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第三十四話 楽園都市

楽園都市『ステンチュー』まで残りあと5km程。

食の街エイトを後にしたアルベル一行はエイトでモンスターを撃退したお礼にと貰った食料を食べながらステンチューを目指していた。


ステンチューに近づくにつれ、周辺の植物や動物、モンスターに変化が見られた。

なんと金銀、宝石など、光り輝くような見た目のものばかりに変わっていたのだ。


「なんだこりゃ・・・植物も動物も全部金ピカだらけだぞ・・・」


「ステンチューは経済面で言えばこの国でトップを争う都市です。その都市の主であるパロミデス様はかなり豪華なモノがお好きだそうですし、恐らくその影響で都市周辺の環境も管理しているのでしょう。」


困惑するアルベルに対してエリナが説明した。

自分の都合で生態系まで変えちまうなんて酷ぇことしやがる、と心の中でパロミデスの評価を下げたアルベルだった。


「そんじゃあよ、この植物とか動物達は困ったりしてねぇのか?ほら草が金なら、食い物にならねぇんじゃねぇか?」


「それはどうなのでしょうか・・・見た目だけ金色なのか、それとも金そのものなのか・・・。」


「もし本物の金だとしたら、盗まれてもなんら問題ねぇって事か。随分強気だな。」


「彼自身も魔法の使い手らしく、盗まれそうになると、魔力が反応して泥棒が金の像になってしまうと言います。」


「盗難対策バッチリか。見せびらかしたい癖に防犯するところがなんか気に入らねぇな・・・。」


「それ程、自己顕示欲の高い御方なのだろう。しかしその様な御方が不本意と言いつつもエリナ様と、一応アルベルに対し、謝罪をするとなると・・・今更ながら不安を感じざるを得ないな。」


アルベルとエリナの会話にデルミアが割って入ってきた。

その発言にアルベルは、やはり自分の考えは正しかったのかもしれない、と考えていた。


「ん・・・?なんだありゃ。」


自分達以外に人がいなかったため、馬車の中を見ながら運転していたアルベルだったが、ふと前を見てみると謎の黒いドームのようなものが見えた。

それの光景に自分の目を疑い、馬車を停止させた。


「黒い色の・・・ドームか?」


「どうしたのですか?」


停止した馬車が気になり、エリナが御者席へと話しかけた。


「なぁデルミア。お前なんか知ってるか?」


「あぁ、知ってるとも。ここがステンチューで間違いはない。・・・しかし、『とあること』をしなければ街は拝めぬのだ。」


「もったいぶらずに教えろよ、男装癖おっぱいババア。」


「貴様・・・そろそろ死にたいのか?」


「ちょっと!二人とも!喧嘩は宜しくないですよ!」


三人がやかましくしていると、馬車の隣に立っていたビンスがやって来て、黒いドームの壁に近づいた。


「おいビンス・・・何があるか分からねぇし離れた方が・・・」


「まったく・・・デルミア様。もったいぶらずに早く教えて差しあげてください。」


ビンスが黒いドームに触れると、飲み込まれるようにビンスが漆黒に消えた。



「なっ!?どういうことだ!?」


「はぁ・・・ビンスには面白味が無いな・・・エリナ様。私の手をお取り下さいませ。」


「はっ、はい・・・。」


そう呟き、デルミアはエリナの手を取り、またしても漆黒の中に吸い込まれるように消えていった。


「ええい!ままよ!!」


三人が入っていった漆黒の壁へとアルベルも目を瞑り、勢いに任せて突っ込んだ。



ガヤガヤと周囲がうるさい。

目を瞑っていても分かる程の光の点滅。

鼻が曲がりそうな異臭と、それを打ち消すような甘い香り。

アルベルは恐る恐る目を開けた。

そして目の前に広がった光景に再び目を疑い、更には絶句した。


「なっ・・・なんだこれ・・・!?」


黒いドームの内側にはなんと、黒光りする建物と金で装飾された街があったのだ。

街のそこら中でカジノ、賭け事、そこにはその他様々な『大人の遊び場』があった。

街の黒と金の建物は、いやらしく輝き、常に夜であるかのようなドーム内によく映えた。


「すげぇ・・・」


アルベルは呆気にとられた。


俺の知識で言うところのラスベガスやマカオのような場所だろうか。


そこら中にカジノやらに没頭する人が沢山いる。


「これが黒いドームの正体だ。」


外から入ってきたアルベルに対してデルミアが近づいてきて説明した。


「この街には常に夜となる結界が張られているのだ。雰囲気が壊されない、それともう一つ。不当な入出を防ぐという二つの目的がある。」


雰囲気が壊されないというのはともかく、不当な入出を防ぐというのは、カジノでありがちな犯罪者や外からのモンスターを防ぐ目的なのだろうか。


「どうしてデルミアとビンスの二人はこの街のことに詳しいのですか?」


「それはですね。私とビンスが、初めて出会った街だからです。」


思いがけないその言葉にアルベルとエリナは唖然とした。


「何だそれ、気になる話じゃねぇか。詳しく聞かせてくれよ。」


デルミアの話に食いついたアルベルが肘でデルミアを続きながら催促した。


「懐かしい話になるが、それはまた今度だ。今はエリナ様を連れて、パロミデス様の所に向かわなければ。」


「っと・・・そうだったな・・・あのチャラ男はどこにいるんだ?」


「チャラ男だなんて・・・アルベル様、御本人の前では言わないでくださいよ?」


「はっ、はい・・・。」


アルベルはエリナにそう言われ、肩を落とした。

その後、アルベルのその疑問に対してデルミアがとある方向に指を差した。


「あの一番奥に見える領主邸だ。」


そこには一際目立つ金色の屋敷が見えた。

アルベル一行はその領主邸を目指し、街に入った。

これから起こる事など全く危惧せずに。

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