第四十三話 奴隷少女変身大作戦
俺は売りに出されていた奴隷の少女を買った。
名前も知らない、親が誰かも分からない、分かるのは性別だけ。
俺と手を繋ぎ、俺の隣を一生懸命歩いているこの愛らしく可愛らしいこの子を俺はどうするべきだろうか・・・。
まずは散髪か?少し・・・というか、かなりボサボサだし頭も体も洗ってあげたい。いつまでもこんな汚い格好させてあげたくない。
いやでも最初は飯なのか?
腹が減っては何とやらだ。
何をするにもまずは腹ごしらえが必要だ。
よしっ、まずは飯屋に行こう。
そしてこの子に腹いっぱい飯を食わせてやるんだ!
アルベルは拳を強く握りしめた。
もはや彼の意思は今や山をも砕く勢いだ。
ーーーーーーー
「すみません・・・当店にはドレスコードというものが・・・」
「ダメダメそんな汚い子。衛生面を疑われちゃうよ。」
「ごめんなさいね。丁度お店閉めるところなのよ。」
「悪いな」
「ごめんなさい」
「それはちょっと」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ーーーーーーーーーー
全っっっ然どこも相手してくんねぇ!!
迂闊だった・・・!まずはこの子に綺麗な服を着させてあげないと飯屋にも入れないし第一この子が病気になってしまう・・・!
まずは服か!?いや髪の毛だって地面スレスレまで長くて生活しづらそうだ!やっぱり散髪か!?いやいや風呂に入れてやらなきゃ服を着替えたにしろ意味が無い!ここは風呂屋に連れていくべきか!?いや待てよそもそもこの街に風呂屋なんてあるのか!?日本でもないのに風呂に入るためだけの施設なんてこんな繁華街にあるハズがない・・・!考えろ・・・考えろ・・・俺は一体、何からするべきなんだ・・・!!
アルベルが頭を抱えながら考えていると、袖を引っ張られる感触がした。
その方を見ると案の定奴隷の少女だった。
「ん?どうした?」
「あの・・・私のせいでご主人様が困っているんですよね・・・その・・・ごめんなさい。」
少女は俯きながら上目遣いでアルベルへ謝罪の言葉を述べた。
んんんんんーーーーーーー!!!!
なんていい子なのこの子!!!!
別に貴女のせいじゃないのに自分のせいだなんて言っちゃって・・・!!!
貴女は悪くないのよ!悪いのは貴女をこんな目に遭わせた世界だ!そうだ!世界なんて俺が滅ぼしてやる!!
きっと今までの人生、苦労しか無かったのだろう・・・!!
そう考えれば引きこもってた俺は一体何様なんだ!?
あぁ・・・自分が情けない・・・。
するとアルベルは顔を左右に振り、両頬をペチンと叩いた。
その音に少女はビクッと反応した。突然の大きな音は苦手なのだろう。
「悪かった。ちょっと取り乱した。もう大丈夫だ。何せ、小さい子供のお世話なんかしたこと無くてよ・・・。」
アルベルは屈託のない笑顔を少女に見せた。
その表情を見たからか、少女の表情は少しだけ緩くなった。
「さぁーてまずは洋服から調達すっかな。ここまだ売買エリアだろ・・・?そしたら服も飯もどうにかなりそうだ。よし行こうか・・・ってそういえばまだ名前決めてなかったな。」
アルベルは少女の手を引きながら言った。
そして少女に問いかけた。
「なぁ、ここに売りに出される前はなんて呼ばれてたんだ?」
少女はその質問から暫く黙っていた。
言いづらいのか覚えていなのかの二択だろうとアルベルは予想した。
「その・・・・・・ごめんなさい。分からない・・・です。」
答えは分からないの方だった。
無理もない、見たところまだ10歳にもなっていないような少女だ。
そんな時からあそこにいては自分の名前の意味など見いだせず、すぐに忘れてしまうだろうし、親に呼ばれてたのかすらも怪しい。
「だったら俺が名付け親だな。いや〜自分の子供より早くに他の何かしらに名前をつけてあげるなんてことがあるだなんてなぁ・・・」
するとたまたまだろうか、デルセロが外の光を反射してアルベルの目を眩ませた。
「おっと、そうだったな。デルセロも俺が着けた名前だったな。絵本の中の人の名前だけどよ。それにしても名前か・・・一から考えるとなると難しいもんだな・・・。」
アルベルは暫く頭を悩ませた。
この子には幸せになって欲しい。
いや俺が幸せにしなければならない。
何か、こう・・・幸ありそうな名前がいいな・・・・・・ラッキー?ハッピー?いや違うな・・・幸せ、幸福、至福、祝福、恩恵・・・・!!
