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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
1章.道連れ転生発覚からの運命共同体編

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1-08.調査報告



 ヨッシー・ラッド・セバスの転生三人組が、例の木陰に集まっている。


 各自の相互理解・現状把握のための雑談を経て、いよいよ本題。


 三人での集会も4回目。

 前回から一週間をかけ、各自普段の生活の合間に学院探索科の学費等および探索者の実入りを調査してきた。


 当人が学院の幼年科に通い、かつ、探索者の兄もいるという立場上、情報の質・量ともに最良だろうと、まずはひっつめ髪のセバスが指名される。


「えー、探索科の学費が1季あたりクオルタ銀貨1枚」


 探索科の寮費(朝夕の食事込み)が、これも1季あたりクオルタ銀貨1枚。

 筆記用具等自弁すべきもの、ピンキリ。

 生活費、ピンキリ。


 ひとくくりに平民・庶民と言っても、そのなかでも貧富の差が激しい社会世相がある。


 あくまで目安だが、クオルタ銀貨(=大銅貨6枚)とは、特に技能がない労働者でも週給として見込める程度の金銭価値となる。

 デュオデクル銀貨(=大銅貨2枚)と並び、庶民でも馴染みのある銀貨である。


 どちらの銀貨も見た目は黒ずんだものがほとんどだが、これは銀が硫黄分と反応して硫化銀に変化しているため。

 むしろ銀色ピッカピカだと贋金疑惑が先に立つくらい。


「というわけで、ピンキリすぎるのだけど、学院だけなら確かに1季あたりクオルタ銀貨数枚で足りそうです」


 為政者にとってダンジョンとは、事実上の鉱山と認識されている。

 有望なダンジョン資源の回収(採掘)は国策でもあり、王家・国として学院の探索科に補助金を投入。


 ただし、無条件なほどこしではないので、平民のいわば下層出身であっても「がんばれば払えなくもない」ラインは徴収。

 それが1季あたりクオルタ銀貨1枚。


 別に王家・国が損をしているわけでもない。


 投入した補助金分は、3年くらいまともな探索者として活動してくれれば回収できるという試算もある。

 アクヤのダンジョンに、それなりに学のある探索者が存在するという影響力プレゼンスも、金額には換算できない価値がある。


 投資する以上、そこに何らかの思惑があるのは当然なのだ。


 視点を変えて三人にとっての大事は、メリットを享受でき、自分たちにとってデメリットがないか極小か。


「知識分を脇に置いても、教練で指導される剣術や体術だけでも、街の道場に通うこと考えたら破格だと思います」


 では、なぜ新規探索者は全員学院に入らないのか?


