しょのよん 夕方からよるにかけて・・・そして家屋の全壊
今回はいつもより面白いと思います。
魔界と人間界をつないでいる場所は極力少ない。
これは別に魔界側が人間達に知られたくないからではなく、扉を作るのがかなり面倒であり、時間と経費(魔続側も色々事情と言うやつがあるのだ。)がかかるので扉を作ったりは滅多に無い。天界側も同じ事であり、特に彼らは何故だが白がある所からしか行かないようにしているらしく、天界側の扉は白いものが多い。
賢治が先に歩きながら学校の校門を軽く飛び越して薄暗い校舎の前にある校庭に降り立つ。そして後からついてきていた時雨に促す。
「ほら、早く飛び越してきたまえ。」
これに対して不承不承ながら頷き学校に不法侵入する。彼はこんな学校に喫茶店なんかあるのかどうかかなり疑わしくも賢治の後についてきたのであった。
「それじゃ、行こうか。」
賢治は走り出して既に夕闇となった校庭をさっさと先に走っていく。
「あ、ちょっと待ってよ賢治。」
時雨はその後を追いかけていき、なんとなくここが自分の知っている学校とは違うような感じに教われていた。
校舎のほとんど脇の方にくっついていたマンホールのようなものをどかし下に通じる階段を下りる。
先に降りた賢治が未だ上にいる時雨に声をかけて降ろされると時雨は地下の意外な広さに圧倒された。ある程度まで見えるがその先は曲がり角になっておりここからでは見ることは出来ない。賢治は近くにあった一つの扉を開けた。時雨は扉の隣にあった意外な札を眺めて賢治に話し掛けた。彼がどのようなものを見たかと言うと・・・
『霜崎 賢治はこのお店に入ってはいけません。もし入った場合は警告無く消えてもらいます。』
とっても危ないことがかかれている札であった。
時雨が賢治に言う前に緊急事態が起こってしまい、その結果銃をぶっ放す音が時雨の鼓膜を響かせていたのだった。
「性懲りも無くまたきましたね、賢治さん!」
手に物騒な重火器を持っている女性が賢治に対して声を掛ける。その女性は奇麗であり、優しそうでもある。だが、彼女の着ている服装はいかがなものだろうか。
「メ、メイドさん?」
知りもちついたまんまの時雨は涼しい顔で扉の中を見ている生徒会長にたずねる。
「ああ、実はここメイド喫茶なんだよ。」
「今度はお友達まで連れてきたんですか?そっちの方も含めてお墓の中に一緒に骨を埋められたいんですか!」
もう、なんだろうか。時雨の頭の中は彼が今まで生きていた中で一番混乱していたに違いない。
「まぁまぁ、彼は僕の友達じゃなくて親友なんだよ。」
「・・・・じゃあ、なおさら消えてもらわないといけませんね。」
その銃口の先にあるものは考え込んでいる時雨の顔である。そのことに気がついた時雨はその場からさっさと離れてどうにかして生き延びる方法を捜す事にした。
そして両者黙ったまま過ごしてメイドさんの向こうからもう一人メイドさんが出てきた。
「・・・・おや、賢治さんではありませんか。今日はどのような用事でここにきたんですか?」
その声には何処にも殺気などこもっておらず、友達に接するような感じであった。賢治はこれに対して
「いえ、ちょっとこっちに転校してきた友達と話すためにここにきただけですよ。」
と答え先程のような殺伐としている状況ではなくなったのは確かであった。
「こちらが賢治さんの友達ですか?」
時雨を眺めて優しそうな笑顔を向ける。ぞくに言う天使の笑顔と言う奴であろう。
「ええ、そうなんですが美奈さんから命を狙われていたんですよ。」
賢治がそう言って美奈と呼ばれたメイドは恐縮しきった顔で後から来たメイドさんに頭を下げて弁明に走っていた。
「・・・だってあの賢治さんのお友達と聞いたら普通の人は間違いなく誤解しますよ。仕留めて置いて損は無いはずです。」
なんともまぁ、物騒なことを言っているのだと時雨は思いながこのやり取りを眺めており賢治はその光景を別にどうと無く見ている。
「・・・確かにそうですね、それではこの方に課題を課せて試してみればいいことですよ。」
賢治と美奈は嗚呼、なるほど。と頷いていたのだが当の時雨はそんなことが分かるはずも無い。しきりに頭をひねるぐらいしか出来ていなかった。
