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妖魔執行人 〜永永無窮の呪い〜  作者: 冬時雨
成崎姉妹は普通じゃない編
2/11

第0話 娘を頼む

キャリーケースを引きながら、人が賑わう繁華街を通り、利用者が多い駅に行く。結界内ギリギリまでの町まで走る路線の車両に乗り込む男女。


結界に近づくに連れて少なくなっていく乗客。

段々と大きな建物が無くなっていき、田んぼが多くなる。


なんの面白みもない殺風景な景色になっても、この天明の中心に堂々とそびえ立つ王家の建物だけは見える。

二時間、外を眺めながら目的地のある終点までの道のりを揺られる。


「ご乗車ありがとうございました。まもなく終点の朽葉駅です。どなた様もお忘れ物ございませんよう、ご注意してください」


癖の強いアナウンスが聞こえて、寝そうになっていた脳が覚める。


「寝るなら天永までの道のりで寝ろ」

「うん」


電車を降りて、木で出来たボロボロの屋根の下のホームを歩く。

改札を抜け、結界外の天永に向かう専用の駅まで、田んぼや今にも倒れてしまいそうな家しかない道を数分歩く。


駅もそうだっけど、ここには人がほとんど住んでいないから管理がほとんどなっておらず、雑草は生え放題になっていた。


仕方がないか、ここは結界との距離が近すぎて誰も近寄らない危険区域だし。


歩いているとやがて綺麗に整えられた道に変わり、太陽光を反射するほど綺麗に保たれている小さい空港のような地下に一階がある三階建ての建物に着いた。

ここが天永に行くための専用駅だ。


中は空港のエントランスのようになっていて、何もかもピカピカに綺麗に清掃されている。

ここがなんのための施設か分からずに入っても、空港にしか見えなくて、知らなければ汽車の駅だとは到底思わないだろう。


中に入ると左右に椅子ずらりとが並んでいて、真ん中は受付カウンターに直行できるように空いている。


受付のお姉さんこと伊藤紗良(いとうさら)さんに2人分のパスポートを渡す。


「お久しぶりですね紗良さん」

「中々お顔を見ていなかったので、入ってきた瞬間からあの美人な子とイケメンは誰だ!? と思いましたよ 」

「美人だなんて、紗良さん上手いこと言いますね〜」

「美人なのは認めるんだな」

「景は私が美人だとは思ってないってこと?」

「そうとは言ってない」


急に横から入ってきたと思ったら、失礼なことを言い出した。

私も大概素直じゃないけど景も全然素直じゃない。美人なら美人ってハッキリ言ってくれればいいのに。


紗良さんはテキパキと確認しながら「お二人はいつも通りですね」と和やかに笑いながら話を聞いてくれる。


「予約、しっかりと入ってますね。荷物検査をしますので鞄を預からせて頂きます」


景が自分の分と私の分のキャリーケースを受付カウンターの空いている隙間に置いてくれた。

紗良さんはキャリーケースを受け取って、壁の裏へと続くレーンに乗せた。


荷物検査はしっかりX線に通して危険物がないかを確認をする。

都市が変わればルールも環境も変わる。だからこそ検査はしっかりと行われている。


「所持している武器等も一度ここに出してください」

言われた通りに右の太腿のホルダー入れていたピストル一丁と、肩に下げていた黒の刀袋から二刀取り出して出されたトレーに置いた。

景も同じく肩から下げていた刀袋から一刀と、背中に隠してあるサバイバルナイフを取り出して置いた。


紗良さんは武器を一つ一つ見てはモニターを見て確認している。


「しっかりと申請済みですね」

「当たり前ですよ〜」

「深海さん、何か隠しいる物ありませんか?」


実はバレるのが最初から分かってて出していない武器が一つあった。

ちょっとした遊び心で出さなかっただけで、後から出すつもりだったけど。 言われてしまったからにはここは素直に出さないといけない。


スカートの後ろから小さな小刀を取り出して見せた。


「これのことですか?」

「はい、これで全ての武器の申請確認は終わりです」


紗良さんはそれですそれと言うように微笑んでいて、モニターを確認する様子はなかった。

もしかして紗良さん、既に申請されていた武器は確認していて、最初から小刀が出ていないのわかってたんじゃないかな。


「検査が終わった後は、車両の方に乗せていても宜しいですか?」

「はい、お願いします」

「承知しました。出発時間は今から一時間後ですので、遅れないようにお願いします」


一時間ここですることも特に何も無いから、ちょうどお昼時ということもあってお腹が空いてきた。

私達は二階にあるカフェで食事をして、ちょうどいい時間になったから地下一階にある乗車ゲートに向かった。


今の現状、基本都市との移動に使われているのは地下トンネルだった。

昔、結界外の地上は妖魔がいて危ないからと空から移動しようと考えて飛行機を作ろうとしたみたいだけど、生憎空飛ぶ妖魔がいて断念したみたい。

飛行機はもったいないからと、都市内の端と端との移動で使われている。

それで地下にトンネル掘って、結界張り巡らせて、汽車を走らせて移動になったとか何とか。

地下には潜る妖魔とかいなかったのかな。


乗車ゲートにさっき紗良さんが発行してくれた券のQRコードをかざすと、誤反応を起こすことなくゲートが開いてくれた。


ホームに行くと運転手を勤めている、今年60歳の節目を迎えた虎さんが居て、話しかけてきた。

 

