心懸けの片曇り・後編
星詠みの森付近にある湖のさらにその周辺に住んでいる村人に助けられたデルミアは、村の青年に森の入口まで案内され、今まさに星詠みの森の中を歩いていた。
ルドは流石に連れて行けないので村で預かることとなり、生い茂る草木を掻き分けながらデルミアは一人で暗い森を進む。
その森は昼間だというのに空からの光をほとんど通さず、ただ暗い道が目の前には広がっていた。
目と鼻の先の光景ですら見間違うような暗い空間と、冷えた風と湿り気のある生暖かい風とが交互に吹き、身体的不愉快感も負けていなかった。
自らの歩く方角も、人間の方向感覚ではまず迷うことは必然だっただろう。
そう、”人間”だったならば。
デルミアはそんな瞬刻先に何が起こるかわからないその森を迷った様子も見せずに歩いて進む。
「見えないのなら聞くしか無い。」
そう呟いて立ち止まり、耳を澄ませた。
これが彼女の身体的特殊能力の一つで、エルフの持っている耳の特徴だ。
デルミアは魔術に長けたエルフ族の血を引いており、彼女本人も様々な魔術を扱い、現在でも人前に出る時は男の姿となっている。
自然を友とし、自然と共に生き、自然から魔術を学ぶエルフ族は、吹いている風の音を声として認識することで、風の声から知りたい情報を抜き出すのだ。
その能力を使ってデルミアは前に進んでいた。
風の声を聞いては進んで、一定の距離を歩いては止まって風の声を聞く……それを繰り返しながらデルミアは進む。
しかしそんな迷いもせずに進んでいるデルミアにも一つの疑念があった。
それは、風の声から聞き取れる情報に、記憶を取り戻す泉の情報がなかったのだ。
だが藁にも縋る思いで星詠みの森に来た為、簡単に諦めるわけにはいかなかった。
デルミアはとりあえず、森の中にある泉を虱潰しに回ることにした。
風からの情報で、複数個の泉があるのをデルミアは知っていた。
それのどれかが記憶を取り戻す効能があることを信じて、現在地点から一番近い泉の方角を目指していた。
「村人達が言っているほど危険は無いようたが……いや、風が不自然だ。まるで危険な道を避けているような。」
泉に近づくに連れて風の音が不快になっていくのをデルミアは感じていた。
先に進むにつれて風の声が不穏になり声の数が減っていく。
そのような事は、その道の先に何か良くない事が起きる時にしかならない。
その異常な反応を示した風に、一つ目から当たりの可能性をデルミアは抱きつつあった。
そして巨大な岩を乗り越えた先に翡翠色の泉が見えてきた。
それはなんとも呆気なく発見できた一つ目の泉だった。
「あれが泉か……。」
デルミアは岩から飛び降り、泉のほとりへと歩み出す。
腰にある小さなポーチから小瓶を取り出した。
小瓶の蓋を開け、中に少しずつ水を入れていく。
そして八割程入れたところでデルミアは泉から小瓶を出した。
「さて、あれの出番だな。」
そう呟いてデルミアは影へと手を突っ込んだ。
デルミアの魔術の一つで影収納という魔術だ。
その名の通り影の中に様々な物を収納出来る。
それは無機物有機物関係無しに収納出来る。
媒体となる影の大きさに入りさえすればどんなものでも入るという魔術だ。
移動時に負担になる事を考えれば、旅におあつらえ向きな魔術と言える。
だが今回、デルミアが影から取り出したのは小石程の大きさの小さな水晶だった。
デルミアはそれを小瓶の中に入れた。
暫くすると水晶が光り輝いた。
水晶が光ると、デルミアは水晶を小瓶から取り出し、掌の上に乗せた。
すると水晶から画像が映し出された。
その水晶は映像や画像を映し出す『幻映水晶』と呼ばれる水晶の一種、その改良版である。
性質を知りたい物に一定の時間触れさせると、その物の性質を画像として映し出す。
これはいわゆる初期型の為、無生物にしか使えないが、今回のように水の性質や薬の性質を知る時に大いに役立つ。
そしてデルミアは水晶から映し出された画像を見てため息をついた。
「やはりそう簡単にはいかんな。」
水晶の映した画像には名称、温度、成分、質量等の様々な項目があったが、効力という項目には何も記されていなかった。
「あの薬屋の情報を信じるのは少し軽率過ぎだっただろうか。」
その結果を見てデルミアは呟いた。
そこそこの期間あの薬屋の元へ通っていた為、多少なり信頼してもいいという考えがあったのをデルミアは否定できない。
帰ったら罰を……とも思っていたが、利用するだけ利用して情報が間違っていたら罰するのはあまりにも傲慢だと思いとどまった。
それにもう王都には居ないだろう。
どこか他の街へ行ったのか、はたまた放浪の旅へ出たのか。
