第十四話 まずは洋服を
「すっげー可愛いなぁ・・・。」
自分でもバカ正直に呟いたなと思った。
心の声がダダ漏れだった。
するとお嬢様、エリナは恥じらったような顔で顔を逸らしながら俺の方を指を差してきた。
照れ顔もいいもんだなと思いつつ俺は素直にそのまま自分の体を見下ろした。
そういえば俺
裸だった。
「きゃー!誰かぁ男の人ぉ!俺に洋服をくれぇ!!」
エリナは完全に顔を隠してそっぽを向いてしまっていた。
俺はその時この部屋に来て初めて恥じらった。
こんな美少女に俺の屈強でもなんでもない恥のような体を見られたら俺もたまならい。
俺はしばらくして洋服を貰い、それを着た。
流石に服くれるの遅すぎるんじゃないか。
そして落ち着いて、彼等に質問をした。
「待て待て待て。この美人のお嬢様の前でもう一度聞くが・・・俺みたいなのでいいのか?言いたかないが、お前らからしたら犯罪者なんだろ?」
俺は王国騎士団員殺害の濡れ衣を着せられ、打首になる寸前、十戒幹部の一人、『飢餓』の依代であるナベリウス・ガーレインの情報を提供したことで何とか打首を逃れられそうになったが、その条件として一国の王を決める抗争に巻き込まれることになってしまったようなのだ。
「先程も言ったが、我々もやむを得ないのだ。今、他の候補者は様々な英雄や権力者を後ろ盾に力を伸ばしつつあるのだが、そこに問題があってな・・・。」
「問題?一体なんだよ。」
「ここにおられるエリナ様は実は・・・先代国王様の実の娘なのだ。」
デルミアはエリナの方に顔を向けて示した。
エリナは照れくさそうに
「先代国王の娘!?だったら後ろ盾なんていくらでも着きそうじゃないか。それのどこが問題なのだ。」
俺は純粋に気になって問いかけた。
元国王の娘なら気にかけてくれる人間が大勢いても不思議じゃないからだ。
しかしその理由はすぐにわかった。
デルミアがそれを説明してくれた。
「実は先代国王様は政治力は抜群だったんだが・・・真面目ゆえの頑固さで、方々に敵を作っては争い、作っては争いを繰り返していたんだ。」
成程。
国王はただの問題児だったのか。
「貧困が気に入らない貴族が『貧民街を潰せ』と提案するとそれに大激怒してしまってな。その名門の貴族を家ごと潰してしまったのだ。『我々が力及ばずなばかりに貧しい思いをしてしまっている者達に対してその態度はなんだ!ならば貴様も同じ気持ちを味わってくるがいい!』という調子でな。」
聞く限りはめちゃくちゃいい人だが、確かに政治をする人間としては少し激情的過ぎるような気もする。
だが国民のことを一に考えて、収入源である名門貴族の家を潰すなんて事をするような人が悪い人間には思えなかった。
「そんで他の貴族連中が後ろ盾に国の英雄だの豪傑だのそこら辺をどんどん持ってってるわけが。そんじゃあよ、あんたじゃダメなのか?」
俺はデルミアに言った。
王国騎士団の特別指南役となればそこそこの後ろ盾になるような気もするが。
「そうするとな、王族が贔屓されていると見られかねない。私もそれが出来れば苦労せんのだよ。」
デルミアは残念そうに頭を少し傾けた。
心の底からの感情なのだと受け取れた。
「んで。そこに俺が入ることによってどうなるよ。」
「本題はそこなのだ。もし、私が直接支持してしまうとそれは王族が贔屓されている、ということになってしまい、本当の意味でエリナ様に着いてくる国民が居なくなってしまう。そこでだ。貴様という人間を一人挟むことによって私が貴様に支援を、そして貴様がエリナ様を支持する。間接的には私が支援することになるから貴様は堂々としているだけで良い。」
デルミアは一通り説明し終わり、エリナの方から俺の方へ向き直った。
成程、俺はお飾りの後ろ盾ということか。
「大体の概要は分かった。でも何であんたはお姫さんの支持してくれるんだ?先代国王は嫌われてるんだろ?」
俺はさらに説明を求めた。
いかにも老害ムーブをかましそうな見た目の老人が方々に敵を作りまくってた国王を好きなイメージが湧かなかったからだ。
「これも止むを得まい・・・実はな・・・」
「その人が俺の母様で、エリナ様の乳母だからだよ。」
聞き馴染みのあるイケメンボイスに俺は振り返った。
案の定そこに居たのは英雄、フォルゲルだった。
「久しぶりだね、アルベル君。君の事は聞いたよ。身体が大きくなってしまったようで。」
「あぁそうなんだよ。ついさっきの話らしい。それにしても国王の娘の乳母か・・・両親はいないのか。」
「先程も言ったが国王様は数年前に亡くなった。王妃様もエリナ様を出産なさった後にすぐ亡くなってしまったのだ。」
俺が少し踏み入った質問をしてしまい、申し訳なさそうにしていると
フォルゲルも少し申し訳なさそうにした。
俺は気になり問い掛けた。
「どうしたんだよフォルゲル。踏み込んだ質問したのは悪かったよ。それとも俺がデカくなったことになんかあんのか?」
フォルゲルは重い唇を動かした。
「いや・・・先日のヴェルゴ、君の父の件は本当に済まなかった!俺の力が及ばなかったばかりに!」
フォルゲルは再び俺に頭を下げた。
英雄が軽率に一般人に頭を下げるものじゃないと思った。
またこれか。
「その件は良いって言ってんだろ。親父からの遺言も聞けたし、別にあんたを恨んじゃいないよ。」
「アルベル君・・・。すまない。何もなしでは俺の気がすまなかった。これで少しは気が楽になったよ。」
フォルゲルは頭を掻きながら言った。
その微笑みは本当にイケメンでムカつく。
