第十三話 アルベル死す
俺の目の前に再び何も無い暗闇が広がった。
あん時の感覚にそっくりだ。
俺は死んだのかな・・・。
車に轢かれた以来のあの感覚。
もしあの感覚が『死』という事ならば俺は再び死んだのだろうか。
ならば今度はどこへ向かうのだろう。
異世界から現世へ行かされるのだろうか。
それともこのまま永遠にこの空間に閉じ込められるのだろうか。
そんなの、嫌だ。
「おいコラ!誰だか知らねぇがこっから出しやがれ!!」
あれ、声が出る。
前回は声が出ただろうか。
そして何故か声が少し低くなっている気がする。というか前世の声と同じじゃないか?
「この男全然起きないぞ・・・。」
「でも今さっき叫んだぞ。びっくりして転がり落ちるかと思ったぜ・・・。」
「ったく。あんな辺境の地に現れていたとはな。」
「なんかパッとしない見た目だな。」
何やら声が聞こえてきた。
俺は寝ているのか?
叫んだということはさっきのは寝言ということになるのか?
あとしれっと悪口が混じってたような・・・。
そんなことを考えていると次第に外が騒がしくなってきた。
「・・・連れてまいりました。」
「よし、下がるが良い。」
「いい加減起きろ!貴様!」
俺は引っぱたかれた。
こんな感じで起きるのなんて久しぶりだった。
それにしても子供を殴るだなんてどんな輩だ。
その面拝んでやる。
そして俺は目を開けいの一番に叫んだ。
「俺の名はカイン・S・アルベル!!どこの誰だか知らねぇが!ガキンチョの顔面殴るたァ!どういう要・・・件・・・だ・・・。」
俺はその時初めて自分の体を見た。
目線は何故か高く、少し肌寒かった。
俺がいる部屋は豪勢でなんだが居心地が悪かった。
そしてその部屋のベランダへの窓に映った自分の姿を見て絶句した。
「俺・・・でっかくなってるぅ!!??」
ーーー
俺は取り乱した後周りにいる騎士たちに取り押さえらえ、少しだけ落ち着きを取り戻した。
正直デカくなったことに関してはもうどうでもよかった。
この世界に来た時点である程度の不思議は納得するしかないからだ。
「なぁ、髭のおっさん。ちょっと聞いてもいいか?」
俺は目の前にいる髭の生えた偉そうな老人に言った。
すると再び俺は剣の鞘で頭を引っぱたかれた。
「貴様!王国騎士団特別指南役であらせられるデルミア・ブラック様の御前だぞ!」
「ここはどこで、俺はなんで倒れていて何をしてこんな所へ連れてこられたんだ?」
俺はその忠告を無視し、特別指南役とやらに質問をなげかけた。
すると髭面の特別指南役は口を開いた
「貴様・・・自分のやったことを覚えておらぬのか・・・?」
「まぁ何となくは覚えてるんだけど、現状に頭が追いついてねぇんだ。」
デルミアはため息を吐き、再び話を始めた。
「ここはベルドブール王国、王都・ユニコス。貴様は我が王国騎士団員を二名殺害し、その現場に全裸で倒れていたのだ。それを同じ隊の四名が発見し、ここに運び込み今に至る。」
王都・・・だからこんなに豪華なのか・・・。
ここは騎士団の本部というところだろうか
「ちなみになんで俺が全裸なのか知ってる人は・・・。」
「貴様が知らねば我々は知らぬな。まぁ殺人と猥褻で十分連行はできる。」
そうか・・・やっと合点がいった。
十戒支部局長『飢餓』の依代、ナベリウス・ガーレインのやった事が丸々俺に降り掛かっているわけだ。
そしてあの言葉。
ー『やっぱりお土産、あげちゃう。』ー
ー『じゃあその力有意義にね、アルベル君♡』ー
あれは、俺の体を大きくしたのと何か関係があるに違いない・・・。
それにしても何故あいつは俺の名前を知っていた・・・。
考えりゃ考える程、謎が多い世界だ。
母さんに心配かけちまってるだろうな・・・。
早く帰ってこのことを説明しねぇと。
「彼の行動は非常に無慈悲かつ、残酷な行いです!皆様、亡骸を見ましたでしょうか?・・・そうです誰も見ていないのです。見れるような状態ではなく、その場で爆散したようにただ、血の池があるだけでした。」
考え込んでいた俺の耳に一人の騎士が必死に話しているのが聞こえてきた。
俺が考え込んでいる間に話を進めるのは辞めて欲しいものだ。
俺も混ぜてくれ。
あと服もくれ、流石の俺でもいい加減全裸じゃ恥ずかしいぞ。
「うむ・・・確かにケルス君の言う通りだ。・・・よってカイン・S・アルベルを殺人の罪で・・・」
「打首とする!」
そうそう打首。
中世のゲームではありがちな展開・・・ちょっと待て。
「もしかして今俺が打首なるって言った?」
「貴様以外に誰がいる。この者を今すぐ地下牢へ連れて行け!」
デルミアに命令され、彼の直属の部下たちは俺を引きずり、連れていこうとした。
「おい待て!お前ら"十戒"を追ってるんだろ!?俺は十戒の幹部を全員見た!プレッシャーと恐怖で顔とかまでは分からねぇがいるという確証をもてるだけでも十分な情報じゃねぇか!?」
正直この言い逃れはキツいと思った。
なぜなら奴らがこれを信じる理由も意味もあまりないからだ。
あの現場の状況から考えるに、まず俺が十戒の人間かもしれないと疑われるのは明白だった。
そして自分の命惜しさに仲間を売ったと考えるのが妥当だった。
なら・・・!
