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第二十四話 聖悪の会合

十人の国王候補者が巨大な円卓を囲み、一堂に会する場『円卓会議』が、存在しない国王の代わりに国を動かしている『魔術師協会最高幹部』の内の一人の宣言により、今始まる。

ほとばしる緊張感が広い部屋を窮屈に感じさせた。

十人の国王候補者が更にその雰囲気に拍車をかけた。


アルベルは唾を飲み込み、緊張を隠した。

悠然と立っていなければエリナに迷惑がかかる。

それを意識すればするほど冷や汗が止まらない。


「それではこれより、第十二回円卓会議を始める。」


「この国王選挙は先代国王である、ベルドブール・クラウディア・ペン・アーサー王の意志により始まったものであり、それは何者にも侵害することは出来ない。」


「それを踏まえた上で有意義な場となることを期待する。全ては、歴代国王と原初の魔術師の意のままに。」


魔術師協会の最高幹部達が次々と前口上を述べていく。

毎度恒例のことなのだろうか、その話を真面目そうに聞いているのは数人程度で、そのほとんどが聞き飽きたと言わんばかりの態度をしていた。


アルベルは前々からエリナに教えられていた国王候補者のプロフィールを思い出していた。

どうやら円卓には建前上の順位のようなものがあるらしく、一番国王に近い者が第一席、一番遠い者が第十二席、つまり末席となるらしい。

しかし実際にはあまり関係していないという。


円卓末席

『パロミデス・ラヴァー』

『真夜中の帝王』という異名を持ち、娯楽と欲望の街『ステンチュー』、いわゆる繁華街の街を収める国王候補者。

容姿端麗でまさに遊び人のような見た目をしており、伴侶となる人物が5人いるらしい。


そしてパロミデスを支持しているのが鋼の英雄

『ガヴェルド・ドルタ』

8年前、ギガンテ族という巨人型モンスターの進行の時、肉壁となり、被害を最小限に抑えたため、鋼の英雄と呼ばれている。


円卓第十一席

『ベディヴィア・エクスレス』

森と共に暮らす一族である、妖精族の長。

古来より妖精と人間は友好関係を結んでいたが、とある事件により人間を信頼せず、人間も妖精族を迫害するようになったという。


それを支持しているのは同じく妖精族の妖精騎士

『ジャミエル・ウバル』

ベディヴィアとは違い、背に羽が生え、屈強な肉体をしている。

かつては森にあった湖を護る守護者をしていたらしい。

妖精族には妖精騎士団というものがあるらしく、それの騎士団長だそうだ。


円卓第十席

『レイドール・パーシヴァル』

英雄、レイドール・フォルゲルの叔父であり、騎士上がりの国王候補者。

レイドール家の本家な為、デルミアの兄貴ということになる。

40年前に起きた『レイギスの惨劇』において、目まぐるしい活躍をしたフォルゲルの叔父であり、本家であることを笠に着て、今回の国王選挙へと参加した。

しかし彼自身に実力が無いかと言われるとそんなことは無く、若い頃は人々を悩ませる大洪水を引き起こした雨雲を斬り裂き、地上に日の光を取り戻した事があるらしい。


その彼を支持しているのは分家ながら英雄となった

『レイドール・フォルゲル』

彼は40年前に起きた『レイギスの惨劇』の作戦成功の9割を担ったと言われている男。

アルベルの父である、カイン・O・ヴェルゴの親友であり戦友。

アルベルは国王候補者の中でエリナの次に良よく知っている人物だった。


円卓第九席

『ケイ・ステリオン』

ベスタ族という半人半獣、つまり人獣のみで構成された街『アルパラダス』を収めている国王候補者。

領主と言えど、その実力は侮れない。

屈強な肉体に獣人特有の人間には無い筋肉器官や性質を生かし、力で領主になった男。


ケイを支持しているのは同じくベスタ族の

『ユーラス・ソーシャ』

ベスタ族の奇襲部隊隊長であり、ケイが国王候補者になる前からの付き合い。

彼が国王候補者になると言った時猛反対し、三日三晩喧嘩が続いた挙句、敗北し、今は彼の支持者として、彼のそばにいる。


円卓第八席

『ボールス・セインハルト』

彼女はスラム街出身の貴族。

前後で矛盾しているこの人物は、セインハルト一家が偶然スラム街で彼女を見つけ、養子に迎い入れたそうだ。

何故彼女が養子とされたのかは既に死んだ彼女の両親しか知らないのだ。


そう考えながらアルベルは第八席の方向を向いたが、彼女の姿は無かった。

第三席のガヴェインという人物が普段から居ないのは周りの様子からも、エリナとの会話からもわかったが、彼女が居ないのは珍しいようだ。


「ちぃよっっっと、待ったぁぁーー!!!!」


すると大きな叫び声と共に円卓の間の巨大な扉が勢いよく開いた。


「ワシがおらん中始めるとはどういう事じゃ!!ワシも混ぜろ!!」


入口の扉からは有り余った体力を発散するかのような勢いで扉を開けた、『ボールス・セインハルト』の姿と


「ボールス様ぁー待ってってばー!」


緑髪の子供のような容姿の男、我が王国騎士団が誇る"副団長"『セルビオ・ストライク』の姿があった。


「あー!アルベル君!久しぶりだねぇ!」


セルビオはボールスを席に案内しながらアルベルに声をかけてきた。

その間にアルベルは彼のプロフィールも思い出していた。


