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第四十二話 奴隷の子


領主邸でパロミデスへの誤解が解けたアルベル一行は

ステンチュー内で使える通貨である『クロ』を一億クロ分受け取り、ステンチューを観光することを勧められた。

そして四人は領主邸を後にした。


「あの笑顔に押し負けてつい受け取ってしまったが・・・・・・」


アルベルは持たされた一億クロを見ながら呟いた。

それに続いてデルミアも


「手元にあっても邪魔なだけだな・・・。何も考えていないのかあの人は・・・。」


「そりゃ何も考えてない訳ないだろうけど・・・」


アルベルとデルミアが二人揃ってため息をついたが、アルベルは内心少しワクワクしていた。

しかしその後、荒い息遣いがやかましい街中でも聞こえてきた。

それはすぐ近くのエリナの息遣いだった。

そして彼女はついに膝を着いてへたり込んでしまった。


「エリナ!大丈夫か!?」


「ハァ、ハァ・・・すみません。なんだか息苦しくて・・・・・・」


少女の顔は赤く、大量に汗をかいていた。

息苦しいためか、胸に手を当て瞳を閉じていた。

へたり込んだエリナをビンスとデルミアが支えて体を起こした。


「地下迷宮での疲労がここにきて出てきたようだな・・・エリナ様、この街には『ホテル』なる宿屋があるそうです。そこで休みましょう。アルベル、ビンス、今日はもう休むぞ。まずは宿屋を探さなばならない。」


「あっ、そう・・・だよな。」


アルベルは少し落ち込んだような表情を浮かべた。

それもそうだった

口ではクロを受け取ったことに対して文句を言っていたが、実際のところは前世では"そういうところ"を楽しむ前に死んでしまったため、淡い期待を抱いていたのだ。


しかしそれを見たエリナは何かを察したように「フフっ」と笑顔を見せた。


「本当・・・わかりやすい御方ですね・・・」と小さく呟いた。


「アルベル様、街へ遊びに行っても大丈夫ですよ。他の二人も私のことは心配せず外出してきても良いのですよ。」


最初はアルベルだけに言っていたエリナは自分を支えてくれているデルミアやビンスに対しても言った。


「えっ!?いや何言ってんだよ!そんな体調のエリナを放おって遊び行けるわけ無いだろ・・・別に遊びに行きたいとも思ってねぇし・・・。」


アルベルは腕を組んでそっぽを向いた。

それが照れ隠しで、自分意志に反している行動だとエリナはすぐさま察した。


「いいですかアルベル様。これは主からの"命令"です。アルベル様はこれからこの街で遊びに行かなければなりません。主の命令に逆らってしまわれるのですか?」


エリナってこういうキャラだっただろうか・・・。

でも・・・俺の気持ちを察してくれてるのかな・・・。

確かにこの街は面白そうなものがたくさんあるし通貨も貰った。遊ぶには苦労しない。

だがエリナが心配で側にいたいのもまた事実だ。


「・・・・・・分かりました。我が主の命令に従いますよ。」

「よろしい。それではビンスもデルミアも好きにしてもよいのですよ?」

「私はエリナ様についていきます。貴女様の傍にいることが私の幸福です。それにエリナ様と共に街を見ながら宿屋を探すというのもまた一興でございます。」


デルミアは支えていたエリナを自ら立たせ、手を繋ぐ体勢へと移行した。

そしてデルミアは「お前はどうする。」と言わんばかりにビンスの方を見た。


「私は・・・・・・すみません、少し街を見て回ってきます・・・。」

「おっ、じゃあ俺と行くか?ビンスってここの事知ってるんだろ?」


アルベルが観光にビンスを誘った。

アルベル自身も街の構造はよく知っていなかったし、案内役兼身内が一人でもいると安心感と楽しさは何倍にも跳ね上がるからだ。


「すみません、遠慮させて頂きます。一人で街を回りたい気分なのです・・・。」


その時アルベルは唖然とした。

断られるのは想定内で、その上辛辣な言葉を吐かれるのではないかと考えていたのに、何やら憂いを感じさせる表情をして静かに呟いたため、普段とはなにか違うのを感じ取らざるを得なかった。