アルベルは目を見開いて手を繋いでいない方の指で少女を指差した。
少女はそれに一瞬驚いた。
「よし、決まったぜ!今日からお前は『メグ』だ!!」
「???」
少女は首を傾げた。
それにアルベルはずっこけた。
「まぁ・・・しょうがないよな。元ネタが漢字だし・・・。いいか?『メグ』!お前には今まで損してきた分の『恵』をこれから沢山味わえるような人生を送って欲しいんだ!だから『メグ』だ!」
「メグ・・・メグ・・・メグ・・・!」
少女ことメグは何度も自分の名前を連呼した。
メグは俯きながらも笑顔で言っていた。
その笑顔にアルベルは心を打たれていた。
うんうん、可愛い可愛い。
エリナと同じくらいかその次くらいには可愛い。
あの暴言辛辣メイドや筋肉王国指南役もこれくらい可愛げがあってくれれば良いのにな。
それにこんな可愛いものを性の対象として見れるわけ無いだろ・・・!!
やっぱりロリコンは犯罪者予備軍だったのかもしれないな。
まさかこの世界に来てからそれを自覚させられるとは思わなかったが。
「よしっ!そうと決まれば服屋に行って、風呂屋に行って、飯屋に行ってから髪の毛整えるって感じだな!名付けて・・・『メグのおめかし大作戦』だ!!それじゃあ今度は楽しい方の売買エリア観光と行こうぜ!!」
アルベルが天高く拳を突き上げると、メグもそれを真似して拳を天高く掲げた。
それからアルベルは服屋に行き、残りのクロ3000万で服屋に適当に服を見繕って貰った。
ひとまず好きな服を複数枚選ばせた後、店員に合うものを複数、アルベルが着せたい服を複数枚という塩梅で購入した。
現在は白いワンピースを着せている。
3000万クロのうち、600万クロ消費。
その次は風呂屋に行こうとしたが、なかなか見つからず彷徨っていると、何やら怪しい風呂屋へ行き着いてしまった。中に入ると受付のようなところがあり、受付の人はメグを見ると少し嫌そうな顔をしたため、デルセロをチラつかせ睨みつけると黙った。
その後、何も説明されずに部屋へと案内された。
案内された部屋はホテルの一室のようになっており、嫌な予感がしたが風呂場もあったため、丁度いいやとそこでメグの服を脱がせ、体や頭を洗っていると突然かなりの美人が風呂場に乱入してきた。
メグの体を洗うため、裸になっていたアルベルは女性にその気があるのかと勘違いされたのと、女性の好みのタイプだったため、風呂場で大乱闘が発生した。
アルベルにその気は全く無く、部屋中を全裸で逃げ回り、女性はそれを追いかけ回した。
暫く逃げ回り、サービスを受けようとしないアルベルに痺れを切らした女性は突如大激怒し、部屋には様々なものが飛び交った。
アルベルはそれを避けるのに必死で、メグは浴槽の中に身を潜めていた。
それによりアルベルの貞操の危機というなんとも不思議なハプニングが発生した。
しかし何とかメグを洗うという目的は達成できた。
あの店やっぱり・・・ソープランドみたいなものだったのか・・・。流石欲望の街・・・。
危うく俺の護り固めてきた貞操が破壊されるところだった・・・。
2400万クロのうち、120万クロ消費。
そしてハプニングで疲れ果てた後にドレスコードを守り、飲食店で食事をとることが出来た。
恐らくメグはナイフやフォークを使った食事が難しいと予想したため、なるべく人の迷惑にならないように、誰もいないテラス席で、手で食べられるものを注文した。
「はぁ・・・散々だったぜ・・・別にヤってみたくない訳じゃないけど、今はそんな場合じゃねぇしな。」
アルベルがブツブツと呟いていると料理が運ばれてきた。
そして目の前に並べられた美味そうに湯気を躍らせる食事にメグは釘付けとなった。
「んふふふふ〜〜いっぱい食べろよ〜〜。」
アルベルは傍から見れば気持ちの悪い笑顔を浮かべ、メグが食事を手に取るのをニヤニヤと見ていた。
小さい子供が美味しそうにご飯を食べる姿ほど幸せなものはこの世には無いと考えていたからだ。
まずはパンを手に取ったメグは、ゴクリと唾を飲み込み、勢いよくパンにかじりついた。
すると思い切り目が見開かれ、その後何故か目は潤んでいた。
クロスにいくつかの水滴が落ちる。
