しょのにじゅうに 魔界編2 決着をつけよう!
に
囲まれてしまったので刀を振り回せば間違いなく誰かが怪我を負ってしまうのは目に見えていた。時雨としては誰も傷つけたくないのだが・・・・
「あなたが今まで倒してきたメイドたちはみな無事だと先ほど連絡を受けました。」
「それはよかった・・・。痣とかのこってませんか?」
「ええ、大丈夫だそうです。」
時雨は自分のことのようにほっとため息をつく。しかし、彼にとっては今は袋のねずみ。
「・・・・人質は無事なんですか?」
「ええ、人質に怪我をさせてしまったら価値が下がります。」
言い方はちょっとひどいが人質に怪我をさせていないならそれでいい。時雨はこっちに来るとき、賢治とある約束をしていた。もしも、人質に怪我をさせてしまった場合は時雨は世にも恐ろしいことに巻き込まれると賢治が断言したのだ。賢治なりにたとえるなら、目が覚めたときに目の前にドリアンが置かれているよりも恐ろしいことだそうだ。
「さて、メイドさんたちにもう一度だけ言いますが今すぐ降伏してください。」
「強がりは言わないでくださいね。どっちが降伏するんでしょうか?」
時雨はため息をついた。こっちに来てから今の今までほとんど聞き入れてくれなかったからである。そして、彼は何ごとか口の中でつぶやいた。
「何かのおまじないですか?」
校長室はその後、紫の旋風が巻き起こり、スパァァン!!という音が大量に響き渡った。
賢治は古ぼけたラジオを生徒会室で聴いていた。しかし、意外に中身は新品らしく、先ほどから電波の受信も好調である。一見するとザ○だが、性能はジオ○グに違いない。
『ええ、先ほどからお伝えしていますが・・・反乱を起こしていたメイドたちは何者かにすべて捕らえられたようです。』
賢治は一人安心したようなため息をついた。
ところ変わって、先ほどからテレビ局なんかが大勢来ている学校。連行されているメイドたちはほとんど怪我をしていなかった。最後に出てくるメイドたちは頭の上に大きなたんこぶを作っていたがそれ以外は別に怪我などしていなかった。
「・・・はぁ、何とかなったからいいけど・・・。どうやって家に帰ろうか?」
誰に聞くでもなく、時雨は学校の屋上でため息をついた。こっちにきたのはいいが、帰り方がさっぱりである。人質も怪我をさせることなく助けることができたし、相手に怪我を負わせることもほとんどなく終了させることができた。
「・・・空が紅いな・・・」
昼なのか、あたりは明るいというより、地面が蒼いので変わっていると思えば変わっている。もう一度時雨はため息を出した。すると、屋上の扉が開いて誰かがやってきた。屋上に隠れる場所はほとんどないので相手はすぐに時雨を見つけた。
「おお、あなたがわが娘を助けてくれたのですね?」
「・・・失礼ですが、あなたは焔さんのお父さんですか?」
時雨は自分が助けた少女が魔王の娘なら、自分の知り合いの焔が魔王の娘であろうことも知っていたのでそう聞いてみた。
「焔の知り合いでしたか・・・とりあえずありがとうございます。」
「いえ、ただ友達に頼まれただけですから・・・」
時雨としてはその友達に置き去りを食らったような感じだが、結果としては人助けができたのでよしとすることにした。
「ぜひとも、感謝したいので私の家に来てくれませんか?」
これがゲームだったら魔王の陰謀に違いない。のこのこついていった勇者は毒殺なり何なりであっさりとゲームオーバーだ。だが、時雨は勇者でもなんでもない、ただの学生さんである。
「はい、わかりました。」
こうして、時雨は魔王さんの城にまぬかれる事となった。
魔王の城はどこかのゲームみたいにとてつもなくでかく、くるまでにも時間がかかった。それは、テレビ局の人たちが誰がメイドたちを倒したのかということになり、探していたからである。時雨はこっそりと出ていくのにいろいろ気を使っているうちに時間がかかってしまったのである。まぁ、ばれずにここまで来たのはある意味幸運である。
「ようこそ、どうぞこちらです。」
魔王じきじきに出迎えられて時雨は戸惑った。だが、素直についていくことにして、奥の広間に案内された。さすが魔王城だけあってかなりの大きさである。
「みんな、ハデスの命の恩人がついたぞ!!挨拶しなさい。」
席に座っている時雨のものに何人かの少女が現れる。
「いやぁ、まだ実はいるのですが、ほとんどが家を出ているのです。なんでも自立したいらしいので・・・」
このおじさんは魔王ではないと時雨は思った。こんな照れ屋のおじさんを倒した日には彼を慕っている配下の人たちが勇者をしとめるに違いない。
「ハデスっていいます。助けてくれてありがとうございます。」
まず先に挨拶したのは時雨が助けた少女であった。しかし、時雨はただ単に彼女の縄を解いてあげただけなのでこれを助けてあげたかどうかは人それぞれである。ハデスは銀色の髪の毛を長く伸ばしていて、目はくりくりしている。緊張しているのか、顔は真っ赤である。
「・・・・キシスだ・・・・」
時雨にそうそっけなく答えたのはキシスと名乗る少女であった。髪はやはり銀色だが、短く切られている。その目はまるで獲物を狙うハンターに似ている。
「イクスよ。よろしくね。」
最後に挨拶した少女は彼女たちの中で一番年長のようだ。しっかりしているようで、時雨に対しては尊敬と警戒の色をにじましている。
「どうも、天道時 時雨っていいます。」
時雨もこの人たちとはほとんどかかわることはないだろうと思い、名前だけを出した。
あまりいい雰囲気とはいかないようだ。時雨はここに来てわずか数分で出て行きたくなった。まぁ、彼としてもさっさと人間界に戻って明日の予習とかもしないといろいろ後で面倒になってきそうなのだ。彼は勇者ではなく、明日の予習が大切な学生である。とりあえず、時雨はこの城を出て行く前に魔王に聞いた。
「あの、人間界に戻る方法ありますか?」
「え・・・すみませんが・・・それはわかりませんね。」
「そうですか、それでは僕は明日の予習があるのでおいとまさせてもらいますね。」
時雨は睨むようなキシスの視線から逃げるように立ち上がった。
「ほんとにお前があのメイドたちを一人で倒したのか?」
「こら、キシス!!」
魔王はそういったが、キシスの目には狙いをつけた狙撃主のような光が宿っていた。