「それでは解散します。アルベル様、ビンス、知らない大人にはついて行ってはダメですよ?入ってはダメと言われたところに入るのもだめです。ハンカチやタオルは常に持ちましょう。それから・・・・・」


「いきなり先生みたいなこと言い出すエリナも最高だな・・・!」

「フフッ、学校の先生もいいですね。」


そう言って四人は領主邸を後にした。

アルベル、ビンス、エリナとデルミアはそれぞれ別の方向へと歩いていった。

ひとまずアルベルは街の案内所へと向かった。







複雑な道を掻い潜りながらアルベルは案内所へと到着することが出来た。


今更ながらこの街はとにかく派手だ。

案内所ですら・・・馬鹿デカい。


「ひゃーーーーでっかいな・・・ただただ紹介するだけの場所のくせに景気が良いこったな。」


王都で暫く暮らしていたアルベルが驚くほどに巨大で、前世で何度か見かけた高層ビルのようなものがこの街の案内所のようだ。

そして案内所の扉をくぐった。

すると案内所の中ですら綺羅びやかに輝き、様々な色のライトがチカチカと点滅を繰り返し、目が痛かった。


「うおっ・・・中もすごい派手だな・・・。」


アルベルが天上の光を鬱陶しそうにしていると店員らしき人物がものすごい速度で近づいてきた。


「よォ〜〜〜こそいらっしゃいまァ〜〜〜したァ〜〜〜お客様ァ!!!」


近ぇし!うるせぇし!速ぇ!!!!

本場もこんなテンション感なのかよ・・・!!


「今回はどのようなご要件でェ〜〜〜〜??」


いやここに来たからには用は一つだろうよ。

一挙一動が鬱陶しいなこいつら・・・!!


「いやぁ俺よこの街初めてだから適当に見繕ってほしいんだが・・・」

「そォ〜〜〜れなら我々にお任せくださァ〜〜〜いィ!!!・・・・っておやおやおやァ〜〜〜!!!貴方は先ほど街頭幻映水晶に映し出されていた方ではあァ~~~りませんかァ!!!」


街頭水晶・・・?あぁ街頭テレビみたいなものか。

パロミデスの野郎、賭けで俺達を映してたって言ってたもんな・・・多分それのことだな。


「いやァ〜〜〜私あの餓者髑髏戦を見てから貴方方のファンになってしまいましてェ〜〜〜!!!」

「そっ、そうかよ・・・そりゃありがとうな・・・。」


「貴方様の適切な指示に加え、大きな女性の腕力と技術による太刀筋!護衛対象を護りつつ戦闘に参加するメイドの女性と護られるだけでなく戦闘に参加している三名を付加魔法で支援する国王候補のエリナ様!!まさに最&高のコンビネーションでした!!!」


厄介な野郎に捕まっちまったな・・・有名人のファンもこんな感じだったのか・・・人気者はつれーぜ


「その御方が今目の前に!!必ずともお客様のご期待に答えてみせまァ〜〜〜すゥ〜〜〜!!!」

「おっおう・・・頼もしいな・・・。」


「ところで失礼を承知でお聞きいたします。ご予算はおいくらでしょうか?」

「おう8000万だ。相場がわからねぇんだが・・・足りるか?」


「はっ!?8000万!!??」


あれ、まずいこと言った感じか・・・。

ここじゃ少し足りないのか?

いやいやあの成金軽口男が堂々と渡してくる金額だ。

そうそう安くはない・・・ハズ。


「なるほど・・・8000万・・・8000万か・・・」


どうしよすっごい悩んでる。

これで『どこ行くにも足りなァ〜〜〜い。』とか言われたら結構落ち込むぞ。

しかも俺がクロの大半持ってるからデルミアとエリナホテル泊まれないだろうし、ビンスも街回れないだろ・・・。


「整いましたァ!!」


今の今まで整ってたのかよ。

俺の少し不安になってた時間返せ。


「お客様におすすめなのはァ・・・っとその前にこの街の細かい説明をいたしますねェ。この街は"エリア"が分けられていましてね。それぞれ、娯楽エリア、快楽エリア、戦慄エリア、闘技エリア、売買エリアの計五つのエリアに分かれています。