どっちにしろあの老婆の事だ。
どこかで生きてはいるだろう。
デルミアは気持ちを切り替えた。
「まだ一つ目だ。いちいち気を落としてはいられないな。」
結果が出るなり立ち上がり、水晶や小瓶を影の中に仕舞った。
ズボンに着いた砂埃を払う事をしなかった彼女からは、冷静さの他にそれすら気にできないほどの焦りを感じさせた。
「さて次だ。残りは二つと言っていたな。」
デルミアはそうして泉から離れ、他の泉に向けて再び歩き出した。
−−−
耳に入ってくる情報は多量だ。
風の向きや温度、湿度、強さ、それらはもちろん、風達が話している雑談や会話の声も聞こえてくるのだ。
その間に割って入って情報を拾うのだ。
風に知りたいことを直接聞くには、特殊な口を持つ一族の口でしか聞くことはできない。
その為話している内容から無理やり拾うしか無いのだ。
風の会話に無いものは聞くことができないが、そういう事は稀だ。
基本的に周辺に吹いている風は地形の影響を受けているため、そこから情報を得てその情報を風同士で話している。
それを可能にしているのが空気中に漂う魔術の発動の素となっている物質だ。
その物質は『マナ』と呼ばれている。
自然界に溢れている魔術の素が『マナ』、その者の体内に存在しているものが『オド』だ。
マナとオドの関係はとても密接だ。
そのためエルフの耳で聞き取れる風の声は、体内のオドの量によって変わる。
聞かせる価値のない者、聞かせるに値しないと風に判断されてしまえば、風の声に理解できない部分が出てくることもある。
デルミアは生まれつきオドの量が多く、様々な風の声が聞けた。
世の中には何の代償も無しに風の声を聞くことの出来る『禍威の耳』というのもあるらしい。
一度はお目にかかりたいと、デルミアは思っていた。
森の木々を掻き分けながら進んでいるデルミアの目の前に突然モンスターが現れたのはその時だった。
掻き分けた木の先に鼻部の巨大なモンスターが現れたのだ。
本当に唐突なその出来事に、彼女は一瞬怯んだ。
音もなく現れたそれは彼女を睨みつける。
デルミアはすぐさま後ろに下がるが、生茂った草木がそれを邪魔する。
大した距離も稼げないまま、そのモンスターとの戦闘に入ってしまった。
コイツ……一体どこから現れた。
この私が接近に気が付かないだなんて……。
それに風も急に騒ぎ出した。
まるでそのモンスターが”突然その場から湧いて出た”かのように……。
「貴様がどこから現れたか知らないが、時間を無駄にしている暇はない。退いてもらおう。」
デルミアは影の中からあるものを取り出した。
それは……暴力と恐怖の象徴、そして絶望の具現たる存在。
木製の棒という、日常のどこでも見かける道具が、本来の使命を歪められ、その無垢なる形状に釘という無数の牙を刻まれた異形の武器――名も無き戦士たちの絶叫と共に生まれし凶器。
太く、黒ずんだ木材には、過去の幾多の戦いを物語る無数の傷が刻まれているように思わせる。
乾ききった染みが時間の経過と共に鉄錆のように深い赤を帯びる。
突き刺さる釘は、まるで禍々しき牙のように鋭く、無造作に突き出しており、それぞれが異なる方向を向いているため、ただの一撃でさえも、打撃と切裂の二重の苦痛を敵に刻み込む。
この武器を手にする者は、ただの攻撃者ではなく、怒りや悲しみ、あるいは生き残るための必死な意志を宿した者である。
それは力と暴力の融合体であり、使い手にとっては一縷の希望、敵にとっては悪夢そのもの。そして、その無骨な形状は、力によって運命を切り開く者の覚悟と絶望の深さを象徴している。
一見して素人の手作り感を漂わせるこの凶器だが、その放つ威圧感と狂気に満ちた存在感は、どんな華麗な名剣にも負けることなく、戦場の中心で異彩を放つだろう。
長々説明したが……ただの釘バットだ。
黒ずんでいるのは幾多の戦いの痕跡などでは無く、単に素材となった木材の色がそういうものなのだ。
愛剣をモンスターに使うことが稀なデルミアは、愛剣を使わずしてモンスターと戦う方法を考えていた。
星詠みの森、その近くの湖で戦った巨大なモンスター。
それとの戦闘時に使っていた木の棒の感触が心地よく、湖付近に村に到着したときに木の棒を譲ってもらい、それを削り、それに木造建築用の釘を打ち込んで制作した。
デルミアは、ものの5分で制作した突貫工事の産物を今まさに使おうとしていたのだ。
「さぁて、何故か手によく馴染むこれを振り回す訳だが……」
デルミアは釘バットをモンスターの鼻先へ向ける。
モンスターは何が起きているのか理解できず首をひねった。
