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桃太郎  作者: 小麦
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熟れた桃から生まれし者

むかしむかしあるところに、のくだりで始まる昔話は有名です。

しかし、これはちょっと変わった現代の物語……。

「……なあマリ、お前こんな状況に直面したことあるか?」

「ある訳ないでしょ。逆に体験したことある人がいるならお目にかかりたいくらいよ」

 陽太とマリ、恋人同士の二人はある二階建てのアパートの一階の一室で頭を抱えていた。デートの途中にたまたま青果店で見つけた人の上半身くらいの大きな熟れた桃。二人は桃が好きだったので大喜びで購入、急いで家まで持ち帰ったのだ。そしていざ食べようと桃に包丁を入れると、少し刺さったところでいきなりパカッと割れてしまったのだ。びっくりした二人が中を確認すると、そこにいたのは後ろ髪をゴムのようなもので縛った三歳くらいの裸の小さな子供だった。しかも、その子供のせいで中身の桃はほとんど食べる部分がなく、結局普通の桃一~二個分しかなかった。結局その桃を食べ終えた後に、座布団に寝かせておいた子供に毛布をかぶせ、どうするか二人で考え始めた、という訳である。

「いっそのことそこら辺に捨ててくるっつーのはどうだ?」

「いや、そんなことしたら保護責任者遺棄罪であたしたち二人ともブタ箱行きよ?」

「ブ、ブタ箱ってお前な……」

あまりに過激なマリの発言に陽太が思わず一歩引き気味になる。

「それによ、もしそれで捕まったとして、『この子は桃から生まれたんです!』なんて言ったとするじゃない? でも、そんな現実離れしたこと、信じてくれる人なんていると思う?」

「だよなぁ……」

 二人はテーブルに向かい合いながら再び考え込む。

「っていうか、割れた桃にそのまま戻しちゃえばよかったんじゃない? そしたら普通にお隣さんとかにも譲れたでしょ?」

「いや、それはそれで問題だろ……。っていうか、人が入ってた桃を普通に食っちまった俺たちって一体どうなんだろうな……?」

 今度は自己嫌悪に陥る二人。割れてしまった熟れた桃をもらう人などはたしているのか? という問題には全く頭が回っていなかった。とその時、子供を寝かせた座布団の方から、

「ふあぁ……」

という声が聞こえてきた。どうやら目を覚ましたらしい。

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