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罪人天使  作者: 雨月
11/31

しょのじゅういち 形となった罪(中編)

紫の羽を持つ少年は、世界が滅びるそのときに色々と願った。そして、最後に自分自身を裁きたいと思った。しかし、なかなかさばく方法がわからなかった。いよいよ、世界が消える瞬間に彼が選んだことは自分自身ではなくなることであった。そして、客観的に自分を見るのが自分の役割と決めたのである。



 遅刻してしまって時雨は先生に朝のホームルームが終わった後、教室の前に呼び出されて注意を受けたのであった。


「もし、もう一度遅刻してしまったら君にはトイレ掃除を命じよう。分かったかね、天道時クン?所詮君は一介の生徒に過ぎないのだよ。そこの所をわきまえたまえ。」


 今この先生はとっても機嫌が悪い。しかもその原因は時雨にある。廊下を走っていて曲がり角でぶつかった担任の先生をぶっ飛ばして壁に磔にしてしまったのだ。あまつさえ、廊下に倒れた先生を涼が踏んづけていった。先生の頭にはたんこぶがついているのだ。


「・・・はい、すいません。本当にすいません。」


「うむ、分かればよろしい。それではみんな、久しぶりに席替えをしようか?」


 この先生は非常に変わっており、思い立ったが吉日としているらしく、こんなことをよくするらしい。一時間目の彼による理科の授業は席替えによって消えそうである。なぜなら、くじ引きによる平等な結果を得るまでこの席替えは終わりを迎えないのだ。時として、男子  

対女子の壮絶な戦いがあったりするのだ。

(男子が教室の中心にかたまって陣取った場合、隠し撮りなどをすると亜美が言って壮絶な殴り合いが始まるのだ。結果としては男子が一度も勝った事はない。)そして、男子は大体教室の隅に配置が決定されて有無を言えなくなった状態の男子はそこで悔し涙を流すのである。しかし、男子がかたまっていなければ問題はないらしい。


「さ、それではレディーファーストで女子の皆様からどうぞひいてください。」


「せんせーそれ卑怯だ!」


「そうだそうだ」


「男女平等を求めます!!」


 時雨、賢治以外のこの教室の男子が騒ぐが先生は動じない。


「ふふふ、なんとでも言いたまえ。女にでもなってきたら君たちに先にひかしてあげよう。」


 そして、大体みんなの配置が決まった所で先程騒いでいた男子が立ち上がる。


「ハーレムは俺のものだ!!」


 一人目がひいたが、結果は廊下側の一番後ろである。残念!


「はーっははっは!!あまいわぁ!!」


 二人目、結果はまぁ、ドンマイ。最前列の真ん中。先生と目を合わせる機会がとても多い場所である。無念!!


「みんなぁ、ゴメン!!俺がみんなの分まで幸せになるよ!!」


 三人目は窓側の一番後ろ、ポジション的には結構いいところだが、悲しいかな?近くに座っている女子は彼よりも背が高いので黒板の文字なんかも見えない。頑張れ、青少年。


「じゃあ、先にひくよ時雨君。」


 ラストの手前である賢治はくじをひく。残っているのは教室のど真ん中と真ん中の一番後ろである。そして、賢治は後者の方であった。

 必然的に賢治を除くほかの男子から殺気立ったものが時雨に送られる。着信拒否をしたい気分になるに違いない。


「さ、誰か今回文句がある人は前に出たまえ。闘技場は用意してあるよ。」


 教室は両サイドに机が既に運ばれている。しかし、女子側からは特に文句はなかった。そして、男子の方からは三名が名乗り出た。


「「「なめんなやぁ!『紅時雨』かなんか知らんがただでは済まさん!!覚悟しろ!!」」」


 時雨めがけて三人は立て一列に突っ込んでいく。


「「「ジェットストリー・・・」」」


「なんかよく分からないけど、ごめん!!」


 そんな三人の足に滑り込むような状態で時雨は彼らに突っ込み、時雨以外の三人はそのまま廊下の壁に激突。保健室行きとなった。


「さ、みんな。今回は意外と早く済んでよかったよかった。それでは授業を始めたいから机を移動させて席についてくれたまえ。」


 がたがたと机を鳴らしながら時雨は先ほど保健室に運ばれた三人の分とそれを連れて行った賢治(右手、左手、口にくわえて持っていった。)の分の机も運んであげる。教室の中心に置かれた自分の席に座るとギョッとした。


