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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
1章.道連れ転生発覚からの運命共同体編

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1-04.稼ぎの方法は宿題



 夏季第一週の終わりの日、無の曜日。

 だいたい昼頃に、神殿前広場の片隅に三人の少年たちの姿があった。


 邂逅も三度目。

 気安い挨拶の後、例の木陰に移動してセバス手土産の甘瓜をありがたく食す。


 ひっつめ髪のセバスが雑な短髪のヨッシーのお腹を「タプタプ」言いながらなでた。


「養護院っていわゆる孤児院ですよね? なんでこんなに太れるんです?」

「腹に話しかけるのやめろ。飯はちゃんと食わせてくれるぞ。ただ、一部屋八人とかの集団生活だから、風邪とか一気に流行るし、そのせいで結構死んでる」


 生まれてから満10歳の【祝福の儀】までに半分は死ぬというのが庶民層の認識。

 転生三人組にもそういう死生観は今世の体感として収まっている。


 それはそれとして、前世の記憶やそれに基づく感覚との齟齬を消化中でもある。


「祭週はお祝いと神殿でお礼のお祈り、生きてますありがとうございますってな」


「いわゆる七五三の風習と根っこは同じだろうな。多産多死ってわけだ」

「僕も、物心つくまえに姉を亡くしているそうですし、そういうものなんでしょうね」


 よくて近世レベルの医療・衛生環境じゃあさもありなんとタプタプ。


 魔術的治療?

 庶民には縁がないですね。


「だから腹に話しかけるんじゃねえってばよ」



   ☆



 司会の労をとるのは角刈りのラッド。


「えー、前回、探索者になりレベル100達成で神様への借金(?)完済計画について、学院の探索科に通うべしという提案がセバス君からなされましたが、」

「議長、明らかな問題点として俺と議長には学費・生活費のあてがありません」


 ピッと腕を伸ばした挙手でもって発言に割り込むヨッシー。


「はい、ただいまヨッシー君から申し出がありましたとおり、生きてくためにはゼニがいるのであります。

 この件に関して本日までにそれぞれ思案してくるということでありましたが、いかがでしょうか。はい、セバス君」


「えー、まず、今日はこのノリで行くの?」

「いや、めんどいからここまで」

「議長ぉ!」


 目的・目標・方針を大きなものから順次掘り下げていくピラミッド構造において、最上段には必達レベル100、そのために探索者としてダンジョン攻略が掲げられている。


 知識や伝手の獲得といった学院に行くメリットは理解できるので、行けるなら行くべきだとは意見が一致している。

 その費用をどうやってまかなうのかが見えている問題。


 セバスから発表。


「探索科は、在学中にも探索者活動の稼ぎで学費等をまかなうことが想定されているそうです」


 ついでにいえば、ダンジョン鉱山からの収穫を重要視する王家・国は、学院の探索科に関して学費・寮費を補助してもいる。


「探索者やるための学びのための学院生活のために探索者をする?」

「なんかこう、一周回ってきたなって感じ」


 【祝福の儀】がすめば、探索者登録はできる。


「兄曰く、あ、次男の方の兄。騎士科で探索者やってる兄曰く、探索科なら1季あたりクオルタ銀貨数枚稼げればなんとかなるそうだぞと」


 セバスは三男。

 次男ともども家を継ぐ立場ではないので、騎士科の次男が衛視か探索者になるなら、自分は家政科で執事を目指そうかと考えていた。


 前世覚醒なんてイベントがなければ、執事セバスチャンが世に出ていたのかもしれない。


「クオルタ銀貨って言われても……」

「1季12週だから、休みなしで84日。4クオルタが大銅貨24枚で、3日で大銅貨稼げれば?」


 大銅貨1枚は、特別な技能をもたない労働者の日給くらいと思えばいいだろう。


「うーん。大人の職人なら余裕っつうか、馬鹿にすんじゃねえって額なんだが、自分ら10歳よ?」

「それなあ」


 【祝福の儀】を経たことで半人前扱いになるとしても、10歳児が日給大銅貨1枚を得ることはちょっと無理だろう。


 大銅貨どころか中銅貨、あるいは小銅貨であっても、その対価としてどんな労働ないしベネフィットを提供できるというのか。

 成人までの期間は、それを探る時期でもあるのだ。


「一応、スポンサーというかパトロン? 将来見越したスカウトで奨学金的なケースもあるそうなんですが」


 それこそコネやツテだとセバス。


 貴族や富裕層の取り巻きとしてのスカウトなど望むべくもないし、三人の目的上、されても困る。

 後援してくれた商会の専属探索者として将来の就職先も安泰とみるか奴隷契約とみるか的なサムシングもある。


 後援する側にだって思惑はあるし、リターンを見込んだ投資なわけだ。



   ☆



「じゃあさ、知識チート的なお手軽金儲け、なんかない?」


 言い出したのはヨッシーだった。

 異世界転生といえば知識チート、異論は認めないとの思いを熱く語られる。


「といっても、洗濯板やリバーシ、マヨネーズらしきものもすでにありますしねえ」


 ヨッシーに負けず劣らず、転生ものというジャンルをそれなりに嗜んでいたセバスが定番ネタを取り上げる。

 自分たち以前にも存在したであろう、転生的な意味での諸先輩がすでに頑張られたっぽいと考察。


「ぐぬぬぬ」

「いやさ、アイデアだけでどうにかなるものなんて、それこそ大手に真似されて終わりパターンじゃん」


 ラッドは木工職人の子だけに、商売の裏側にひそむ面倒くささを見聞きしている。


 そも商売をするにも種銭や仁義の問題が絡むなど、所詮は10歳児にできることなどそう多くはない。


 設備や専門知識・試行錯誤といった投資が必要なものは論外。

 簡便で即金が期待できるような知識・技術チートは思いつかないと結論。


 仮に、10歳児の自分たちにできるようなものがあったとして。


「例えば料理ならタレのレシピをよこせと、怖ぁいお兄さんたちに拉致監禁からの水の底やら土の下やらコースが見えますねえ」


 売り場・売り子への嫌がらせ。

 誰かにとっては非常に魅力的なご提案。

 自由のない環境への強制的なご招待に、文字通り骨を折るような丁寧な質疑応答などなど。


 そんなアクションが行われる前に、評判になるくらいに売れる必要があるのだが、そのあたりは脇に置く。

 大事なのは、暴力の裏付けのない利権がどうなるのかの理解だ。



   ☆



 情報が足りていない。


 彼らはそう判断した。


「情報は大事、はっきりわかんだね」

「今週は僕ら自身の情報、加護ギフト検証にリソース割いてしまったので」

「気になっちゃうのはしかたない。俺たち男の子だもん」


 そのうえで、足りないことがわかったなら補えばいい。


「えーそれでは、探索科の学費等と、探索者の実入りが実際どのくらいなのか、次回までの宿題といたします」

「「あいさー」」


 『トモダチと一緒にファンタジーかつゲームっぽいわかりやすさのある異世界に転生でチートでスローなライフをしたい』


 前世ヨッシー、最期をこえた先で悪霊・怨霊化しかけてまで主張した願いであった。らしい。

 インストールされた前世の記憶に死後の分はないのでわからないのだ。


「いかにも俺が言いそうなんだ」

「だねえ……」


 一応、『できる範囲』という制限はあったものの、だいたいはかなえてもらったぽいので疑いはない。


 『白い部屋』で受けた説明では、ずる(チート)は拒否されたが、付与する加護ギフトを適当に見繕うとのことだった。


「さあ、次の議題は『チート』の部分、それぞれの加護ギフトだ」

「「イェーイ」」




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