第五十一話 出陣
三章、楽園都市編はこれで最後です。
この後は少し閑話等を入れたいと思っております。
ステンチューの南西にある出入り門。
そこに集められたステンチューの取締を担う『聖流一家』400人。
ドラードと共にシャーフェリアから来ていたドラードの部下の騎士50人。
そこにガヴェルド、パロミデス、ドラード、フォルゲル、ビンス、デルミア、エリナがいた。
アルベルの姿はまだ無く、全員装備の点検をしながらアルベルを待っていた。
「まだ来ないのかァ?何しに行ってんだあいつ・・・」
「なにやら『あいつを使ってやれる』・・・・・・と言っていたが、ホテル・ヘルメスに何があるというのだろうか。」
「ホテル・ヘルメス・・・。あぁ、多分"アレ"ね」
「はい、アレですね。」
心当たりのあるドラードとビンスは何か納得しているようだった。
その姿を見てデルミアとパロミデスはさらに頭にハテナを浮かべた。
するとそこに・・・
「おーーーい!!」
と誰を待っていると思っているんだ。と言いたげな皆の中に、その元凶の声が響き渡った。
「貴様!!何をしている!!いい加減に・・・・・・なあっ!?」
デルミアがアルベルへ文句を言おうと、声の方向に顔を向けると、アルベルは何かに股がっていた。
四つん這いで毛むくじゃらの動物、しかし体は巨体そのもので、顔は少し鳥に近い。
翼と一体化した前足が勢いよく地面を蹴る。
あれはアルベルがダストからの贈り物として受け取った、ベスタ族の住まう森に生息している『翼足獣』という希少な騎乗型モンスターだ。
「いやぁ悪い悪い。コイツを連れて行きたかったんだ。」
「なんなんだそのモンスターは!」
「ん?あぁ、そうだった。この事知ってるのってビンスとドラードだけだったな。コイツは翼足獣って言ってな。ダストっていう俺を勝手に兄貴分に担ぎ上げてる奴から貰ったんだ。な?」
アルベルの問いかけに対して翼足獣は雄叫びを上げ、返事をしたようだった。
翼足獣は馬と同等の速さにも関わらず、どんな陸地でも対応出来る屈強な足と、水に浮くほど軽い羽毛、そしてなんと言っても、滑空することで空すら支配する、超万能な騎乗型モンスターなのだ。
「しかし君は、馬には乗らん部隊だろう。君は歩兵部隊として我々のサポートのハズ。前衛に騎乗者がいると我々の戦いに巻き込まれて危険だ。」
とフォルゲルが言った。
確かにその通りだった。
スピーディーかつ、瞬く間に変わっていく戦況の中、小回りの利かないのはかなり危険で最悪の場合は前衛の邪魔になってしまう。
しかし、アルベルの考えは違った。
「勘違いしてるから言っとくが、別に俺が乗るわけじゃねぇぞ。コイツは馬よりも力が強い。大勢を運べるだろうよ。だから、負傷者をいち早く回復班の人達に届けるために連れていくんだ。」
一同は驚いた。
一番伯奇に対して怒りを抱いているハズなのに、負傷者の事を考え、他人を優先している事にだ。
親の仇がいると言われたら、もっと怒りを表に出しても良いハズなのに。
アルベルはどこか冷静だった。
「伯奇がいる所までは乗ってくけど、そっからは負傷者を運ばせるのに集中させる。・・・できるか?」
翼足獣は再び雄叫びで返事をした。
「いい返事だ」とアルベルはふわふわの羽毛を撫でた。
そんなアルベルの姿を横目に見ながら、ビンスが声を上げた。
「皆の者!!聞けぇ!!」
その一言に、整列していた他の騎士達は正面にいるデルミアの方を向いた。
国王候補者の支持者が元王国騎士団員ならば、その部下も実質的にデルミアの部下だ。
王国騎士団特別指南役の肩書きは伊達じゃない。
聖流一家も元々、職に溢れた騎士たちだ。
デルミアに従うことを了承したのか、従う意思を見せない者はいなかった。
この作戦を立てたのはパロミデスだったが、騎士として名が売れているデルミアか、フォルゲルか、ガヴェルドが激励するのが一番効果的だ。
「これから我々が挑むのは、誰もが恐れる魔獣王の一体『夢を喰らう者・伯奇』だ!!
だが、恐怖に屈する必要はない。これまで積み上げてきた努力、鍛え上げた技術、そして何より仲間と信じ合う絆こそが、どんな巨悪にも打ち勝つ力だ!!
我々はただの騎士ではない!
一歩一歩、研鑽を続け、困難を乗り越え、敗北の中から立ち上がってきた強者たちだ!!
伯奇は確かに強大だ!圧倒的な力も持っている!!
だが、その力ゆえに弱点もあるだろう!!
油断する隙もあるハズだ!!知恵と冷静さを失わなければ、必ず勝機は見える!!
そして、何よりも覚えていてほしいのは、我々は一人で戦っているのではないということだ!!
どんな危機に陥ろうと、隣には仲間がいる!!
手を伸ばせば届く距離に、支えてくれる者がいる!!
お互いに助け合うのは当たり前という認識をして貰いたい!!
互いを支え合ってこその人間だ!!
決して、一人で無茶をしてはならない!!
それが我々からの『命令』である!!」
デルミアのそのスピーチのような激励の言葉は騎士達の指揮を大幅に上げた。
全員静かに聞いていたが、武者震いと興奮が漏れ出ているのをアルベルは感じ取った。
「今日この日、君たちは歴史を刻む!!
長年に渡り恐怖を植え付けてきたあの魔獣王を討伐することでだ!!
死線を乗り越え、勇気を持って挑むその姿が、後の世代に語り継がれることになる!!
だから、決して恐れてはいけない!!一度恐れを抱けば、その恐怖に支配される!!
前を向け!!臆するな!!背中には仲間がいる!!
巨大な敵であろうと、それを倒す力と覚悟は、既に我々の中にある!!さあ!!出陣だ!!」
デルミアがそう言って、自分の愛剣ハウンドダガーを伯奇のいる方角へ刃を向けた。
そして男たちはその行為に一斉に雄叫びを上げ、武器を空高く掲げた。
遂に、あの野郎を倒せる。
待っててくれ、村の皆、母さん、親父。
俺は必ず――
――伯奇を倒してみせるから。
お読みいただきましてありがとうございます!!この作品が面白いと感じていただけたのなら是非ブックマークや感想、レビューやいいねの方をどうぞよろしくお願いいたします!!




