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道連れ転生  作者: 凡鳥工房
1章.道連れ転生発覚からの運命共同体編

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1-12.運命共同体宣言



 夏季第三週の闇の曜日。


 学院の庶務課で探索科への願書を出した少年たちは、不動の門衛たちにびくびくしながら門をくぐり、向かう先は広場を挟んだ探索者組合。

 せっかく南街区まで来ているのだから、ついでに探索者登録も済ませちゃおうという流れ。


 学院の門から離れ、つまり門衛たちから距離を取ったことで、日焼け肌のオルガをはじめワルガキ・マインドが復活、背筋が伸びて目線も気持ち上を向いた。


「いかにもって感じの街だなあ」


 広場の中心で雑な短髪のヨッシーがぐるりと周囲を見渡して感想を述べた。

 角刈りのラッドも同感だと返す。


「こっちは初めてだがよ、同じアクヤの街なのに、ずいぶん違うもんだ」

「匂いが違うなあ」


 筋肉質のアズクルに、特徴のないグラムが鼻を突き出す仕種をする。


 ヨッシーやオルガたちが暮らす養護院は神殿関連施設の一つになる。

 わりかし公的でお上品な区画と比較すれば、どこか荒んだ気配を感じる人たちがうろつく、雑多でゴミゴミしている活気あふれる街となろうか。


 アクヤの街の南地区の特に西よりは、ダンジョンと探索者を中心にした街並みや住人で構成されている。


 旧出城・現学院と探索者組合のある広場から伸びるメインストリートには、探索者向けの商店・飲食店や宿が並ぶ。

 脇や裏に入れば、武具類の製作・補修の各種職人工房などもちらほらしだす。


 さらに奥には栄光の陰、スラム街もある。

 特に理由がなければ、いや、理由があっても近寄らないのが身のためだ。



   ☆



 少年たちの目的地、探索者組合は、大きな出入り口が複数ある石造りの建物だ。


 同業者組合ギルドであると同時に、事実上の国の行政機関でもあり、さらにダンジョン関連は『女神様の恩恵』であるとする神殿勢力も影響力を持つ。


 現在、組合内部の派閥・勢力争いは小康状態で、組織としてはそれなりに腐敗している。

 10歳児達には関係のない話だけれど。


 【祝福の儀】を受けた後でないと探索者登録はできないが、それ以外の条件は特にない。


 6人とも空いている受付カウンターに向かった。


 お行儀よく並ぶ?

