第十五話 話とそれから
「空いてるぜ、姫さん。」
俺はなるべくイケメンぶった声で言った。
するとその巨大な扉から入ってきたのはこの国の王候補兼、姫であるベルドブール・クラウディア・フォス・エリナであった。
俺はこの姫様の護衛につくことになってしまったが、結果的に親父と同じ仕事をできるのだと考えると悪い気はしなかった。
「あの私・・・アルベル様と少しお話したくて・・・その・・・。」
中々ハッキリしない子だな。
普段は気丈に振舞って、自分のやりたいことを抑えているタイプなのだろうか。
これまた俺とは真逆のタイプだ。
俺は欲望の意のままに生きているタイプの人間のため、本当にそういうタイプなら少し尊敬する。
「俺なんかの話で良ければ、いくらでも。」
そういうとエリナは明るく笑った。
顔の周りに『パァっ』というエフェクトが浮かんだ。
いや漫画かよ。
でも笑うとこんな感じなのか。
お姫様と言っても普通の女の子と変わりないな。
「それで?何が聞きたいんだ?王都に住んでるあんたらからしたら、俺はしがない田舎モンだぞ。」
するとエリナはモジモジしながらも口を開いた。
「私・・・その。お父様が亡くなってから城の中に籠りっきりで・・・。だからお外の世界のお話を聞ければ・・・と。」
ありがちなお姫様の設定だが、目の前にすると、ここまで放っておけないものだったとは。
「いいけど、多分姫さん俺より年上だよな?そんでもって数年前に国王が死んで、そっから籠りっきりって事は・・・俺より外の世界のことよく知ってんじゃねぇか?」
それは出てきて当たり前の疑問であった。
エリナの見た目は明らかに大人のお姉さんの体型で顔は少し幼めだが、流石に7歳児よりかは大人びている。
俺はこの世界では7歳児の子供だが、実年齢は17歳なため、実際のところエリナの方が上かは分からない。
だがそうなったところでこの世界に来て7年というのには変わりない。
するとエリナの周りに『モヤモヤ』というエフェクトが現れた。
先程からこの実体化した文字は一体何なのだろうか。
「それは・・・その・・・。」
いや待てよ俺。
モヤモヤというネガティブなエフェクトが出たというのなら恐らく、話したくないのだろう。
「いやいいよ。多分今、話したくないんだろ?だったら話したくなるまで待つよ。」
そう言うとエリナの周りに『ポワン』というエフェクトが出現した。
ふわふわと花や光が周辺に広がった。
とりあえず機嫌を悪くさせなかったようだ。
「外の世界の話だったな。そんじゃ田舎の暮らしから話すかな。」
俺はそれからエリナに田舎での暮らしを話した。
主には、食べているモンスターの違いや、生活の違いなどを話した。
「全く・・・エリナ様はあの男が来てからあの男について回っているようだな・・・。私が頼んだことだが少しあの男が憎たらしい・・・!」
廊下をデルミアがブツブツつぶやきながら歩いていた。
エリナがアルベルに懐き始めていることにジェラシーを感じているようだ。
そしてデルミアがアルベルの部屋まで来て、扉を激しく開けた。
「おい!アルベル!貴様調子に乗るなよ!姫様はお前のことなどなんとも思って・・・ないのだ・・・」
デルミアは目の前の光景に唖然とした。
目の前には巨大なベットの上で菓子や飲み物をつまみながら喋るアルベルとその話に興味津々のエリナだったのだ。
「貴様!アルベル!」
「げっ!ジジイババア!なんだよ!そんな剣幕で・・・ってちょいやめろ!胸ぐらをつかむな!!」
デルミアはかなり怒った様子で俺の胸ぐらをつかみ、持ち上げた。
今はエルフの姿なのに力はそのままのようで俺が抵抗しても無駄なようだった。
「いくら貴様がヴェルゴの息子といえど、姫の御前でなんたる無礼だ!斬り捨ててくれるわ!!」
デルミアは既に剣を腰から抜いていた。
その剣を振り上げ、俺に向かって振り下ろそうとしていた。
「俺に怒るなよ!!これはエリナに頼まれたんだって!『庶民の生活を見てみたいです。』ってよ!」
「姫様を呼び捨てにした挙げ句、姫様のせいにするとは何事だ!!エリナ様だろうがぁ!!」
「いぃやぁ!!やめろぉ!!」
「待ってデルミア!」
すると何よりも透き通るような声が部屋に響いた。
エリナの声だった。
ここまで声を張り上げられるのかと感心した。
「その剣を仕舞って、デルミア・・・。アルベル様には私から呼び捨てで呼んでほしいとお願いしたの。それと庶民の生活を見たいと言ったのも本当です。だから怒らないであげて・・・。」
女性にここまで庇われては俺のメンツは丸潰れだったが、冗談半分にしてもエリナのお陰で死なずに済んだ。
いやあのジジイババアは本気だっただろうが。
「いいかアルベル。貴様にはもう少し立場というものをわきまえて貰わねばならん。」
俺は地べたに正座させられていた。
「ごめんなさいアルベル様。私が無理を言ったばっかりに・・・。」
前世ではほぼ毎日こんな生活だったため無理はしていないのだが、城暮らしの人にはやるタイミングなど無いのだろう。
「貴様は明日から王国騎士団の任や訓練にあたるのだ。姫様も今日は早めにお休みください。」
「はい・・・。わかりました。ではアルベル様、これからよろしくお願いいたします。おやすみなさい。」
そう言って二人は部屋から出ていった。
俺はその時考えた。
あの二人は何か違和感がある。
エリナが自分の過去を話したがらないのも、エリナの感情に合わせて出現する言葉もきっとそこに関係しているはずだ。
だが今考えても仕方のないことだ。
そして俺は再びベッドに身を任せた。
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