 右には亜美、左には高仲が座っているのだ。氷雨は賢治の右隣である。


「いやぁ、偶然って恐いね。時雨君。」


「そうですね、恐いですよね時雨さん。」


 何かを企んでいる顔になっている二人の顔を見て時雨は言いようのない不安にかられた。今すぐここからきえてしまいたい衝動にもかられたらしい。なんとなくあせたらたらで両方の隣人に笑いかける。


「あははははは・・・さっき見たときはまったくべつの人物だったようなきがしたんだけど・・・」


「気のせい気のせい。」


「そうですよ、気にしない気にしない。」


 その顔には間違いなく嘘をついていますと書かれていた。


「それより時雨君、今日の放課後賢治から頼まれていることやるんでしょ?」


「私たちが手伝いますから頑張りましょう!」


 二人はその場でエイエイオーと大声でわめき散らしていたので先生にしかられたのであった。



 そして、放課後となる。犯人が誰だか全くわからないので町をうろつく事にした。時雨としては二人に協力はしてもらいたくない。


「ねぇ、どうしてもやるの?」


「大丈夫ですよ、今回は三人いるんですから絶対勝てますって!!」


 先に行く亜美に聞こえないように時雨に話し掛ける高仲はちょっと真剣な顔になった。


「実はですね、以前賢治さんに頼まれているんですよ。そのときは私と亜美さんだけだったんですがなかなか犯人を見る事無く今にいたるわけなんです。」


「え、高仲さんが断罪天使だって言うことを知ってるの?」


 時雨としては賢治と亜美は高仲の事を知っているとはあまり思えなかった。高仲は肯定のしぐさを取って時雨に真実を打ち明けることにした。


「いやぁ、実は私は天使化、使えないんですよ。だから多分二人には分かっていないと思いますよ。」


 別に隠す必要はないだろうが天使化が使えないのはどうやら恥ずかしいことらしい。


 結局、時雨たちは別に何も見つけられないまま本日は解散となったのであった。


「ただいまぁ。」


 歩き疲れた時雨はそんな間延びした声をあげながら帰宅の意図を伝える。そして、パタパタと歩く音が聞こえて美奈がやってきた。


「はいおかえりなさい時雨様!!」


 どことなく慌てているような様子だったが、時雨はそこまで気にせずに家に入った。美奈はそんな時雨に何か言おうとしているようであった。


「あ、あのですね時雨様・・・」


 チリリリリーン


 自宅の電話が鳴り響き、時雨は近くにあった家の電話を素早くとる。(今頃こんな古そうな音がする電話はどこにも置いていないと思われる。)


「もしもし?天道時です。」


『あー、時雨時雨かい?私だよ私。』


「・・・いまどきそんな手に引っかかる人はいませんよ。」


『そうかい?お母さんはてっきり引っかかると思ったんだけどねぇ・・そんなことよりちょっと仕事が忙しくなって家にかえれそうにないんだ。悪いけど頑張ってくれたまえ。』


 時雨の母はそう言って電話をきった。昔からそうだったので時雨はさしもきにしない様子である。


「美奈さん、実は母さんと父さんはなかなか帰ってこれなくなるんだってさ。」


 仕事場が一緒の二人がそろって帰って来ない事はよくあるとこの前時雨は涼と蕾に聞いていた。そのことを美奈に伝えると今度は美奈が口を開いた。


「じ、実はですね時雨様!」


 テテッテテレッテ テン


 今度は時雨の携帯が鳴り響く。どうやら賢治からの着信らしい。


「美奈さん、ちょっとゴメンね。」


「ええ、いいですよ。」


『時雨君、見回りの方はどうだったかな?』


 それから賢治と色々とはなして電話をきる。最後の方の賢治は全くその事とは関係のない話をしていたし、時雨もそろそろげっそりとやつれたような顔になっていた。ここでようやく時雨は美奈を見た。


「・・・時雨様、驚かないで欲しいのですが、時雨様が先日はなしていた物騒な方に涼様と蕾様が襲われました。」


「うえぇ?」


 時雨はそう言ってびっくりした。そりゃもうそのときの驚きようは凄いものだった。


「先程おつかいに行っていた私が見たものはひと気のない道で誰かが襲われていた事です。襲っている人物にありったけの攻撃を仕掛けておきました。そして、私は倒れている人物を助けたのです。私はびっくりしました。なぜなら・・・」


