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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
13章.目指すはスローなセカンドライフ編

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13-06.領境の確定



 26歳、転生発覚から17回目の秋分祭週の夜、一年の振り返りを行うべく転生三人組は集まった。


「レベルはこの1年で82から87。いい感じだ」

「問題はこの先。効率っても、あとは浮遊島?」

「伝説には出てきますけど、見かけてないですよね?」


 第十層で常時お空を監視しているわけではないが、それっぽいモノは見かけていない。


「ラピュタは本当にあるのか?」

「我々取材班は……ギミックかねえ?」

「せめてヒントプリーズ」


 ヒントはないなあ。条件がそろえば降下してくるものとしか。



   ☆



 新年度新学期、新たに3人の子が学院幼年科に、また、クリス・ウィスタリアの第一子は騎士科、マリエル・セバスの第一子は薬剤科へ進む。

 最後まで迷っていたが、探索科より条件の厳しい騎士科を選んだのは当人だ。


 なお、春・夏と時間に余裕のあったウィスタリア・マッマにクリス・パッパ、ついでにアドルフとフィアフも繰り出して、学院のシステムや学科の予習とダンジョン実習を執行。


 悪目立ちを避けるため、装備への助力はほどほどだが、レベル3と2でスタートというゲタを履かせている。


 ただし、『死ににくく』するための親心でしかないと口を酸っぱくして言い聞かせてある。

 どうせこの先は学院で集める仲間次第だし、足並みをそろえるために第一層で停滞するのだから。


 本科組は、すでに夏季の終わりには学院の寮に入っており、祭週中も顔見せ程度の一時帰宅。

 雛たちの巣立ちを見守るママ・パパ集団は、実に感慨深げである。



   ☆



 クランとしての年度会議において、ダン活方針は従来通りとなった。


 今年度の最大事案は、新規の土地開発からの領主化の件。

 代官様のロビー活動は実を結び、王様の上意を得て対象地も決定した。


 というわけで、各所への付け届け実費を含む代官様への謝礼なのだけど、さて。


 聞かぬは一生の恥だが聞くは一時の恥とかなんとか、転生三人組がジュスティーヌの背中を押した。


 言葉上は「私の力不足ですまないね」などと言っていたが、代官様だって自腹を切る気はないし自己への見返りも当然と考える。

 金貨をもう100枚ほど、とのこと。


 だがここで、アドルフも事業費用を分担すると言い出した。


「その、俺の子に、どう見ても荒事に向かないのがいるんですよ」


 無理に探索者というヤクザ稼業を継いでほしいとは思わない。妻のリーリアも強く強く反発しているし。

 自身の出身コミュニティを頼ってどこかの職人に丁稚奉公しか思いつかなかったのだが、ここにきて開けた土着農家への道。


「それに、俺だって大金抱えて困ってるんですって」

「それはそう」


 相方のフィアフは、捕食者ヴィオラと一緒に『領地』に移住してしまう算段が強い。

 子どもたちの行く末はもちろん、自身の探索者引退後のセカンドライフ、どこに住み、何をするか。領地開発に一口噛んでおいて損はない。


 そうなると、ほかのメンバーも考えだす。


「僕たちも出資して、住む場所とか畑とか、そういうのをもらうってことで」

「わたしも、事業の多角化、郊外に土地を持つのはアリよね」


 クリスとウィスタリアはクランの執事として街に残るにしても、領地に縁がないのも片手落ちだと言い出す。

 薬草園や病院を経営する実業家マリエル様も、いまだだぶつくおカネの投資に前向きだ。


「私たちのおカネ余りが原因なんだから、せっせと出費している姿を見せるのも必要なんじゃないかな」


 ユイちゃん、たまに鋭いことを言うんだよなあ。


「では、そういうことでいきましょう!」

「「おー」」


 主催者たるジュスティーヌ様のご決断に、一同賛意を返した。



   ☆



 指定された開発対象地の東南北の境を確認せんと、あっちへこっちへ小旅行。

 西の端は2000メートル級の山々が連なる自然国境なので、とりあえず無視。


「領境の詳細は現地でってさあ」

「把握できていないんだろ」


 まずは北の境へと、アクヤの街から北に向かう街道を1日、宿場町に到着。

 そこからこんどはバンド峠へ向かって西進し、1日目の村、2日目の村が確認相手なのだが。


「そらおめぇ、バンド川までがウチで、川向うが対象だっぺな」

「川が領境はわかりやすいですが、渡れます?」


 街道の南側を流れるバンド川、山間部では深い渓谷になっており、宿場町近くまで下らないと渡れない。



   ☆



 アクヤの街から北の宿場町に向かう間には、東西へのびる道も接続している。

 それぞれ街の胃袋を支える生産地集落につながる。


