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罪人天使  作者: 雨月
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しょのじゅうろく ああ、無常の世の中・・・

エロ本の件はとりあえず涼が黙ってくれたらしい。あれから少したつが蕾と美奈は何も時雨に言ってこない。いや、嬉しい事だが、時雨としてはちょっと危険な状態である。なぜ危険な状況かと言うと・・・


「時雨、今日も一緒にお風呂。」


「う、うん。いいよ。」


 時雨は見つかったあの日から涼の言う事を素直に聞いていた。あの日、時雨が完璧な時雨となった日の夜のことである。時雨が一人でテレビを見ていると涼が時雨のもとにやってきた。


「時雨、お風呂一緒に入ろうよ?」


「は・・・・・なんで?」


「・・・・本。どうしようかなぁ。」


「ごいっしょさせてもらいます。」


 こうなった時雨は今日も涼の背中を流している。できるだけ前に意識しないように真っ白な方向を向いてがんばっているのだ。


「・・・・涼、さすがにやばいんじゃないの?」


「大丈夫だって、兄妹なんだし・・・・。」


 力は戻ったって前の時雨の記憶はほとんど残っていないことに時雨は気が付いた。ああ、なんだか不幸だとも時雨は思った。


「さ、そろそろあがろうか?」


 涼の意見は絶対だ。時雨に拒否権など存在していないと思われる。時雨もこれ以上、悪化しないようにいろいろと努力もしていたが無駄だったので誰かに相談することにした。


「賢治、実は相談したいことがあるんだよ。」


「なんだ、どうせ涼ちゃんのことだろう?」


 一応賢治にこれまでの経緯を詳しく話して何かいい案はないかと期待する。頼られている賢治は珍しく顔をしかめて本気で考えているようだ。そして、彼はこう言った。


「・・・・時雨君、涼ちゃんに何がしたいのかはっきり聞いてみたらどうかな?もしもこれで駄目だったら・・・・・諦めるしかないよ。」


「・・・・わかった。」


 時雨は一応、賢治に礼を言った。この世のすべてを知ってそうな彼でもさすがに難題であったようだ。というより、彼が時雨にあの本をプレゼントしようとしなければ今の状況にはなっていなかったかもしれない。まぁ、Ifなんてありえないと思うが・・・・。

 その日の昼休みに時雨は涼と一緒に(二人で)弁当を食べることとなっていた。時雨が決めたわけではないことをいっておく。


「はい、時雨あーん。」


「・・・・あーん・・・」


 中庭でそれぞれ弁当を食べている辺りの男子生徒・・・・ほぼこの学校の全員が時雨に殺気を向けている。涼や蕾はこの学校ではなかなかの人気らしい。


「ねぇ、涼・・・・何がしたいの?」


「え、ただ時雨といっしょにいたいだけだよ。」


 それ以上、時雨はしゃべる事ができなかった。まぁ、理由はいろいろとあったのだが・・・そのほとんどが回りの男子生徒からの異常なまでの視線であった。こわい、こわすぎる。



「ただいまぁ。」


 時雨は先に帰宅。

涼と蕾は部活に入っているらしく、時雨よりも帰ってくるのが遅い。両親も近頃顔なんて見てないし、家にいるのは美奈と新型トイレだけである。しかし、普段はすでに美奈がお買い物から帰ってきている時間帯のはずだが、返事がなかった。靴はあるのだからこの家の中にいるはずである。とりあえず時雨は自分の部屋に荷物を置きにいこうとして美奈と会った。


「あ、美奈さんただいま・・・?」


 美奈の顔は凄く嬉しそうだ。なんだかとってもいいことがあったのかもしれませんなぁ。


「・・・時雨様、あなたが普通の男の子みたいになってとってもうれしいですよ。」


「はぁ?どうかしたんですか?」


 そして、美奈はエプロンの大きなポケットの中からとある本を取り出した・・・。


「うわぁ、そ・・・それは!!」


 年齢制限のかかっている本である。この前涼が時雨に渡した本ではない。あの本は涼が没収してしまった。それは昨日、話を聞いて哀れんでくれた時雨の級友の一人が彼に貸した物であった。


「いやぁ、やっぱりメイドさんが好きだったんですね?安心しましたよ。今日、時雨様の部屋を掃除してたら出てきたんですよ。」


 時雨は予想だにしない危機的状況により、頭の中が真っ白になってしまい、何も言う事ができない。ただ、いつかはわからないが・・・前にもこんなことがあった気がすると直感的に思ったのであった。


「・・・その、わたしはいいですよ?」


 はにかみながら美奈はそういうと、顔を真っ赤にして去っていった。後に残されたのは真っ白になった時雨であった。だが、彼の不幸はそれだけでは終わらない。




「兄さん、ちょっと話があるんだけど・・・・。」


 蕾があの後すぐに帰ってきて部屋で泣いている時雨のもとにやってきた。その顔は赤い。時雨は美奈か涼が本のことを蕾にも話してしまったのかと思った。


「ううぅ、どうしたの蕾?」


「これ、兄さんのお友達から兄さんに渡すように言われたんだ。」


 それは時雨の安否を気にした友達からのものだった。黒い袋には紙が張っており、それにはがんばれと激励の言葉が書いてあった。


「・・・その、兄さん・・・確かにそんなものを見るのもいいと思うけど・・・」


「?」


 蕾はそんな意味不明なことを言っているが時雨にはやはり伝わらない。


「あんまりそんなの見てたら頭が駄目になるよ!私がいるからいいじゃない!!」


 時雨にそういって蕾は部屋からかけていった。はてなマークを頭に浮かべて時雨はその袋の中身を確認して再び固まった。中身は別の級友からのムフフゥなプレゼントであった。あえてここでは黙っておこう。どうやら蕾はそれを見てしまったようだ。


 次の日、時雨の目は真っ赤であった。徹夜で泣いていたと思われる。そりゃまぁ、家族も同然の人たち全員にばれてしまうのもかわいそうなものだ。どんまい。


 さぁて、これからだんだん時雨は大変なことになっていきます。これはまだまだ伏線?だと思っていただきたいです。

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