 だだだだだだだだ


「うわぁぁぁん時雨!どうしよう!!」


 そう言って時雨に抱きついてきたのはみたこともない少女であった。いや、どこかで見たような顔であった。


「涼様はこんなに小さくなっていたのです。」


 美奈はそう言ってエプロンのポケットから白いレースのハンカチを出して目におしあてた。そして、片方の手で時雨の腹の辺りに顔をうずめている涼の頭の後ろの方をつついた。


 にょき


 するとどうだろうか、涼の頭から猫の耳が生えたのだ。それを見た途端、美奈は声を出して笑い出してしまった。


「わ、わらうなぁ〜」


 いくぶん幼くなってしまった涼は顔を赤くしながら美奈にけりを入れる。時雨はその光景を見ながら唖然として自分の妹を見ていた。


「ど、どうなってんの?」


 いまや壁を叩いてひびを入れながら笑っている美奈と顔を真っ赤にして怒っている小さくなっている涼を見て、時雨は混乱していた。そりゃそうだろうさっきは襲われたと言ったのでびっくりしたがこれはなんだろうか?そんな時雨に状況を教えてくれる人物は一応いた。


「兄さん、おかえり。」


 廊下の向こうから現われた蕾の顔はちょっと青い。蕾は時雨に何があったかを説明してくれた。


「掃除が終わった後に一緒に帰っていたら上空から音がしたんだ。上を向こうとしたら急に意識が遠のいてしまって起きたら家のベッドの上、隣でねぇさんが小さくなって寝てたんだよ。美奈さんから話を聞いてたらね、ねぇさんがおきたんだ。起きたねぇさんの顔が赤かったから美奈さんが頭を触ったら・・・こうなったんだよ。」


 とりあえず、美奈さんのつぼにはまったようだ。凄い笑いようである。時雨は怒っている涼の頭に自分の手を置いた。これでとりあえずは耳が見えなくなったであろう。


「ひーっ、ひーっ。あーすいませんね涼様。時雨様、安心してください。別に命に関わるようなことにはならないと思います。」


 美奈はそう言ってその場から逃げるように立ち去った。涼の顔をこれ以上見ていたら美奈は壊れてしまうだろう。顎が外れてしまうに違いない。


「・・・じゃ、私も眠いから寝るね。」


 時雨の脇を通るときに蕾は時雨に耳打ちしていった。


「兄さん、今のねぇさんはどことなく幼くなっているからよろしくね。もし、私が同じようになったらそのときもよろしく。」


 そう言って自分の部屋に戻って行った。廊下に残されたのは時雨と頭に耳の生えている涼だけである。


「しぐれぇ、いつまで頭にておいてんだよぉ。」


 どことなくふて腐れたような感じで時雨を下から見る涼を見て彼は笑いそうになった。無論、彼の場合は心の中で笑うことにした。


「ごめんごめん、しかし本当に小さくなったね。」


 少々思うことがあるのだが、ここで時雨がたずねることは違うことの方がいいと思う。仮にも騒がれている不審者による犯行に違いないのに被害者に掛ける言葉が違うだろう。


「襲われたのに心配もしてくれないの?」


 そして、被害者はその事を心配して欲しかったようだ。ほっぺたを膨らませて怒っている。怒りの矛先を向けられて時雨は蕾が言った事を思い出した。


(ああ、なるほど、これは少々幼い仕草だなぁ。)


 のほほんと涼を見ていて時雨はそう思ったのだが、とりあえずは涼の機嫌を直すことにした。


「ああ、ゴメンゴメン。僕が悪かったよ。何かされなかった?」


 だが、これは間違いである。


「さっき蕾の説明聞いてなかったの?されたからこんなに小さくなったの!!」


 ぜひとも彼女には牛乳を飲ませるべきだ。カリカリしていると人に八つ当たりしたくなってしまう。時雨はそんな怒っている自分の妹を左手で持ち上げた。


「まぁ、元気そうでよかったよ。身長が小さくなってるから困ったことがあったらなんでも行ってね。」


「・・・わかったよ。」


 やはりふて腐れたような幹事で時雨に返事をして涼は時雨に連れて行かれたのであった。



 そして、外は暗くなり雨が降り始めた。未だに氷雨が帰って来ないので時雨が心配していると涼がやってきた。テレビを見ている時雨の膝の上に載ってテレビを見始める。時雨がそんな涼をみていると唐突に涼は時雨を見上げて不機嫌そうに言った。