「それでは今回の課題は鬼ごっことしておきましょう。鬼はそちらの賢治さんのお友達と賢治さんで逃げるのはこの喫茶店のメイドで結構ですね。」
美奈はそれを聞くと時雨たちがやってきた階段を駆け上がり外に消えて後からやってきたメイドは店内に戻って行った。そこに残されたのは未だにしりもちをついたままの時雨と賢治だけであった。
「鬼ごっこって何?」
「・・・・そうだね、確かに彼女達がいないうちに君に話しておこうか。はっきり言うけどこの鬼ごっこは普通の鬼ごっことは違う。下手すると病院送りにされる危険性もあるから心してかかって欲しい。」
巻き込まれた時雨に至っては全くもって迷惑極まりないことこの上ないのだがここで文句をいっても仕方が無いと思ったのだろう。静かに黙って聞くことにした。
「まず、逃げる方は鬼に対してどのようなことをしてもいいんだ。たぶん重火器を使ってくると思うけどね。」
そんな鬼ごっこでは鬼の方が殲滅されるのは目に見えて分かる。
「ちなみに鬼はそのような飛び道具を使用してはいけないルールなんだ。」
この時点で鬼が生き残ることはほとんどゼロに近いと思われるのは時雨の頭の中での計算も必要ないくらいである。
「鬼は相手の意表をつくようなことをして逃げる人にタッチするなりすればそれでいいんだよ。以上でルール説明終わり。」
全く持って鬼さんがかわいそうなルールであると時雨は思っていたが自分達がその鬼だと思い出して少々ながら恐怖を覚えていた。まだまだ病院生活なんてしたくないのである。
そして店内から完璧に武装してきたメイドがぞろぞろ出てきて階段を上がっていった。最後に出てきた先程の冥土は武装せずに時雨と賢治の所までやってきてルールに補足をつけていった。
「今回の審判は私がしたいと思います。賢治様のお友達は初心者なので今回の弾は実弾なしのゴム弾としてありますので大丈夫です。当たっても多分痛くありません。」
時雨が後で聞くことだが、弾は確かにゴム弾であるが違法改造された銃を使用しているのでそんな優しい威力ではない。
「それでは十を数えて出発してくださいね。」
そう言うとメイドは店内に入り扉を閉めた。賢治と共に十を数えた瞬間・・・
ダダダダダダダダダダダダダダダダ!
階段の方から一斉に弾丸が飛び出してきたのであった。検事はこれを難なく交わしてようやく立ち上がった時雨も近くにおいてあった鉄板を使いこれを防ぐ。弾が切れたのか音が無くなり階段にもいなくなったようだ。時雨がもっていた鉄板は既に穴があいておりその威力を物語っている。
「気をつけないといけないね。どうやら先手を打たれたみたいだから・・僕は先に行ってるからね。」
そんなことを言う賢治はなれたものである。そして時雨を置いて階段をのぼっていった。
ドゴーン!
どうやら校舎には様々なわながあるらしい。その後銃撃戦の音が聞こえてきた。時雨は慌てて生徒会長を追って階段をあがるとそこには戦闘のすごさを物語るように近くにあった木は倒れていたりした。そして近くには目を回して倒れているメイドたちの姿が見えてそれらをカメラに収めている賢治の姿があったのである。
既に暗くなった辺りに響く音は賢治のカメラの音だけであり、だんだん怪しい部分をとろうとしているので時雨はそれをやめさせるために賢治の隣に行った。
「ほら、次に行こうよ。そんなのとってたら後で怒られるよ。」
賢治は渋々ながらも承諾してくれて校舎の内部に進入することにした。そして先程拾った小石を廊下に放り投げている。
シュタタタタ―
罠が発動したらしく上から様々な鋭利なものが落ちてきた。このまま進んでいたら痛い思いをしていたに違いない。
「・・・時雨君はあっちの方から回っていってくれ、僕はこっちから行くからね。」
そう言って二人は分かれて進むことになった。
賢治が見えなくなってすぐにあっちから凄まじい音がしていてかなり激しい戦闘が行われているに違いない。
相手の思惑はまず賢治をつぶすことにしているらしい。
しかし、時雨の方にも少なからず敵は拝眉されているらしく教室からいきなり飛び出してきたり天井から飛び込んできたり、窓を割って進入してきたりと様々な登場をしてきていたりもする。その相手にも難なく対処できていた時雨はなんとなく恐怖を覚えていたりもする。特に恐かったのは柔道技とプロレス技を使ってくる二人であった。(過去の勘違いの記憶と彼は女の子が苦手なので体が触れただけでも頭がクラリと来たりしたものである。)