突き出した釘バットを戻し、デルミアは肩に乗せた。
そのデルミアの表情は少し嬉しそうだ。
「どこから吹き飛ばされたいか、選ばせてやろう。なぁに、釘バットの初陣の記念だ。」
そう言って釘バットを見た。
どんなに過ごした期間が短ろうと、すぐに物に愛着を抱いてしまうのがデルミアという女だった。
そういうところは子供の頃から変わっていないらしい。
デルミアのそんな個人的なこだわりなど無視して、モンスターはデルミアに飛びかかった。
しかしデルミアは飛びかかってくるモンスターに対し、素早く間合いを取るべくわずかに体を後ろへ引いた。
その瞳には戦い慣れた者特有の冷静な輝きが宿る。
釘バットを肩からスッと下ろし、両手でしっかりと握ると、その重量感と手に馴染む感触を確かめるように軽く振った。
「ほぅ……跳びかかるか。悪くないが、私を甘く見たな。」
迫り来る巨体。
その鼻先にある巨大な牙が反射的に煌めいた瞬間、デルミアの全身がバネのように動き出した。
彼女はモンスターの突進を真正面から受けることなく、鋭く一歩横に跳ぶ。
そしてその瞬間、釘バットを斜め下から上へ力強く振り上げた。
「まずは……その面だ。」
釘バットの先端に埋め込まれた釘が、モンスターの鼻を抉るように突き刺さった。
その衝撃は木材の芯にまで響き渡り、モンスターの頭が大きく反り返る。
釘が肉を裂く音が鈍く響き、モンスターは苦痛に咆哮を上げながら後退した。
追い詰めたように見えるその光景の中、デルミアは手応えの中に一つの違和感を覚えた。
「……思いの外軽いな。まるで中身が詰まっていないような……。」
モンスターへの攻撃の感触が普段より軽かったのだ。
理由はわからなかったが、今は攻めるしか無い。
彼女はバットを腰の高さで横に構えると、次の一撃に向けて全身の力を溜め込んだ。
そして、後退するモンスターの側面へと滑り込むように接近し、一気に振る。
「吹き飛べ。」
振り下ろされた釘バットは、モンスターの脇腹に直撃。
釘の牙がその厚い皮膚を貫き、血が飛び散る。
モンスターは耐えきれず膝をつくように崩れ落ちたが、その目にはまだ戦意が宿っている。
「ほぅ、しぶといな。」
デルミアは息を整えながら釘バットを再び構えた。
今度は上から突き刺すように叩き込むため、少し距離を取る。
モンスターは咆哮を上げながら最後の力を振り絞って突進してきた。
デルミアはその勢いを見極めると、真正面から釘バットを構えて一歩踏み込む。
そして――
「これで詰んでやる。」
重心を低くし、全力のスイングで迎撃する。
その一撃は、振動と共にモンスターの頭部を横から叩きつけ、釘が骨にまで達する音が響く。
モンスターは巨体を揺らしてバランスを崩し、ついに地面に沈み込むように倒れ込んだ。
デルミアは釘バットを肩に乗せ、深く息を吐いた。そして倒れたモンスターを見下ろしながら、軽く釘バットを撫でた。
「なかなか使えるな、この釘打棒。今後も使うのならば名前がいるな…………“無骨の牙”なんてどうだろうか。」
そう呟く彼女の顔には、子供のような無邪気な笑みが浮かんでいた。
その笑顔は、恐怖に怯える森の静寂とは対照的に、どこか温かみさえ感じさせた。
質量を感じさせない謎の敵との戦いは終わった。
そして、デルミアは影に釘バットを仕舞いながら、次の泉を探すように森の奥へと歩みを進めた。
ーーー
モンスターの戦闘後、二つ目の泉にたどり着いた。
そして一つ目の泉と同様の作業をした。
しかし今回の泉でも記憶を取り戻す効能は見られなかった。
「ここも駄目か………ん?アレはなんだ。」
水晶から映し出された画像を見ていると、その向こう側に石で作られた建物が見えた。
それは古く、修繕の跡が見られないような程にボロボロだ。
鬱蒼と茂る木々の影に隠れるように、その建物は静かに横たわっていた。
柱は風雨に削られ、角は丸みを帯びており、割れ目からは苔と小さな草が顔を覗かせている。
どこか湿った空気に、石材特有の冷たい匂いが混じる。
崩れたアーチと傾いた壁、長い時の流れに抗うことなく朽ちていったその姿は、かつての威厳をわずかに残しながらも、もはやただの廃墟と化している。
デルミアはそれに歩いて近づいた。
近づけば近づくほどその遺跡の壊れ具合が露になる。
「これは……遺跡か?」
デルミアが疑問に思ったのは、森の中に遺跡がある事でも、その遺跡に人のいた痕跡がある事でも無かった。
デルミアが疑って仕方がないのは、耳から入ってくる風の声に、この遺跡の話が微塵も出てこない事だった。
「やはり森に入ってから耳の調子が悪いな。先程のモンスターといい、この遺跡といい、こんなにも様々な情報を聞き逃すだなんて……。」