「何か悪い?」


「い、いいや、ただ・・・」


 時雨は内心焦っていた。何故焦っていたか自分でも分からないがとりあえず焦っていた。


「・・・ただ?」


「ほら、そのぉ、あのぉ。かわいいなぁと思っただけだよ。」


 時雨はとりあえず思っていることを口にした。


「か、かわいい?私が?」


 顔を赤くした涼が時雨に問い返してくる。時雨は首だけを動かして肯定の仕草をして再びテレビを見始めた。涼もテレビを見るためか時雨が向いている方向を見る。そして、時雨に背中を預ける。


「・・・小さくなったから甘えていいよね?」


「いや、別にいいけどネ。」


 時雨は昔氷雨にしていたようにポンと涼の頭に手を乗せる。時雨は忘れていたわけではない。


にょき


「うわぁ!」


 引っ込んでいた耳が再び時雨の前に現われて時雨は驚く。そんな時雨を見て笑う涼は笑っていた。そこで時雨の携帯が鳴り出した。相手は賢治である。結構時雨の番号などを知っている人物は多いが今のところかけてくるのは小数の人物だけである。


『時雨君、今すぐ学校に来てくれ。犯人がわかったぞ!!それじゃ。』


ガチャ


 一方的にそれだけを言うと電話を切ってしまった。まだ時雨はもしもしとも言っていない。これまた失礼極まりない行為である。しかし、時雨は先程賢治が言ったことを頭で考えていた。


「涼、ちょっと行ってくるよ。」


「なに?解決編?」


「多分ね・・・」


 時雨はそう言って涼の頭をなでて傘も持たずに家を飛び出したのであった。ここから学校まで少し時間があるが、幸いまだ雨は小雨である。


 学校に到着するとまだ残っている生徒がいた。まぁ、一人だけだったが・・・


「時雨君、犯人は保健室の先生だ。」


 時雨にそう言った賢治はなんだかニヤニヤしている。これまた不可思議である。そんな賢治は時雨に話し始めた。


「あの先生はこの世界をある意味で征服しようと思っていたんだ。」


 近頃世界を征服するのがはやっているのであろうか?あるメイドに話したらもしかしたら手伝うかもしれない。


「ある意味って何?」


「全人類を獣耳にすることだ!」


 時雨とニヤニヤしている賢治の間に沈黙が訪れた。時雨はある意味ビビって声が出ない。まぁ、しょうがないだろう。


「彼は今保健室にいると思うから君は時間を稼いでいてくれ。僕はそのうちに色々と準備をしてそっちに向かうよ。それじゃ、がんばってね。」


 賢治はそう言って暗闇の中に消えてしまった。残された時雨にどうやら拒否権はないらしく、世界制服を企んでいる人物の本拠地の元に乗り込むことにした。


 校舎の中は異様に静かで、保健室の所まで誰とも会うことはなかった。保健室は明かりが漏れていて、どことなく怪しい。


「入りたまえ。」


 時雨は保健室の中から聞こえる声に従い扉を開けた。時雨は保健室の先生の顔を知らない。初めて見る保健室の先生は凄かった。そりゃあもう、夢に出てこられたら時雨はちょっとビビルかも知れない。


「やぁ、初めまして・・・いや、この前あったから久しぶりかな?」


 右目に眼帯をしていて、服は白色。だが、いつぞやの時代の貴族が着るような格好でなんともきざったらしい。


「・・・・今日、先生は誰かを襲いませんでしたか?」


 ここで、犯人だったら知らないなり何なりいっただろうがこの先生は変わっていた。


「別にあれは襲ったわけではない。それに私が欲しいのは血だ。多くの種族の血が欲しいのだ。飲み比べてどの種族が一番なのか決めたいのだよ。と言うのは冗談だ。私はこの世界が欲しいのだ。邪魔するものは全て倒すし、負けたものには私が作り上げたこの薬を打ち込むのだ。」