そしてそのままタッチをするときも恐々しながら(相手を行動不能にしていって降伏をしてもらっていた。)も賢治よりかなりゆっくり目のペースで進んでいたのであった。
反対側の廊下を進んでいた賢治の方は時雨の選んでいた廊下よりも格段に敵が多く、さらに様々な罠が仕掛けられていたりもした。
落とし穴があったり、いきなり床が落ちてきたりもしていたが賢治には全く通用するような気配もせずにそんな罠はほとんど賢治により解除されていき、なかには賢治がその罠を敵のメイドに向けて反対に相手を戦闘不能に追いやっていた。しかし、進むペースは時雨とあまり変わりは無いのである。彼は別に女の子が苦手でもないのだが・・・・
「いやー、やっぱり時雨君をここにつれてきた甲斐があったなぁ。写真が取り放題だよ。」
そんな感じにカメラを片手に気絶しているメイドたちを遠慮なくその手に持つものに収めていっていたからである。
ちなみに彼はメイド萌ではないのでここで少しばかり彼の趣味について書かせてもらいたいと思う。
彼は頭もよく、顔もいい、性格も悪くないのであるが、そんな彼が愛してやまないのはずばり物である。
それが別になんであれ、その作った人物が丹精こめていればその形が何であれ彼はそれに恋をしてしまう性格であった。
具体例をあげるなら焼き物とか職人の技が光る刀などであったりもする。
あというなれば、美少女フィギュアも大好きだったりする。
そんな彼が何故あまり興味のなさそうな彼女達を取っているかはまた別の話だったりもするのである。
知り合いにそのような人物がいてその人が彼女達のような格好をしているのが大好きだからである。
そしてその人は優れた職人であり、賢治が取ってきたものを参考にして職人なりの業を光らせて写真をとってきた代償として賢治に作ったものをプレゼントしてくれるのであった。しかし、それには条件があり、彼が気に入る角度やポーズで無ければ代償はあまりいいものではない。だから賢治はこのように写真をとっているのであった。(賢治の家にもメイドはいるのだが、彼はなぜかそれを写真に納めようとしない。)
「さて、そろそろ本気を出していきますかね。」
これまで、賢治とメイドが繰り広げてきた様々な戦いは賢治の圧勝により幕をひいている。
多勢に無勢なのに賢治は普通に彼女達に勝っており、負けた彼女達はばつゲームとして賢治になすがままにされている。
(賢治はただ彼女達に床を雑巾でふかさせたり、駅前で青春を自分なりに表現させられたりするのである。)検事のそのときの気分で決まり、彼は法律を違反するギリギリの事をさせたりするときもある。まぁ、彼としてはお遊び程度だったが、それ以降彼女達は賢治を眼の敵にしており、このまえ彼が行ったときはたらいが上から降ってきたりもした。
とにもかくにも、彼としてはこの勝負はお遊びであり、本気といっても手加減の範囲の中にある。
そしてその後、やはり彼は立ちふさがる敵たちをからかい半分でゆっくりと倒していくのであった。
時雨はとうとう幹部クラスと思われる相手と戦っており、強さで戸惑うでなく相手が相手だったのでかなり苦戦していた。
これまでの戦闘スタイルが相手に伝わっていたらしく、つまるところは時雨の弱点がばれてしまっていたらしい。時雨はこれまで戦っていた相手に指一本触れていないのでこの幹部を相手にしていたときも指一本触れていなかった。幹部は飛び道具を全く使っておらず、肉弾戦を仕掛けており、時雨は今のところそれを避けてばっかりである。
「ほらどうしたんですか、さっきから避けてばっかりですよ。」
「・・・く、これは・・・どうしたもんだろうか・・・」
繰り出されてくる柔道技のような仕掛け方をさっさとバックステップを踏んで避けて相手との距離を測る。そんな行為で先程からかなりの距離をかせいできた。その距離も軽く50メートルを越えている。わざわざ肉弾戦をかけてくるのでタッチしてしまえば時雨の価値なのだが、彼は未だに躊躇しているのであった。
(全くもって困ったものだ。このままではもしかしたら負けるかもしれないな。)