しかしデルミアの耳は遺跡以外の情報は聞き取っていた。
その遺跡の座標に被った所に泉がある事や、その泉の周辺には風すらも近寄らないという事を。
デルミアは遺跡を睨みつけて歩き出した。
その遺跡の中に泉があり、その泉がこの森の中にある泉の中で、一番記憶を取り戻す効能がある可能性が高いという事を確信しながら。
−−−
遺跡の入口を見つけるために、遺跡の外周を回ることにした。
遺跡の周辺はもはや遺跡を隠すためかのように草木が生い茂り、足元も安定しなかった。
四角形の遺跡の周囲は一辺が30m程。
しかしそれだけで終わっているように思えず、恐らくは地下にさらに続いているだろう。
探索の末、デルミアは遺跡の入口らしき所を発見した。
しかし崩れた岩や倒れた樹木などで塞がれていた。
デルミアは影から剣を取り出し、それ等をさも斬れて当たり前かのように斬り裂いた。
するとやはり中へ続く入口が現れ、その中から冷たい空気と、鼻が曲がる程の異臭が溢れ出した。
「……かなりの間放置されていたようだな……。」
デルミアは袖で鼻を塞ぎながら中を睨んだ。
中は暗く、松明が設置されていたが火は灯っていなかった。
石の床はひび割れ、剥がれている石畳も目立った。
しかし外観とは異なり、そのヒビからは草や苔の姿は見られなかった。
デルミアは警戒しながら中に入る。
入った途端、入口を開けた時に感じた冷気が体全体を包み込んだ。
それは寒いという程では無かったが、体の芯に響くものがあった。
「ダンジョンのような物か……。見たところ数十年は放置されている様子だが……一体いつの時代の遺跡なのだろうか。」
歩きながらそう呟く。
そして入口から数m程歩いた頃、壁に固定されている松明に突然火が着いた。
火が着いた瞬間にデルミアは後方に飛び退いた。
しかし松明が消える気配は無い。
「これは……魔術の一種か。恐らくは………」
そう言って地面、壁、天井、と見回した。
そして石の剥がれた天井に図面の一部のようなものが見えた。
デルミアはその天井にある残りの石を、地面に落ちている石を拾って天井に向かって弾いた。
弾いた石が当たった天井の石は地面へと剥がれ落ち、図面の全体が顕になった。
「やはりか。」
それは直径数十cm程の魔法陣だ。
図形内に発動条件、発動したい魔術を術式として刻み込み、発動条件を満たした時に刻んだ術式が魔術を発動する。
「ご丁寧にこんな意味のわからない魔法陣が組まれているのならば、他にも罠がある可能性が高いな。」
入口付近に設置するなら即死の魔法陣でもいいハズだ。
それなのにも関わらず、ただ松明の火が着くだけの魔法陣など意味がわからない。
まるで遺跡が入ってくる者を歓迎しているかのような造りなど、人を迷わせ、閉じ込めるのが目的のダンジョンにあるハズがない。
明るい通路を警戒しながら歩いていると、広い部屋に出た。
その部屋は暗く、松明の魔法陣の効果は反映されていなかった。
足音が響くことを考えると、部屋そのものも広く、他に通路が繋がっているようだった。
「暗いな。『ゴーカ』」
デルミアは掌から小さな炎を生み出した。
炎属性の魔術で『ゴーカ』と呼ばれるものだ。
基本属性の魔術ならば、デルミアは大半を使用できる。
明かりをつけたことで視界がハッキリとし、前に歩みを進めると、足に何かが当たる感触があった。
掌の明かりに照らされた暗い部屋の地面に、デルミアは目を向けた。
すると何かの戦闘の形跡を表したような凸凹に割れた地面、そこに白骨化した死体が転がっていた。
「これは……ここに挑んだ冒険者の亡骸だろうか。」
死体は死後十年程経過しているようだった。
遺跡の入口を開けた時にした異臭の正体はこれだったのだ。
しかもそれは一つではなく十体近く転がっていた。
デルミアが冒険者と判断した根拠の一つがそれだ。
「これだけの数が何故この空間で死んでいるのだ。魔術の痕跡は感じないが……。」
デルミアは周囲を見回した。
しかし別段変わった様子は見られない。
自然にあるマナを使用した魔術には必ず痕跡が残る。
デルミアがそれを見逃すのはまずあり得なかった。
戦闘経験が豊富な彼女の目を誤魔化すことはできない。
そこから考えられることは一つだけだった。
「とてつもない量のオドを持つ者がいたようだな。」
デルミアは死体を見回して言う。
オドを使用して魔術を行使すると、勿論痕跡が残る。
しかし使用者が死ぬ、または一定の時間が経過すると自然のマナに還元される。
その為マナの痕跡が残らないのだ。
