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罪人天使  作者: 雨月
31/31

しょのさんじゅういち これも最後の終わり方・・・・

 ええと、今回で最後となりました・・・・皆さんにはいろいろとご迷惑をおかけしたりしてすいませんでした。最後ですのでできましたら評価のほうをよろしくお願いします。


 人間界に戻ってきた天道時 時雨。そんな彼は、人間界では戸籍上死んでいる人間となっていたのであった。自宅に戻ろうとしたが、彼の親友?の霜崎 賢治にとりあえず家に来てくれといわれたので彼は賢治のばかでかい家に向かったのであった。


「・・・・つまり、賢治は僕にとりあえず戸籍を何とかする間は別の土地に移って身をひそめておけというのかい?」


「ああ、そうだよ。すでに僕が準備をしているからそこのところは気にしないでいいよ。」


 指をぱちんと鳴らすと、どやどやとメイドたちがやってきて時雨の体を縄で絞める。あっという間に、時雨はダンボールの中に閉じ込められて車につめられる。


「もがもがもがもが!!(訳:ちょっと!!僕は荷物かよ!!)」


 彼の抵抗むなしく、そのままどこかの土地に運ばれていくのであった。腰に刺していた刀は気がついたらどちらともなくなっており、なぜだか体に力がはいらなかった。


 ダンボールにつめられて、トラックで搬送されること、約三時間ぐらい。時雨は賢治の家のメイドの一人に抱えられておろされる。ダンボールの中に押し込められたままなのでほとんど何もわからない。


