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第二章:12◆:紙の盾、命の重さ

床、ぬめっ。

鼻に刺す漂白の匂い。視界は白い霧。

「下がれ」ゆめがトングで柄先を弾く。カン、火花。

ゆうじは反射板を斜めに立て、蛍光灯の筋を折り返す。「散乱が強い。角度を下げる」

通路の端で影が膨らむ。巨大モップがズズズと滑走、糸束の雲が床を抱え込む。

一掃。バサァッ。白波。

たかしが盛大に滑ってエッグチェーンを手放す。「ぬわぁ! 卵——!」


掃除兵がモップ+ペットボトル骨格でカシャカシャと迫る。

前へ一歩、安井が出る。スーツの袖をまくる。

「行きます」

コピー用紙の束を胸に抱え、ホチキスをガンガン留める。即席の盾。紙の城。

ズドドッ。突き。

紙盾がバサ、バサッと裂け、しかし彼は一歩、また一歩、通路をこじ開ける。


(怖い。けれど——)

(朝、でんちゃんの水槽、替えてやれなかった。小説の続き、ここまでだ。だから、誰かの続きは通す)


「下がれ!」ゆめの声。

巨大モップの影が濃くなる。全域予備動作。

安井は振り返り、笑う。

「たかし君——」


ズガァアアアッ!

糸束が落ち、紙の城が紙吹雪に変わる。白い蝶が渦を巻く。

人影がひとつ、静かに崩れた。


「……見た。ワシ、もうゴチャゴチャ言わん」

棚を蹴破っていた鬼頭がサングラスを外す。

噛み砕いたうまい棒の欠片が手の甲にボロボロ。

「さっきのは水に流せ。水まみれやけどな」


紙はまだ降っていた。

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