていうかお前どうして今流行りのものが分かってるんだよ!」

堪らず大声で突っ込む陽太。

「えっ、いや、そんなことないぜぇ~」

「てめぇやっぱりテレビ中毒者だろ!!」

さらにネタを混ぜてくる桃太郎。しかし、

「いや、俺が元々入ってた桃が結構熟れてたのが原因だよ。あの桃、腐りはしないけどいろいろな情報を取り込むとどんどん熟してくるんだよ。でも、買う人がいないとはいえ、あの場で俺が桃をかち割る訳にもいかなくて、買ってくれる人をずっと待ってて今に至るって訳だ」

意外と真面目な理由が存在したらしい。

「なるほど、だからお前は子供のくせにそんなに訳の分からない情報量を兼ね備えてる訳か……」

「まあ、そういうことだ。でも、子供のくせに、って言う偏見はあんまりよくないと思うぞ? 今の子供は下手したらよっぽど大人より本質を突いた質問をしてきたりするんだからな」

「お前はホントに何歳なんだよ!」

 大人すぎる子供は気持ち悪がられる、という話は聞いたことがあったが、それを身を持って実感した陽太だった。

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