ふたりのセカイ
行き先は愛海にまかせて、僕はついて行くだけ・・・
階段を上り・・・僕らのクラスがある三階を過ぎて、四階へ・・・
四階って・・?
四階には音楽室や美術室、
多目的ホールや書道室、
その他は特別授業の時にしか使わない教室があるんだけど・・・
この階に用があるのかな? ・・・なにせ、この建物は四階までだし・・・
・・・と、ちょっとトイレに行きたくなったな・・・
和:「愛海、どこにいこうとしてるの? ・・・あと、ちょっとトイレに寄ってもいいかな?」
愛海:「・・・行き先は、秘密・・・トイレは・・・ってそんなこと聞かないでよ! 待ってるから、行ってきて!」
・・・女子に、トイレ行っていい?・・・は、普通ないよな・・・
・・・言ってから気付いた僕だった・・・
「ふぅ・・・」
僕が用を足して、トイレから出ると、そこに愛海の姿は見当たらなかった・・・
・・・どこに行ったんだ?待ってるって言っていたよな・・・
・・・・・・・・
・・・ふと、奥へと続く廊下の先をみると、一瞬だけだけど、人影があったような気がした・・・
・・・そこで僕は、あの時のことを思い出した・・・
そう、この光景を前に一度見たことがある・・・あの時と一緒だ。
僕らが・・・出会った・・・あの時と・・・
和樹は、あの時の記憶と今この時を重ねて、そこへ向かうためにゆっくり歩き出した――――
入学式後・・・・今思えば懐かしい記憶・・・
学園自体がその日は一般開放されていた。僕は幼いながら、好奇心旺盛で、探検気分で校舎をウロチョロしていたっけ・・・
・・僕はいろいろ見まわっていて、・・・そんな時だった・・・たなびく綺麗な髪が建物の中に消えていったのが、ちょうど目に入った。
僕は興味本位で追いかけた。建物の中・・・つまりは、高校の校舎だったんだけど、そこに入ると、誰も見当たらなかった・・・・
そして音が聞こえたんだ・・・階段を駆け上がる・・・あの音が、
僕も階段を上った。なぜだかわからないけど、夢中になっていた。
階段を上って、上って、・・・もう階段は上にはなかった。
ふと、振り向いてみると、また、たなびく髪が見えたと思ったら、消えた。
廊下のずっと奥・・・女の子の姿は見えなくなった。
僕は、急いで追いかけた・・・なんていうか、・・・そう身体が勝手に動いたっていう感じかな・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
廊下を走って、走って・・・奥までたどり着いた。すると、ちょうどそこは角になっていて、まだ廊下は続いていたんだ。
そして、廊下の先には三つの扉があった。・・・そして、その一つが開いていた。
僕は、その扉へ吸い込まれるように・・・身体が動いた・・・
扉の前にたって・・・その先には、さらに上へと続く階段があった。
階段の先の扉は開けっ放しになっていて・・・見えるのは、オレンジ色の・・・そらだった。
そこから僕は、ゆっくり階段を上った・・・一段一段を着実に、ゆっくりと・・・・、
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・・・・
・・・そして、僕はそこで神秘的な光景を目にしたんだ――――
――――――白とオレンジ――――― 二色のセカイ ―――
建物自体が真っ白のお城みたいだったから、すごく綺麗とは思っていたけれど、それに、
夕暮れ時のオレンジ色・・・かっこよく言えば、黄金色に輝くソラとそれとが、僕にはあまりにも感動的な光景で、神秘的に見えたんだ・・・。
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・・・・
――――――そして、そのセカイに―――――
―――――――僕の見ているセカイの中心に―――――――
――――彼女がいた――――
――――まるで妖精のように、そこにいた――――――
・・・・それが、僕と彼女・・・つまり愛海との出会い・・・
想い出の場所・・・
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・・・今そこは、白と蒼・・・ちょっとかっこよく言うと、ブルースカイが広がっている・・・屋上な
んて特に何もないから、普段は誰も行かないような所だ・・・行き方も面倒だしね。
・・・・・・・
・・・・・
・・・けれど、あの時、僕と愛海は知ったけど、ここからの眺めは最高なんだ。
愛海は、淵に立って、下に広がっている・・・僕たちが住んでいるこの広い町を眺めている。
僕は上ってきた階段の扉を閉めて、愛海に近づく・・・
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・・・・・・
・・・
・・・・私、・・・・が好き・・・