「・・・・どうも、宅急便ですけど?」


「もが?もががが!!(訳:へ?なんだって!!)」


「はぁ〜い、どうもごくろうさまですぅ。」


 そういってメイドの手から誰かの手に渡される。しかし、相手は以外に力がなかったらしく、


「おもっ!!」


ぼと・・・


「もがぁぁ!!(訳:いたぁ!!)」


 時雨が入っているダンボールを落としてしまった。垂直落下で落とされたのでダンボールの中で身もだえする時雨はなんだかかわいそうである。


「さぁて!!何がはいっているのかなぁ?」


 再び持ち上げられることなく、ダンボールを引っ張られてどこかに移動される。


「姉さんたち!なんだか知らないけど・・・・賢治君から贈り物が届いたよぉ!!」


「へぇ、きっとあの糞餓鬼からだからきっとろくでもないのがはいっていると思うねぇ。」


「ま、何でもいいけどさっさとあけてみようよ。」


「・・・・きっと生ものじゃない・・・・かな?」


 そして、時雨が入っているダンボールを乱暴に、包丁で解体していく。そのころ時雨はやっと口にはめられていた猿轡を取ることが出来た。


 ぶしゅ。


「いたぁぁぁぁぁぁ!!」


 そうやって時雨はダンボールから飛び出したのであった。世に言う、ダンボール太郎の奇跡的な誕生である。


「・・・・ほんとに凄いのが届いたねぇ。」


「そうですね、これは凄いですよ。」


「少年、名前をなんていうのかな?」


 床でごろごろ転がっている時雨に対して四人いる人物たちは注目する。


「・・・・名前ですか?天道時 時雨っていいま・・・」


 時雨の目が途中で止まる。正確に言うなら、四人いる一人の顔に注目される。


「ちちちちちちち、ちにゃつねぇえさん!!お、おばけ?」


「ああ、どうしたのかな?シグ?」


 時雨を見下ろして不適に笑う一人。その人物から逃げ出そうと時雨ははいつくばってにげようと努力するが、すぐに捕まってしまった。


「あわわわわわわわわわ!!!」


 発作がおこったように時雨は震えだし、喋ることもできなくなってしまった。彼を猫掴みで持ち上げている時雨より少し年上の女性はため息をつく。


「千夏、その子知り合いなのか?」


「うん、ほら、父さん母さんが別居してたときさぁ、私だけ父さんのほうに行ったじゃない?そのときにその土地にいた友達だよ。」


「へぇ、あんたの幼馴染ってやつね?で、いじめてたの?」


 そうやって震えて小さくなっている時雨を指差す。だが、千夏は首を振った。


「・・・・いや、実はね、あっち私は死んだことになってんのよ。だからじゃない?」


 まだ何か言おうとしていたが、千夏は口を閉じてかつての幼馴染の少年を見下ろす。


「ね、シグ、とりあえず落ち着いたら?」


 彼が落ち着くのは結構後となった。そして、出してもらったお茶を飲んで一息つき、まじまじと千夏の顔を眺める。


「・・・・てっきり死んだのかと思いましたよ?実際にお葬式だってやったじゃないですか?」


「ごめんごめん、いろいろあったんだよ。で、なんでシグがこのダンボールの中に入ってたんだい?」


 時雨はとりあえず、すべてのことを包み隠さず話した。時雨はこの四人が人間ではないことが手に取るようにわかったので魔界であったことも詳しく話した。


「ふ〜ん、で、ここに送り込まれたわけか?けどさ、シグが罪人天使なんて意外だなぁ。昔はよくないて私の胸の中で眠ってたのに・・・・・」


「はぁ、まぁ・・・いろいろとありまして・・・」


 恐縮するように頭をたれる時雨。そして、初対面となる千夏以外の年上の女性を見る。


「ああ、自己紹介がまだだったね。私の名前は季節きぶし 春海はるみだ。春ねえと呼んでくれ。」


「私は・・・・秋代あきよといいます。」


「つづいて、私の名前は冬音ふゆねという。よろしく、天道時君。」


「最後に、私の名前は知ってると思うけど、千夏ね。」


 ちょうど、そんなときに誰かの携帯がなった。場所的に考えるなら春海の携帯だろう。


「・・・・ふ〜ん、で、時雨君、どうやら君は今日からこの家に住む仲間となったようだ。君の親友から死刑宣告に近いメールが届いている。」


 以下のことがメールに書かれていた。

『時雨君、今日からそこが君の牢屋だ。季節姉妹たちの言うことを忠実に守ること。わかったかな?なお、知っていると思うがその四人は人間ではないので気をつけること。気がついたら誰かの夫とならないように気をつけたまえ。その家にランクがあるとしたら君は一番下だからね。ま、僕が君を迎えに来るまでがんばってくれたまえ。』


「じゃ、さっそくだけど・・・・夕飯作ってくれないかな?いやぁ、いいもんを送ってくれたものだね。」


 そういって、時雨の新しい生活が始まったのであった。

 その日はとりあえず、廊下で寝ることとなった。布団や枕は足りないのでそこは代用品の座布団とコートで我慢することとなる。


「・・・・・・はぁ、しょうがないのかな?」


 何事もなく、時雨の一日目は終わりをつげた。問題は二日目から始まる。


「で、時雨、今後君には私たちが通っている高校に行ってもらおう。」


 時雨は彼女の容姿を見て驚いた。千夏は時雨より年上、そして、この晴海は間違いなく千夏より年上だろう。時雨は高校二年で千夏が時雨より少なくとも1歳年上だったとしても、春海は間違いなく社会人ではないのだろうか?


「・・・・シグ、実のところ、私たちの姉妹は凄いことに落第者が多いの。春海姉さんはすでに社会人になってもいい年なのにね。まぁ、シグが高校二年だとしても大体皆は高校三年生ってとこかな?」


「・・・・はぁ、なるほど?」


 そういいながらも両脇から腕を抱えられる。そこには高校の制服を着ていた冬音と秋代がたっていた。


「さ、天道時君を高校まで連行しよう!!」


「・・・・校長先生たちには話しているから職員室へ・・・・連れて行かないと・・・」


 こうして、時雨は名前も知らない高校へと通うこととなった。そして、意外な真実を知る。

 場所は変わって千夏たちが通う学校。そこは時雨たちの高校より小さかったが、まぁ、このぐらいが平均的な大きさに違いない。


「・・・・落第高校?」


 時雨は校門にでかでかと書かれている文字を見て、少々びびった。なんとも縁起の悪い高校だ。これでは確かにこの姉妹たちが落第するのもわからないでもない。


「・・・・シグ、この高校で卒業する人数は両手で数えられるぐらいなのよ。まぁ、平均的に十人ぐらいだと思ってくれればいいけどね。ちなみに、今いる在校生は・・・・・まぁ、ざっと千人ぐらいいるでしょうね。」


「・・・・ここにくる人たちは頭が悪いほうなんですか?」


「いやいや、どっちかというといいほうだよ。ま、実際に教室に入ればわかるからね。さ、あの先生がシグの担任の先生だからね。」


 職員室に着き、千夏たちと別れた後に時雨は初めて会う先生といろいろと話した。まず、会ったときにその女の先生はないていた。普段見たらとっても明るそうな先生(どっからどう見ても春海より年下に見える。どうやら、新人の先生らしい。)でそうだが、今は泣き崩れているのでかなり凄い顔になっている。どうやら、誰かがでっち上げた時雨の過去話を聞いて涙しているようだ。