「これはこれは、深海様に漆様じゃあないですか。お久しぶりですね」


「ここんところ天照への主張が多くて……、虎さん元気でした? 疲労で倒れたりしていないかと、少し来ないだけで心配でしたよ〜」

「この虎次郎はまだまだ元気ですぞ!! おっほっほ!」 


虎さんは元気よく両腕を上げて見せてくれた。


「お話は伺っておりますので、あと十分程したら出発致します。御手洗などありましたらお済ませください」

「お気遣い、ありがとうございます」


御手洗は昼食を食べた後に行ったからなかった。

汽車に乗りこみ、奥の方まで目を凝らして座席を見てみたけど、他のお客さんさんはいないみたいだった。

いない方が気楽でいいけど、ちょっぴり寂しい感じもする。

どこでも座り放題なので、適当に左の列の前から三番目の窓側の席に決めた。


肩にかけていた刀袋と、手荷物を座席上の荷物置き場に置こうとして上に上げると、景が荷物を奪って代わりに置いてくれた。

背は低くないから荷物置き場に手が届かないわけでもないのに、重いものはいつも景が持って置いてくれる。

今回の主張にも着いてくるし、かなり過保護。

私もうすぐで20歳だって言うのに。


私は外側の席に腰を下ろし、景は隣に腰を下ろした。

誰もいないしせっかくならと、手巻きタバコのように紙に巻いた毒を取り出して、口に添えてライターで火をつける。


一息ついたと思ったのもつかの間、ポケットに入れいたスマホが振動し始めた。

交通機関を利用するにあたり、着信音を切りバイブレーションに変えていたのだ。

スマホを取り出して、表示された名前を見ると、電話では滅多に見ない名前だった。


「深海です。何かありましたか?」

「緊急な用ではないから、そんなにかしこまらなくても構わないよ」

「それはそれは良かったです」


スマホ越しに聞こえる声は渋い男の声。

流石に上司との電話中に毒を吸うのはよろしくないから一旦火を消した。


「君に一つお願いをしたくてね、ただし強制ではないから、無理ならそれで構わない」

「解りました、では成崎さんの()()()とは何でしょうか?」


上司からのお願いとはなんだがムズ痒い物を感じるけど、私の部下達もいつもこんな風に思っているのかな。

それにしても、成崎さんからの直接のお願いとは珍しい。


「娘の、あおいのことなんだが……。詠美君さえ良ければ君の本隊であおいのことを見てくれないか?」


成崎さんのご息女、あおいさんに関しては、成崎家のくせして異能が出ないとかで周りが言っているのを聞いたことがある。

あおいさんが壬隊に所属してるのは知っているけど、本隊とは離れた分隊にいるからあまりどういう子なのかは知らない。

本部でもすれ違ったりと挨拶を交わすぐらいのことならしたことはあるけれど、一度もしっかりと話したことは無い。


「上司からのお願いとは一体何なんだろうと身構えていましたが……、そんなことでしたか。いいですよ、家は来る者拒まず去るもの追わず主義ですから。ですが……、親のコネのような形で入れるのは、あおいさん本人にとって、この事実を知った時に悲しむのは間違いありません。私としても、それは避けたいと思っています」

「詠美君の言う通りだ、あのあおいの事だからこんなことしてると知ったら……。私の考えが浅はかだったよ」


虎さんが運転席に乗ってきて、窓越しにもう出るよと合図をしてきたので、私もグッジョブと手で合図を送り返した。


「一つ提案があります。私がある試験を用意して、あおいさんがそれに合格したら私の隊で見ます。試験内容については、どのような試験でも構いませんよね?」

「ああ、試験内容については君に任せるよ。深海詠美君、君のことは部下として、人として信用しているから心配はしていないよ。どうかあおいのことをよろしくお願いします」


改まって言われるのはやっぱりムズ痒い。


「あ、もしかして今、頭とか下げてます? 上司に頭を下げられるとは〜、中々ない体験ですねー。あおいさんのことは任せてください。でも……、私今から天雨に出張で一週間程留守にしますので、帰ってくるまでは副隊長に任せときますね」

「漆君も一緒なのかい?」

「はい、景も一緒です。うちの隊は全員優秀ですので私達二人が少し開けてても何の問題はありません! そろそろ結界抜けるので、それでは失礼します」


上司からの、しかもかなりお偉い人からの電話を一方的に切り、メールアプリを開いた。

天明の結界の外に出る前に秀さんに一報入れておこう。

天明の結界の外でもこのトンネルの中は一応電波は通ってはいるけどかなり電波は悪い。


手巻き毒にライターで火をつけ直して吸いながらメールを打つ。

手巻き毒が主張中に無くならないといいけど。



『成崎あおいさんのことで気になることがあるのでちょっと彼女について教えてくださいよ。たしかー、お姉さんのあかねさんと幼馴染なんですよね? 本当になんでもいいので頼みました。

あーそれとですね、あおいさんの班なんですけど、本隊に仮入隊で入れといてください。

詳細は、天永に着いてから送りますので。

よろしくお願いします。』


歳下隊長が何か送ってきたかと思えば、何もかも意味がわからない。

天雨に着いてからってなんだよ、今すぐに何があってどういう経緯でそうなったか教えてくれよ!!

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