「このまま見過ごすのはほんの少し良心が痛むな。」
死体を見ながら呟く。
一度デルミアは死体達を影収納で影の中に取り込んだ。
骨を運ぶだけでいいなら一度に全てを持っていくことが出来るが、誰が誰の骨か分からなくなるのは良くない気がした。
その為骨を一つずつ影に仕舞って外に持ち出すことにした。
全ての骨を影の中に入れ終わり、入口の方へと向かおうとした時だった。
入口の横部分から突然岩が突き出し、入口を塞いでしまった。
「しまった。全く気が付かなかった。まさか……」
デルミアは自分の足場を踏み抜いて破壊した。
するとそこには入口付近にあった松明に火を灯す魔法陣と同様の形状の魔法陣があった。
「地面の下に魔法陣があったのか……しかも認識を阻害する術式を上に重ねている。複数の魔法陣を重ね掛けするとは、かなり高度な技術を持った魔術師が作ったようだな。」
破壊した地面に描かれている魔法陣の内容を見てデルミアは驚いた。
一番上に認識を阻害する魔法陣、二番目に物体が通り過ぎるのを認識する術式を編み込んだ魔法陣、三番目に扉を閉める術式が編み込まれた魔法陣。
そのようにしてデルミアの認識を掻い潜っていたのだ。
恐らく一番下にある魔法陣は扉が開く術式が編み込まれているのだろうとデルミアは予想した。
そしてそのすぐ後だった。
奥に続いている通路も岩の壁が出現し、道を塞いだ。
デルミアは破壊しようと試みるが、壁に刻まれている魔法陣を見てとどまった。
「これは……付加魔法の術式を編み込んだ魔法陣か。今どき珍しいな。……いや、この施設はもっと昔に造られたものだろう。今どきもクソもないか。」
その壁に施されていたのは付加魔法を編み込んだ魔法陣だった。
付加魔法は別名エンチャントとして知られており、武器等に属性を付与する時に使うことが多い高等魔術だ。
建築物に使用する時は、物理攻撃無効、魔術攻撃無効などを付与し、安定性を確保するために使用する。
「これでは出られんな。だが、魔法陣には解除方法が存在する。それが何かわかりさえすれば……」
デルミアが顎に手を当てて考えていると、部屋の中央部分の床が降下した。
そして暫くすると、床は上昇してきた。
しかし今度は何かが上昇してきた床の上に乗っている。
それは――
「ゴーレムか。……しかも高度な人型の。」
人型のゴーレムが部屋の中央に佇む。
それはまだ動かず、意志は感じられなかった。
しかし、デルミアが凝視している時に突然首をあらぬ方向に曲げて顔を上げ、光る目をデルミアに向ける。
その光景は常人ならば腰を抜かしてしまうほどの恐怖を感じるだろう。
そして口のようなところを大きく開き、眩い光線を放った。
「ッ!!」
デルミアはそれを紙一重で回避する。
光線の着弾した先の地面に穴が開く。
着弾したところからデルミアは大量のオドを感じ取った。
その瞬間に、この空間の全てが合点がいった。
「この部屋の傷と大量のオドの持ち主は貴様か。」
ゴーレムは光線を発射した口を大きく開き、デルミアに向かって咆哮する。
ゴーレムに声を発する器官はない。
そのためゴーレムの口から発されるうめき声のようなものの正体を、デルミアは分からなかった。
しかし今は戦闘に集中すべきだと確信した。
デルミアは影から愛剣のハウンドダガーを取り出した。
黒い刀身が暗い空間でも僅かな光を反射し、刃の部分が紫紺に光る。
「来るか。」
像のように動かなかったゴーレムが、突然ガリガリと金属同士が擦れる音を響かせながら動き出した。
その巨体が一歩踏み出すたびに床が揺れ、重厚な音が部屋中に反響する。
デルミアは剣を抜き、素早く構えを取った。
ゴーレムの口元が怪しく光るのを見て、デルミアはすぐさま横へ跳んだ。
直後、轟音とともにゴーレムの口から蒼白い光線が放たれる。ビームは石壁をえぐり取り、削られた壁の破片が飛び散った。
「先程の光線か。一度見た攻撃に当たるほど、私は甘くはないぞ。」
デルミアは低く笑いながら距離を取る。
しかしゴーレムはその場でじっとしてはいない。
重たい足音を響かせながらデルミアを追い詰めようとする。
「速さはないが、パワーは見ての通りか……少し面倒だな。」
デルミアはハウンドダガーを回しながら、ゴーレムの動きを見極める。
巨体を活かしてまっすぐ突進してくるのかと思いきや、ゴーレムは突如両腕を大きく振り上げた。
その先端が鋭利に変形し、巨大な斧の刃のようになる。
「――ッ!!」
ゴーレムがその刃を振り下ろす。
デルミアは咄嗟に横に跳んで避けるが、床に叩きつけられた衝撃でバランスを崩した。
その瞬間、ゴーレムの赤い目が輝き、第二の攻撃が放たれる。