 これも当然の疑問だが、行政の用意した援助や補助金の周知・認知やアクセス問題は、それこそ前世社会でも厳として存在していた。


 学院の存在を知らない。

 少し前までのラッドやヨッシーもこの部類だった。


 学院の存在は知っているが、探索科は知らない。メリットを調べていない。

 そも、調べ方もわからないから。

 教えてくれる人もいない。


 人は、知らないものは意識しようがないし、手を伸ばすこともできない。


 さらに、文盲もんもうがそれなりにいる社会で、最低限とはいえ読み書き計算能力が要求される時点でどうしてもね。


 結果、学院の探索科には、アクヤ領だけでなく近領からも探索者を目指す同世代の上澄みが集うこととなる。



   ☆



 角刈りのラッド議長が話を進める。


「探索科に在学するための費用はわかった。次の疑問はそれだけの額を探索者活動で稼げるのか、だな」


 探索者の収入、ピンキリ。

 探索者の支出、ピンキリ。


「自分の調べた範囲だと、聞こえてくるのは威勢のいい話ばっかり。けど実際にみんながみんな、いつもいつも、そんなに儲かってるわきゃあねえ」


 口コミで伝わるのは、武勇伝か陰口かの両極端という。


 ラッドの周辺はまっとうな木工職人のコミュニティであり、いわばヤクザ者の探索者界隈とは縁遠い。


 扱っている品物が家庭小物や家具というのも大きい。

 それらは原則として小売店に卸すので、工房が最終顧客と対応することはない。


 成功者が家を買ったので家具類一式オーダーメイド、というような時でもないと探索者との間に接点がないのだ。


 その点、雑な短髪のヨッシーは身近に探索者がいた。


「養護院の先輩探索者曰く、食えはする」


 ただし、と続く。


「養護院育ちだから最低限の算術はできるはずなんだけど、計数・金銭感覚がプアなんだ」


 短い期間でアクセスできた相手ということで、ヨッシーの上の世代、せいぜい13~14歳くらいまでの数人のサンプルになる。


「第一層の徘徊で、一人頭1日で小銅貨5~6枚にはなるっぽいんだが、どこまで信用できる数字かわかんない」


 1日で小銅貨5枚。

 職人としてみれば半人前以下だが、実際に半人前以下な能力と扱いの10代前半で日銭が稼げはする。


 養護院という寝床と食事がある前提でなら、確かに暮らしてはいける。

 むしろ、今回アクセスできなかったすでに養護院を出た者は、それ以上に稼いでいるから出ていったのかもしれない。


 そしてまた、養護院という庇護がなくとも、いわゆるスラムレベルに寝床と食事の質を落とせば、生きても行けるだろう。


 探索者という道が、社会のセーフティネット機能を持っていることは事実。


 家を継げない、養いきれない、ご縁がないであぶれたご新規さんの受け皿になるわけである。


「だが、探索者が溢れたという話は聞かないから、俺たちのようなご新規さんに匹敵するだけの数が、毎年脱落か引退している、と」

「心温まるはなしだな、おい」


 乳幼児の間に半分は死ぬ。

 半人前の大人が大人になるまでの間にもじんわりと数を減らす。

 大人だって病気やケガ、理不尽な出来事と無縁ではない。


 死が身近な時代、社会なのだ。



   ☆



 クオルタ銀貨1枚は大銅貨6枚相当で、小銅貨にすれば72枚。


「1日小銅貨6枚なら12日、寮費や生活費こみでクオルタ銀貨4枚としても48日目安。割と現実味出てきたわ」

「あ、寮に入る前提? 僕は入る予定だけど」


 学院生はアクヤの街のみならず近隣からもやってくる。

 特に探索科では外国からの留学生ですらも受け入れる。


 となると、寝泊り過ごす場所、寮が必要になる。


 在籍者の毛色の違いから、探索科は探索科だけの寮が、それ以外は貴族科を除き一般寮が学院内に設置されている。

 貴族科の皆様はタウンハウスなり貴族科寮という名の個別の一軒家なりにお入りになられる。


「セバスは実家から通えるんでないの?」

「いやあ、一番上の兄が今年中に結婚予定なんですよ」


 ヨッシーが当然の疑問を挟めば、セバスも事情を語る。

 広い家じゃないし、お邪魔虫はクールに去るに限る。


 成人も見えている次男、現在14歳の騎士科の兄の方は学院2年次から一般寮に入寮。


 通いだと、寮住み連中相手にワンテンポ遅れるのだそうだ。

 ちなみに寮費は自分持ち。


「ベン兄さんは騎士科だけど、ヨッシーの先輩方より稼げているのは間違いないみたい」

「ベース、土台の差もありそうだなあ」


 言いたくはないがと、ラッドは出身社会階層の差を指摘。

 ヨッシー・セバスもそうだろうねと受け止める。


 養護院、ぎりぎりまで居座れば15歳の成人までは飯と寝床が与えられるが、とヨッシー。


「狙いがコネコネ・ツテツテなら、入寮するのが正解だよな」

「同じ釜の飯を食うってのは大きいからなあ」


 真面目が続くとボケずにはいられないサガ。今回はセバスの番。


「多感な時期の少年たちが一つ屋根の下、何も起こらないわけがなく」


 発生する事案はもっぱらケンカ。

 若さゆえの衝突あやまちでございます。




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