そんなことを考えながらこのまま走って逃げてしまおうと思った彼は誰かが敵の後ろに現われたのを気づいた。
「はい、タッチ。」
現われたのは賢治であり、時雨がかなりてこずっていた相手を赤子の手をひねるようにあっさりと倒してしまった。(まぁ、誰でも倒そうと思えば倒せると思われる。)残るは美奈だけである。
「ありがとう賢治、かなり助かったよ。」
そう言って感謝の態度を示していたが賢治は早速カメラを出して唖然としている幹部の写真を遠慮なく取っている。
「時雨君は先に行っていてくれ、僕はここを押さえているから。」
そんなかっこいいせりふを言っているが、彼らに襲い掛かる敵は残り一人であり、残っているのは既に捕虜とかしてしまっているメイドさんたちである。ぶっちゃけ、賢治はこの人たちの写真をとるのに忙しくてもしかしたら時雨に邪魔される恐れがあるので彼を奥にやりたいだけであった。
「・・・・まぁ、いいかな。・・・あまり取っちゃ駄目だよ。」
そんな賢治の思惑が手に取るように分かっていた時雨はそのように釘を刺してその場を後にした。そして後ろから聞こえてくる音は邪魔者がいなくなったので喜びのあまり叫んでいる賢治とそれに恐れをなして逃げ惑う時雨と戦っていたメイドさんたちである。時雨は一瞬賢治をおさえに行こうと思ったが曲がり角を曲がった所でそれどころではない事に木がつき廊下の端に飛び込むように避けた。
「喰らえ!美奈流、冥土隊奥義!!紅蒼紫赤黄緑黄緑薄青・麗邪亜!!(レインボウ・レーザー)」
七色とは思えないほどの線が誰もいなくなった廊下を通っていく。時雨は目をつぶっていたのでよく分からなかったがこの威力が凄まじいことはすぐに分かった。
「・・・やりますね、では次を行ってみますよ。」
今度あんな攻撃を喰らったら痛いだけではすまされないに違いない。充電終了した場合は間違いなく時雨はこの世から消えるに違いない。骨も残さずにあっさり旅立つであろう。
「ちょっと待った、実弾は使わないんじゃなかったの?」
「これは実弾ではないのでルールには違反していません。それでは覚悟してもらいますよ!」
どっちかと言うと実弾より危険だと思われるがそんなことをいっている場合ではないと思われる。時雨は近くに開いていた扉を見つけるとそのままダイビング!その後ろを実弾ではない何かが通り過ぎていった。扉から顔だけ出して相手の確認をしてみると相手の右腕に装着されている機械が輝きだしている。
「もしそれが一般人に当たった場合はどうするんですか!」
既に暗くなった校舎に一般人が来るとは到底思えないのだが、一応確認してみることにした。
「その点は大丈夫です。私が先程結界を張っておきましたから一般人はこの校舎の中には入れないと思います。」
時雨は安心したが実は結界なんてたいそうなものではない。『この先立ち入り禁止』とかかれた札を校門の所に置いただけである。他にも裏門などがあるが美奈はここには何もおかずにただ単に黒と黄色のロープを置いただけである。
「それでは地獄に旅立ってもらいましょうか!冥土隊秘奥義!!!冥土鬼津沙真柔緊死!!!」
細い光の線が扉から顔を出した時雨に降り注ぐ。威力は低そうだったがその数は多く時雨は防戦一方であった。顔を隠した扉に光線の後がくっきり残り改めてその威力を目の当たりにしていた。このままでは負けるどころか救急車行きである。もっともその車に乗るからだが残っていた場合の話ではあるが・・・・・
「全く、情けないですね。あまりにも面白くないので肉弾戦で行きたいと思います。」
そんな声が廊下から響いており、何かを感じた時雨は教室の奥に逃げた。さっきまでたっていた場所ごと壁が切れてその破片が地下に降り注ぐ。それを呆然と眺めている時雨の目の前に右腕に機械をぶら下げた恐怖の敵が現われる。そして左腕には長々としている獲物(月光に反射しているそれは刀と思われる。)を持ち、その目は本気であった。
「さて、これであなたにも勝利の機会が増えたと思います。もっともあなたが私に触れることが出来たらですけどね。」
もはや一般人が目で追えるか終えないかのスピードで美奈は動き出し時雨に衝突するかのように袈裟切りを繰り出す。