「まさか変形するとは……」
デルミアは体勢を立て直しながら、間一髪で後方に跳ぶ。
再び放たれた光線が彼女のすぐ前を通り過ぎ、地面を焦がした。
「だから、そんな玩具のような攻撃で、私を仕留められる訳が無かろう。」
デルミアは左手を床について反動をつけながら飛び上がり、ゴーレムの脇腹に剣を突き立てる。
しかし、鈍い音とともに剣先が跳ね返された。
石と金属が混ざり合ったその表面は、予想以上に硬かった。
ゴーレムはデルミアを振り払うように腕を振り上げる。
その動きに合わせて彼女は剣を引き抜き、跳び退った。
ゴーレムの攻撃が空を切り、再び大きな音を立てる。
「確かに硬い……だが、削れないほどではないな。」
デルミアは床を蹴り、素早い動きでゴーレムの周囲を回り始めた。
常に動き続けることで相手の攻撃を避け、隙を探る。
そして、ゴーレムの動きに一定のパターンがあることに気付いた。
「攻撃の合間の僅かな隙……そこを突く。」
ゴーレムが再び光線を放つタイミングを見計らい、デルミアは低く構える。
その口元が輝き始めると同時に、全力で地面を蹴り、一直線に駆け出した。
ビームが放たれる寸前、デルミアはゴーレムの側面に滑り込み、その足元へ滑り込む。
ゴーレムの動きが一瞬止まる。それを見逃すことなく、デルミアは剣を持つ手に全力を込めた。
「『天川流――光刃灯籠』」
デルミアの燃え盛る剣がゴーレムの膝関節に深々と突き刺さり、黒い刃が鋭い音を立てながら回転する。
ゴーレムの巨大な体がガクンと揺れ、動きが鈍った。
「やはり関節部は柔らかいか。」
デルミアは素早く剣を引き抜き、さらにもう一撃を膝関節に加える。
ゴーレムが大きな音を立てて片膝をつき、バランスを崩した。
しかし――
「……まだ動くか。」
ゴーレムの赤い目が再び光を帯びる。
関節部分から燃え移った頭部がゴウゴウと揺らめく。
そしてその体全体が奇妙な音を立てて震え始めた。
まるで最後の力を振り絞って攻撃しようとしているかのようだった。
だが、デルミアは今にも襲ってきそうなゴーレムに背を向けていた。
そして案の定、ゴーレムはデルミアに飛びかかろうと走って接近した。
「……無駄だ。」
走るゴーレムの足元から一本の剣が、ゴーレムの足を突き刺した。
ゴーレムは足に突き刺さった刃に抵抗できず、地面に倒れた。
そして顔を上げて抵抗しようとしたときには遅かった。
ゴーレムの周囲には、何十本もの剣の刃が向けられていた。
「これは私のオリジナルの魔術で少々性格が悪いが、悪く思うなよ。恨むなら由緒ある剣術で停止しなかった自らを恨むんだな。」
デルミアは振り返らずに目を閉じる。
「『無間の剣の嵐』」
次の瞬間、影から無数の剣がゴーレムに向かって射出され、ゴーレムを蜂の巣にした。
硬い装甲を貫く勢いで射出されていく剣は、全てゴーレムに突き刺さる。
そして目に宿っていた赤い光を失い、ゴーレムは完全に機能を停止した。
「さて、邪魔者は消えた。さっさと泉を探さねば。」
デルミアがゴーレムに突き刺さって剣を影に戻しながら言う。
すると、ゴーレムが現れた中央の床が、ゴゴゴと音を立てて降下していくのが見えた。
デルミアは考える間もなくその床に飛び乗る。
床はどんどん降下していく。
数十秒は乗っている。
かなり下があるらしい。
「あのゴーレムを倒すことでも魔法陣が発動するのか。もうよく分からんな。」
デルミアはこの遺跡の造りに心底呆れた。
必要の無い魔法陣の仕組みだったり、入口は歓迎的なのにも関わらず、少し行った先にあのようなゴーレムがいる。
造った人間は何をしたかったのだろうか。
そんな疑問が湧いて尽きない。
しかし一分程乗っていると地面に到着した。
ガコンと何かにはまった音がし、目の前には翡翠色に輝く泉が現れた。
「……これが最後か。」
デルミアは床から降りる。
すると自分が降下した場所の後ろに複数の通路があるのを確認した。
恐らく上にあった通路の出口なのだろう。
つまり、ゴーレムを倒す事で時間を短縮する事が出来、迷いもしないという訳だ。
通路に逃げれば迷うが一応泉には出られる。
そういう仕組みだろう。
デルミアは再び前を向いて泉に向かって歩く。
すると次は泉の手前に石版があるが見えた。
石版に手をかざし、石版を撫でる。
その石版は薄汚れており、読める部分が限られていたが、辛うじて読む事が出来た。
石版にはこう記されていた。