「西の、北に流れてバンド川に合流する川、あれが境だな」


 街道からみて西の村から、さらに2時間くらい山林内の獣道をたどった先に、確かに小川がある。


 予定地を東北側から攻めるなら、この村を起点にすることになる。


「費用全部こっち持ちでなら道や橋造っていいって」

「保留」


 あわよくば他人のカネでおらが村を開発させようなんて、誰でも考えるよね。



   ☆



 アクヤの街から直接、西に向かうのが、お馬さんでおなじみの牧場まきばへ続く道だ。

 牧場の先の集落では主に野菜を生産しているらしい。


「小麦は無理だぁ。気温があがんねし土もよくねぇ」

「私たち、さらに奥の土地を拓かないとなんですよぉ」

「ご愁傷様だべ」


 こちらも西進した先の小川が領境になるが、村から川まで2kmほど。川幅も狭い。

 街から1日で来れる立地もいい。


「ここを、キャンプ地とする!」

「「うぇーい」」


 さっそく神殺しのチェインソーが唸りを上げ、人馬が通れるように木を切り倒し、半分に割った木で簡易橋を造り対岸に上陸。

 周辺を伐採伐根して広場にしたらテントを張る。


 進出拠点にも電波発信機をおいて、片道2日ほど山間やまあいの原生林に踏み込み、クランハウスからの電波と合わせ、相対座標上に地図作製。

 ドローン空撮は地形高低差がいまいちわからなかったり、小さな川なんかも見えないが、ないよかマシの精神で。



   ☆



 アクヤの街から南への街道を1日、宿場町に到着。

 ここから西へ、ドゥール峠への街道を進む途中に4つの村がある。


 いずれの村も、川ないし山の稜線をもって境界とするとのことで、南の領境は確定した。


 問題は進入路で、必然的に川か山を越える必要がある。


 比較的稜線が低いポイントを目指して2日目の村と3日目の村の間から北進。尾根向こうで泉を見つけ、拠点地と定めた。


 あとは東拠点と同様に、既存街道との接続および拠点周辺の広場化、原生林に踏み込んでのマッピング。



   ☆



 指定された開発予定地は、最大長で南北30km強、西が山脈を登るので東西の実用上は20~30kmの間くらいと推定。

 領境の確定を代官様へ報告しておく。


「あ、うん。広さだけはあるのだなあ」


 対象地から適当な場所を見繕って開発、自領にすることを目指せという話だったのだが、クラン『アスタリスク』側は対象地全域を将来の自領として認識している。


 代官様、痛恨の伝達ミスを自覚したが、やる気に水を差すこともないとこれをスルー。


「騎士家には広すぎるわねぇ」

「だけど、実質使えるのは谷筋の狭い盆地くらいでしょう?」


 ヴィオラお姉ちゃんはため息をつき、ジュスティーヌは目じりをもみほぐす。


 水田と違って多少の傾斜地でも畑にできるが、食料生産に不安がある。


「二圃制で1平方kmあたり穀物生産50人分として……」

「200人規模で4平方kmに、住居分なんかあわせて5平方km?」

「道は意外に延べ面積を食う。初期目標は9から10平方kmの伐採だな」


 何事も計算通りにいかないことは重々承知だが、目安は設定しないといけない。



   ☆



 秋季は現地拠点の設営と視察で手間を取られ、ダンジョン・ダイブは1回のみ。

 冬季は、冬山に入りたくないと開発事業は休眠を決め込み、2回のダイブ。


 効率には島しょ部が肝なのだという信念の下、タイムスケジュールを横にらみで、いかに多くの島を巡回に組み込めるか。


 もちろん地竜島は動かせない。4島しかないワニ島のリポップ間隔を攻めつつ、カニ島を回れるだけ回る。

 海洋部で狙うのはイカとタコのみで、大海蛇ヘビとクラゲは経路上で遭遇したらという扱いに落ち着いた。


 結果、島の襲撃延べ22回でほぼ限界となった。


「カニ・カニ・ワニの三連戦を1日でこなせるとは思わなかった」

「不思議なことに、寝る時間はちゃんとあるんですよねえ」


 カニハンターの朝は早い。ワニや竜と違って一発の怖さがないので、照明弾下で戦闘できるからね。

 それに、お船で移動中は、当直以外お休みできる。


 転生三人組はレベル88、89と1つずつアップ。

 メンバーはウィスタリアの89を筆頭に、下は86。


 ヨッシーの【個人倉庫】はレベル89で『分離』コマンド追加。

 容積を指定して、個々別々の倉庫として切り分けるのだが、倉庫内を区分する『区画化』と何が違うのかと三人で頭をひねった。


「たしかに『在庫表』で別リストになるんだが」

「内容把握や整理しやすくするためコマンドか?」


 秋・冬を通してオークションには31点出品し、金貨2805枚。


 特記レアもんは収納の腕輪が1つに、容量8倍の魔法鞄マジックバッグ


 ほか、セバス父のダムス・ヴェルムが風邪をこじらせ亡くなった。享年55歳。

 今世の感覚的には程よく長生きした人生であった。





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