「・・・・天道時君、大変だったのね?お父さんのせいでお母さんがいえを出て行き、残ったお父さんも過労で死んで一人ぼっちだって?で、今いる人たちのところの居候になったんだって?・・・・・何か困ったことがあったら私の携帯電話にかけてきてね?」


「・・・・・はぁ、わかりました。」


 なんだか凄い先生であることがわかり、とりあえずポケットからハンカチを出して先生に渡した。先生は渡されたハンカチで涙を拭いた後に鼻をかみ、時雨に返そうとして自分のポケットに入れた。


「・・・・今度洗濯して返すわね。」



 そして、時雨のクラスに案内されることとなった。この校舎は四階まであり、一階が一年生、二階が職員室やいろいろ売っている売店、そして特別教室。三階が二年生で、四階が三年生となっているみたいである。時雨は二年のはずだが、何故か案内されたのは四階の三年二組であった。


「・・・・先生、僕二年生ですけど?」


「・・・・え?でもあの書類には三年って書いていたけど?ま、大丈夫よ。ほら、ちょっとこれから友達となる人たちを見てみなさい?」


「・・・・でも・・・」


 時雨がそういうと、先生は泣きそうな顔になっていた。


「・・・・うう、反抗できない親もいないから、誰かに八つ当たりしたいのね?いいわ!先生が受け止めてあげるから!!」


「す、すいません。僕が間違ってたみたいです!!」


 そういって時雨は教室の扉を少しだけ開けて教室の中を見る。

時雨が想像しているのは茶髪の髪の毛が大勢で、真面目という言葉を敵だと思っている連中ばかりである。だが、現実は違い、皆机に座って勉強している。その中にはあの四姉妹の姿も見える。とても異様な雰囲気で、誰も話している人物などいない。そして、もう一つ時雨は驚いたことがあったが、とりあえず教室の扉を音なく閉めると先生に向き直る。先ほど話していた声より小さくして先生に聞く。


「・・・・先生、男子の姿が見当たりませんが?」


「時雨君、この高校は今年から共学だから三年生と二年生には男子はいないのよ。」


 時雨はその言葉を聞いて驚愕した。


「さ、私が君の名前を呼んだ後にはいってきてね?」


 先生はそういってさっさと教室の中に入っていく。廊下に残されたのはいろいろなことが頭の中で駆け回っている時雨であった。


「・・・・で、いろいろな事情より、急に転校してきた人がいます。皆さん、どうか優しく接してあげてくださいね?わかりましたか?では、はいってきてください、天道時君。」


 転校したことはあまりないが、時雨は意を決して教室の中に入る。前の教室も女子が多かったが、男子も一応、備品扱いとして存在していたから良かったのだが、今回はその備品たちもいないので緊張していた。


「・・・・天道時君、皆に自己紹介してください。」


「・・・・はい、天道時 時雨といいます。急な転校でかなり驚いていますが、皆さん、よろしくお願いします。」


「はい、上手によく言えました!では、誰か彼に質問のある人?」


 教室の中で何人かが手をあげる。彼女たちが時雨を見る目はなんだか珍獣を見るような感じだ。そんな一人の女子を先生はどうぞといって立ち上がらせる。めがねをかけた少女は立ち上がりめがねを上げると時雨をまじまじと眺めた後に質問した。


「委員長の私から質問しますが、苦手教科は何でしょうか?」


「・・・・ええと、大体平均的に取れていると思うのでないですね。」


 教室中がおおっと声を上げる。質問をした委員長は座り、再び何人かが手を上げる。また先生が手を上げた一人の生徒を指し、その生徒は立ち上がる。


「・・・・それでは、体育も得意なのでしょうか?」


「まぁ、大丈夫だと思います。」


 さっきの教室の反応より大きな声で全員がおおっと声を出す。気がついた人もいるかもしれないが、この高校のほとんどの生徒は体育で落第になっているのだ。つまり、体育以外は非常に良く、すさまじい。


