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第一章:2◆最初の犠牲者

スーパーの入口は、いつも通りにぎやかだった。

自動ドアの開閉音、買い物袋の擦れる音、子どもの笑い声。

それらがごちゃ混ぜになって、日常の音を作り出していた。


……はずだった。


俺は入口の上にある黒いセンサーを見上げて、眉をひそめた。

丸い目玉みたいなそれが、さっきからチカチカと不規則に光っている。

普段は気にしたことなんて一度もない。

ただの機械。通る人をカウントしてるだけの目立たないヤツ。


けど、このときは……何かがおかしかった。


「なあ……光、変じゃね?」

俺はつい声に出した。


「え? センサーなんていつも光ってるでしょ?」

ゆめが小首をかしげる。

「店員の整備不足だろ。たかし気にしすぎ」

ゆうじは笑って受け流した。


でも俺の背筋はぞわぞわしたままだった。



---


ピシッッ——!


乾いた破裂音が響いた。

センサーのランプが一瞬だけ激しく光ったかと思うと、白い火花が飛び散った。


その直下を通っていたのは、買い物帰りの主婦らしい女性だった。

手にはパンと牛乳。小さな子ども用の駄菓子が袋からのぞいている。

何の変哲もない、どこにでもいる人。


その人の頭に——

センサーの光が、突き刺さった。



---


「え……?」


目の錯覚かと思った。

でも、確かに見えた。

細い光の筋が女性の頭に突き立ち、脳を直接なぞるみたいにジリジリと火花を走らせていた。


「キャアアッ!」

女性の叫びは一瞬だった。


次の瞬間、彼女は前のめりに崩れ落ちる。

買い物袋が床に散らばり、牛乳が破裂して白い液体を飛び散らせた。

キャベツが転がり、ビニール袋がバサッと広がる。


「おい! 大丈夫か!?」

「誰か、救急車!」


周囲の客が駆け寄り、悲鳴とざわめきが一気に広がった。



---


俺は呆然と立ち尽くしていた。

今のは、ただの機械故障じゃない。

光が——彼女の脳を“読んだ”。

そんな確信が胸の奥にひりついて残った。


女性の顔が一瞬だけ俺の目に焼き付いた。

苦痛とも安堵ともつかない、歪んだ表情。

……あれはなんだ?


「たかし! 早く来て!」

ゆめが俺の腕を引っ張る。


「ボサッとしてると巻き込まれるぞ!」

ゆうじも振り返って叫んだ。


俺は慌てて歩き出した。

でも振り返った瞬間、センサーの赤いランプが再び点滅した。

……まるで、笑ったように。


ゾクリと寒気が走る。


「……気のせい……か?」



---


俺たちが店内に入ると、蛍光灯が一斉にチカチカと明滅を始めた。

棚の商品がカタカタ震え、遠くで低いうなり声みたいな機械音が響く。


「おい……なんだよ、これ……」

俺は思わず呟いた。


それが“最初の犠牲者”。

日常の風景が、異常へと変わっていく始まりだった。

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