 高らかに笑う保健の先生に時雨は聞いた。


「・・・・ちなみに何の薬ですか?」


 のりのりで機嫌がよかった先生は答えてくれた。


「耳が生えるくすりさ!ふはははは!!」


 時雨はついでに聞く事にした。


「それを飲んだら小さくなったりするんですか?」


 しかし、答えは意外なものだった。


「いいや、そんなことはない。私はそんな趣味ではないのでね。第一、人を小さくしてしまう薬を作ったのは黒い人たちだろうに。」


 あえて彼が行ったことを流すこととして時雨は先を続けた。


「じゃ、じゃあ、その薬が効いても小さくなったりしないんですか?」


「ああ、副作用でもそんなことはおきないと思うよ。もしかしたらそうかもしれないが・・・私が作るのは若返る薬ではないからちょっと分からないな。」


 そこで彼は手を鳴らして時雨の目をしかと見据えてきた。


「ところで君は何しに来たのかな?具合でも悪いのかい?それとも・・・私の仲間になりに来たのかな。」


「いいえ、あなたを捕まえに来ました。」


 時雨も先生を見てまじめに言った。これまで彼は様々な人物を倒してきたが、今回はちょっときつそうである。


「そうかいそうかい、若人は元気があっていいね。さて、他にききたいことは何かないかな?君が運がよければ天国に悪ければ地獄に行く前に最後に教えてあげよう。」


「なぜ、女子を襲ったんですか?」


 時雨はなるべく時間を稼ぐためにその話題に触れた。しかし、その思惑は外れるのである。


「いや、男の血不味かったんだよ。うん、飲んだ次の日から一週間は寝込んでたんだよ。」


 それで話は終わりと言ったように時雨に近付き肩に手を置く。そして、時雨を保健室から出した。


「さて、一応最後に私からも質問だ。私と一緒に世界を猫耳とかで埋め尽くさないかね?第二の天国ができるよ。」


 時雨は律儀な性格でもあるのでその質問に真剣に考えた。


(うーん、たしかに涼のあれをみたときはかわいいと思ったけど・・・・男もするのはちょっと怖いなぁ。やっぱりやめておいたほうがいいんじゃないかな?)


「遠慮しておきます。天国ができるかもしれませんが一緒に地獄も出来そうですから・・・」


 勿論、先生が行ったのは男は除外されている。悲しいかな・・彼がもう少し詳しく説明していたら時雨は彼の仲間になっていたかもしれない。


「そうか・・・それでは君に消えてもらおう。」


 そう言って時雨からはなれて広い廊下の真ん中で止まる。時雨が瞬きした瞬間には彼の背中から羽が生えていた。目は赤く染まっており、吸血鬼の本領発揮と言った所だろうか?

 どこからか注射器を取り出して(大きさはしゃれにならない。多分世界で一番でかいだろう。)時雨にその切っ先を向ける。

 そして、時雨も天使化をしようとして


『我は、罪を背負いし哀しみのて・・・あたぁ。』


 舌をかんだ。慌てて言おうとしたのが間違いだろう。


その隙を当然のことながら先生は待ってはくれたりしない。それに注射をさすときはぶすっといくものだ。針は時雨の征服を貫き、肩に刺さる。


「くうぅ。」


 急いで肩に刺さっている部分を引き出そうとしたが間に合わずに今度は体を吹っ飛ばされた。そして、時雨の体は開いている窓から外に火縄くぐりをしているライオンみたいに華麗に放り出された。


「うわぁ。」


 雨は先程より強くなったのか辺りはもの凄く暗い。次に時雨の目に写ったのは赤く光る目と子供が嫌いなお医者さんの道具だった。再び注射器は時雨心臓を貫こうとして・・・何かに阻まれた。


「・・・・氷雨?」


 紫色の羽が時雨の視界を包み、氷雨と呼ばれた人物が時雨のほうをちらりと見る。だが、すぐに前を見て手に持っている何かで注射器をいとも簡単に破壊。そして注射器を壊した何かを相手に叩きつける。


パシーン!!


 雨の音がうるさいのに時雨の耳にはそんな響きが聞こえた。そして、相手は校舎の壁に思いっきりぶつかって気絶してしまったようだ。氷雨と思われる人物はそのまま羽をはためかして闇夜の空に消えてしまった。右腕に大きなハリセンを持って・・・・


 ふーい、なんだか微妙にコメディーから脱線しているような気がしますね。さて、今回は分かる人には分かるかもしれない人物を出してみました。次回は後編を書きたいと思いますね。

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