「では、次の人で質問を打ち切りますが、誰かいませんか?」


 千夏が手を上げる。他の人たちはなぜだか彼女が手を上げたのを見ると手を上げるのをやめた。どうやら、事前に話し合いでもあったかのようだ。


「・・・・天道時君に質問です、付き合うなら年上と年下、どちらがいいですか?」


「年上・・・・です。」


 時雨がそういうと、教室中は更におおっと叫びを上げる。その中に先生も混じっていた。



 一時間目が始まる少し前、時雨はお姉さまたちに囲まれていた。


「・・・・でね、小さいころなんて良く私の後ろをチョコチョコ歩いてきたもんよ。」


 小さいころの時雨を知っている千夏はそうやって膝の上に乗せている時雨の頭をなでなでしている。


「けど、ほんとに時雨君は私たちより年下なんだね。」


 教室にいる一人がそういうとみんなは頷いた。千夏や春海が喋ってしまったので時雨の歳がばれてしまった。どうやらこの教室にいるお姉さまたちは自分より年下の男の子が好みらしく、時雨のことを弟を見るような目で見ている。


「・・・・う〜ん、ぎゅって抱きしめたいよね?あ、でもちょっと大きすぎるかな?」


 また、誰かがそういうと時雨を抱きかかえていた千夏は不適な笑い声を上げる。時雨はなんだか嫌な予感がしたので彼女の膝の上から無理やりでも逃げようとしたが、無駄な抵抗だった。


「・・・・シグ、目をつぶってくれないかなぁ?そうそう、いい子だねぇ・・・・」


 時雨が目をつぶったわけではない、千夏が時雨の目を手で隠したのだ。そして、口の中でぶつぶつ呟くと時雨の体に異変がおとずれる。


 体が小さくなり、お持ち帰り可能な状態となってしまった。


「いやぁぁぁん!!かわいい!!」


 小さくなった時雨を千夏から取り上げ、抱きしめたりいろいろ悪戯して彼女たちは遊んでいる。


「・・・・・ちょ、千夏姉さん助けてよ!!」


「だぁ〜め、先生が来るまで遊んでなさい。ほら、クラスになじむいいチャンスよ。」


 そうして、時雨は先生が来るまでお姉さまたちのおもちゃと化した。

だが、言っている割に嬉しそうな顔をしていたので別にいいだろう。

先生に気が付かれるわけでもなく、時雨は天候初日の嬉しい日々を全うしたのであった。うん、うらやましい・・・・。そして、今日はもう一ついろんなイベントがあったのであった。それは、夜の出来事である。近くにある公園にこれまであったことを整理するために一人でいた時雨は意外な人物と遭遇するのであった。まぁ、その前に彼が考えていたことを教えておこう。


 時雨は誰もいない夜の公園にあるさび付いたブランコに腰掛けている。

体が小さくなったままだが、今のところは不便ないので無視しておいても関係ないだろう。

まぁ、そんなことより、彼は前世?の記憶が戻りそうだったのであった。

世界を滅ぼした自分のころの記憶である。

だが、一方でこれを思い出したらこの世界が消えてしまうのではないかと思う自分もいた。記憶と力・・・・。これが今までもう一人の自分が持っていたものなのだ。そして、今では自分の一部となり、邪魔となっている。そして、なんだか物足りなさを感じているのだ。後姿は完璧なのに前に回ったらペッタンさんのような感じ?そんなもどかしさを感じている。とりあえず時雨は悩んでいた。


「・・・・時雨先生・・・・。」


 だから、誰かが後ろに立っていることもまったく気がつかずに、そして、自分の体が元に戻っていることも気がつかずに悩んでいた。それに気がついた時雨は面白いように前に倒れこみ、目の前にある砂場に顔からダイブ!!夕食前に砂場の砂をおやつ代わりとしてしまったのであった。そして、砂のおやつをプレゼントしてくれた相手を見る。


「ハデスちゃんじゃないか!」


 そこに立っていたのは彼の教え子の一人であった。この前別れたばっかりなのであまり久しぶりといった感じはない。だが、ハデスには黙ってこっちに帰ってきたので罪悪感があった。そのハデスは目に涙を浮かべている。


「・・・先生、死んだんじゃないかと思ってたんですよ?裁判所が壊れたから皆あなたの事を探そうとはしませんでした。皆死んでるって言うんです。で、私は・・・・私はそんなの嫌だから・・・・私が作った先生のお人形にお願いしたんです。」


 女の子がお人形を自分で作るのはいいことだが、彼女が作ったお人形は確かにお願いするものだが、ちょっと違うものであった。そう、わら人形に時雨の写真がはってあるものである。とりあえず時雨はそのわら人形を出来るだけ見ないようにした。