『いにしえの帳に記されしは、火の無き陽と影無き月が、蒼穹の狭間に交わる刻。星々は巡るを止め、波無き海は虚ろを映す。すべての生は螺旋に絡み、裂けた紐に結び付けられるものなり。されど、その端は誰も知らず、結び目の解く術もまた永遠に秘されん。人の業、獣の嘆き、天の理すら、その糸の操りに過ぎざるを、識る者なし。ひとたび問いを抱けば、その答えはさらに深き霧に隠される。汝、進むも退くも道ならぬ道なり。全ては『虚影』の運命に。』
「何だこれは。何が言いたいのか分からん石碑だな。」
デルミアは石版を気にせず泉の水を小瓶に汲み取る。
そして水晶を入れ、結果が出るのを待つ。
すると効能の項目に長々と文章が記されている。
神経伝達物質の過剰な分泌や受容体の異常な活性を抑制する。
この水は、その受容体への結合を競合的に阻害し、過剰な神経伝達を正常な範囲に戻す。
加えて、視覚や聴覚情報を統合する脳領域の神経活動を安定化させる成分が配合されており、知覚の歪みや不快な錯覚を軽減する。このようにして、この水は脳内の信号の『誤差』を修正し、現実と幻覚の境界を明確にする効果を発揮する。
と記されていた。
要約すると幻覚や幻を打ち消し、無効化する事が出来るということだ。
「最後の泉は幻覚を打ち消す薬だったのか……はぁ。結局当たりはなかったか……。」
デルミアは珍しく肩を落とした。
「休みたくない休暇をわざわざ取り、エリナ様に迷惑をかけながら出発したこの旅……何の成果も無いとはな……。」
デルミアは自分が乗ってきた床に再び乗った。
しかし床は動く気配は無かった。
どうやら一方通行の魔法陣で動いているようだった。
「最後の最後に踏んだり蹴ったりとは……なっ。」
ため息をついた後にデルミアは地面を勢いよく蹴って先程の空間に戻った。
すると閉じられていた入口は口を開き、外の光を受け入れていた。
「さっさと出て帰還するとしよう。」
デルミアは外に出ると、地面に穴を掘った。
そこに先程回収した死体達を一体ずつ入れていった。
最後に土を上に被せて全員を埋めた。
「すまないな。手厚く弔ってはやれんのだ。まぁ、冒険者であろうお前達ならば、ダンジョンの近くに埋めてやった方が本望だろう。」
そう言ってデルミアは遺跡を去ろうとした。
すると背後から何かが崩れ落ちる音が響いた。
デルミアは背後を振り返った。
するとそこには、今出てきたばかりでそこにあるハズの遺跡が綺麗さっぱり消え去っていた。
「遺跡が……消えた……?」
その理解不能な状況に流石のデルミアも頭に疑問を浮かべずにはいられなかった。
しかしその疑問の中に一つの考察があるのも事実だった。
「……風が遺跡の事を話していなかった事、手応えの無いモンスター、石版に記された言葉、幻覚を打ち消す泉の水、そして……消えた遺跡。」
それらを全て統合すると一つの答えにたどり着く。
「『虚影』……か。」
そう呟いて遺跡のあった場所を見つめる。
デルミアが考えたのは、その遺跡が原初の魔術師の一人である『虚影』が生み出したものではないか、という事だった。
幻や幻覚と、高い技術力を持つ魔術師だったと、伝承ではなっている。
手応えの無いモンスターやゴーレム、そして複雑に編み込まれた魔法陣。
『虚影』の魔術師が作ったのならば大体の説明がつく。
実在した事だけが確かな魔術師達の遺産。
それらは貴重な資料になると思われた……しかし、既に消え去っており跡形も無い。
「不思議な体験だったが……これも貴重な経験だな。」
原初の魔術師については、まだ分からないことがある。
今回の件でもっと突き詰められる事があったかもしれないが、現状、彼女の目の前には何も無い。
貴重な情報かもしれなかったが、デルミアはどうすることも出来ない為、その場を後にした。
ーーー
星詠みの森付近にある湖の村へと帰った。
そこではルドが鼻を鳴らしてデルミアの戻りを今か今かと待っていた。
「おかえりなさい旅人さん。捜し物は見つかりましたか?」
「いや、目当てのものでは無かったよ。それより、ルドをありがとう。助かった。」
ルドがデルミアに走って近づき、自分の顔をデルミアの顔に擦り付けた。
デルミアはそれを制止しながら村人にお礼を言った。
ーーー
「本当によろしいのですか?泊まっていかれては……。」
「あぁ、これ以上世話になる訳にはいかん。それに私は仕事の休みでここへ来ている。そろそろ休みの期間も切れる頃だ。礼を出来ずにすまないな。今度、王都へ遊びに来るといい。『デルミアの友人だ』と名前を出せば城へ案内させよう。」
その言葉を聞いた村人達は驚いた。
その名前に聞き覚えがあったからだ。
「デルミアって……まさか王国騎士団の……!」
青年が口にしようとする言葉を人差し指で制止する。
「私が女というのは、他言無用で頼むぞ。」