まず『娯楽エリア』はギャンブルなどではなく、見て楽しむエリアとなっています。クロを用いて入店し、女の子と話しながらお酒を飲んだり、あんなことやこんなことが出来るエリアとなっています!!」


「そして次は『快楽エリア』となります。このエリアはスロット等の水晶で動くものに頼ったエリアとなります。お一人様で楽しみたい方に人気なエリアとなっています。それに当たった時の快感といったらありません!!」


「その次は『戦慄エリア』となります。ここはイカサマやズルは何でもありのトランプゲームから正当な真剣勝負、ダイスにルーレットまであるスリルが味わえ、自らの運が試されるエリアとなっています!!」


「そしてこの街の目玉とも言える『闘技エリア』では選手にクロを賭けてその選手が様々な種目を勝ち抜くと、賞金を賭けた方々で山分けをするというものになっております。しかし強い選手ばかりにかけてはダメですよ・・・集まるクロが高い分、配当も減りますからね・・・!何と言っても自らも参加できるというのがまたまた人気なのです!!」


へぇ見てるだけじゃなくて参加もできるのか・・・まぁこういうところの相場って武器の持ち込み禁止だろうから俺はこてんぱんにやられるだけだろうがな。


「最後にご紹介するのは『売買エリア』ですが。このエリアは娯楽エリアと同じでギャンブルはあまり関係ないのですが・・・」


「なにか問題でもあるのか?」


「実は少し汚いエリアとなっていまして・・・勿論普通に買い物ができる綺麗な所もあるのですけれど、なにせ大声では言えませんが希少モンスターから希少種族の子供まで色々売っているそうで・・・」


「はっ!?何だよそれ!!モンスターもおかしいが人型の種族の子供まで売ってんのか!?そんなん奴隷市場じゃねぇか!!」


アルベルはその言葉に憤りを感じ、案内所の男の胸ぐらをつかんだ。


「落ち着いてください・・・!!」

「ー!!悪ぃ、取り乱した・・・。」


「まぁお客様がそう思われるのも無理ありません。昔、この街で借金をした男がいたのですが、その担保に自分の娘を入れるというものまでいましてね・・・近々処分される予定のエリアなんです。」


「じゃあその売りに出されてる連中はどうなるんだよ。」


「さぁどうなるのでしょうね・・・それはお偉いさんの決めることなので下々の我々には何も出来ません。」


「冗談じゃねぇ・・・」


処分されるエリアに取り残された奴らが辿る道は、殺処分しかありえねぇだろ・・・!

モンスターだってきっと無抵抗に違いない、ましてや子供までそんな目に合うのは・・・

絶対許せねぇ!!


「おいお前!今すぐ売買エリアまで案内しろ!」


「はっはい!!」


そう言ってアルベルはその案内所の男に売買エリアまで案内させた。

売買エリアに向かっている道中はどんどん道が見窄らしくなっていき、次第に綺羅びやかな金と黒の装飾からただの古びた石造りの外観へと変わっていった。

少しだけ食の街エイトの貧民街に似ていた。




「こちらになります。」

「たしかにこりゃ・・・ひでぇ・・・」


謎の異臭がアルベルを襲った。その臭いに思わず鼻を腕で覆った。


この臭いは腐敗した人間の臭いだろうか・・・物凄い臭いだ。

人も大勢倒れてる・・・売買エリアというか貧民街だな・・・それも特別最悪な。

くそっ!少しでもパロミデスに心を許しかけていた俺が馬鹿だった。

やっぱりあいつは正真正銘のゲス野郎だ。


「この先に奴隷市場があります。私は仕事に戻りますので、ここで失礼いたします。」

「おう、悪かったな・・・。」


そう言ってアルベルは案内所の男と別れた後真っ直ぐ道なりに進み、奴隷市場を目指した。

奴隷市場への道を進んでいると物乞いしてくる者や、遠くからでも分かる過酷な労働を強いられている者たち等様々なものがアルベルの視界へと入ってきた。


コイツらはギャンブルや賭け事で負けて借金が返せなくなった奴らなのだろう。

"賭け事に関して"言えばパロミデスは信用できる。

恐らく自制が効かなくなった連中なのだろう、それを助ける義理はないが・・・・・・

テメェの子供を担保にしてのうのうと外で生きてるような奴がいるなら俺はそいつを許さない・・・!


