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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
1章.道連れ転生発覚からの運命共同体編

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1-02.君の名は



 夏季祭週も最後の日の昼頃、神殿前広場の片隅。

 どこまでも青い空の下、三人の少年たちは笑みを浮かべて再会した。


「うぃーっす」

「ちーっす」

「あいっす」


 それぞれ片手をあげて気さくに挨拶をかわすが、身なりが見事にわかれている。


 簡便な人物鑑定として足元を見れば、順に裸足、木靴、革のサンダル。


 つまり、所属するコミュニティが違う。

 本来なら、気やすく挨拶するような関係性を持つ者たちではない。


 身分による服飾制限がさほど厳しくない王国だが、かけられる費用は如実に、残酷なまでに反映される。


 まず裸足、輝きのない濃い目の小麦色の髪を雑に短く切っているのが前世ヨッシー。

 服にはつぎはぎが目立つが、服も顔も汚れは見当たらない。


 これが薄汚れていたり異臭を放ったり、死んだような目か鋭く暗い目つきなら貧民層。

 でも、みてくれはともかく清潔感には気をつかっているらしきこと、顔つきの雰囲気から養護院かと見当をつけられる。


 次に木靴、焼けぼっくい染みたこげ茶色の髪を角刈りにしている前世ユッキー。


 夏にもかかわらず丈夫さが取柄の厚手の麻着。しかも上下が一体となった職人愛用の『つなぎ』。

 いささかくたびれ感があり、だぶついているのはお下がりなのだろう。


 最後に革のサンダル、光の当たり具合で色味が変わる灰銀髪を首の後ろでひっつめ髪の前世ヤベック。


 ひざ下まである貫頭衣に腰帯をしめ、使い込まれた色合いの革のベストを羽織っている。

 富貴ならずも外見にも一定のコストをかけなければならない役職持ちか下級官吏か、そのあたりの家の子とわかる。



   ☆



 異なる世界間での移民イミグレーション自体はよくある話であり、転生者も珍しいものではない。


 ただし、前世の記憶を有するとなると希少になる。


 普通に邪魔だからね。

 しがらみも汚れもぜーんぶ洗い流して、まっさらきれいな状態で、新天地で新人生をどうぞ。


 ともあれ、そんな希少性を有する前世のヤ行三人衆が一人、雑な短髪のヨッシーの案内で、神殿関連施設の庭先の木陰で腰をおろす。


「このへんは俺の庭だから。さわがなきゃ、涼んでるって見逃してもらえる」


 ひっつめ髪のヤベックが市場で買ってきた瓜を配る。

 微妙に甘みのある瓜。名称もそのものズバリで甘瓜。


 受け取った角刈りのユッキーがくるくる回しながら一人ごちた。


「品種改良される前のスイカやメロンの遠い遠い親戚かね」


 前世での野菜果物は人間の都合で改良されまくり、原種とはまったくの別物だと知識にはある。


「んでまあ、今世でユッキー・ヤベックってわけにもいかないだろ?」


 大した時間もかけずに皮まできれいに食べ終えたヨッシーが、服のすそで汁気をぬぐって二人に問いかけた。


「ああ、今世の名前な。自分はラドクリフ。マルク工房の家具組ロムの子、次男。

 跡継ぎでないことで腐ってたんだが、こうなると次男でよかったというべきか」


 前世ユッキーことラドクリフ。

 濃いこげ茶色の髪を角刈りにしている少年は、ほかの二人よりも微妙に背が高い。


「ラドクリフ、了解。ラド? クリフ?」

うちではラッドだ」


 かくして一人、今世の呼び名が決まった。


「俺はヨルグ。この素敵な養護院カットのとおり、養護院で世話になっている。

 生後数カ月でポイされたらしい。それこそ前世で親不孝した報いかもな」


 雑な短髪の蔑称が養護院カット。

 理髪の専門家でもない世話人が、子ども集団の一人にかけられる手間暇をかんがみれば、雑なのはしょうがない。


