その桃から生まれた子の名は……。
「それが本音か! っていうか何かいろいろはしょってるぞそれ……」
「そりゃあ、世の中愛が大事とか理想論を並べる人間はいっぱいいるだろうさ。でも、結局何をするにも大事なのは金だろ金? 指輪だってウエディングドレスだって、それこそバカにならない値段になるんだから」
しかし、いろいろ大人の事情を知りすぎていて逆に怖い。陽太のツッコミもあまり意味がないような感じだ。陽太は考えのぶっ飛びすぎている桃太郎と言い張る幼児の方をじっと見て深いため息をつき、
「……そもそもお前は誰なんだよ?」
根本的な疑問点を聞いてみる。しかし、
「えっ、いやいやここまで言って分からないのかよ? 桃太郎だよ桃太郎」
「いや、でも桃太郎ってもっと可愛げがあってそもそも生まれた時って話せねーんじゃ……」
「そういうどうでもいいとこはいいんだよ!」
「いやいや結構重要だから!」
もはや陽太のツッコミはマシンガン並みのスピードに進化していた。すると桃太郎ははぁ、とため息をついてこう言った。
「じゃあ言わせてもらうけど、ここまではっきりした使命を持って生まれてきてる上に、桃から生まれたんだぞ? 俺が桃太郎じゃなかったら一体誰を桃太郎って呼ぶんだよ?」
「えっと、幼児?」
「マリ、こんなところでボケなくていい、ややこしくなる……」
陽太はマリにそう言うと、今度は桃太郎の方を向く。
「でも、お前が桃太郎だとしても何かなぁ……」
否定の仕様がない理由を突き付けられたものの、どうも納得がいかない陽太。すると、今度はマリが陽太の脇腹をつついた。そのままマリは小声で提案する。
(ここはこの桃太郎って言い張ってる子供の言うことを聞いてあげてもいいんじゃない?)
(聞いてやったところで、俺たちに何のメリットがあるよ? 昔話の通りにいったら、こいつにきびだんごやったら俺たちはもう必要ない存在だぞ? まして俺たちはこいつを育てた訳でも何でもないし……)
(まあまあ、それならあたしにいい考えがあるわ)