「・・・うぐぅ・・・」
それを避けることは流石に難しかったのか時雨の学ランが斬れて斜めに紅い線が現われる。
「へぇ、あれを避けるなんてなかなかやりますね。少し見直しましたよ。」
時雨はその顔を眺めながらも一応牽制のつもりで拳を相手に突き出す。
しかし、当てる気はない。相手はそのままある程度はなれて今度はおかしな構えをして目を閉じる。多分、思いっきり非現実的な攻撃が予想されると思われ時雨はおおいに戸惑った。そして思い出す、網との戦いの前に賢治に教わった困ったときの呪文。今やほとんど忘れてしまったので適当に唱えることにした。
『ええと、我は・・・・哀しみ?を背負いし天使?』
たぶん不完全だろうがその力は始めて彼の前に姿をあらわす。
彼を血に染めるように紅い光が渦巻き
彼の背中にその色と同じ翼を与えて
彼の腕に紅の剣を授ける。
全くもって面白くないがここにしてようやく時雨は罪人天使の力を作ったのであった。
「ようやく本気になりましたね、それではこちらも仕留める気でかかりたいと思います。」
(いやいや、これは鬼ごっこなのだからそこまで本気になられたら僕が困るんだけどなぁ。)
そんなのんきだが本当のことを考えながら時雨は久しぶりに握る武器を思いっきりつかむ。
(こんなものを持つのは体育で剣道をやったときと先生から個人指導を受けたときぐらいだったなぁ。)
その時教わったのは実践用の構えであり、面、胴、小手ではなかった。
「それでは参りますね。」
時雨の返事を待たずに突き出すようにして刀を構えてくる美奈を時雨は相手の刀に向かって自分の手に持っている物を使い、へし折る。そしてあっけなく折れてしまった刀を持ったまま美奈が驚きの表情でスピードを殺すことが出来ずに時雨に激突。時雨もろともその場に倒れこんだのであった。
「・・・・た、タッチ・・・・がくり。」
死闘の末、かなり常識はずれの敵を倒したのはいいのだが力尽きて時雨は気絶してしまい、ぶつかって一緒に倒れている美奈も打ち所が悪かったらしく仲良く気絶している状況である。その後、なかなか帰ってこない二人を心配して賢治が探しに行くのは一時間後のことである。見つかった二人の体制は凄かったと後に賢治が答えており、カメラに納めたらしい。
ようやく喫茶店に入ることが出来た時雨と賢治は可愛いテーブルに座っていた。
こんな所にきたことの無い時雨は辺りをきょろきょろしていて全く落ち着いておらず、彼が喫茶店を出るまでその行為は続けられるのである。
実際にだが、防犯カメラに移っていた時雨はかなり挙動不審で喫茶店がコンビニやスーパーだった場合、万引きをする前兆と思われていても文句は言えないと思われる。そしてその向かい側に座っている賢治は今回の課題で何故相手に勝てたのかをまるで先生のように他のテーブルに座っているメイドたちに教えていた。
「・・・・言わせてもらうけど、罠が全く良くないね。それに・・・」
詳しく書くとかなり時間の消費になると思われるので今回は省略させていただきたい。
その話が終わり、彼らにとっては恒例の罰ゲームの時間になった。
メイドさんたちは彼の友達(時雨の事である。)がもしかしたら彼と同じような性格でもしかしたら彼より酷いかもしれないと思っていたので少々この罰ゲームがいつもより厳しくなるのではと思っていた。(その頃時雨は目を泳がせながらも運ばれてきていたオレンジジュースを飲んでいた。)そしてとうとう賢治が口を開いた。
「・・・・今回の罰ゲームは美奈さんを倒した僕の友達、時雨君に決めてもらいたいと思います。それでは時雨君、君の好きなようにしていいよ。」
呼ばれた時雨は天井を見上げており、みんなの注目が一気に自分に集まっていたことに気がつきかなりおどおどしているのであった。
「・・・え、えーと?罰ゲーム?うーん、出来れば今度は・・・鬼ごっこじゃないのがいいな。」
時雨は思いっきり混乱しているような状況だとその場にいた大多数の人数が思い、結局は賢治が決めることとなった。
「・・・・彼は少々女の子が苦手なのでこのような状況でまともに話すのは無理のようだから今回の罰ゲームは最後に残った美奈さんが時雨君の家のお手伝いさんになってください。そして最後から二番目だった人が今度からここの体調補佐を勤めること。それじゃ、各自解散。」
