第十一話 人類の戒め
父、ヴェルゴが死んでから二週間が経過した。
父の最期に使っていた剣を受け継いだ俺は毎日ただひたすらに剣を振るった。
齢7つにして、昔は罠で少しづつ倒していた周辺の雑魚のモンスターも今は正面からぶつかっても負けない程度になってはいたが、それでもまだ足りなかった。
お世辞にも強いとは言えず、前世でやっていたゲームのようにはいかないなと苦悩していた。
「ゲームなら寝ずに二週間特訓するだけで大体の敵は倒せるんだけどな・・・。」
俺は顎に手を当てて考えた。
そもそも前世ではゲームしかしてなかった俺にまともに剣が振れる訳もなくただ闇雲に振り回しているだけに過ぎなかった。
しかも特に剣才もあるわけではなく、よくあるチート転生者と違って俺にはなんの特殊能力もない。
二週間かそこらで最強の剣士になれるはずもなかった。
「自分で言ってて虚しくなってきたな・・・今日はそろそろ帰るか。」
そう呟き、アルベルはヴェルゴの遺体があった場所を去った。
アルベルはあの日以来、自分の父親が死んでいた場所で稽古することにした。
往復数km、そこに行くまでも修行になる。
その場所で鍛えれば、父親にいち早く近づけると思ったのと、あの日の怪物、伯奇の残り香という名の魔力を忘れないようにするためだった。
後で分かったことだが、伯奇は滅多に姿を表さない魔獣王の一体であり、『原初の魔術師』が作り出したモンスターということで10人の魔術師を崇拝する組織『十戒』の構成員達はわざわざ魔獣王達を探し出して殺されに行くほどらしい。なんて気色が悪いんだ。
この世に五種類しかいないモンスターの中でも郡を抜いているモンスター、魔獣王。
『夢を喰らう者・伯奇』。
その名の通り、人の夢を喰らうらしい。
その他にも夢を見せたり幻を見せたり出来る霧を吐き出すなど、幻術に秀でた魔獣王である。
大きさも魔獣王一で体高は約90m、全長約300mという巨体らしい。
しかしこの前の伯奇は明らかに小さかった。
恐らく十分の一程度のサイズだった。
『病魔を振り撒く者・帝鴉』
大空を翔ける巨大な鳥類型のモンスターだ。
抜け落ちた漆黒色の翼はその大地に病魔を持った魔力を根付かせ、ただの鴉のように擬態し、生息する。
そして集落に、触れるだけで体が腐り落ちる病を蔓延させるのだ。
一人感染するとその者に対して周囲の人間は異常なまでの『愛』を引き起こす。
それが病を促進させ、その果てには周辺の人間へと伝染し、それが繰り返される。
その病に冒された人間や動物たちは帝鴉へ魔力が還元され、それによってこのモンスターは生きながらえているようだ。
『狂気を与える者・黒豹』
四足歩行型の猫や虎に近い爪獣類のモンスターである。
他人に様々な感情や本人の欲する物を与える。魔獣王の中では温厚な方である。
しかし一度暴れ出すと凄まじい速度で荒野を駆け抜け、その跡には草木も生えないというほど。
その見た目から黒豹という名前以外にも『影の狂気』等とも呼ばれている。
『全てを消し去る者・害魚』
目に入るありとあらゆる物体を跡形もなく食べ尽くすモンスター。
一匹一匹は小さくただのトビウオの見た目をしているがピンチになると周辺に無数のワープホールを出現させ、そこから他の害魚を何百匹と召喚し、敵を跡形もなく消し去ってしまう。
伯奇に酷似している部分もあるが、こちらはただただ無限の食欲を満たすためだけに食べるのだ。
『純潔を犯す者・赫申』
巨大な猿のモンスターで腕力だけで言えば魔獣王の中で一番強く、生存能力が高い。
見た目は筋肉質で巨大な猿だが、人間に及ぼす影響は悪質かつ凶悪であり、人間の女性の体内に自身の子種を寄生させ、数ヶ月すると腹を引き裂いて赫申の子供が誕生する。
しかもいつどこで何故寄生されるのか明らかにされておらず、腹を突き破らず通常通り出産し、自分の子供だと思っていたら赫申の赤子でその村が壊滅したという記録も存在した。
そしてこれらは原初の魔術師の一人が己が欲求を満たすために作り出した。
睡眠欲、親和欲、物欲、食欲、性欲
これらは生物が生きていく上で切っても切り離せない問題である。
「いずれはこいつら全員を・・・!」
上記のことを思い出すと俺の決意は更に固まった。
「いいねぇ〜その目♪。子供なのにとても飢餓ってる目だ。」
突如背後から声が聞こえた。
俺は思わず振り返った。
するとそこには赤髪の口元をマスクで隠した青年が立っていた。
身長はそこそこ大きい。俺が子供ということを加味しても180あるかないかだ。
「お前・・・誰だ。自分の土地って訳じゃねぇけどあんまり人にそこに踏み入って欲しくねぇんだが・・・。」
アルベルは疑問と怒りの感情が混同していたが、怒りの感情を抑え気味に話した。
男は飄々とした態度で喋り始めた。
「いやぁね?近場で伯奇の噂を聞いて駆けつけてみれば案の定既にいないし、魔力が強く残っている所へ来てみればあーら不思議。同胞がいるじゃないか。」
「誰が同胞だ誰が。一緒にすんな。」
同胞?何言ってやがる・・・。
そんなことより考えろ。
コイツのとてつもない魔力とプレッシャーは並のモンじゃねぇ・・・。
こんなガキに手を出すとは思えねぇが何か手を考えねぇと・・・。
それに伯奇が現れた場所に残った強い魔力を追ってきて俺を同胞呼ばわり・・・。
まさかこいつ・・・!
「てめぇは・・・何モンだ・・・?」
アルベルは恐る恐る聞いた。
その答えも大概予想がついているのにもかかわらず。
「これはこれは申し訳ない。」
男は大袈裟な手振りをし、アルベルの前に向き直った。
「私、"十戒"支部局長『飢餓』の依代、ナベリウス・ガーレイン・・・と、申します。」
男は軽く下ろした頭を上げ、不気味な笑みを浮かべ、アルベルをただ見つめていた。
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