「よう兄ちゃん。いい服着てんな、ちょっとクロくれよ・・・十倍にして返すからよ。」


アルベルは地面に寝転がる見窄らしい男に声をかけられた。

本来かまっている時間などないのだが、アルベルは足を止め、その方向を見た。


「あ?その言葉聞いて誰が信用すんだよ。それより・・・テメェは自分の子供、借金の代わりに売っぱらったりしてねぇだろうな・・・」


アルベルは今までにないような形相で男に向かって言った。


「俺に女房がいるとでも?・・・へっ、面白ぇ。さっきの可愛い姉ちゃんと同じようなこと言いやがる。」

「あぁそうかよ。じゃあな。」


そしてアルベルは男の元を去り、再び歩き出した。


俺と同じく子供を助けようとしてるやつがいるってことか・・・

いやそうと決まったわけじゃねぇ。

ここより高値で売れる場所につれていく可能性もある。

俺の所持金額で足りるかわからねぇが俺が買ってやらなければ。


暫く歩くと檻が無数に並んだ広場へと出た。


「ここが奴隷市場か・・・。」


異臭の正体はここだった。

檻の中では複数のモンスターや子供が死んでいるのにもかからわず、値札が張り出され、そのまま出品されている。

中にはまだ生きている者もいたが、衛生環境が最悪なここではもう長くは生きられないだろう。


これの殆どが身勝手な借金の形や、捕獲で捕まった子供や希少モンスターと考えるとアルベルは吐き気と嫌悪が止まらなかった。


「おいそこのオヤジ。なんで死んでるのに値札がついたままなんだ。」

「あぁ?うるせぇな。死んだやつ処分すんのも金も労力もかかるんだよ。たまに死体でも買ってくやつもいてよ。それのために残してるんだ。」


アルベルがその檻に目をやると、死体にはハエが集り、虐待のような後だろうか、顔の原型がなくなっている死体や、体と四肢が腐り落ち、くっついていないものまであった。

値札を見ると『1000000クロ』と書いてある。


この市場には全部で50の檻があるという話だ。

合計で5000万クロ。

買える、全て、ここにいる全員を。

しかしこのクロを払うことによってこの子供やモンスターを捕まえた奴らが得をするのは納得がいかない。

だが俺が買わずして誰が買う。

俺が買えば全員を土に埋めてやれる。

だがあんなクズどもの助けになってしまう・・・。


こうなったら仕方ない。


「なぁオヤジ。」

「あ?なんだ?まさか買いたくなったのか?」

「今すぐパロミデスに連絡しろ。」


アルベルは男を静かに指差した。


「俺がここの奴隷全部をこの金で買う。だがこのモンスターや子供を担保とした連中は絶対に外に出すな。・・・・・・そう伝えろ。」


「はぁ!?おいおいお前!何無茶言ってんだ!!そんなの出来るわけねぇだろ!!こいつらはあのクズどもの借金の代わりだ!売れたら借金はチャラってことになってんだよ!その辺理解して喋ってんのか!?」


アルベルはその反論に頭の中の何かが切れた音がした。

握りこぶしを作っていた手は血まみれで、それで奴隷市場の男の胸ぐらを掴んで怒鳴った。


「子供は親の所有物でも換金アイテムでもねぇんだぞ!!無抵抗の希少モンスターだって誰かに迷惑をかけたのか!?親の身勝手で売りに出された子供が一体何をした!?悪ぃのは全部借金した自制の出来ないゴミのせいだろ!!」


アルベルのその言葉に男は檻に背中をつき、ずりずりと地面に座り込んだ。


「ハァ、ハァ・・・・・・俺の払うクロは・・・なんでも良い。お前の好きにしろ。だから檻の奴らを担保とした借金野郎には報告するな。お前はこのクロで街で必要なもんだけ買ってどこへでも行けば良い。聞きゃ普通の金と換金できる所もあるらしいじゃねぇか。」


