13-08.不正の発覚
セカンドライフに向けた領主化案件も大事だが、とにかくレベル100達成をしないことにはペナルティ確約なのが転生三人組である。
夏季の終わり、レベル90に到達したので、成長のオーブによる霊格取得を試してみることになった。
効果検証なので、鑑定の巻物で『1レベル上がる』となっているオーブを使用する。
万が一に備え、クランハウスのダイニングには、メンバーも興味津々といったていで集まっている。
しかし、ゴルフボール大の宝珠を飲み込みって、結構大変。
衆人環視の中、ひぎぃとかぶひぃとか、あまり聞きたくない鳴き声を発しながら三人はなんとか宝珠を飲み込んだ。
「ぐはぁ! 身体が熱い、熱いぃ!」
「霊格が一気に流れ込んでいるのでありましょう」
三人は、いまだかつて味わったことのない霊格酔いを実体験したが、被パワーレベリング経験のあるウィスタリアほかは冷静に見守っている。
落ち着いた後に【自己認識】を確認すれば、たしかにレベル91となっていた。
☆
転生発覚から18回目の秋分祭週の夜、転生三人組は集まった。
「一年で、レベル87から90。ついに伸び悩みだした」
「けどまあ、成長のオーブは使えることもわかった」
残り11個、合計で6レベル分を計画に組み込める。
「レベル99か98にできるタイミングだな」
どうせ後になるほど必要経験値量は増えるのだ。効果を考えれば、後ろよせになるのは必然。
戦力的な意味では、レベルアップの効果は微々たるものだしね。
「土地開発、領主化案件も手を抜けないが、現場に出るとその分ダンジョンに潜れなくなる」
「そこはもう、みんなに任せて、僕たちはダンジョン優先でいくしかないかと」
粛々と数字を積み重ねるしかないと確認し、次のターゲットはレベル96と定めた。
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この秋で祝福の儀を受けたのはマリエルの第二子で、【自己バフ】の加護。
なお【自己認識】上には【ポーション製作】もあり、マリエル歓喜の舞。
「無属性魔力による【身体強化】とは別なのかな」
「強化っても、いろいろあるからなあ」
寝起きの瞑想習慣は子どもたちにも伝授している。
気持ちを落ち着けたり、静かに考えを巡らせるにも役立つし、魔力を感じ取れる子には、魔力ねりねりで【錬気術】の発現も期待できる。
今年度、幼年科に入るのは6人、本科に進むのは3人。
オルレアとアドルフの子は探索科で、ユイの子は魔術科に行った。
ちょっと先のはなしだが、冬至祭週ではクリス・ウィスタリアの第二子が【沈着冷静】を授かった。
「クリスと同じか。やはり、血統的なものはあるんだろうな」
「あの子は性格も僕に似ているし、そういう影響もあるのかもね」
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年度初めのクラン会議では、こまごましたことが話し合われた。
昨年度、セバス父の死去があり使用人が1人減ったことになるが、新たに採用はせずソノママにする。
改定を重ねている収支関連では、徴収を『クラン費』でひとまとめとして、個別の経費への関連付けはやめる。
そして、クランと各個人、事業や領主業との区分けの明確化や準備のアコレコ。
転生三人組とジュスティーヌの4人で錯綜していた土地所有を、名義の書き換えでそれぞれに一筆化。
また、ジュスティーヌ管轄の敷地内に厩舎や車庫をつくり、馬や馬車の類は領主予定の4人に移動。
探索者クランとしては、街内で使う荷車があれば足りる。
クランハウスも、子どもたち世代がクランを引き継ぐのなら、小部屋・個室化しておきたい。
部屋数を確保するために、家族寮を明け渡して改装も視野に入る。
「俺たちは領地に本宅で、街に出てきたときはジュスティーヌ邸の客室借りればいいが」
「アドルフたちの引退後の住まいは、家族寮と別に建てる?」
「うーん、実感がないなあ」
「子どもたちが卒院しだすまで、まだ2年あるし、持ち越しで」
三人がいないと粗大ごみ化する電気設備の整理も進める。
前庭の発電用風車は撤去で、給水塔への汲み上げも、手押しポンプで二段階汲み上げれば人力で代替できる。
でも、パソコンやプリンタ、監視カメラやモニタ、冷蔵庫、子ども部屋のエアコンはぎりぎりまで残すので完全撤去もできない。
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土地開発では、代官様への進捗報告とあわせて承認を得て、東側拠点を食肉向けの飼育牧場(仮)として運用開始する。
伐採地を放置はもったいないし、畑を作るにせよ、それまで糞尿で土地を肥やしてくれれば御の字だ。
懇意の牧場に、そっち方面の人材や飼育動物たちの調達を相談中。
馬は自家用分のみで競合しないから、感触は悪くない。