片目を閉じて覗き込むかのような姿勢でそう言い、デルミアは村を去った。
村人達はデルミアが見えなくなるまで手を振り、デルミアもそうした。
ーーー
王都への帰還途中、デルミアは小瓶を取り出し呟いた。
「何の成果も無い……とも言いきれないか。」
デルミアは手に持った先程の泉の水が入った小瓶を眺めた。
これを分析すれば、現在売られている幻覚を無効化する薬の効力をあげられるかもしれない。
エリナ様には申し訳ないが、今回の旅の成果はその程度しか無かった、とデルミアは思った。
「さぁ、帰ろうルド。一刻も早くエリナ様にご報告せねばならない。」
デルミアはルドに声をかけ、なるべく早く王都に着くよう、走り出した。
ーーー
「……以上が休暇の内容です。」
「そうですか。まさかデルミアが休みたいと言った理由が私の為だったとは……」
「この身、全て貴女様の為に捧げます。」
そう膝を着くデルミアにエリナは困ったような眉毛をした。
「なんだか申し訳無く感じてしまいますね。……ごめんなさい。私が迷惑をかけてばかりいるせいで、貴女にも負担の矛先が向いてしまって……。」
しかしその言葉をデルミアはすぐさま否定した。
そのデルミアの心中には、村で言われた言葉が漂っていた。
「いえ、私の全ては貴女様の物です。それに……」
デルミアは顔を上げてエリナの顔を見上げた。
「何度も謝罪されるより、たった一度の礼の方が、苦労した側は嬉しいのだと……私はこの休暇で学びました。」
笑顔で見てくるデルミアの顔を、エリナも笑顔で返した。
デルミアからそんな言葉が出てくると思っておらず、堪らず嬉しくなったのだ。
「フフ、そうですか。では……デルミア。ご苦労様でした。私の為に、ありがとうございます。」
「ありがたきお言葉。」
そう言ってデルミアは再び頭を下げた。
「感謝の言葉を催促するような事を、エリナ様に向かって言ってしまい申し訳ありません。」
デルミアは自分の言ったことを思い返すとかなり失意な事を言ったなと思い、謝罪した。
するとエリナは
「あら、デルミア。今自分で言ったではないですか。何度も謝られるより、一度感謝される方が嬉しいって……。それは私も同じですよ。だからおあいこです。」
と、思わぬしっぺ返しをデルミアは食らった。
「……はい。」
デルミアは静かに笑って立ち上がった。
催促するような事を言ってしまったのは事実だが、言われた言葉そのものは嬉しくて堪らなかった。
すると今度はエリナから口を開いた。
「そういえばデルミア……なんだか、よく表情を変えるようになりましたね。」
「そ、そうでしょうか……。」
「はい、なんだが表情が豊かになったというか……感情表現をよくするようになったな……と。」
少し眺めの休暇により、デルミアは少しだけ変われたようだった。自分ではあまりその実感が無かったが、エリナに言われた事ならば喜んで受け取った。
ーーー
そして数週間が経過した。
あれから記憶を戻す薬の情報は入ってこなかった。
あの時遺跡で手に入れた幻覚を打ち消す薬は少量を研究者に預け、半分ほどは自分で持つことにした。
私は気休めになればと、エリナ様をよく観察した。
すると、捕まえてきた犯罪組織である『十戒』の構成員に何かしら普通ではない態度を取られている様子だった。
エリナ様の反応から察するに、エリナ様は十戒の構成員達が放つ瘴気を好むようだった。
その理由は分からない。
我々が臭いと感じるその瘴気を何故か好まれる。
その瘴気が濃ければ濃いほど良いようだ。
以前、十戒のとある支部局長の側近を捕らえたことがあった。
その者は情報を吐くこともせずに自害したが、エリナ様はその者が情報を吐くまで何度も牢獄へ通いつめた。
お慈悲からなのか、やはり濃い瘴気に引き寄せられたのか、今までは分からなかったが、何がそうさせるのかを知ったのはその時だった。
どちらにせよ犯罪組織が絡んでいるとなれば放っておけない。
そして我々は遂に見つけた。
十戒の構成員でないにも関わらず、支部局長と同等の瘴気を放ち、私が最も信頼する人物の唯一人の関係者。
記憶を取り戻す薬を手に入れられなかった私に出来る気休めと言えば、もうこれしかない。
全てはこの目の前の男にかかっている。
幼き豪傑の子供『カイン・S・アルベル』に――。
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書きたいこと一つが達成される章ですので、お楽しみいただければ幸です!!
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