アルベルは5000万クロ丁度を男の前に放り捨てた。


「それ持ってさっさと消えろ。」


男はアルベルの形相に恐怖し、一言も発さず、檻の鍵をアルベルに渡し、5000万クロだけ持ってその場から走り去っていった。




その後アルベルは檻を一つ一つ開けていった。

その度に死んでいるモンスターと子供の死体を地面に埋めていった。

「悪ぃな。こんなところじゃ眠れねぇだろうけど・・・我慢してくれ。」


その光景を建物の影から見ている人物がいたが、アルベルはそんなことには気づかず黙々と檻から死体を出し埋めるという作業を続けていた。




そして最後の檻まで来た。

今までの49の檻の内、49個全て檻の中の者たちは死んでいた。

そのため最後の檻に着くまでかなりの時間がかかってしまった。

アルベルは50個目の檻を開けた。

この檻だけ珍しく性別が書いてあった、どうやら女の子らしい。


そのボサボサな淡い緑髪をした死体は他のものよりも比較的新しく綺麗で、欠損部位が一つもなかった。

そして座るようにして檻の中にいた。


「いま出してやるからな・・・。」


すると檻の中の少女が少し動いたように見えた。

アルベルはその事に驚き目を見開いた。


「お前・・・生きてるのか・・・!」

「・・・・・・」


どうやらまともに喋れないようだ。

こんな場所にいたんだ、無理もない。


「俺はお前を買った。助けるために。さぁ一緒にここを出よう。」


手を引こうとするアルベルの手をその少女は無気力にも引き剥がそうとした。


「なんでだ・・・?どうして外の出たがらないんだ?」


すると少女はかすかに口を開いた。

そして徐々にその口が動いていった。


「そ・・・そと・・・はこわ・・・い。だか・・・ら・・・」


その時アルベルは長く無造作に伸びた前髪から除く少女の光のない目と見て思った。

こんな少女が自分の境遇に絶望し、生きることすら諦めている。


まるで前世の自分を見ている気分だった。

外への希望を完全に失い、何にも期待しなくなった。

そして自分だけの空間に引きこもり、現状が悪いのを自分以外の全てのせいにした。


だが今の俺は外へ出られている。

目的があり、動かざるを得ないと言ってしまえばそれまでだが、少なくとも前世よりはマシになっている。


しかしそれをこの子に強要するのは傲慢というものだ。

外への希望を失っているこの子を無理やり外に出したところで、この子も辛いだけだ。

最悪の場合は・・・・・・


するとアルベルは檻の中より少しだけ後ろに下がった。


「お前は・・・・・・どうしたい。死にたいか?」


少女は動かない。

ただ俯いてる。

アルベルも少女の返答を待っている。

二人の間に沈黙が続いた。


「・・・・や・・・・」


少女が口を開いた。

アルベルはその言葉がはっきり聞こえてくるまで待った。


「・・・い・・・・や・・・」


段々とはっきりしてくる。

アルベルはその先の言葉を待っていた。


「いや・・・死に、たくない・・・もっと・・・生きて、たい・・・色々なこと・・・が、したい・・・」


弱々しい少女の口からその言葉が出た。

その言葉にアルベルは真剣な表情から一変し笑顔を見せた。


自分から死にたいだなんて思う子供がどこにいる・・・。

誰だって子供の頃は夢を見て希望を抱いているものだ。

俺だってそうだったんだから。

きっかけは何であれ、それをこの子の口から聞けただけで・・・それでいい。

『死にたくない』から始める人生があってもいいじゃないか。

生きていきたい理由は、これから決めればいい。


「おいで。今日から俺が、お前のご主人だ。」


アルベルは手を大きく広げた、少女はそれに弱々しくも勇敢に飛び込んできた。

飛び込んできた少女をアルベルは優しく、そっと抱きしめたのだった。

お読みいただきましてありがとうございます!!この作品が面白いと感じていただけたのなら是非ブックマークや感想、レビューやいいねの方をどうぞよろしくお願いいたします!!

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