ボールス・セインハルトの支持者であり、ベルドブール王国騎士団の副団長。

しかし彼が異質なのは、その種族と経歴にある。

彼は妖精族やエルフの始祖となった一族、ガイア族の生き残りだ。

その寿命は、《大地が滅ぶ頃失われる》と言われているため、正確な寿命は不明。

そして他の支持者とは違い、何か大きな功績を残した訳ではなく、その長すぎる寿命から小さなことを積み重ねていく内に今の状況に至る。

なんとも不思議な男である。


円卓第七席

『ガラハッド・D・ヴァルメル』

魔術師協会の一員で、『虚影』の魔術師の弟子の一人でもある。

様々な水晶を開発しており、連絡用水晶や、アルベルが子供の頃に使った映像が映し出せる、幻映(げんえい)水晶等、多くを生み出してきた。


彼を支持しているのは『バーサーカー』の異名を持つ

『カルシス・ネオン』

防具は兜だけをつけ、華奢な体に似合わない大剣を振り回す。

その威力は数多の巨大モンスターを狩ってきたため、バーサーカーと呼ばれている。

攻撃を喰らわない、がモットーらしく服はかなり軽装で露出も多かった。


円卓第六席

『アルマドス・ラモラック』

音楽都市『シャーフェリア』を治めている領主。

自然の音を『声』として認識することができ、的確な情報収集能力で、領主まで上り詰めた。

情報戦においては国王候補者ですらも厄介な相手として認識している。


彼女を支持しているのは

『ドラード・ファーラ』

彼は音楽都市『シャーフェリア』の騎士で、10年前の戦闘能力が非常に高い悪魔型モンスターとの戦闘において、相手の半分ほどの戦力しかないシャーフェリアの騎士たちで、完勝するほどの天才軍師である。


円卓第五席

『ルーカス・アグラヴェイン』

騎士団では無く、魔法を主力とした軍隊、通称『魔軍』を配備している監獄都市『アルカレイズ』の監獄長、つまりは領主である。

軍人に対しての英才教育が凄まじく、魔力で動く『機動型魔道砲』という兵器を開発し、それが大量のモンスターを駆除した事で今の立場になった。

科学力も王都含め、全ての都市の中でダントツで高い。


彼女を支持しているのは

『プルメリア・オーブ・ダルメス』

監獄都市『アルカレイズ』では珍しい、剣と魔法を両立させて戦うことの出来る魔法剣士。

表情の無い彼女は元々戦争孤児であり、それをルーカスが保護し、今に至る。


円卓第四席

『トリスタン・ルキウス』

ホンゴク式と呼ばれる和文化、つまりは日本のような文化を持った街『ホンゴク』の領主。

ホンゴク弁というアルベルにしてみれば、関西弁のような喋り方をするダラけた男。

しかし交渉に関して言えば、相手の深層心理を相手の言動から感じ取り、相手がやられて嫌な手を次々と実行してくる。

情報戦において最強と言われるアルマドスですら苦戦する相手だそう。


彼を支持しているのは

『ユーリ・キサラギ』

ダラケている彼を普段から面倒を見ているため、今回もこの場に同席しているらしい。

戦闘能力や実績は不明だが、怠け者のトリスタンのお着きだ。

恐らくはトリスタンの気まぐれであろうとアルベルは考えていた。


円卓第三席

『リベルオ・ガヴェイン』

彼に関しては一切の情報がなかった。

この会合にも一度も顔を出さず、支持者もいない中、何故国王選挙に参加できるのか、何故参加しているのか、謎の多い人物。


円卓第二席

『ランスロット・イージス』

若くしてこの国随一の剣士であり、『剣聖』という異名で名を馳せている男。

騎士の家系に生まれた彼は生まれつき魔法が使えないらしい。

しかし騎士には関係ないと剣を振り続けた結果、『剣聖』とまで呼ばれるようになった。

その実力はデルミアでも遠く及ばず、周辺国から個人に平和条約が持ちかけられるほどのようだ。

魔法は使えないがスキルが強力らしい。

だが流石にその内容までは教えてもらえず、少しもどかしい。

現在は王国騎士団の中でも精鋭揃いの『蒼天の刃』に所属している為、同じ騎士団員とはいえ階級が違いすぎて直接話すことはなさそうだ。

天から王族を護る守護の剣を授かった、として名付けられたその集団は、剣術も魔法もスキルも規格外の人間が多いらしい。


彼を支持しているのは


『グラディウス・ローグ』

彼女はエリナと同等のプロポーションをしており、そのルックスから舐められがちだが、ランスロットを三度負かしており、その実力は王国内で二番目に強いと評判である。

しかし彼女はこの選挙に不本意ながら参加したらしい。


そして

円卓第一席

『ベルドブール・クラウディア・フォス・エリナ』

ベルドブール・クラウディア・ペン・アーサーの娘であり、この国の姫。

これといった戦績や実績も無く、記憶喪失とまで来た。

元々国王を嫌っていた連中が、国王の娘のこの状態を知れば、負の感情に更に拍車がかかるだろう。

しかし彼女はめげす、強い精神をもって今回の国王選挙に望んでいる。


彼女を支持しているのはなんと言ってもこの男。

田舎出身の田舎剣士。

学も身分も魔法もほとんどない男。

『カイン・S・アルベル』

最初彼には誰も期待していなかったが、長年に渡り行商人や旅人に被害を出していた『オーガトロル』を討伐した事が、国王候補者達にも伝わっており、少しだけ株が上がったらしい。