 日本人や旧共産圏育ちでもなければ、列を作って待つ訓練なんて受けていないです。


 代書・代読要らないんだなって確認され、名前や続柄といったおなじみの書類を書かされ、ギルトのエンブレムの焼き印と文字と数字が刻まれた木札を渡されて終わり。


 探索者組合に登録した証が木札なので木札級。

 何もないよりはマシな事実上の身分証代わりにもなる。


 なお木札級には登録費は無い。


 だって正規の組合員として登録したわけじゃないんだもん。

 強いて言えば、探索者組合に登録した日雇い労働者という扱いが木札級。


 実質的な組合費ともいえる各種手数料や税金の類は、素材買取時や依頼募集時に徴収済みの値が提示される。


 確実に徴収するための間接税めいた手法である。

 多分、ほとんどの探索者が仕組みも知らないままに天引きされている。


「ここまで来たんだ。ダンジョン覗いてくぞ!」

「無事に帰るまでが遠足だからね?」


 妙にハイテンションのオルガたちと別れ、ヨッシー・ラッド・セバスの転生三人組は帰路についた。


「あいつら大丈夫か?」

「松明もなしに? 待っていても、なんか気まずくなりそうだったので」

「ピンポンダッシュをしたり顔で待たれてたら、気まずいより怒るわ。帰ろ帰ろ」



   ☆



「ときに魔力操作、どうです?」


 帰り道で問いかけたセバス自身も、1週間程度の腹式呼吸&瞑想でどうにかなるとは思ってはいない。


 ギフトの検証と同様、継続し、互いにチェックし合い、違う視点が無いかを考えることに意味があるとの認識だ。


「ちょろっと、こうちょろっと、腹の底の方でうにって感じで動かせた、ような気がする?」


 ほうほう、とヨッシーのお腹をなでるセバス。

 たぷたぷぅ。


「えーと、ほめて伸ばす方向……。すばらしい、すばらしいよヨッシー君。君は英雄候補だよ」

「そのバカヅラも見飽きたされそうなほめ方だなあ」


「行こう、竜の巣へ(迫真)」

「なにがはじまるんですか!?」


 第三次世界大戦という名の戦争はなかった世界線を生きた彼らは、記憶の中のあちこちの名台詞や迷台詞を笑いながら引用し合う。


「魔力操作もそうですが、身体の反応がいいから普通の修練、棒振りも楽しくなっちゃって」

「こいつぁ素敵な10歳児ボディだもんなあ」

「若さは特権。はっきりわかんだね」


 その分、思考も10歳児に引っ張られている?

 もとより男なんて精神年齢14歳でとまるもの。大差ないない。


「自分たち、この先オルガたちと組むのか?」

「それこそ彼らもコネ・ツテなわけで、組むこともあると思います」


 最初から固定化を考える必要はないが、選択肢は広く持っておくのも大事。

 パーティメンバーとしての良し悪しも、実際に組んでみないとわからないこともあるだろう。


「あいつらのパーティに参加するカタチか、俺たちのパーティにあいつらが混ざるかは、その時々じゃね」

「自分、主導権は握っときたいんだがなあ」


 それはそう、とヨッシーもセバスも同意。

 最終的な目的が共有できるのは、結局のところこの三人だけなのだ。


 パーティは、メンバー同士の信頼がないと続かない。

 それこそ、命をかけて支え合う仲間なのだから。


「世の中、自分たちではどうしようもないこともある」


 ラッドは天災、戦争や飢餓・疫病などの例を挙げた。

 そういうのは考えても無駄と切り捨てて。


「できる範囲でやった結果が悪くても、それこそ例え死ぬことになっても後悔はしない」

「スポーツマン的な、全力を尽くして負けたんならしゃーない論やな」


 実際の最期の瞬間には泣きわめいて醜態を晒すかもしれないが、それはそれである。

 あがけるだけあがくが、ダメんときゃダメだろさと。


「あえて口にすることでマインドセットを固める狙いもあるんだが、自分たちにとってはいまさらか」


 衝撃の道連れ転生発覚から、すでに三週間が過ぎている。

 投げ捨てるほうのスロー・ライフということもあり、諸々納得のうえで意識的な覚悟は完了済みだ。


「アレやる?」

「やるか」

「あいあい」


 道の隅で足を止め、伸ばした手を重ね合う。


「「「我ら生まれた日は違えども、死す時は同じ日同じ時を願わん」」」


 出典『三国志演技』な桃園の誓いは中二病罹患者の嗜み。


「死にバトルから一人だけ逃げ帰れるとも思えないしな」

「それに、見送る立場はもう十分です」

「ああ、うん。すまんソ」


 道すがらの雑談めいた雰囲気の中ではあったが、照れくさいのでわざとそうしているもある。


 ともあれ転生三人組の運命共同体宣言はここに成った。

 言葉にすることで、行動として示すことで自らの立ち位置を確定させた。


 なおその日の夕方、養護院ではオルガたちが武勇伝(かぜ)をふかすのだが、どこか生温い目で見守るヨッシーがいたという。




 「そのバカヅラも見飽きた」 → 「君のアホ面には心底うんざりさせられる」

 「行こう、竜の巣へ(迫真)」 → 「よし、行こう!竜の巣へ!」

 映画『天空の城ラピュタ』より


 「なにがはじまるんですか!?」(第三次世界大戦) → 「何が始まるんです?」「第三次大戦だ!」

 映画『コマンドー』より


 記憶は記録ではないので適当になってる部分と、あえて崩している部分とがあります。

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