 むしろどれだけ雑でも散髪してくれるだけマシだ。

 前世日本の明治から昭和初期あたりでは、従業員(小作農)の頭を定期的に丸刈りにすることが上質な福利厚生だったというトリビアもある。


 そもそも鉄の質が全般によろしくないので、ハサミはじめ刃物の質もお察しとなる。

 よく斬れる鋼の剣が憧れの高級品になるゆえんでもある。


「ヨルグって略しようがないな。愛称でヨッシーいけるん?」

「んじゃ俺はヨッシーのママか」


 お次はお前だぜの催促に、ひっつめ髪の少年は言い淀んだ。


「僕は……」

「せんせー、聞こえませーん」


「セバスチャンなんだよ!」

「セバスチャン!?」

「セバス、セバスじゃないか!」


「だから嫌だったんだ!!」


 執事といえばセバスチャン。

 余計な前世知識のせいで、実際、将来設計として執事を目指すコースもありえた少年は何とも言えない渋面をつくる。


 家での愛称はセブなのだが、ここではセバスとなった。



   ☆



 角刈りのラッドが片手をあげてセバスコールを収めた。


「さて、呼び名が決まったところでおさらいだ」


 『トモダチと一緒にファンタジーかつゲームっぽいわかりやすさのある異世界に転生でチートでスローなライフをしたい』

 それが前世ヨッシーの願いであった。


 怨霊化しかけているやっかい客(?)相手にサジを投げたのか、なら適当な異世界に行っとけと。


 ユッキーとヤベックがそれぞれに天寿を全うした後、時間凍結封印されていたヨッシーとセットで転生とあいなりましたとさ。


「『封印』とはなあ」

「まさしく怨霊」

「記憶にございません。……いや、本当に記憶にないんだよ」


 この世界は人類補助のための加護ギフト付与、および霊格レベルシステムを採用している。

 そして三人の住むアクヤの街には、魔物の徘徊するダンジョンがある。


「『トモダチと一緒』で『ファンタジーかつゲームっぽい』『異世界に転生』ではある」

「そして、ずる(チート)は無理だけど、前世の記憶をインストール&付与する加護ギフトを適当に見繕ってくださったと」

「まじ、神対応」


 ちなみに、転生事由の説明等の処置が【祝福の儀】で行われた理由は実に単純。


 ①対象三人が、神殿や大聖堂といった『アクセスポイント』に居る

 ②前世記憶のインストールに耐えられる肉体的(脳みそ)成熟

 ③【祝福の儀】で行われる加護ギフトの割り当て・インストール処理に便乗


 「まとめてやればいいよね」。

 業務効率化は永遠の課題なのです。


「自分たちは、レベル100にならないといけない。達成できなければペナルティだからな」


 腕を組むラッドの宣言に、セバスとヨッシーも頷く。


 もろもろの願いをかなえた対価として、霊格を随時徴収する契約となっている、らしい。


 インストールされた前世記憶は生きている間のモノ。

 三人には死後に行われた契約とやらの記憶はない。


 ないのだが、三人とも神様の配下のお言葉に逆らうほどの向こう見ずさは持っていない。


「成長がクソ遅いという意味での『スロー(slow)なライフ』ですね、わかります」

「そして、レベル100なんて伝説やおとぎ話の中の英雄でしか聞いたことがない領域を目指す、『命を投げ捨てるスロー(throw)なライフ』だ」

「まじ、すません」


 一応ヨッシーは謝っているが、ラッド、セバスともにガッハッハと笑いあっているのだから深刻さは微塵もない。


 ヨッシーの望みはだいたい大枠ではかなえられ、レベル100必達と目標が設定されている。


 ならば協力プレイで目標達成を目指せばいいと、実に『わかりやすい』話である。


 ゲームならば攻略してやる。

 縛りプレイ? 上等です。

 クソゲーならば文句を言おう。


 カラ元気混じりではあっても、今世を楽しく生きてやろうと彼らはこぶしを合わせた。




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