賢治は未だにおどおどしていて目の焦点が合わさっていない時雨を揺さぶり正気に戻した。
「さて、これから本題に入るよ。」
メイドさんたちは既にほとんどいなくなっており、残っているのは指名を受けて?時雨を待っている美奈だけである。
「実は君に仕事が出来てしまってね、あさってからまた学校が始まるだろ?放課後生徒会室に集まって欲しいんだ。話はここでいってもいいけど面白くないから明日はなすことにしよう。」
実の所はほとんど放心状態になっている時雨への配慮であった。肩を揺さぶっても反応しなくなったのを確認して手を放すとそのまま床に倒れそうにもなる。
「・・・・コリャ一度精神科医に行った方がいいんじゃないのかなぁ。美奈さん、ちょっと時雨君に触ってみてくれないかな?」
躊躇している美奈に天使の笑顔を向ける。(見方によっては悪魔の笑みに見えないでもない。)この状況を打破してくれるのは美奈だけであるので時雨の精神的な傷の事を賢治は話したのであった。
「・・・・・なるほど、時雨様は初心な少年なんですね。もしかしたら賢治さんと一緒みたいな性格と思っていましたよ。」
「それはどういう意味かな?今回はとりあえず、彼を膝枕してみたらどうだい?目を覚ますかもしれないよ。」
その必要は全く無かった。美奈が時雨に触った瞬間、時雨は飛び起きてその場からささっと飛びのいた。
「・・・本当に初心な方なんですね。誰かさんとは大違いですよ。」
「まぁ、いいよ。それより時雨君、今日からこの皆さんが君をお手伝いしてくれるようになった。」
「改めまして、冥土の美奈と申します。美奈と呼んでください、時雨様。」
「あ、どうも。天道時 時雨です。これからよろしくお願いします・・・じゃなかった!何でそうなるんですか!」
賢治に食って掛かる時雨の顔は必死であり、その顔は夏休みが残り一日でまったく出された宿題が終わっていない人みたいな顔であった。その迫力に襲われながらも賢治はひらめいた嘘を試してみることにした。
「・・・落ち着いてくれ、時雨君。実は彼女はもうここにはいられなくなってしまったんだ。追い出されてしまいあてのない彼女は君ご奉仕する代わりに住む場所と三食を約束して欲しいそうだ。」
賢治が美奈を見てそう言ったので時雨は美奈の方を向いた。
「はい、負け犬の私はここを追い出される身となってしまいました。そして賢治さんが時雨様なら承諾してくださるといってくれたのでこのたび私は時雨様のメイドとなったのですが・・・・時雨様がやはりだめだというならば私は自分の生涯に自分で幕を下ろしたいと思います。」
彼女は役者であった。この時点で時雨の心の約八割は罪悪感にさいなまされていたが美奈が次に行った台詞により結局彼女を迎えいることになった。
「そうなるならば、最後の思い出として時雨様に口付けをして果てたいと思います。」
先程賢治から聞いたことを覚えていた美奈はそんなことを言って最後の止めとして上目遣いで時雨を見た。
しかし、時雨は既にそんな美奈を見ておらず目は在らぬ方向を向いて顔は真っ赤である。
そして賢治と美奈は二人で溜息を出した。
「やさしいし、もてそうなのにこんなあれだから・・・・よろしくお願いするよ、美奈さん。」
「はい、かしこまりました。(やれやれ、かなり重症みたいだから私がどうにかしてあげたいなぁ。)」
「あわわわわわ・・・・」
そんな二人の近くで体から白い煙を出しながら突っ立っている時雨は美奈のタッチにより正常モードに移行完了したのである。
帰り道、賢治と分かれとうとう美奈と二人だけになり極度の不安と緊張により熱暴走寸前となっていた。二人の距離は先程より少しだけ近づいていたが、美奈がそれ以上近づこうとすると時雨もまた離れるのであった。そんなことをしているうちに道の端っこにあったどぶにはまりそうになった時雨が悲鳴をあげる。
「のわぁ。」
「危ないです!時雨様!」
その体を支えてあげたのは美奈であった。こういう場合はどじな女の子を助ける男主人公がかっこよく表現される場面だが、仕方がない。
「あ、ありがとうございます、美奈さん。」
「いえ、お怪我はありませんか?」