「んでこのじじいが母親ってなんの冗談だよ。」
「もういいんじゃないかな母様。もう隠す必要なんてないよ。」
フォルゲルはデルミアに催促した。
デルミアは渋々了承した。
すると筋骨隆々だった男の肉体は萎んでいき、胸だけが大きく膨らんだ。
ウェストも先程の半分も無いほどに細く、無骨な顔面は柔らかく、彫りの深い顔立ちとなった。
金髪のロン毛はフォルゲルを思い出させるところがあった。
これまた完全な美少女だ。
「これが私の本来の姿だ。」
「ほえーあの髭面の爺さんがこんな美人だったとは・・・ん?その耳、もしかしてエルフなのか?」
俺はデルミアのピアスの空いた耳を見て問いかけた。
「あぁ。フォルゲルも私と同じ耳をしているだろう?貴様は知ってるとは思うがこの子もまたエルフなのだ。そして貴様の母親もな。」
「なんでうちの家族のことまで知ってんだよ。」
気になる言葉が出てきて俺は思わず聞き返した。
「貴様の父親であるヴェルゴはそこのフォルゲルとは唯一無二の親友だった。だから多少のコトならば知っている。」
「そうか・・・。俺が打首を逃れた理由の一つとしてそれもあったわけか。自分の息子の親友の子供がそんな極悪非道なことできねぇ、そもそもそんな年齢じゃねぇってとこか。」
「フッ・・・一言一句当てられてはどうしようもないな。」
デルミアは無骨な男の顔面から美人エルフへとなったため、どんな顔でも眼福だった。
「最後にもう一つだけ聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「さっきの髭面のおっさんの見た目はなんなの?」
「あれは仕方なしだ。元国王騎士団団長がエルフの女等と言われては恥だ。だが高い魔力が幸いした。昼一日中見た目を変えるほどの魔力は持っていたからな、60年間何とか凌ぐ事ができた。」
超長寿なエルフにとって60年とはとても短い期間だが、人間単位で考えれば、入隊して除隊するまでの期間ほどだ。それほどの期間よく騙し続けられたものだ。
「事情は分かった。んじゃあ俺はその姫様預かって何すればいい。」
俺はエリナの方を見た。
エリナはまだ照れ隠しのため顔を手で覆っていた。
「ひとまずは待機となるな。最もお前には強くなってもらはなければならん。よって今日から貴様を『ベルドブール王国騎士団特別団員』として任務にあたり、鍛錬の毎日を過ごしてもらう。」
俺は耳を疑った。
姫の護衛を押し付けられた挙句苦しい王国騎士団の鍛錬に組み込まれてしまうだなんて・・・。
しかしその時に脳裏に父親の言葉が過った。
『頑張れよ俺の愛息子。』
「分かった・・・。」
俺は小さな声で呟いた。
「俺やるよ。王国騎士団員だった親父のために親父を尊敬している、俺のために。」
俺はそこで決めた。
親父のやっていた王国騎士にもなれて、強くなれる。
そしてなにより美人の姫様の護衛も出来る。
一石三鳥だ、逃すわけにはいかない。
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「そんじゃあよフォルゲル。母さんにはよろしく伝えておいてくれ。」
俺はフォルゲルを城から見送るところだった。
外はすっかり夕方となってしまい、早朝からここまで色々なことがあったなと思った。
「任せてくれ。君の母さんは君とヴェルゴの代わりに僕が命に変えても守ってみせる。」
そう言いフォルゲルは城から馬車で出発した。
俺は見えなくなるまで手を振ると城の中へ戻った。
するとメイドさんの様な人が俺を案内してくれた。
どこへ連れて行く気なんだろ。
そしてメイドさんが大きな扉の前で立ち止まり、端に避けた。
俺は何がしたいのか分からず思わず聞いた。
「あの・・・ちょっとお姉さん。」
「ビンスです。」
「ビンスさんこの大きな扉の部屋はなんですか?」
そう聞くとビンスはぽかんとした顔をした。
俺も思わずぽかんとした。
すると何か思い出したように顔を赤らめ、こちらに向き直ってきた。
流石王都だ。
メイドさんも可愛らしい。
「失礼いたしました、アルベル様。てっきり聞いているものだと思っておりました。」
ビンスは咳払いをして俺に向き直った。
「改めまして・・・ここは今日から貴方様がお住いになられる部屋でございます。」
「えっ・・・?俺・・・ここに住んでいいの?」
流石の俺も唖然としていつも以上の間抜け面になった。
俺は部屋の中に案内され、部屋の中で続きの話をされた。
「姫様を守り、騎士団の訓練にも参加なされるのですもの。それ相応の待遇は当たり前ですわ。それでは何かありましたらお呼びください。」
そう言ってビンスは俺を部屋の中に誘導して立ち去った。
ここが今日から俺の住む家・・・。
広すぎんだろ・・・。
俺の家丸々入るんじゃねぇか。
書斎で広い広いって言ってた俺がなんだか世間知らずみたいじゃねぇか。
いやこの言い方だと母さん達に申し訳ねぇからやめよう。
俺は用意されていたベットに寝転んだ。
明日から護衛と訓練の日々が始まるのかと思うと少しの興奮と不安で頭が押しつぶされそうになった。
今日はもう寝よう。
俺はそこで目を閉じた。
すると部屋の外からノックが聞こえた。
「はい」と返事をすると聞きなれない声が聞こえてきた。
「すこし・・・お話し出来ませんか・・・?」
俺はその聞きなれない美声に知らぬ間に心を奪われていた。
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