桃太郎の鬼退治③ 陽太を救うのは誰?
「大丈夫だよ。お前さえいなくなれば、俺はそこのお姉さんとのあんなことやこんなことが可能なのだ♪ だからなーんにも問題なんかねーのさ!」
「ちくしょうそれがてめーの言う宝か!」
しかし、全身傷だらけになってきた陽太はそのツッコミをする頃にはすでに意識が朦朧としてきていた。もうおそらく体中が切り傷だらけになっていることだろう。服はボロボロで、とても服と呼べるような状態ではなくなっていた。確かに桃太郎は最初からそんなことを言っていたような気もするが、まさかここまで攻撃されるとは思っていなかった。
(大きな桃なんて、買うべきもんじゃねーなぁ……)
そんな見当違いの感想を抱いたまま、陽太の意識は落ちようとしていた。ところが、その直前、体をつつかれるような感覚は突如として消えていた。
「どう……なってるんだ?」
陽太が床を見ると、先ほどまで陽太をつついていた鳥たちが皆床に落ちていた。
「……どういうことだよクロ?」
「お前がその名前で呼ぶなよ桃太郎。それを呼んでいいのは俺の飼い主のこの二人だけだ」
どうやらクロが陽太の周りにいた鳥を全員撃ち落としたらしい。
「クロ、お前……」
陽太がクロを見る。
「まあ、勝手に出て行っておいてなんだけど、俺はお前たちのことが嫌いで出てったんじゃなくて、刺激を求めて出てっただけだ。恩もあるし、恨みなんて全くねーからな。むしろお前たちがやられてるのは見たくねーし、全力で助けたい」
「そういやお前、最初にあった時もスリルを求めて、とか言ってたな……」
桃太郎は思い出すように言った。元々彼は飼われるという立場に甘んじるのが好きではなかったから家を出てっただけで、別にこの二人のことはむしろ好きなのだろう。
「だったら、まずはやられた家来の分まで、俺がお前を倒せばいいだけのことだ!」
桃太郎は黒猫を捕まえようと飛び掛かる。しかし、黒猫はしなやかな動作でそれを避けると、桃太郎の眼前に対峙する。
「お前が鬼を退治することでハッピーエンドを迎えられるって思ってるんだったら……」
そこでいったん区切ったクロは、こう言い放った。
「まずはお前のその幻想をぶち壊す!」
『お前はどこの幻想殺し(イマジンブレイカー)だよ!』
桃太郎、陽太が同時にツッコむ。どうもこの黒猫、出て行っている間に厨二属性を身に着けてしまったらしい。