「まずうちさぁ、生クリーム愛が強すぎるのがいるのよね」
「てへぺろ」
乳牛は絶対ですね、わかります。ほか食肉メインでいくなら、羊と豚と鳥も欠かせない。
この牧場集落は、将来的にはヨッシーことグッドマン従士家が管轄する予定。
生クリームを愛するジュスティーヌ様は、奥まったところに本拠地を持つべきだからだ。
「それは、そうなのよねえ」
「そんなー」
領民を募るには早いが、動員人足から出ている移住希望も無下にはできない。
仮の領民区分で牧場勤務としても、当面はお賃金雇い、人足の頭数は補充せずそのままでいく。
また、南側拠点では、林道グリッドの拡大で移動や活動に支障と、害獣駆除兼人足護衛が追いつかないとの苦情が上がった。
そのため、林道の交差点のうち、塩梅のよさそうなところ2か所に前進拠点を設営。
探索者組合に依頼し、駆除護衛を都合4パーティに増量した。
牧場設備と飼育動物調達の金貨70枚近くをはじめ、秋季の支出は総額で金貨210枚となった。
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冬季には南東アチュール川を臨む地点に棒道到達。川沿いを見渡すと、渡し舟できそうな雰囲気もある。
現在の南側拠点からこっちに拠点を移すか、あるいは前進拠点を増設するか。
「拠点分散させると追っつかない」
「それなあ」
現状、東と南に加え前進拠点2つの4か所。
人足の分散で現場ごとの頭数は減少し、現場監督の目も届かなくなりつつある。
また、拠点を増やせば、警護パーティも増量しないといけない。
季節ごとの継続的支出が金貨120枚近い。
カネを使って見せる目的もあるとはいえ、散漫になるのは望ましくない。
「拠点移すにも、将来的な村集落の場所にしたいです」
「そろそろ選定よね。地形把握も進んでるんでしょ?」
次のフェーズに移るべきと主張する、ジュスティーヌ、ヴィオラ主従だ。
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開発拠点には、食料配達を依頼している行商人だけでなく、目ざとい商人が炭や薪、材木を買いに来ている。
売ればいくばくかの収入にはなるが、材木や燃料は近い将来に使うあてがある。
取引量の把握のため、ジュスティーヌにあいさつに来た商人に売買記録の提出を求めたところ、こちらの帳簿との食い違いが判明。
炭焼きの1人が適当やって、お代を着服していたことが発覚した。
「口裏合わせられてたらわからんな、これ」
「こっちも、生産量と在庫からの推計でしたしね」
くだんの炭焼きは、ちょくちょく街にでてきて娼館に行くなどしていた模様。
処置前に紹介してくれた親方衆にも話を通したところ、土下座の勢いだった。
「十分な暴力が背景にあると、みなさん友好的で助かりますよねえ」
「そりゃまあ、ね」
生い立ち的な経緯もあって、クランの公的な顔なジュスティーヌとその腹心ヴィオラ。
結構、お怒りのご様子だ。
現地で捕縛、アクヤの街まで連行し、衛視隊に引き渡し。
まだ王家直轄領で、裁判権がアクヤの街にあるのででそうなる。
闇に葬っても特に問題なく終わるが、念のため。遵法精神を見せておいて悪いことはないでしょう。
なお、損害を取り戻せる見込みはないが損切でいい。奴隷を飼うのも面倒なので、処分は行政にお任せだ。
「ゆくゆくは、自分らで炭焼やってもいいな」
「スローライフだな」
炭の焼き方、窯の作り方、ついでに山林管理の手法なんかも、日本語だけど【通信販売】で書籍を手に入れられるからね。
でも、親方衆が汚名返上とばかりに、燃料問屋の勤め人、真面目な中年夫婦を紹介してきた。
「炭焼きとしちゃあ素人に毛が生えた程度ですが、このとおり、真面目一徹なヤツでして」
「ご婦人が家政科の出で、帳簿もつけられますし、せんだってのポカはどうかお許しを」
「まあ、そういうことであれば」
そういや、帳簿つけるのも専門技能なんだよなあと、改めて思い知らされた転生三人組である。
行商人さんを空荷で返さない程度の商いを指示し、不定期に在庫と売買記録の提出を求めることにした。
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ダン活はいつも通り。
三人組だけは季に2回のダイブを行い、他のメンバーはレベルをそろえる調整。
秋・冬の2季節かけて転生三人組はレベル91から92へ。
伸び悩みむが、上がらないわけでもない。成長のオーブという最終手段もある。
クリス、ユイ、マリエル、ジュスティーヌ、ヴィオラと旧14号パーティの面々がウィスタリアに続き90に。
後輩たちのアドルフ、フィアフ、オルレア、ジャルマリス、プリムローズが89。
秋・冬のオークションには39点出品、金貨3765枚。
特記すべきレアもんはなし。出ないときは出ないのだ。