「爺さん方、今回の議題はなんなんだァ?」


パロミデスが口を開いた。

円卓に足を乗せ、不敬な態度をとっていた。


「まさか姫さんに後ろ盾が出来たことを祝えとか言わねぇよなァ?」


パロミデスは一席の方、つまりはエリナとアルベルの方を見ながら言った。

彼の視線は冷酷ながら面白いことを見逃さないような狩人のような瞳をしていた。


「今まで散々待たせといてよォ、連れてきたのは田舎育ちのノミ虫かよォ。デルミア・ブラック(あの髭面のオッサン)の代役にしてもテキトー過ぎんだろォ?」


この野郎・・・ちょっとイケメンでモテて国王候補者だからって調子に乗りやがって。国王候補者じゃなきゃ今すぐ俺の愛剣の錆にしてやるのに。

とアルベルは心の中でイラつきを抑えた。


「口を慎め、軽口男。」

「んだとォ?ゴラァ」


するとそこに口を挟んだのはガラハッドだった。

腕を組み、静かにしていたと思っていたらパロミデスの言葉に我慢が出来なくなったようだ。


「貴様も彼の活躍は知っているだろう。元々あのモンスターは貴様のくだらん商売の管理不足によって起きた事に起因する。彼の活躍無くしては、貴様の街も潰れていただろうな。」


「けッ!!」


パロミデスは完全にガラハッドに論破され、不貞腐れて座り直した。

アルベルは少しだけガラハッドに対して会釈した。


「パロミデス様も落ち着いたようで、今回の議題を発表する。」


魔術師協会最高幹部の一人が言った。

そして円卓中央にある水晶から映像が映し出された。

あれは装飾ではなく幻映水晶だったのだ。


「今回は、脱落者を出す方法を説明することになりました。」


その瞬間、一同から殺気が漏れだした。

皆、表情や態度は変えていなかったが、殺気を振りまいていないエリナの後ろにいるアルベルだからこそ分かる。

この場でいつ、殺し合いが起きてもおかしくない・・・と。


「脱落者を決めるって言っても、どうやって決めるんじゃ?」


「確かに。そもそもこれは選挙ではないですか。一個人を脱落させる方法などあるのですか?・・・・・・まぁ、どちらにせよ、この協会の方々が基準を決めて下さればそれを遂行するまでです。」


途中参加のボールスが発言した。

それに続いて、アグラヴェインが同調した。

ボールスは


なんでこんな魔道具女に同意されなきゃいけないんだ・・・


と言わんばかりの表情でアグラヴェインを睨みつけた。


「それはこれからご説明致します。現在、この国王選挙は国民からの支持や実績から、選ぶ方式となっていましたが、これではあまりに時間がかかり過ぎる。」


「やっと気づいたですか?お爺様方は悠長ですねぇ?」


ラモラックが嫌味混じりで発言した。

可愛い見た目とは裏腹に、内側は真っ黒なようだ。


「申し訳ございません。こちらとしても準備がありましたので。」


「準備〜?なんの準備や〜?」


トリスタンが寝転びながら発言した。

彼の席だけ、椅子ではなく、横長のベッドのようなものだった。

それに寝転がりながら発言とは流石の胆力と言うべきか、ただ何も考えていないだけなのかアルベルには予想がつかなかった。


「我々は審議の結果、国民からの支持や実績で決めるのでは無く、一つの試練を与え、それを乗り越えることで『国王』とする事にしました。」


「試練か・・・ゾクゾクするね。」

「それでその試練とはどのようなものだ?」

ランスロットが発言した。

試練と聞き、剣聖としての血が騒いだようだ。

彼の目は全てを喰い尽くす龍のように、滾っていた。

それを尻目にパーシヴァルが発言した。


「内容は至ってシンプルです。」


幻映水晶にとある一文が表示された。




『初代国王陛下の御霊屋(おたまや)を発見する』




その文章に国王候補者の全員が唖然とし、立ち上がった。

それぞれが冷や汗をかき、武者震いで笑みが止まらない者、その文章への驚きと震えが止まらない者等各々の反応は尋常では無かった。


円卓の間内でその文章の言葉の意味を理解していなかったのは、アルベルただ一人だった。

お読みいただきましてありがとうございます!!

何だか波乱の展開になりそうですね!!

是非ブックマークや感想、レビューやいいねの方をどうぞよろしくお願いいたします!!

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