時雨の手を取ったまま美奈は告げて時雨の体制を整えてやる。そして時雨は大好きな男の子と手が当たってしまったよう女の子みたいな甘いシチュエーションではなく、ただ顔を赤くさせてうろたえるばっかりである。
「本当に大丈夫なんですか?」
「あ、はははは、はい!大丈夫ですよ!!」
顔を真っ赤にさせて答える時雨を見ていて美奈は少しばかりいたずらしたくなった。
まず、賢治がいたら止めたくなるような感じで手を握っている時雨に体を預けてみた。
美奈としては時雨が受け止めるか、話すかによって今後の態度を変えようと考えていたらしい。
(もしも避けたら今後毎日このようなことを時雨にしようと頭の中で考えていた。)彼が優しいなら美奈を受け止めるだろうし、もし、受け止めなかったら時雨はこの先ずっと女性恐怖症が治らないと美奈は思ったわけである。(一応、そう考えていたがやはり大部分は初心な少年に対するいたずらである。)
「ああ、ちょっとめまいがしてしまいました。」
「え、ってうわぁ。」
結果として時雨は美奈を支える事になった。支えた時雨は頭が思いっきり空っぽになってしまったので何とか冷静になろうと努力していたのであった。それを見た美奈は満足して自分から時雨とはなれてまた歩き出した。
「さて、それでは時雨様の家に案内してもらいますね。」
そして、家に帰り着いた時雨は唖然と自宅を眺めていた。さっきより近くに立っている美奈もその光景を眺め呆然と立ち尽くしていたのであった。
家が半分なくなっていたのである。それもすっぱりと・・・・。
「・・・・・いやぁ、時雨様の家は変わってますね、いつ頃建てた家なんですか?残り半分も今にも崩れ落ちそうですよ。」
「・・・・僕も久々に帰ってきてたんでいつの間にこんなぼろぼろになってたのを気づくことは出来なかったんだ。学校に行くまえ、一度家に戻ったときはまだ大丈夫そうだったんだけどな・・・・・。」
そしてこの家をぼろぼろにした犯人達が壊れていた家の残骸から出てくる。
「ねぇさ・・・ん、ごほぉ。これは少々やりすぎなんじゃないの?家が半分なくなっているよ。」
蒼い翼を背中に背負っている蕾がそう言って立ち上がる。近くにいる時雨と美奈にまだ気がついていないようだ。蕾の近くの瓦礫からもう一つ蒼い翼を持った悪魔が立ち上がる。
「・・・・何いってんの・・・・あんたが素直に受けてたらこの家はまだまだ元気だったに違いないわよ。今回はここまでにして・・・・ってこれやばいじゃないの!時雨が帰ってくる前に何とかしないと・・・・。」
本人が近くにいるのに全く気がついていないところはやはり姉妹と言う奴であろうか?
「いや、もうこれを直すのは不可能に近いと思うんだけど・・・。」
「じゃ、ごまかしましょう!ガス爆発が起きたとか何とか言えばいいじゃない!ええい!こうなったらこの場から逃げ出してやるぅ。」
「あ、ずるいよねえさん、待ってよう。」
蒼い翼をはためかして二つの悪魔は空に飛んでいった。衝撃だったのか強い風が吹いたのか分からないが二人がいなくなった直後、残っていた方の時雨の家も盛大な音を立てて崩れてその原形をとどめることはなかってのである。
「・・・・美奈さん、ちょっと待っててくださいね、あの二人をとりあえず捕まえてきますから・・・・。」
「はぁ、がんばってくださいね。時雨様。」
蒼い翼を追って赤い翼が空に上がったのはすぐ後の事であった。
二人を捕まえた時雨達はその後、空中で説教したのである。
そして住む家は賢治が近くにあった家を紹介してくれたので今のところは困っていないのであった・・・・・。
冥土、それは主人を地獄まで安らかに生活できるようにお手伝いする魔族である。
護身用として、全ての平気や武器を使えるように教育がなされており、火縄銃からレーザー兵器など様々なものが使えたりもする。もちろん、料理もうまい。一般的に間族は悪魔より力が弱いので関わり合いがあるのは人間の方が多い。時には手伝ったり、襲ったりとしている。そして一言に魔族といってもかなりの種類があり、その全てを知っているものはいないといわれている。
さて、どうだったでしょうか?面白かったら嬉しいです。今回はドンパチドドドン!見たいな事を考えながら書いていました。次回は視点を変えて書きたいと思います。