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閑話 金翼騎士団

これは、金翼騎士団での一幕――。



皇帝直下の金翼騎士団は、この国最高峰の騎士団だ。所属するすべての騎士が破閃を使える。


そんな騎士団の第三騎士を務めるリアンは、特別な目を持っていた。鏡に映る自分の目は、虹色に輝いていて、瞳孔がない不気味な目だ。


この目のせいで、奴隷として見世物小屋で過ごしていた過去がある。そこから救い出してくれたのが、ファリーナ帝国皇帝、アルミロ・ファリーナだった。


戦場では皇帝でありながら、常に戦闘に立ち、騎士たちを率いる。その姿に感銘を受けたリアンは、救い出してくれた恩に報いるためにも必死で剣の腕を磨いた。そして、第三騎士に命ぜられるまでになっていた。


身支度を整えたリアンは、気味の悪い目を黒い布で隠す。もともと視力が悪く、ほとんど普通の視界は見えない。ただ、この目は変わったものを映し出していた。


リアンは気流と呼んでいる。人の感情や視線というものが可視化されているのだ。


部下に書いてもらった報告書を抱えて、リアンは皇帝の元に急ぐ。


その時、向かいから、ぼんやりと人形の気流が見えた。足音から第一騎士だと判断して、通路を譲り、頭を下げる。その気流は刺々しい。


「おい、何を陛下に報告するつもりだ」


「……帝都に妙な仕掛けを施されたのを見つけました」


「そんな些事で陛下の手を煩わせようと?」


第一騎士のサガン・レスター伯爵は、リアンのことをよく思っていない。奴隷出身であれば当然のことなので、リアンは黙って受け入れ、頭を下げる。


「またお得意の目か。適当なことを言っているのではあるまいな?」


「天地に誓って、皇帝陛下を欺くことはございません」


リアンにとって、皇帝は救世主だ。地獄から救い出してくれた神様のような存在なのだ。


「サガン様!」


サガンからの睨むような視線を感じていると、彼の部下がやってきたようだ。部下は、サガンに耳打ちする。


「……第一皇子が、ブラド山岳地帯に……」


聞こえてきた声にリアンは訝しむ。第一皇子の動向をなぜ気にしているのだろうか。


「宝剣は?」


サガンが部下に問う。そういえば、第一皇子が皇帝に宝剣の捜索を願い出ていた。そして、皇帝は、その捜索に許可を出した。


(陛下の許可をとられた正式な捜索では……?)


ますますサガンが気にするようなことには思えなかった。リアンの存在を思い出したサガンが舌打ちして、部下と話しながら去っていく。


「……人を集めろ」


サガンが最後にそう言っているのが聞こえた。しかし、リアンが口出すことは許されていない。リアンは自身の任務を果たすことに集中して、皇帝のもとに向かった。


皇帝の私室に入ってすぐに声がかかる。


「――リアン、どうだ、順調か?」


皇帝は、大らかな方だ。リアンにも親しみを持って接してくれる。奥の椅子に皇帝は腰掛けているようだ。その両隣に女性と思われる気流がある。


「申し訳ございません。まだ解決には至っておりません」


近くにきた侍従らしき人に書類を渡して、リアンは片膝をつく。


「よいよい。おまえの実力は、金翼騎士団一だからな。時間をかけて解決すればいい」


皇帝はリアンを咎めなかった。本当に気にしていないようで、気流は穏やかだ。書類を捲る音がする。


「……ふむ、帝都に巣食う魔法使いか。紅蓮魔導師にも話したのだが、そのような気配はなかったそうだ」


リアンの目は、人の感情や視線以外に魔力を見ることができた。


ことの発端は、デュラハンが皇宮に現れて、後宮の門に血を撒き散らしたことにある。リアンはその調査を任されたのだ。


後宮の門には、強大な魔力の痕跡が残っていた。少し紫の混じった銀色の魔力が漂っていたのだ。そして、リアンには、その魔力が魔物というよりも、魔法使いのものだとわかった。


――デュラハンではなく、魔法使いが犯人だ。


リアンはそう確信して、同じ色の魔力を追っていたのだ。


「しかしながら、ここ数日で帝都の複数箇所から魔道具を発見しています。犯人と思わしき魔法使いが仕掛けたものかと」


魔力の痕跡は、皇宮や帝都にも時折現れていたが、まだ魔法使い本人を見つけられていなかった。


「魔道具?」


「はい、どうやら魔力を込めて一定時間が経てば爆発するものらしく、帝都を破壊するつもりだったと思われます」


だが、痕跡を辿れば、危険な魔道具を見つけたのだ。その魔法使いは、ファリーナ帝国に明確な敵意を持っている。


「ふん、気に入らんな」


皇帝が膝を叩く。民に危険が及ぶとわかり、腹を立てているようだ。


実際、人通りの多寡に関わらず、魔道具は仕掛けられていた。無差別に攻撃するつもりなのは明らかだ。


「魔道具の起動には魔力が必要です。人手を割いて、魔道具が設置されていた場所を監視しております」


「うむ、見つけたら儂の前で跪かせるのだぞ」


「必ずや捕まえてみせます」


国民に危険を及ぼした魔法使いの姿を直接確認して裁くのだろう。リアンは一刻も早く捕まえようと気合を入れ直す。


皇帝の私室から退出した後、リアンはさらに人手を増やそうと、金翼騎士団の兵舎に向かった。しかし、待機しているはずの騎士たちがいない。


金翼騎士団の中でも、高手と付き合いの長い年嵩の騎士たちは、ほとんど名誉職になっていて、任務も与えられていなかった。帝都の危機だと分かれば、手を貸してもらえるかと思ったが、不在のようだ。


年嵩の騎士たちは、よく任務と偽って歓楽街に出かけていることもある。


(せっかく皇帝陛下が信頼してらっしゃる方々なのに……)


リアンは、先輩たちの素行を苦々しく思ったが、若輩者で奴隷出身のリアンに咎めることはできない。リアンは自分の部下だけを連れて、また帝都に繰り出した。


まだ見ぬ強力な魔法使いの正体を突き止めるために――。






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