メグは声も出さず、パンにかじりついたまま涙を流していたのだった。
「えっ!?ちょっ!!えっ!?ど、どうしたんだよメグ!?」
アルベルが驚くのも無理はなかった。
なぜならメグは檻から出た時ですら一滴も涙を流さなかった。
それなのに今、声を殺して泣いているのだ。
「・・・メグ・・・・・・いっぱい食べれそうか?」
アルベルはメグの心の何かを察して優しく問いかけた。
その問いかけに対して
「・・・・・・。」
メグはコクリと静かに頷いただけだった。
しかしアルベルにとってはそれだけで十分だった。
「よし、だったら・・・」
アルベルはその光景を見て問いかけ、その答えが返ってくると大きく息を吸い込んだ。
「すみませぇぇぇんんん!!!!!店員さん!!!!!この店の手で食えるような料理!!!!!ありったけ持ってきてくださぁぁぁい!!!!!」
その声はテラス席かつ、目の前にはスロットで遊ぶ大人たちがいるようなところだったのにもかかわらず、周辺のどんな音よりも大きく響き渡った。
「いっぱい食べろよ・・・メグ。」
「ご主人様・・・・・・はい・・・。」
「オエップ・・・もう食えねぇ・・・。」
食事が運ばれる波が収まった。
どうやらこれで全部だったらしい。
アルベルの腹は破裂寸前の風船のようになっていた。
それに対してメグは最初から全く変わらないペースでガツガツと料理を食べ、遂には最後の皿の料理を平らげた。
「メグ凄いな・・・よくそんなに食えるな・・・羨ましいぜ・・・ウップ・・・」
「大丈夫・・・?ご主人様・・・」
メグは椅子から降り、アルベルのお腹をさすった。
「あぁ平気平気。よし、この後は散髪に行こうぜ。洗ったはいいけど、そのボサボサに長い髪の毛をどうにかしなきゃだしよ。」
そう言ってアルベルとメグはその店の料理や食材を全て平らげ、店を後にした。
正確には殆どメグが食べたのだが。
2280万クロのうち、279万クロ消費。
二人は最後に理髪店へと向かった。
流石に普通の街としての店舗もあるらしく、その理髪店の近くには普通の風呂屋や特にドレスコードを必要としない飲食店もあった。
最初からこっちに来ていればよかった。
アルベルはメグを理髪店の中に入れたあと、暫く外を見張っていた。
するとなぜだかため息が出た。
こう見るとこの街は派手なところがよく目立つ・・・そのせいでメグのいた貧民街が問題視されないのはやっぱりダメだ。
そろそろ無くなるってのは言ってたが、それにしてもその判断になるのが遅すぎる。
死体があんなにあって、四肢がもげて腐り落ちていたり、たれ流された糞尿に虫が集ったり、あぁなるまで放っておくのはどう考えてもおかしい。
やっぱりパロミデスは一発殴っておかなければ俺の気も晴れないし、売りに出されて死んでしまった子供やモンスターも浮かばれない。
これがあいつの主導したことなのかは関係ない、アイツがこの街を治めていると言うのなら、全てを管理し、全員が住み良い街を作らねばならない。
それが住人の命を握る領主の責任というものだ。
ガチャリと後ろから扉が開く音がした。
そして「あの・・・」と小さな声が聞こえてくる。
アルベルはその声に振り返った。
するとそこには、小さい身長だが足元ほどまであった後ろ髪がボブとショートの中間くらいの長さまで短くなり、左目も長すぎる髪の毛で隠れていたのがキッチリと目が隠れる丁度の所で揃えられていた。
髪の毛が長い時から思っていたが、そもそもの髪の毛のポテンシャルが高く、先程までのボサボサな頭とは打って変わって、サラサラな髪の毛となっていた。
「うおぉぉ!!!似合ってるじゃねぇか!!!」
メグは目の前ではっちゃけるアルベルの態度を見ると、照れたようにコクリと頷いた。
「よしっ!『メグのおめかし大作戦』も完遂したところで・・・・・・本格的に夜の街で遊ぶとしようぜ!!」
アルベルが拳を突き上げるとメグもそれを真似して小さく「おー」と小さな拳を突き上げた。
理髪店で1万クロ消費し、アルベルの残金、残り2000万クロ。
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