「・・・・・ハデスちゃん、会いに来てくれて嬉しいんだけど・・・どうやってきたの?」


 ハデスは涙を流しながら(わら)人形を大事そうに抱え、答える。


「・・・・お人形さんにお願いしていたら賢治さんが来たんですよ。それでですね、私をここまで連れてきてくれたんです。それで、時雨先生に会ったら次のことを言うように言われたんです。」


「?それってなにかな。」


 ハデスは思い出すようなそぶりを見せて、話し出す。


「・・・・・ええと、時雨君、君はとっても罪作りな男だ。そして、その罪は君の命では足りず、君の大切にしていたコレクションを日本全国に配布しても償うことが出来ない。だが、今回に限ってハデスちゃんの言うことを聞くことにより、その罪を消してあげよう。今頃君は過去の自分の罪を思い出して苦しんでいるだろうからね。だったと思うんですけど・・・・。」


「・・・・う〜ん?ところでハデスちゃんの言うことを聞けって・・・・まぁ、僕はいいけど?」


 人間、安請け合いをするととんでもないことに陥る。まぁ、そんなことは問題ではないのだが・・・・。とりあえずハデスは時雨を目の前にして急に顔を赤らめさせたのであった。


「・・・・先生、私を先生の彼女にしてください!!」


 時雨の顔の間近でそう告げる。時雨は何を言われたのかさっぱりわかっておらず、頭の中が混乱しており・・・・・ハデスがそんな時雨を真剣に心配したころにようやく思考状態が戻ってきたのであった。


「・・・・ハデスちゃん、僕は捕まっちゃうよ。」


 時雨はつらいがそう告げた。だが、ハデスは別段気にした様子もなく、更に時雨に告げるのであった。


「・・・・・そうですよね、なら・・・・このお願いなら聞いてもらえますか?」


「・・・何かな?」


「目をつぶってください。」


「?いいけど・・・」


 ブランコを間に挟み、時雨はハデスの目の前で目をつぶる。


「いいって言うまで目を開けちゃ嫌ですよ?」


「わかったよ。」


 目をつぶって聞こえてくる音はハデスが息を整える音だけであった。

それ以外は何も聞こえてこない。

時雨がちょうど息を出したときにそれは起こった。

誰かが時雨の腰に手を回し、抱きしめ、唇に何かを押し付ける。何が起こったかよくわからない時雨は目を開けようとしたがやめた。目を開ければハデスとの約束を破ることになるからだ。そして、数分、時間が過ぎ(その間ずっと時雨は息を止めていたのであった。もうちょっとでまだ見ぬあの世というものが見えただろう。)相手は時雨から離れる。


「・・・・先生、目を開けてください。」


 時雨が目を開けると、そこには可愛い少女が立っていた。ハデスよりも背が高く、ハデスをそのまま成長させたらこうなるだろう。


「先生、これならいいですよね?」


「?・・・・誰ですか?」


「先生、魔法使いの血が混じっている魔族は・・・・契約をすればみんなこうなるんですよ。これで先生も・・・・捕まりませんよね?」


 時雨は観念してその女の子を抱きしめてあげた。するとどうだろうか、少し前まで考えていたことがちっぽけなことだと思い、考えるのをそこでやめてしまった。


「・・・・・先生、あの世まで一緒ですよ?」


「・・・・こんな可愛い女の子にそんなことを言われるなんて本望だよ。」


 その後、時雨は魔王となり、ハデスとのらぶらぶっぷりに苛立ちを覚えた勇者たちと数々の戦いを繰り広げていったのであった。しかし、誰も彼にかなうものはおらず、彼らが魔界を治めている間はそのらぶらぶっぷりに皆当てられるのであった。まぁ、魔界に行ったことを知った彼の家族たちはその城にすむこととなり、今までとあまり違わない生活を送るのであった。          〜完〜


「・・・・・ふぅ、ようやく・・・まともな終わり方をしたかな?」


「そうですね、まぁ・・・これもifってものですよ。」


 場所はとある占いの館。高校生ぐらいの男子の前にサンダルをはいた中年おじさんがコーヒーを飲みながらそんな男子生徒に答える。


「ま、これでいいんですよ。いずれまた・・・・何かが起こるかもしれませんからね。」


「そうだな、私は今からお天気お姉さんを観賞しなければいけないから・・・・また、な。救世主。」


「ええ、それでは失礼します。僕も可愛い彼女たちが待っていますからね。」


 少年はずらりと並ぶ美少女人形を名残惜しそうに見てからその館を後にした。


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