第三十八話 合流
巨大石像との戦闘を終え、耳を『ヴァルハラ』と名乗る者に彼女の耳に付け替えられたアルベルは先程戦闘した部屋を後にしていた。
そして痛みは既に無いが、自分の耳が心配で耳を摩っていた。
これ大丈夫なのか・・・?
もう痛かねぇけどよ・・・。
すると耳がピクピクと動いた。
「まぁ動いてるし・・・大丈夫なんだろ・・・。」
?
あれ、俺今自分でおかしなこと言ってなかったか。
耳は普通動かねぇと思うんだけど・・・。
アルベルはよくよく耳の形をなぞるように触った。
すると耳の先端が尖っている。
なんだこれ・・・。
俺の耳尖っちゃってる・・・?
エルフほどデカくないけど、普通の耳だけど先端だけ尖ってるみたいな・・・?
というか変なピアスみたいなのも着いてるし、本当に俺の耳じゃねぇんだな・・・。
「しかし、風を声として聞こえるって事だったよな。よし。」
アルベルは耳を澄ました。
何も聞こえない。
いや微かに聞こえる。
何かの声が。
「・・・この道を真っ直ぐ、そして一つ目の分かれ道は右から三番目、その先大岩の罠注意、そのまま真っ直ぐ行って二個目の壁掛け松明のところに隠し通路あり、その松明を引けば隠し通路が現れる、通路正面向かって右に矢の罠注意・・・・・・って、すっげぇ!!!なんだこれ!?本当に聞こえるぞ!!」
これが本当の事なのかはさておき、風が声として聞こえるってのは本当だったのかよ!
ロリっ子の戯言と思ってたけど・・・今度会ったらお礼言っとこう。
この道順が出口への道順なのか、エリナ達の所へ行けるのか、それは分からねぇが進んでみるしかねぇな。
アルベルは聞こえた通りに道を進んだ。
デルミアのように風を感じることは出来なかったが、風を『声』として聞くことが出来る。
これのおかげで道は間違えない。
それともう一つ、風を聞くことで相手の行動を読むことが出来るのだ。
というのも、道中またしてもコウモリ型モンスターが現れ、襲われることになったのだが、耳を行使することで、敵の生み出す風を聞いて避けることによって、目を瞑っていても問題なく攻撃を避けることが出来た。
そして遂に
「あれは・・・」
遠くに揺らめく松明の炎が見える。
アルベルは先程のことを思い出した。
もしかしたらまたただの燭台かもしれないと。
しかし先程の燭台とは違い、明らかにこちらへ近づいてくる。
「あっ!アルベル様!!」
「うおぉ!!エリナぁぁ!!!やっと見つけたぁぁ!!」
アルベルはエリナの元へ飛び込んだ。
いや、飛び込もうとした瞬間、顔面をデルミアとビンスに踏みつけられ、抱きつくのを阻止された。
「貴様・・・勝手にいなくなり、一体何をしていたのだ。」
「本当ですね。重要な時に限って役立たず。どうしようもない御方です。帰ったらお給料を減らしてもらいましょう。」
「いやいやいや!今回俺悪くねぇだろ!!ただ小便出そうと思ってたら勝手に床が回転しやがったんだよ!それに、俺だってただ、歩き回ってただけじゃないんだぜ?」
「ほう?と言うと?」
「なんと!20m近い動く石像を単独撃破に成功したのだ!!」
あの時の少女の口調が移った訳では無いが語尾に『のだ』をつけて話した。
「なんと!凄いですアルベル様!」
エリナは相変わらずアルベルの事を褒めてくれた。
「動く石像・・・いわゆるゴーレムか。」
「それもかなり巨大ですね・・・。」
それを言ったデルミアとビンス顔を見合せた。
そして
「そんなわけ無いだろ調子に乗るな」
「身の程を知ってください」
「もういいです・・・」
アルベルは二人の辛辣な態度に涙を浮かべ、顔を逸らした。
「ふ、二人とも・・・。」
「それで?その耳はなんだ?そんなピアス着けていたか?」
デルミアがアルベルの右耳に注目した。
尖った耳に見慣れないピアス。
気になって当然だった。
「あぁ。これはな石像、ゴーレムつったか?あれの中に入ってたロリっ子から貰ったんだよ。」
「み、耳をですか・・・?」
「はぁ・・・そんな年端もいかない少女から取り上げるだなんて、最低ですね。死んでください。」
「ビンスさんと話してると話進まないんで一旦黙って貰ってもいいですかね。」
ビンスはまたしてもシュンとした。
ビンスなりにアルベルの事を気にかけていたのかもしれない。
「そんでよ、そのロリっ子がくれたこの耳がよ、風を声として聞けるとか言ってたからよ、耳を澄ましてみたんだ。そしたらあーら不思議!お前らのところまでたどり着けたんだ!それにこれ!風を聞いて相手が次にどんな行動をとるかも予測できるんだってよ!聞いた声からイメージ映像まで見えるんだぜ!」
「そうか。だからここまで貴様は来れたのだな。まぁ何にせよ貴様が無事ならばいい。」
「デルミアさん・・・!あらやだイケメン過ぎるわ!」
「勘違いするな。貴様が居なくなってはエリナ様の後ろ盾を探すのが面倒なだけだ。」
そういえばそうだった。
俺は結局お飾りで緊急の支持者だったな。
誰か優秀な人間がエリナの後ろ盾につきたいと言ってきたら俺は即首チョンパだ。
そこら辺を履き違えていた。
「そうだったな。悪かった。先を急ごうぜ。」
「アルベル様・・・」
アルベルは自分の本来の立場を思い出し、再び歩き出した。
「それではアルベル様。私の代わりに先導をお願いします。」
「おう。」
そう言ってアルベルは耳を澄ましながら迷宮を進むこととなった。
もう少しで出られるかもしれない、と淡い期待を抱きながら。
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