「十戒支部局長!『飢餓』の依代!ナベリウス・ガーレイン!!」
俺はあの時聞いた奴の自己紹介をそのまま叫んだ。
「これがあんたらの騎士団員を殺した張本人の名だ!あいつは赤髪で口をマスクで隠している。身長はそこの四人の騎士と同じくらいでそこそこデカかった。そんでもってあいつは斬り掛かられると二人の騎士に何もせず、騎士は破裂した。」
「・・・。」
デルミアは黙って俺の話を聞いていた。
顔の筋肉を一切動かさず、それはもう不動の岩山のように深く、重く、大きく感じた。
王国の指南役とまでくるとここまでの威厳を保つものなのか・・・。
こういう指南役の人間は大抵は元々騎士団長だったりする。
変に逆らわねぇ方が吉・・・か。
俺はそんな威圧感に圧倒されながら話を続けた。
「そしてその時にあいつは人を待たせていると言って背後から八つの黒い影が現れたんだ。その証拠に俺の住んでいた村が先日、魔獣王の一体、伯奇に襲われた!その魔力を追ってあいつはやってきたんだ!そんでもって九人集まった時のあの気が狂いそうな空気感は完全に魔獣王クラスだ!」
デルミアはしばらく顎に手を当て考えた。
そしてその後喋り始めた。
「仮に貴様のその発言を信じるのであれば、今の発言の全ては貴様にも当てはまるのだぞ。」
「それは百も承知だけど!だが、やらなきゃ確実に死刑なら、俺は少しでも俺の身の潔白を示してみせる。」
俺は膝をつきつつも、真正面からデルミアを睨みつけた。
再びデルミアは考え込んだ後、一人の騎士団員に小声で命令を下した。
そして騎士団員は部屋から出ていき、そこそこの時間が経過した。俺はその間も全裸待機させられた。
全裸待機だなんて言葉も久しぶりに聞いたものだ。
しばらくして騎士団員が戻ってきた。
「急にどうしたんだ?」
「貴様を発言を信じる代わりに、貴様には任を与える。これに拒否権は無い。」
今の今まで子供だった人間に強制的に任務なんて与えるなよ。
まぁ実年齢はもうあんまり関係ないけどよ。
「俺は何をすれば?」
アルベルは仕方なく聞いた。
自分がこれから何をするかぐらいは聞いてやろうと思ったのだ。
「お前にはこれから一人の少女の護衛に付いてもらう。」
「護衛の仕事か・・・。言っとくが俺そんなに強くないぞ。」
「それは今から確認する。そこの水晶に手をかざせ。」
アルベルはデルミアの視線の先に自分の家にあった水晶を見つけた。
「この水晶に触れるのもなんだが久しぶりな気がするぜ。」
そう言い、アルベルはそのまま水晶に手をかざした。
眩い光とともに自分のステータスが表示された。
名前:カイン・S・アルベル
年齢:17歳
身長:168cm
体重:60kg
レベル:18
総合戦闘力:269
オド:7
体力:80
知力:154
腕力:40
攻撃力:58
魔力:75
防御力:51
魔法耐性:66
速度:59
運:50
スキル:未定
と表示された。
知力と運以外のステータスは順調に伸びているようだった。
ん?いや待てよ。
なんでオドがこんなに無いんだよ。
この前は普通に魔術使えたじゃねぇか。
それに見慣れない項目の総合戦闘力というのが気になった。
今更新しい項目を増やすのはやめて欲しいものだ。
「なあ、この総合戦闘力ってのはなんだ?」
「それは戦闘に関係のある数値の合計値だ。知力、腕力、魔力、速度。これらを足したものだ。まぁ貴様の269は平均より少し低いくらいだな。知力は高いが、腕力が足を引っ張っている。」
なんだか学校のテストの平均を出している気分だ。
まぁ高校のテストなんて知らないんだが。
「話の腰を折って悪かった。話を続けてくれ。」
「あぁ。これから貴様には身の潔白を証明してもらう訳だが。その間、この国の"国王候補"の方の護衛に当たってもらう。」
俺は耳を疑った。
そんな重要な役を傍から見れば全裸のお尋ね者の俺がだ。
「ちょっと待てよ!そんな重要人物の護衛を俺なんかがやっちまっていいのかよ!」
「我々も不服なのだが。やむを得んのだ・・・。」
デルミアは初めて顔をくもらせた。
何か事情があるのだろうか・・・。
「ではお入りください!」
すると部屋の入口の巨大な扉が開いた。
どっかの殺し屋一家の家みたいだ。
そしてそこから一人の少女が現れた。
その少女は、切れ長の目に母を彷彿とさせる赤い瞳、整った顔立ちにはアンバランスな豊かな胸を、俺と同じくらいという身長でいい具合に相殺されていた。
髪は金髪のロン毛で、どうやら後ろで結んでいるようだ。
服の装飾品が彼女の華奢ながらもしっかりとした体型のイメージに合っていた。
その少女は俺の目の前まで来て立ち止まった。
そしてデルミアが口を開いた。
「この方こそベルドブール王国、国王候補者。ベルドブール・クラウディア・フォス・エリナ様だ。」
俺は少女を見た。
少女もこちらを凝視していた。
俺は少女のその凛としながらも儚げな表情に見とれてしまっていた。
多分これが
一目惚れ・・・というモノなのだろうか。
俺の頭の中は珍しく、ピンク一色に染ったのだった。
遅ればせながら、ナベリウス・ガーレイン見た目はこんな感じです。
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