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1日目 初遭遇はつづく

 森を往く雷太は背中に新しい武器を背負っていた。


 それは白い鈍色に輝く巨大な剣、あの巨大な鋼ダンゴムシの脚の一部を削りだして作ったものだ。


 すこしばかりギミックがきいていて構造的に脆いとはいえ、宇宙に開発進出を果たした技術に裏打ちされた強力な武器を弾いた強靭な素材である。もし可能ならばこの場で利用しない手はないと試行錯誤の末、全部で5本しかないグラインダーの刃を2つ潰して削りだし磨き上げた、立派な武器だ。


 雷太は剣術を得意とはしていないため、取り回しを考えあまり大きくしないつもりだったのだが、素材があまりに大きかったため、素材を活かすべきだろうと一人で悪乗りした雷太は脚の一本を丸ごと利用するつもりで分解、加工した。結果できあがったのは刃渡り120センチ、幅8センチ、厚さ2センチもある諸刃の剣。柄の部分まですべて一本の脚から削りだしているため強度は計り知れない。強度、大きさから見て重くなるかと思ったが意外とそうでもなく、は50キログラムほどとスーツで膂力がサポートされている雷太にとっては無理なく振り回せる程度に収まった。


 この一本の剣を得るために、補充の目処が立っていないグラインダーの刃を二つも潰した事は、痛いといえば痛い代償だ。なにせ雷太が地球から持ち込んだ機材・物資は地球の七日間に少し余裕を持たせた170時間を目安にしている。にもかかわらず、予定のおよそ倍、地球時間で換算し13日間も滞在しなければならなくなった。


「くふふ」


 リスクを承知の上で雷太が上機嫌なのは、単に雷太が趣味の人であるからだけではない。削った際に出た鋼屑を分析にかけたところ、これはデータベースにない完全に新しい金属であることがわかった。巨大ダンゴムシの本体も解体してじっくり調べた結果、さらなる未知の粒子を引き寄せる性質を持つ謎の結晶体も発見できた。グラインダー二つ分を差し引いても有り余るだけの新発見をあの巨大ダンゴムシはもたらしてくれたわけだ。


 とりあえず、あの巨大ダンゴムシをメタルアーミドー、この新金属をアルマディウム、できあがった剣をアルマブレード、発見した謎の結晶体はメタルアーミドーコアとそれぞれ仮称する事にした。


 解体した成果はコアだけではない。巨大ダンゴムシことメタルアーミドーはしっかりと生物として必要な器官をそろえており、腹甲の方が節目が多く弱点になりやすい点も地球の小さなダンゴムシと同じだった。さらに巨体を動かすために大量の体液が必要である事もわかった。ビームで焼き切るのではなく、初めから鋭利な刃物で傷を入れていればもっと早い段階で失血死に近い状態に追いやれたのではないか、という推測ができる。


 ようするに、次に同じ種類の原生生物と出会ってももっと上手く立ち回れる、という事だ。


 こうして、今まで得たサンプルや情報を整理しつつ雷太は当初の目的どおり登山を開始していた。


 まだ森林限界は見えないが少しず上り坂になってきたし、心なしか針葉樹も増えた木がする。ポイントゼロ周辺の植生を見てだいたいの傾向は見えていたが、植物の進化についてはどうやら地球とそう変わりないようだ。


「そもそも進化という働きのそれがそういう傾向にあるしな」


 本人にだけしかわからない納得がつい雷太の口からこぼれた。ところがその幻想をあっさりとブチ壊す現象が頭上で起きて雷太に襲い掛かる。


「うおっ!」


 急に一本の木の枝が動いて雷太の頭を叩いたのだ。とっさに背中のアルマブレードを抜いて枝を払う。不得手なためか太刀筋が立たず重みと勢いでバキリと折るような形になったが、あっさりとそれは折れて地面に落ちる。ところが異変はそれで終わらない。


「なんだ……」


 地球では植物がひとりでに動く事などありえない。手持ちのセンサー類を無効にするような何が潜んでいて、雷太が真下を通ったタイミングを見計らって枝を利用して攻撃してきたのかと思ったが、どうにも様子がおかしい。どれだけ注意を凝らして周囲を警戒してもそれらしき陰は見当たらない。センサーを自動検知モードから網膜投影モードへ換えようとしたその時、


「むっ!」


 すぐ足元から音がして雷太は反射的に飛びのく。すると、なんと払い落とした枝がまるでトカゲの尻尾のようにのたくっている。


「なんとっ!?」


 こっちでも植物は植物だなあなどとしみじみ思っていた矢先の出来事である。思考はうっかり停止してしまうが身体は反射的に動いた。構えていたアルマブレードを叩きつける。今回はうっかり太刀筋が上手く立って地面深くまでスパーンと食い込む勢いで両断した。しかし枝はまだ動いている。


「な、なにがっ!」


 両断してもうねうねと動いているだけでそれ以上の反応はない。さしあたっての脅威がこのうねうね動く枝にないとわかって次第に冷静さを取り戻した雷太は、まさにトカゲの尻尾のようだと思う。そこでハッとなった。


「まさかっ!」


 振り返ると、いままでそこに根を下ろしていた樹が一本、そっと椅子から立ち上がるように地面から根を引き抜き、そーっとそーっと音を発てないように逃げ出そうとしているところを目撃してしまった。


 こんどこそ雷太の思考が停止する。身体もとっさには動かない。じっと眺めているうちにその木は見られている事に気付いたようにビクッと全体を震わせ、そしてお互いに止まる。


 しばらくお見合いが続く。


 そのうち樹木の方がどこかにタイミングを見つけたらしく植物らしからぬ素早い動きで駆けて行った。


「うわあ……異世界なめてたわ……」


 雷太はしみじみと呟いた。



 地球帰還可能時刻まで、約300時間。


一つの話をだいたいこのくらいの量でやっていこうとおもっとります

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